魔界を支配する三強の一人が竜魔王である。
この百年、支配地域を恙無く治めている竜魔王だが、最近残る2人、妖魔王と暴魔王の動向がやけに気にかかっる。
魔界が今の三竦み状態となって幾星霜。神々が滅び、あるいは見捨てて去ったこの3次元世界にあって、各世界の長たちは人間界を守り、あるいは虎視眈々と狙っていた。
人間界の住人の持つ精的エネルギーは各世界の住人にとって必要不可欠な資源である。
しかし人間界はあまりに脆弱な世界だ。そこを壊してしまっては元も子もない。
そこで人間界を侵略、あるいは守るに当たって各世界の重鎮らはある協定を結んだ。戦いをするにも最低限のルールは必要だ。
すなわちそれが人間界保護条約である。
みだりに人間界に数で攻め入り、人間界のバランスを崩さないようにするための処置。
人間という存在が持つ魂、霊力、魔力に加え、労働力はもちろん精子や卵子、髪の毛や血液に至るまで各世界が存続するに必要不可欠な資源だ。人間は殖え易いが寿命が極端に短く、とても死に易い。
下手に乱獲したりすればあっと言う間に人間は滅んでしまう。そうなっては元も子もない。
世界を統治する者にとって支配や侵略は楽しいゲームの一環ではあるが、余興でこれらを失う訳にはいかない。人間は出来るだけ殺さず生かして有効活用しなければならないのだ。
そのため人間界に滞在する異世界の者は各界にて人員を制限し、これを越えることは罷りならないとされた。
よってこれを越える、または無断で人間界に侵入した者には問答無用で制裁を加えることになっている。
ちなみに余談だがこの項目には但し書きがあり、人間界にて誕生した者、人間と結ばれた異種族は申請にもよるが人間界の者と認められ、この数に含まれないとするという追加項目が存在する。
さてこれらの保護協定により、これまで人間界は辛うじて天界や魔界を始めとする様々な異世界からの侵略から表向きは守られてきた。
時代と共に新たなる異世界の侵略者が次々と登場しては天使や魔族たちは敵対、あるいは協力し合い、人間世界を守るために人知れず戦ってきた。
しかし自ら生み出したルールの為に戦力が制限されるのもまたしかり。
そこで彼らは人間の中に自らの尖兵ともいうべき存在を造り上げた。
それが魔法少女だ。
純真無垢な乙女だからこそ、魔界や天界、様々な異世界からの異能の力を受け入れ、自らを戦士として覚醒させることが出来る。そうした人間――少女たち。
それらの戦いが表社会に表面化し、大きな事件や戦争に発展した例も少なくない。
これまで人間界では多くの国が滅び、多くの者が死に、しかしそれでも究極の破滅だけは回避してきた。全ては魔法少女たちの活躍の賜物だ。
人間は各世界の思惑通り増え続け、現代へと至っている。
そして魔法少女もまたしかり――
激しい炎が夜の町を彩る。
「魔法戦士、ジャスティス★ブレイバーっ!」
しゃきーん。
車の屋根で格好よくポーズを決めるのは髪の毛をピンピンにおっ立てたパンク風の年若い少女だ。
青髪はまるで刺のように逆立ち、前髪の一部を金色に染めている。
コバルトブルーのシャツ。同じ色のミニスカートを履き、その下には黒のスパッツが膝上までぴっちりと太股を覆っている。
胸と腰、それに腕や足にはスケボーかモトクロスの選手の様なレガースに白のプロテクター。
手にも頑丈な装甲の着いた手袋を嵌めており、これで殴られるとさぞ痛いことだろう。
少女の表情は全く分からない。なぜなら顔には大きな☆型のサングラスが掛かっており、表情が全く読めないからだ。
不思議なことにこのサングラス、耳に掛けていないのにも関わらず顔面にピタリと張り付いる。どれだけ動いても落ちやしない。
少女は手に持った光剣をブンブンと振り回すと目標を見定めた。
ターゲットであるサラリーマン風の禿げオヤジは腰を抜かしてアスファルトの上にだらしなく座り込み、呆然と少女を見上げている。
今がチャンスだ!
