『我が主、ここより南南西10キロ地点に魔力反応。Aランク相当の魔物です』
「わかった。今日も行くわよ」
 自室の机の上にある写真立てに目をやる少女。
「行ってきます、お姉ちゃん」
 玉石をあしらった首飾りを右手で握り締める。
「変身!」
 大鎌を手にし、鮮血のような赤い戦闘衣装に身を包んだ魔法少女が夜の街へ飛び出していった。

 蠢く魔物。
 まるでゴリラのような重量級のバケモノを、修羅の如く狩っていく魔法少女が一人。
 赤ではなく、紫の戦闘衣に変わっている。
 得物は大剣。
 周辺は至る所に亀裂、抉られたような跡がついていた。
『5…』
<て、てめぇ!赤の魔法少女じゃなかっギャウワッ!>
 難なく右腕を斬り飛ばす。
『4…』
<あ、悪夢だ…この街を任された俺様が…!ひいいいいいい!!>
 逃走に移る。
「超変身」
 青の戦闘衣。得物が槍に変化する。
『3…』
 桁外れの動き。一瞬で魔物に並ぶ。右足を串刺しに。
<た、助けてください我等が王…ひぎぃ!!>
『2…』
「超変身」
 赤の戦闘衣に戻った。
 左腕を切り刻む。
『1…』
<頼む、命だけは…はがぁ!!>
 左足を潰す。
「貴様は、そうやって命乞いをした人間を許したことがあったのか?」
『0』
 大鎌で首を刎ねる。
 満月の夜に黒い血が舞った。
「下衆め」
 灰になって崩れ落ちる魔物を氷のような瞳で一瞥する。
『我が主、お見事でした』
「Aランクでもこの程度か。……この街も大体片付いたわね」

「我等が王、ご機嫌麗しゅうございます」
 痩身で顔色の悪い眼鏡をかけた黒服ロングコートの男が恭しく礼をしている。
 どこかの豪邸か、ホテルの一室か。高そうな調度品で整えられた一室。
 王と呼ばれているのは、20代半ばの青年。端正な容姿をしている。二人とも普通の人間同様の姿だ。
「で、例のモノはできたのかい、プロフェッサー?」
 王と呼ばれた青年が穏やかな口調で問うた。眼鏡のプロフェッサーがこれまた恭しい所作でアタッシュケースを差し出す。
「はい、魔法少女達の変身システムは大したものです。本人と契約器の魔力を共鳴させ、倍にまで引き上げる。同じシステムを使えば王のお力もより高まるでしょう」
 眼鏡の男は些か早口だ。
「魔法少女か……一人、形態変化の力を身に付けた者がいるそうだね。あれに勝てる魔物はそういないんじゃないか?」
「闇の竜は我等が王の力、キングの証…!いずれあのような者には、王のお力で消えてもらいます」
「……結局私に倒せってことか。まあいいさ」
 アタッシュケースをひょいと手にする。
「これは貰っておくよ。で、性能的にはどうなの」
「試作品の域を出てはおりませんが、通常時のお力を1.5倍にまで高められるはずです。装着可能時間は長くて10分」
「前の5分よりはマシだけど……TVでやってた戦システムよりひどいね」
「王ならば、5分も要りますまい?」
「そう言うか。食えない男だな君は」
 軽く肩をすくめ、王は歩き出す。
「じゃあ、その魔法少女、私が倒しておくよ。あまり同胞を殺されすぎても困る」
「ところで我等が王。また、あの者とお会いになるのですか?」
「……別にいいじゃないか。私には、人間としての顔も必要だ」
「あまり人間との恋愛遊びにうつつを抜かさないで下さい。貴方様は我等の王であることを、くれぐれもお忘れなく、タツヒト様」
 タツヒトと呼ばれた瞬間、背を向けて歩き去る青年の表情が一瞬不快に歪んだが、プロフェッサーからそれは見えなかった。


 目覚めは最悪だった。
 枕のあたりが少し濡れている。
 ……多分、昔の夢でも見ていたのだろう。
 魔法少女になった時は、嬉しかった。みんなを護れる正義の味方になるんだって思った。
 でも、現実には大切な人さえ護れなかったのだ。
 「何か」に襲われ、嬲り尽くされた姉が変わり果てた姿で見つかって以来、少女の家庭は壊れていった。
「……私には夢がない」
 呟く。
「夢を護ることもできない」
 両手をきつく握り締めた。
「だから、せめてあいつ等を全部殺すんだ」

