「ん……ココは、一体?」
ミヤコが眼を覚ました場所は、図書館だった。
彼女は市の図書館で、古本市で買った洋書を読んでいる最中に睡魔が襲い、
そのまま机に突っ伏して寝ていたのだ。
(自宅では扇風機が壊れているため、とりあえず涼しい図書館に持ってきていた。
丁度、図書館から借りている小説もあり)
が、目覚めたソコは、いつもの図書館では無かった。
周囲に並ぶ棚は、スチールの棚では無く、木で出来た棚。
そこに並ぶは、初めて見る言語で書かれた分厚い書物と巻物。
埃臭く、窓から入る環境光が、僅かに本を薄暗く照らす場所だった。
「あっれー、確か、この本を読んでたら、急に眠くなって寝ちゃって……」
身体を起こし、黒いロングヘアーを手櫛で整え、手に持っている、貴石がはめられた洋書を見る。
タイトルは「魔法少女に大切なこと」。
「夢よね……多分」
とりあえず、部屋から出てみる事にすると、更に見慣れぬ景色が広がる。
ひんやりとした、少しでこぼこな石造りの廊下と、鉄格子の様な窓。
そして外には、町……そう、御伽話の世界で良く見るような、
ヨーロッパ調の建築で彩られた、まるで城下町と言わんばかりの風景が眼下に広がっている。
「ココはもしかして……お城?」
ミヤコは本の虫とも言われるほど本、特に小説を読んでおり、
その断片知識を寄り集めて、一つの回答を導き出したのだ。
「……いや、そんな訳は無いわよね、多分。第一お城なら、甲冑騎士とか警備してる筈だし」
ふと、廊下の角の方から足音がする。
ガチャン、ガチャン、と、足音と言うには重すぎる音を響かせながら。
「……えー、本当にいそうだよ」
と、とりあえず身を隠す場所を、と思った瞬間、角から一人の女性……
いや、女性騎士が現れる。兜こそつけてはいないが、甲冑を着たヨーロッパ系白人だ。
「ん?お前、何者だ!貴様、図書館で何をしていた!」
女性騎士は、明らかに、ミヤコが今まで聞いたこともない言語で喋っていた。
が、何故かミヤコはその言語を聞き取ることができた。脳内で日本語に変換されるかの様に。
しかし、こんな緊急事態にソコまで頭が回ることも無く。
「あ、は、いや、ごめんなさい!気が付いたらココに……」
「な、何!?頭から声が響く……珍妙な!さては貴様も魔法少女だな!覚悟!」
と言うと、懐から銀に輝く剣を抜く。そのモーションとともに、騎士の金髪がふわりと浮く。
明らかに鋭く変わった眼光に「ひぃっ」と声を上げながらも、
反射的に彼女が居ない方向に向かって廊下を駆ける。
「魔法少女だ!魔法少女が現れたぞ!総員、捕獲もしくは殺害せよ!」
叫ぶ女性騎士を尻目に、逃げまどうミヤコ。
「な、なんで、こうなるのー!?」
廊下の角を2回ほど曲がった先、その5mほど前、目前に、メイドが両手を広げて構えている。
ミヤコも急には止まれず、メイドと正面からぶつかってしまう。
メイドはその瞬間を見逃さなかったかの様に、ミヤコの身体を抱き、隣の部屋へ強引に連れ込む。
「つ、捕まった!?」
更にメイドは顔色一つ変えず、彼女をクローゼットの中に押し込む。
「……へ?」
訳の解らない顔をするミヤコに、メイドは自分の唇に指を当て、糸で縫うジェスチャーをする。
考えるミヤコ。まもなく、「お口チャック」と同義語、同義ジェスチャーだと言うことに気付く。
結局ミヤコは、暫くメイドの言うとおりにする事にした。小さな腕で、本を抱きかかえながら。
5分後に騎士達が部屋――どうやら誰かの自室か、女物が掛かっている事から
恐らく城主の妻か娘だろう――を訪れたが、彼女が言い訳を付けて追い返してくれたようだ。
更に5分後くらい経つと、先程の様にドタドタとした重い足音が聞こえなくなった。
「怪我は無い?」
そう言いつつ、クローゼットを開ける、茶色い肌をした白髪のメイド。歳は同い年、18(-3)歳近辺か。
女のミヤコから見ても、モデルさんみたいで綺麗と言う印象を残す風体だ。
「あ、どうも有難うございます。お陰で無事でしたー」