「おのれ痴漢、美代ちゃんの仇、覚悟しろ!」
正義に燃える少女の叫びが夜の町にこだまする。
一気に間合いを詰める魔法少女――魔法戦士ジャスティスブレイバーは光剣を大上段に構え、勢いよく振り下ろした。
「受けろ天誅ジャッジメントジャスティィィスぅぅーうっ!?」
ガキン!
光剣がオヤジの脳天、わずか1cmの所で防がれた。
杖だ。金属のようなプラスチックのような不思議な光沢の杖が光剣の行く手を阻んでいる。
先端には大きなハートマークに白い翼。杖の左右に2枚の羽根が大きく翼を広げた乙女チックなデザイン。
「邪魔するなっ!」
ジャスティスが力を込めるも杖にバチンと弾かれた。物凄い膂力だ。
弾かれたジャスティスは後方に飛び下がって間合いを取る。
「誰だっ!?」
誰何の台詞が飛んだのはオヤジの前に一人の少女が立っていたから。
白いフリフリのエプロンドレス、ふんわり丸い肩口には赤いリボンを巻き、手には白い手袋。
ミニスカートの下から伸びるすらりと長い脚にはこれまた白いニーソックス。
白い肌の美少女。髪の色は亜麻色で、肩まで延ばしたセミロング。頭には白い丸い大きなベレー帽を被っている。
その両サイドに可愛い小さな白い羽根がピョコピョコと動く。
全身を白い衣装で包み、赤いローパンプスと後頭部を彩る大きな赤いリボン、
それに両肩の小さな赤いリボンと赤いネクタイがアクセントとなっていて実に映える。ロリ可愛い美少女だった。
彼女が手に持つ長い杖は先程オヤジを庇ったものだ。
「やり過ぎよ、ジャスティスブレイバー。あなた、一般人を殺すつもり?」
亜麻色の髪の少女は小首を傾げて呟いた。
外見にふさわしい、可愛らしい美しい声だった。シャープで透き通った声色。
「誰、君?」
ジャスティスブレイバーは光剣を構えた。
「あたし? あたしは魔法少女ハミングナスカ」
少女はにこりと微笑んだ。
「魔法少女を狩るモノ、よ♪」
魔法戦士ジャスティスブレイバーは2日前に魔法少女として覚醒した。
普通の小学6年生だった新庄明日香はその日、ショッキングな出来事を母親から聞かされた。
このところしばらく学校を休んでいる友人の赤木美代ちゃん、彼女が数日前に電車の中で痴漢に遭い、ひどい性的悪戯をされてしまったと言うのだ。
許せない。痴漢も、のぞき魔も、強姦魔も、へんたいさんも全部全部全部許さないんだから!
怒りのエネルギーが頂点に達し、魔法少女として覚醒したジャスティスブレイバーは正義の天誅を繰り広げた。
この2日間で被害者の数はおよそ30名。痴漢、トイレののぞき、車内セックスをしていた変態カップルなどなど。ちなみに12人は全く関係の無い人間をうっかり攻撃してしまった冤罪である。
しかし魔法少女は反省などしない。正義の遂行あるのみである。
そして今夜、とうとう美代ちゃんを悲しみのドン地に陥れた元凶の痴漢を発見した。魔法少女には分かるのだ。
「どけっ! そいつは僕の獲物だ!」
ジャスティスブレイバーはハミングナスカに襲いかかった。
体格はハミングナスカの方が一回り小さい。明日香は12歳、ハミングナスカの少女は10歳といったところか。
魔力ブースト、全力でぶつかりに行く。
ガキンッ!