 魔法少女にも、日常はある。
 彼女にも高校一年生としての生活があった。
 学校内では特に目立つ生徒ではない。勉強は出来る方、運動は並、交友関係は非常に浅く、恋愛沙汰には全くの無関心。そして帰宅部。
 外見につられる男子生徒がいないでもなかったが、あまりに取り付く島も無いので現在は敬遠されている。
 そういうわけで、放課後も誰にも引き止められることなく帰宅できた。
(2週間前に肉ダルマの魔物を倒して以来、ぱたりと出没しなくなった。……一掃できたわけじゃない、何かとてつもない気配があるはずだけど……)
 つい周囲が目に入らなくなる。行き交う人とぶつかった。
「キャッ」
「失礼!……大丈夫ですか、お嬢さん」
 よろめいた所、肩を支えられる。見ると、20代後半の男性、それもなかなかの好青年だ。
「ご、ごめんなさい。大丈夫……です」
 隣には、同じくらいの年頃の女の人。
「車にぶつかったら危ないし、気をつけないとダメよ」
 柔らかな瞳で語りかけてくる。
「ほんとにごめんなさい!」
「いや、いいんだ。気にしないで」
 優しげなカップル。少女は丁寧に礼を言い、歩いていく二人の後姿を見つめていた。
(……お姉ちゃんが生きていたら、あんな風に好きな男の人と一緒に歩いたりしたんだろうか)

「まあ、ぶつかったのが車じゃなく私でよかったよ」
「怖いお兄さんでもなくて、よかったですよね」
「そう言ってくれるか」
 その会話は、何気ない男女の談笑。
「でも、こんな時間から私に付き合ってもらってよかったんですか?お仕事、大変なんでしょ?」
「……ああ、その、社外秘なんで詳しくは言えないんだが、なかなか実用化の目処が立たなくてね。しかし一日くらいはいいだろう」
 少しおどけた口調。親しみやすい笑顔だと若い女性は思った。
「君の方こそ忙しいんじゃなかったのかい?」
「私の方はやっと一段落ついたとこなんです」
「それは目出度いな。どうかな、祝いとして今夜の食事は私が持つというのは」
「お言葉に甘えるべきなんでしょうね。そっちのお仕事が終わったら、次は私に奢らせてください」
「じゃあそれで宜しく頼む、裕子」
「今夜はよろしく、竜仁さん」
 名前を呼ばれる時、彼の表情が微かにだが嬉しそうに見えることが、彼女は好きだった。


 夜半。
「!!!」
『!!!』
 飛び起きる。
 凄まじいまでの魔力反応。気を抜くと全身が震え上がりそうな程だ。
「Sランク…!出たわね!」
『やるのですか、我が主』
 迷いは無い。
「全ての魔物は私が倒す。今の私なら、相手がSランクでも遅れは取らない!」
 玉石を右手で握り締め、写真立てを一度見て、視線を窓の外に戻した。
「……変身!」
 魔法少女が出撃する。

 戦場に選ばれたのは、人気の全く無い山奥。
 車道も通っていないような所だが、唐突に平坦地が設けられている。
 その中心に、男がいた。
「……貴方は……」
 見覚えがある。昼間、ぶつかった青年だ。
「……驚いたな。あのお嬢さんが赤の魔法少女だったのか」
 思いなおして、言葉を継ぐ。
「赤の、というのは適切ではないな。青、紫、他に緑もあるのか?」
 答えない。ただ、大鎌を構える。
「貴様がこの街の魔物達のボスのようね。……貴様の命、神に還せ!」
 地を蹴る。一瞬で背後に回り、首を狩る。
 はずだった。
 その刃は、指一本で止められている。
「なっ!」
 即座に離脱。構え直す。
「最初に言っておく。私は、かなり強い。……あっと、このへんの山一帯は私の所有物で誰も来ない。もっと派手に戦っていいんだよ?」
 そう言いながら、足元のアタッシュケースに手を伸ばした。
「もっとも、こちらも派手に闘るつもりなんだけど」
 ベルトが入っていた。クルリと腰に回し、カチャリと装着音が鳴る。
 そして。
「変身」
 信じられないものを見る。
 男の全身を包む灰色の戦闘スーツ。魔力反応が急激に上昇する。
『我が主、退いてください!この男は……』
「魔物達の王、キングと言っておこうか。……フム、しかしプロフェッサーはデザインセンスがないな。マスクドライダーの見過ぎじゃないか?」
 圧倒的な魔力。しかし、少女の目に怯えはなかった。
「こいつが……」
 憎悪の炎が瞳に宿る。
『主!』
「こいつが、王……こいつさえ殺せば!」
 大鎌の玉石に手を当てる。
 眩い光を放ち始めた。
「貴方の力、私に貸して!」
『 Blitz slash 』
 刃に光が広がる。
 雷霆の斬撃。
「フ……」
 男は片手を突き出し、構える。
『 Exceed charge 』
 ベルトのバックルから起動音がした。
 拳と刃が激突する。