「……頭の方から声が?驚いた、そんな魔法が使えるなんてね。この国では魔法が使える者は
全員処刑されるから、気を付けて。かく言う私も魔法少女だけど、事情があってココで働いてる」
「いや、魔法だなんてそんな、私も頭の中から日本語で言葉が聞こえてきて、何がなにやら……」
と、ふと持っていた本に眼をやる。
「……この本のお陰?魔法が書いてあるとか何とかって言う妖しい本だったから買ってみたけど」
メイドは本を一瞥すると、驚いたかの様に口に手をやる。
「この本ってもしや……我々の"森"から盗られた、魔法使いの書?取り返してくれたのね!?」
「え……へ!?な、何の話です!?」
とりあえず頭が混乱してきたので、ミヤコはいままで起きた経緯を話した。
「……信じがたいけど、今の話を統合するに」
真剣な表情をして、メイドが語り出す。
「この本は、あの部屋から抜け出すために、貴女を召喚したのかもね」
「どう統合すればそんな話になるんですかー。私なんて、何の取り柄もない唯の女子高生ですよ、唯の」
「唯の、ばっかり強調しない。そもそも貴女、魔法使えるじゃない」
「つ、使えてませんよー!?」
「ほら使ってる。……あーそんなまたチンプンカンプンな顔をしないの。良い?
貴女が今使っている魔法は、『リードブレンランゲージ』『スピークブレンランゲージ』と呼ばれる
結構高位な持続性精神魔法なの。意味は何となく解るわね、説明は面倒だからしないよ」
「……こんな感じで受け答えしてること事態が魔法なのですね、理解しました」
「まあ、"本"はもっと別の理由で貴女を呼んだのかも知れないけど……ああそうだ、実証してみようか」
「じ、実証?」
「"貴女が魔法を使える"と言う事実についての実証よ。ねえ、その本、
適当にページをめくって適当に何かの文節を読み上げてみて」
怪訝な顔を浮かべるミヤコ。
「いや、読んでもなんだか全然解らなかったんですよ。英語とローマ字で書かれててるけど、
英語は冒頭の部分だけ書かれてて、何だか魔法少女の実在とかなんだとか……
後半はアルファベットの羅列で何だか解らなかったけど、後者の事かな?」
「英語?アルファベット?悪いけど、何の事だか聞き取れなかった。まあ、取りあえず何か喋って?」
「うーん、じゃあ……」
と、本を開くと、本の冒頭の部分、アルファベットの羅列が並ぶページが眼に飛び込んで来る。
その内から、適当にアルファベット読みで唱えてみる。
「……IWU FSAFE、IWU IBASTMASPM…?」
「う、はぁ、はぁぁん!」
途端、メイドの顔が紅潮し、喘ぎ声にも似たうめきをあげる。
「ど、どうかされました!?」
「そ、そのま、魔法はね、んふぅっ!ん……精神魔法の、ふうぅっ、一種で……
ヒトを突然発情、させる……魔法と……あうっ!おっぱい、おっぱいが……!」
と、途端にエプロンを外し、背中のボタンも外し、胸をあらわにする。
小麦色……と呼ぶには少し黒い肌に浮かぶふくよかな乳房の先には、
これまた柔らかそうで、咥えやすそうと思うほどに盛り上がった乳首が見て取れる。
「お、御願い……乳首、ちくび、さわって、いじって……!」
「え、あ!?あ、はい!」と、思わず要求を飲むミヤコ。
私がこのメイドさんをこんな風にしてしまった、と言う自責の念もある故からか。
たわわな乳房を優しくさすり、乳首の部分をじらす様に周囲を周到に撫でる。
海外の恋愛系ハードロマンス小説の知識がココで生きるとは思ってもみなかった。
「はう、うくうっ!?ああっ、御願い、さきを、さきっぽを、乳首を……!」
「あ、はいぃ」と良いながら、ミヤコはコリッとした乳首に指を当て、弄る。
「もう一つの、あうっ、魔法は……乳房が大きくなり、母乳を、ふあああん……!」
「な、なんでそんな魔法が書いてあるんですかー」
少し自分の腰をメイドから離しながら、ミヤコは尋ねる。
それでも乳首を指で挟んだり、弄ることを辞めない辺り、結構ノリノリ。
「我々、魔法少女、は、生殖機能、衰えてるから……はうっ!