再び光剣と魔法杖が交錯する。ジャスティスの体当たりを真正面から受け止めるハミングナスカ。
「あのねぇ…この人はOL専門の痴漢なの。あなたが追っている少女専門の痴漢はとっくにあなたがぶちのめしてるわよっ!」
「ウソを吐くなっ!」
「ウソじゃ無いわよっ」
ギリギリギリとお互いの全力が光剣と魔法杖に込められる。
力はほぼ互角。
「あ〜ダメダメ。ナスカ、もうその子ダメみたいですよぉ」
若い女の子の声が響いた。
禿げオヤジの襟首を掴み、戦いの場から引き離そうとする緑の髪の少女が叫んでいる。紺のセーラー服を着た高校生くらいの女の子だ。
「…あーもぅ! 面倒臭いったらありゃしないっ!」
フンと気合を入れてヤクザキック。
その蹴り一発ででジャスティスブレイバーを引き剥がすと、ナスカは杖をビシッと構えた。
「説得が無理なら、ぶっ倒すしかないわね。ユフィ援護をお願い!」
「あいさー」
緑の髪の女子高生はびしっと敬礼をするとオヤジを適当にどこかへと放り投げた。
「変身っ、ユーフィリス!」
女子高生はクルリとその場で一回転、すると白いスクール水着に黒い丈の短いマントを身に纏った姿に早変わりする。足は素足に黒いサンダル。頭には黒いツバ広のとんがり三角の帽子を被っている。
どこからどう見ても露出狂の変態魔女だ。
「ちょー天才美少女魔女っ子ユーフィリス、ただ今降臨ですぅー★」
軽やかにポーズを決めるユフィ。
「こらーアホー結界張って援護しなさいってばーっ!」
ガッチャンガッチャン、ハミングナスカは光剣を振り回すジャスティスブレイバーと激しい鍔迫り合いを演じていた。
体力では互角でも武器の性能が違い過ぎる。このままでは不利は否めない。
「おー忘れてましたぁ」
慌ててユフィは呪文を唱え、結界による戦闘フィールドを展開した。
結界さえ張ってしまえばこっちのものだ。外界への流れ弾による2次被害の心配が無くなれば、遠慮無しに遠距離魔法攻撃をブチ込める。
おまけにギャラリーに盗撮される心配も警察関係者の介入を心配する必要も無い。存分に戦えるというものだ。
こう見えてもユフィは緑の魔法世界グラドリエルの女王に使える7色の大魔法使いの一人なのだ。少々天然だが。
結界を張り終えたユフィは続けて援護攻撃に入る。
「弾けろ灼熱、踊れ雨霰となりて…」
ユフィが呪文を唱えると周囲に赤い光の玉がポツポツポツと浮かぶ。
「あっ、バカっ、その魔法はっ!」
ナスカが血相を変えて叫んだ。
「いきますよぉ炎の弾雨《バーンドシェル》!」
ズドドドドドドドド!
凄まじい爆音と共にユフィの周囲に浮かぶ数十の魔法発射体から火の玉が雨霰のように撃ち出された。
「くっ!」「ちっ!」
慌てて離れるジャスティスブレイバーとハミングナスカ。
ジャスティスは一回転してビルの壁に取り付き、そのまま壁を走って逃げる。
ハミングナスカはトンボを切って着地すると「ハミングバリア!」と叫んで魔力障壁を展開。
ズダダダダダダダダ!
ドカン!バカン!ボカン!
周辺一帯が業炎に包まれ燃え上がる。まさに地獄絵図。
「ふぁーすっきりですぅー★」
額に浮かんだ大粒の汗を拭うユフィ。
「このアホ魔女! こんな町中で広域殲滅魔法なんて何考えてんのよっ!」
「えーでも、私、回復魔法と支援魔法以外はMAP(広域殲滅魔法)攻撃しか覚えてないんですよー」
アホでしたごめんなさい。
「もういいっ! そこで呼ぶまで見てなさいっ!」
「ふぁーい」
ナスカは壁を走るジャスティスの姿を追った。
ジャスティスは靴の裏に魔法のローラースケートを生やし、高速でビルの壁面を滑り降りる。
「ハミングブレス!」
ナスカは魔法杖をやや短くして射撃モードに。狙いをつけて撃つ、撃つ。
次々に飛来する光弾を右に左に躱すジャスティス。なかなかの運動神経だ。
「褒めてる場合じゃないか、えぃっ!」
ハミングナスカは飛び上がった。
一気に接近して来たジャスティスが接近戦の間合いに飛び込んで来たのだ。
辛うじて光剣を躱す。エプロンドレスの先っちょがビリッと破かれた。
ナスカの端麗な表情にピクッと青筋が浮かぶ。
「リボン…」