 衝撃と光が弾け、一瞬、感覚がロストする。
 半瞬を経て魔法少女が知覚を復活させた時、視界一面に大空が広がっていた。彼女は自分自身が上空に弾き飛ばされていることに気付いた。
 いきなり目の前に男が現れ、衝撃が走る。拳が、腹にめり込んでいた。
「ごふっ!!」
 打ち下ろしをまともに喰らってそのまま急降下。
「…超変身!」
 落下途中で紫に変身。着地こそできなかったものの、耐久力は向上しているのでダメージはいくらか低減できた。
 仰向けになった状態から立ち上がらねばならない。そう思った刹那。
 数え切れないほどの魔力弾に囲まれていた。
「凄いな。そこまで完璧な形態変化ができるんだ」
(まずい…!)
 玉石が光る。一瞬で多くの魔力弾を展開する。
 無数の激突。
 探知能力だけを頼りに弾丸を同時に遠隔操作するが、数で圧されている。
 やがて、撃ち漏らした魔力弾が殺到した。
「キャアアアッツ!!!!」
 全身を滅多打ちにされ、倒れ伏した。紫の戦闘衣装の所々が破け、瑞々しい肌が露出している。
「確かにいい腕だけど、まあこんなものか」
 ゆっくりと近づいていき。傍に立ち、傲然と見下ろす。
「悪いけど、君には部下を多く殺されてるからね。観念して……」
 金属音と軽い衝撃で言葉が止まった。ぐったりしていたはずの魔法少女が起き上がり、剣を男のベルトに突き立てていたのだ。
 二つに割れ、砕けるバックル。
 男の変身が解けた。
「大したものだよ……まだ戦う気なんだ。不屈ってやつだね」
「貴様だけは……貴様だけは……!」
 よろめきながらも立ち上がる少女に男は感嘆を隠さなかった。同時に、憐憫を含んだ目で語りかける。
「君に……ひとつ頼みがあるんだが。私の部下になってもらえないだろうか」
「ふざけるなぁっ!!」
 憎しみの色は消えていない。むしろ、この発言を受けて煽られた感さえあった。
 斬りかかる。しかし、容易くかわされ逆に叩きのめされた。
『主よ、退いてください、相手が悪すぎます!撤退は決して恥ではありませぬぞ!』
「うるさい黙れ!こいつさえ倒せば、魔物どもは……!」
 完全に冷静さを失っている。
 再び斬撃。男は、素手で受け止めた。
「聞いてくれないか。君みたいな使い手を失うのは惜しい。私の部下でも君より強い奴は数えるほどしかいないんだ」
「魔物が何を言うかっ!誰が人殺しに手を貸すと…」
「人間と戦うのが嫌なら、私に従わない魔物の討伐だけやってくれてもいい。お願いできないものだろうか」
「断る!」
 異例ともいえる要請だったが、少女は聞く耳を持たなかった。男は悲しそうに数回首を振ると、やがて意を決したように口を開いた。
「死を選ぶ、というのか。わかった」
 一度目を閉じ、開く。その瞳は赤く輝いている。
「この姿になったら容赦はできない。悪いけど、苦しんで死んでもらうことになる」
 彼の身体が内側から膨れ上がる。
 歯は牙となり、皮膚は鱗となっていく。
 少女が見上げるような体格。サイズ的には先日戦った重量級の魔物と同等。
 しかし発する魔力は桁外れのものだ。
 やがてそこに現れたのは、竜とも呼べる、異形の魔物だった。