魔法で、それを、えとくしないと、子供産めないし、そだてられ……あ、かはあぁっ!」
メイドは腰を精一杯反らせ、乳房を斜め上に突き出す様な姿になる。
「もうだめ、でちゃう、でちゃう……ふうっ!ん、んんんっ!」
刹那、乳首から勢いよく乳白色の液体が、ぷしゅうう、と噴出する。
一度噴出すると、もう勢いは無くなったのか、乳首から乳房を伝って、母乳が流れ出る。
「うわ、す、すごいぃ……ぴゅーって出ちゃった……」と、
ミヤコは眼を白黒させて母乳のシャワーを眺めている。
「は、はあぁ、もうダメ、だめぇ……我慢できないぃ!貴女が、悪いんだから……」
メイドは早口で、何かの呪文を詠唱する。
すると彼女の足下から、青紫色の、何か……木の根の様ななが細いモノが飛び出し、
目の前で驚いているミヤコの衣服を器用に脱がせる。
「い、いや、いやぁあああ!?」
すぐに股間に手をあて、隠すミヤコ。しかし、彼女は"ソレ"を隠しようが無かった。
「え、ソレ、まさか……」
ミヤコが"唯の"女子高生と強調していた理由。
ミヤコがメイドから腰を浮かしていた理由。
彼女は勃起させていたのだ。普通のオンナノコなら、在るはずも無い部位を。
「や、みないで、みないでぇ……」
「……何と言うこと、"本"は、それ故に貴女を召喚したって事……!?」
驚くメイドは触手を操り、ミヤコの手足を縛り、宙に浮かせるカタチにして、その股間をあらわにさせた。
するやいなや、メイドは突然、彼女のペニスに口づけを交わす。
「は、はううんっ!?」
ミヤコは腰を大きくのけぞらせる。あまりもの気持ちよさに。
が、胴にも触手が巻き付き、腰すら動かせない状況になる。
「や、な、なにするのぉ……」
「試させてもらうの、いや、試させて頂きます。貴女が、伝説の"白い魔法少女"に相応しい存在かを」
「へ、へぇ!?……う、うああん!」
舌先で鈴口を弄るメイド。先程の仕返しとばかりに、執拗に責める。
「や、やめて、メイドさん……!」
「リターシャとお呼び下さい」
「や、やめて、リターシャさん……!」
「辞めません」
「お、鬼ー!あ、ああはああんっ!?」
メイド改めリターシャは目前の逸物を口の奧まで咥え、ディープスロートを始める。
「や、あ、すごい、こんな、こんなのって、はじめてぇえ!?」
突然、下腹部に強い違和感を覚える。マグマが上がってくるかのような熱い、熱い何かが、
脊髄を通じて、女陰茎にこみ上げてくる。
「や、だめ、やだ、やあぁ!きちゃ、きちゃう、きちゃう!何かくる、くるぅぅう!」
思わず腰が、リターシャの口腔を突くように、前へ跳ね上がる。
陰茎から、どくんっ、どくんっ!と強い脈動が舌に伝わると、リターシャの口内に、濃厚な精液が満ちる。
「す、凄い、凄い量……!しかも、こんな味、こんなニオイ、初めて……やはり、貴女は……!」
「やだ、まだ、でちゃう、でてる、ふあああああああっ!」
リターシャの中も流石にこれ以上は受け止められず、思わず顔を引き、咥えていたものを出す。
唾液だらけの陰茎は留まることを知らず、勢いよく白い乳液を飛ばし続ける。
その乳液はリターシャの顔、身体、床の上、触手、果ては例の本でさえも白く染め上げる。