ナスカはしゅるっと肩のリボンを解いた。赤く長いリボンに魔力念を込め――
「――カッターっ!」
コマンド発動。しゃきーんとリボンがくの字に凝固、思いっきり投げる。
凄まじい速さで回転するリボンが赤い円盤へと変化した。赤い一迅の旋風となってジャスティスの背後に迫るリボンカッター。
「甘いっ」ジャンプで躱すジャスティス。
「どっちが?」ハミングナスカは微笑んだ。
「なにっ?」
避けたはずの赤い円盤がジャスティスの目の前にある。回り込んだのだ。いつの間に――
「ばかなっ!?」
バキン、顔面に直撃。
サングラスが砕け散った。
「ハミングブレス!」
待った無し、ナスカは続けざまに撃つ撃つ撃つ。
「うわぁぁぁぁっ!」
光弾の直撃を受けるジャスティス。爆煙にプロテクターの破片が飛び散らばる。
「…そろそろ話を聞く気になった?」
ハミングナスカはトントンと杖で肩を叩いた。
「…まだまだ〜♪」
ジャスティスブレイバーは起き上がると顔を上げた。
化粧は濃いが表情は幼い。太く力強い眉、瞳に漲る闘志。目は爛々に燃えている。いや――酔っている。
そこには理性の光が無かった。どんよりと濁っていると言った方が近いか。
溢れんばかりの魔力が、彼女の願い力が暴走しているのだ。
「悪人は滅ぼす! 痴漢撲滅へんたい皆殺しーっ♪」
ジャスティスブレイバーはケラケラと笑った。
このまま戦いの狂気に呑み込まれたら、最悪バーサークして二度とこちら側に戻って来れなくなってしまう。
「もうっ、面倒臭い子ね。ユフィ、一気に決めるわよ、束縛魔法で援護して!」
ナスカは魔法杖を閃かせるとジャスティスとの間合いを計った。
杖の長さを今までのさらに半分にし、近接戦闘モードにする。こうなるともうバトンというより羽の生えた扇といった感じに近い。
接近戦では長杖状態では取り回しに不都合が生じることが多い――特にあの技では。
「おっけーいくよー。束縛結界魔法陣、それっ!」
空中の暗闇から突然声と共に白スク黒マントの巨乳美少女が姿を現した。
大きな胸をプルンと振るわせ、空中に光り輝く紋章を描くユフィ。
たちまち紋章が閃光の塊となって弾け、ジャスティスブレイバーの周囲に浮かび上がる。
「なにッ!?」
ガチャーン、ジャスティスの全身を搦め捉える光のチェーン。
閃光が収束すると、そこには光のチェーンに簀巻きにされた魔法少女が一丁出来上がり。
「う、うごけ…な…」
ちなみに束縛魔法には発声機能を阻害する能力がある。対象の魔法使用を抑える機能だ。
「ナスカ、ブレイクアウトまで15秒だよ!」
両手を広げ光球を懸命に制御するユフィ。魔法レジスト能力の高い魔法少女を束縛し続けるのは大魔法使いでも大変なのだ。
「分かってる!」
「13…12!」
「唸れ雷光、轟け雷迎」
ナスカは杖を翻し、コマンドワードを叫んだ。
「10…9…」
「閃く光の螺旋となりて」
眼前でクルクルクルクルとバトンを軽やかに踊るかのように振り回し、魔力をチャージ、一点に収束する。
「8…7…」
ビシッとポーズを決めるハミングナスカ。魔法発動の予備動作に時間がかかり過ぎるのがこの技の難点だ。
「駆けろ雷光閃火ハミングストライカー!」
裂帛の気合、暗闇に幼声が轟き渡る。
「6…5…」
ダッとナスカは大地を蹴った。
滑るように空中を高速でジャスティスブレイバーに向かって突進。
瞬間、漆黒の闇を雷光が閃き、収束した魔力が炸裂する。溢れ出た電光が雷鳥の姿となってハミングナスカの全身を覆う。
「4…3…」
「ぐぁぁぁあ、離…せっ! はなせぇぇぇぇっ!」
振り解こうと大暴れするジャスティスブレイバー。しかし光のチェーンは揺るがない。
「2…1…」
「うわぁぁぁぁ!」
ジャスティスは目の前に迫る巨大な雷鳥の姿に恐怖の悲鳴を上げた。
「ゼロ…ブレイクっ!」
「ブレイクっ!」
ユフィとナスカの声が合わさった瞬間、ナスカはジャスティスの寸前で切り返し、後方に飛び去った。
鳥の形をした巨大な稲妻、そのエネルギー体だけがジャスティスブレイバーに激突、炸裂。
閃光。衝撃。そして大爆発。
ズバァァァァァン!