「な……」
 さしもの魔法少女も絶句する。格が違いすぎるのだ。
 先刻の変身した姿が遊びに思えるくらい、その竜人は圧倒的だった。
<グルルルルル……>
 喉を鳴らし、そして。
<ゴアアアアアアアアアアア!!!!!!>
 咆哮と共にブレスが吐き出された。
 障壁を展開して防ごうとするが、堪えきれず障壁ごと吹き飛ぶ。
「…くそッ!」
 片膝突いて立ち上がろうとした瞬間、尻尾に薙ぎ払われた。また数メートル飛ばされる。
「げふっ…負けない、負けるものかぁっ……!!」
『おやめ下さい我が主、どうか撤退を…!!』
 だが、勝つどころか、逃げられない相手であることはわかっていた。
 少女の視界が涙で滲み始めたが、彼女は立ち上がる。
「許さない、許さ……」
 ドン、という地響きで声が途切れる。
 竜人は体当たりを食らわせ、そのまま少女を押し倒したのだ。
 大鎌が手を離れ、すっ飛んでいく。
<グルルハァァァァ……>
 華奢な身体をがっちりと左手で掴んでいる。
 吐息を浴びせた。生臭さに顔をしかめる。
 ぐぱっと大きな口が開き、蛇のような舌を伸ばした。張りのある頬を一度舐め上げ、そして美味そうに何度も嘗め回す。
「この……放せ、ばけもの……!」
 身を捩じらせて逃れようとするが、竜人の腕はビクともしない。
 竜人は少女の抵抗など意に介さずひとしきり瑞々しい肌を堪能し、やがて下半身に興味を移した。
 ミニスカートが少しずり上がり、白い下着が見えている。
 無造作に破り捨てた。
「やめろ、下劣…な……」
 何をされるかわかりすぎるほどわかってしまう。竜人の股間に目をやり、絶句した。
 その物も、泣きそうなくらい化物だったのだ。おまけに表面は鱗に覆われている。
(……冗談、入るわけ、ないでしょ)
 奥歯がかちかちと鳴りそうだ。蒼白になりそうなのを必死で堪える少女の膣口に、肉の凶器があてがわれる。
 男性経験など無い上、魔法少女であるとはいえ彼女の体格は高校一年生のものでしかない。
 そして。
「……ひぐっ…あがああがああああああああ!!!!!!!」
 無遠慮に、容易く、濡れてもおらず入るはずもない胎内に、無理矢理抉り込まれた。

 無我夢中で暴れて抵抗するも、身体を掴んでいる左手はやはり動かない。
 どずん、と強引に最奥まで肉槍が貫通した。血が滲んでいるのは処女膜を無惨に破られたからか、膣口が裂けてしまったからか。
 下腹部は巨根の形に膨れ上がっている。
 竜人は左手に少し力を込めると、ずずず、と少女の身体を自分に押し付け始める。
「あがが、や゛め゛、これ以上入ら゛」
 ぼごん、と音がした。子宮口をこじ開け、子宮壁に先端が激突したのだ。
 お腹の膨らみが一段上に広がっている。
「はオごあがああ゛あああ゛ああ!!!!!」
 ぶるぶると全身が痙攣する。冷や汗が止まらない。
 女として産まれてきたことを後悔しそうな苦痛の嵐だったが、これがまだ始まったばかりということに彼女は気付いていなかった。
 ずぐぐぐ、と引き抜かれていく。
「あおああああああああ……!!??」
 張り出したカリが引っかかり、子宮ごと引き抜かれそうな感覚。膣壁が鱗に抉られる。
 その尋常でない激痛と圧迫感が降りきったところで。
 どずん。
「ぐへっ……!」
 肉棒の表面に無数にある鱗が引っかかり苦痛を倍加させる。
 肺腑から空気を押し出すような声しか出なかった。
 そしてまた膣口付近まで引き抜き。
「ぐえあぁぁあおああっ……!」
 子宮内まで叩きつける。
「おっご……!」
 衝撃が全身に走り、折れそうなほど背中が仰け反る。思考は苦痛で停止し、目には何も見えていない。
 普通の人間なら既に失神するか死んでいただろう。しかし、不幸という他ないが、彼女は魔法少女だった。
 人並みはずれた魔力を持つ彼女は、簡単には死ねないのだ。
「許さない……私は、貴様達魔物を全部殺すんだ…許さない……」
 串刺しにされているのにもかかわらず、少女は敵を睨んでいた。
 今の彼女の意識を繋ぎとめているのは憎悪ただ一つ。
 だが、それ故に苦痛の時間がより長くなってしまう。
 殺人的なストロークがはじまった。
 悲鳴はすぐに声とも息ともつかないモノに変わっている。
 極太の凶器の動きにあわせて、下腹部の膨らみも上下している。
 角度をつけ、一際強く突き上げてみた。
「ぐぉあおおおああああ゛あ゛あ゛あ゛あ!?」
 思いっきり仰け反ってしまったことにより、子宮の中にある先端が腹に押し付けられ、ボコンとコブのように浮き上がる。
 お腹を内側から破られそうな苦痛に意識が飛びかけた。
 だが、竜人は気絶させまいと上下運動を激しくさせる。
「ぐぇっ!げおっ!ひぎっ!ぐぎゃうっ!あがっ!ぎゃひぃっ!」
 その動きが早まってきた。
 比例して激痛が増し、魔法少女には、それが何を意味するか考えることもできない。
 やがて。
 どずぶっ!!!
「がっ…………!!」
 目を見開き大きく口を開け、痙攣する。
 壊す勢いで叩き付けられ、骨盤がミシミシを悲鳴をあげる。
 子宮壁に押し付けられた亀頭が膨れ、はじけた。
「あがああああ!!??熱い、熱いぃぃぃぃぃ!!!やめろ、出すなあひぃぃぃぃぃ!!!!!!」
 灼熱の白濁液が容赦なく吐き出された。
 その竜人の発したものは、比喩ではなく本当に熱い。子宮が、膣内が火傷しそうな感覚に少女は死の予感さえ感じている。
 底なしの射精は留まる事を知らず、その間、少女は呻き声をあげながら断続的にビクンビクンと震えるだけだった。
 永遠とも思えた放出が止まった時。
「ころしてやる……ゆるさない……ころしてやる……ゆるさない……」
 焦点のあってない瞳の魔法少女は、うわ言のように呪詛の言葉を繰り返していた。
 未だ心の折れていない餌に喜んだか、竜人はまた律動を再開する。