すると、乳液を受けた本が突然輝き出す。それに呼応するかの様に、ミヤコの精液も光り出す。
更に本から、重厚な声で、"呪文"が発せられる。
『IWU YCMT,SEMEN!』
「あ、はああ、はああっ、リターシャ、さんっ!?これ、コレって……!?」
「そ、そんな事訊かれても……?私にも、何が何だか……!?」
彼女を縛り上げていた触手は、突然その身を離す。が、ミヤコの身体は依然宙に浮いたままだ。
その光る液体は、彼女の身体、首から下を覆い尽くし、より強い輝きを放つ。
輝きを放った後のソレは、彼女を包む白いワンピース状の水着、フリルがついたりと、
フェミニンな水着に変わり、手足もロンググローブとオーバーニーソックスに変化する。
が、その水着からは、似合わぬ陰茎が、腰の超ミニスカートとも言えないフリフリをたくしあげている。
「こ、これって……」
空中を未だ漂うミヤコは、自分の姿格好を見て、唖然とする。特にちんこ。
さきほどまで脳神経を圧迫していた程の性感ですら急激に覚ます勢いで、驚いている。
無論、ここで驚いたはミヤコだけではない。
リターシャも、その姿を眼に焼け付かせんとばかり、瞳孔を見開いている。特にちんこ。
「こ、これぞまさしく……迫害を受ける我々魔法少女達を、苦しみの無い、約束の地へと導びいてくれる、
伝説に聞きし、"白い魔法少女"、その御身が……目前に……ッ!」
「え、え…。えー。ええええええええ!?」
リターシャは突然ミヤコの前で片膝を付き、声を荒げる。
「こ、これはこれは今までの御無礼、お赦し下さいまセッ!さあ、そのご、御勇姿を、
友へ、同胞へ、御披露下さいます様!ささ、こんな所で戯れている場合では無い!
吾等魔法少女が待つ"魔法の森"へ、いざご案内致します!!」
リターシャは再び呪文を唱えると、地面から先程の触手が、株?本体ごと現れ、二人を背に乗せる。
触手は彼女達をドーム状に覆い、窓に向かって急加速する。
「突撃ー!」
「えーーーーーーーーーー!?」
勢いよく散らばる窓硝子と木枠。
そして、空を目指し、飛んでいく触手。複数の両手(?)を広げ、翼の様な形を作り出し、羽ばたく。
触手のスキマから後ろを見ると、先程の女性騎士が「くっ……魔法少女めがっ!」とタンカを切っていた。
去りゆく異界の城を見下ろし、彼女は、ミヤコは思う。
「そんな、そ、そんな……いやだ、嫌だ……!」
さて、本日のお話は此処まで。
不思議な運命と不思議な股間を持ち合わせたミヤコはその後、
"約束の地"へと魔法少女達を導く、"白い魔法少女"へと立派に成長してゆくのですが、
それはまた、別のお話にて。
「精液で変身するヒロインなんて嫌だーーーーーーーーー!」
「……私なんて触手を纏って変身する魔法少女ですよ」
「そ……それも嫌かも」
「私は触手なので地属性、ミヤコ様は精液で変身するので水属性ですわ」
「……お水みたいで嫌だーーーーーーー!」
「お後が宜しいようで」
更に追記すると、"約束の地"ってのは結局ミヤコの世界に連れ帰ったって事で、
ミヤコの精を受けた魔法少女が生んじゃったりしちゃったから、
現代-近未来において魔法少女が日本各地で現れるようになったってのは、
更に別の話だったりそもそも話を作る気がなかったり。