大爆炎を背景にナスカはくるくると空中を回転し、軽やかにそして鮮やかに着地を決める。
「一撃必殺ハミング★ナスカ♪」
クルリとステップ&ターン。片手でバトンを構え、もう片方の手はVサインを真横に目許でポーズ。キメはパチリとウインクだ。
「いぇーい、グッジョブ♪」
バッチリ大爆発を背景にポーズを決めたナスカに向かってパチパチと拍手を贈る魔女ユフィ。あまりの格好良さに惚れ惚れする。
ズゴゴゴゴゴ…
ナスカが背後を振り返ると、爆煙が急速に収まろうとしていた。
ハミングストライカーによる1億ボルトの超電流圧殺攻撃で大地は黒こげ、その真っ只中に大の字になって横たわる少女の姿があった。
先程までナスカと戦っていた魔法戦士だ。
魔法少女にはすべからく身を護る魔法障壁が備わっている。その力で魔法少女は様々な属性・物理的なダメージから身の安全を保護している。
人間離れした魔族や妖魔と対等に戦える高い防御力、耐久力の秘密がここにある。
ナスカの使うハミングストライカーはこの魔法シールドを無効化し、魔力や体力をゴッソリ根こそぎ持って行く悪辣非道な技なのだ。
ジャスティスブレイバー、彼女にはもう抵抗する力も残されていないだろう。
「あ、そろそろ時間ね。頑張ってねナスカ」
魔女は曰く気にニコリと微笑むと空中に飛び去った。
たちまち夜の闇に姿を消す。
「ぐはーちかれた……」
可憐な声でおっさん臭いため息を漏らすとナスカは尻餅をついた。
ハミングストライカーはとっておきの必殺技だけに消費魔力も馬鹿にならない。
「……う、うっ…」
倒れたジャスティスブレイバーが呻き声を上げた。
一撃必殺と言うが、別に本当に殺す訳ではない。多くの特殊効果を付与してあるハミングストライカーには被対象者のHPを最低1ポイント残すよう魔法を編んである。
魔力と体力をごっそり削り取り、KOダメージを与え、おまけに電撃の麻痺効果で体はろくに動かせない、その上魔法使用もままならなくなる。
それが対魔法少女戦用攻撃魔法ハミングストライカーの特性だ。
戦闘の後のことも考え、魔法少女を叩き潰すことだけに特化した魔法攻撃。
これを喰らった魔法少女は魔力を失い、しばらく魔法が使えなくなる。おまけに強制的にMPが0になるため魔法障壁も消え、魔力感応も図りやすくなるというおまけ付き。
これほど『魔法少女狩り』を行うにふさわしい魔法はないだろう――
「よーしナスカっ、とっととやっちまえ!」
ユフィの声がするも姿がない。
慌てて周囲を探すと、爆炎魔法で炎上し、黒焦げになった車の上に緑の小鳥の姿がある。
どうやらのぞき見に戻って来たらしい。このアホ魔女め。
「簡単に言わないでよ…まったく」
ナスカはよいしょと立ち上がるとジャスティスのところまで歩み寄った。
彼女に恨みは無いが、これも任務だ仕方がない。
ナスカはジャスティスの体を肩に抱えると、手近なビルの屋上へと向かった。
「…結界を解除しておきなさいよ」
小鳥に向かってそう呟く。
「ほい−っす」
片羽根を上げ、小鳥が応じた。戦いの後始末はパートナーの大事な役目である。
エレベーターを魔法で動かし、ビルの屋上にたどり着いたナスカは改めて結界を張ると、床にジャスティスの体を横たえた。
パンク風だが近くで見ると結構可愛い女の子だ。
濃いアイシャドウのメイクが汗と涙で流れ落ち、少し自然な幼い表情が露になっている。
ナスカはジャスティスの両足を開くとスカートを捲り上げ、スパッツを露出した。
「えいっ」