 とうに日は落ち、月明かりだけが両者を照らしていた。
 凌辱というより暴力そのものの行為はまだ続いている。
 足元は零れ落ちた汚濁液で白い水溜りのようになっていた。
 揺さぶられる魔法少女は呻き声しか発していない。
 時折、思い出したように憎悪の言葉のカケラが口をつくだけだ。
<グオオオオオオ!!!!>
 歓喜の雄叫びと共に、何度目かもわからない放出がはじまった。
「……ゆる………さない……きさ…ま………だけ……は……」
 言葉とは裏腹に苦痛の表情さえもなくなった獲物に飽きたのか、竜人はもう一つ責めを加えた。
「おっぶ……」
 少女の唇に舌をねじ込む。口づけというより、貪るような扱い。
 そして、少女の口を大きく開けさせ、
<ゴオオオオオオ!>
 殺してしまわないよう思いっきり温度と勢いを殺したブレスを、喉奥へ撃ち込んだ。
「はごお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!???」
 可能な限り弱くしてあるとはいえ、体内へ直接ブレスを吐き込まれるなど、戦闘では有り得ることではない。
 朦朧とした意識は強制的に引き戻され、身体の内部から激痛が知覚された。
「あぎぃぃあが、が、あ゛、ああ゛あああ゛ああ!!!!」
 胸をかきむしろうにも両腕ごとがっちり押さえ込まれていて身動きは取れない。
 ただ、叫び声をあげて身をよじらせるしかなかった。
「ころ、殺してや…る…!許さない……貴様達魔物だけはがぁっ!!!??」
 罵声は最後まで続かなかった。竜人が再び動き始めたからだ。
 白濁液や血液でパンパンに満たされた胎内を掻き回す。
 少女の悲鳴が断続的に続いた。

 そして。
 夜が明ける頃。
「…………きさ……ま………………ゅる…………さ……なぃ……………」
 魔法少女の鼓動は今にも止まりそうなほど弱くなっている。
 それでもまだ憎しみの言葉だけを紡ごうとしているが、既に意識は無いも同然だった。
 全身に力はなく、ぐったりしている。
 瞳は、何も映していない。
 ごりゅっ!!
「……っ……」
 最後の一突きを子宮に受け、
 一度だけ身体を痙攣させ、赤の魔法少女の鼓動は停止した。

「本当に大したものだ。最後まで心が折れなかった……」
 魔法少女を凌殺し、獣欲を満たしたことで人間体に戻った男は、哀れみを滲ませた視線を少女の亡骸に向けている。
 白い水溜りに浸かっている少女の膣口はぱっくりと開いたままで、トロトロと汚濁液と血の混合物が流れ出していた。
「本気で部下になって欲しかったんだけどな……王の宿命とはいえ、あまりあの姿にはなりたくないものだ……」
 たんっ、と飛び上がり、そのまま飛び去っていった。
 ややあって、主を失った大鎌の玉石が光を放つ。
 ひとつの輝く球体が浮かび上がり、魔法少女の骸に吸い込まれていく。
 同時に、玉石が四つに割れた。
 魔法少女の身体が光に包まれる。
 少しずつ傷が癒え、ピクリと指先が動く。
 少女は意識を取り戻して立ち上がり、相棒の欠片を拾い集めた。
 その石の破片をぎゅっと握り締める。
 自らの存在と引き換えに、主を蘇生させた契約器。
 悔恨と復讐に取り憑かれた赤の魔法少女は、最後の戦いに赴く。


  ━To Be Continued━