残っていたもう一つの肩リボンを解き、念を込めて一振り。鋭い刃となった赤いリボンがスパッツだけを綺麗に切り裂いた。
可愛い白いパンツが露になる。
「はぁ…やっぱりやるしかないか…」
ナスカはどんよりと暗くため息を吐いた。これも任務だ仕方が無いのだ。そう念じるように自分に言い聞かせる。
ジャスティスの上半身を起こし背後に回り込む。青い髪が少しだけ焼けてチリチリになっていた。
…やり過ぎてしまっただろうか。いやいや、手加減をしていればこっちがやられていたかもしれない。
後でユフィに頼んで、魔法で回復させる際に一緒に治療して貰おう。だから…ごめんね。
服の上から胸元に触れてみる。小さいながらも柔らかい乳房の感触。
意外と成長しているようだ。ジャスティスの全身を覆っていたプロテクターは既に無く、
魔法衣はツーピースの薄着のようなものでお腹の部分から簡単に内側に手を入れることが出来る。
滑らかな肌。肌触りが良い。ブラは…着けていない。
柔らかい胸の先に固い感触…乳首だ。軽くつまんでやるとジャスティスがぴくんと反応し「うっ…」と小さく息を漏らした。
意識はまだ取り戻していない。
ナスカはジャスティスの全身を撫で回し、魔力感応を深める。
魔法少女の体は魔力が枯渇すると、それを回復しようと周囲の魔力を求め、魔力の同調が早まる。
その生態反射を応用すれば自分の魔力と相手の魔力とを同調させることが可能になる。これが魔力感応。
ナスカはさらに性的な感覚を同調させ、官能を深めることが可能なのだ。
ナスカはゆっくりとジャスティスの顔に近づいていった。
彼女の柔らかい唇にナスカの唇が触れる。甘い唇。
そのまま唇を割って舌を入れる。
反応は全く無い。気絶しているのだから当然か。
そのまま唇を吸い、唾液を舐める。ゆっくりと唇を味わいつつ胸をじかに愛撫する。
スポーツブラを着けるくらいには成長しているだろうか、まだ小ぶりな胸だが綺麗で柔らかい膨らみだ。
ナスカは手を彼女の下半身に延ばすと、パンツの内へと忍び込ませた。
下の毛は生えていない。小さな割れ目があるだけだ。
裂け目に指を伸ばし、そっと指の腹の部分でさするように割れ目をこする。
小さなお豆の感触があった。クリトリス。皮に包まれているそれを優しく揉む。
魔力感応が進んでいるせいもあるのだろう、随分と濡れていた。
…そろそろいいか。
「起きなさい、ジャスティス」
ぺしぺしと少女の頬を叩く。
「う…ううん…あれ? 僕、一体どうしたの?」
ジャスティスが目を覚ました。まだぼんやりとしているようだ。
「あたしが貴女を倒したのよ」
ナスカは優しく微笑む。
「お前…どうして?」
「これから貴女はあたしとセックスするの」
「…え?」
「知らない? 男と女がするエッチな行為。赤ちゃんを作る行為よ」
「なななな、なんで?」
「詳しい説明は後でゆっくりしてあげる。今はあなたのここにある魔石を取り出すためにどうしても必要なの」
そう言ってナスカはジャスティスのお腹を触った。
「さもないと、これが十日後には大爆発。東京が跡形も無く消えて無くなっちゃうから」
「え? えええぇーーーっ!?」
いきなりナスカの唐突な発言にぽかーんと口を開けるジャスティス。
「ぼ、僕は…どうなるの? 死んじゃうの?」
「大丈夫。助けてあげるから」
ナスカは優しくジャスティスの頬にキスをした。
「ごめんね。取り敢えず出来るだけ優しくするつもりだけど…ちょっとだけ痛いの我慢して」
そう呟くとナスカは容赦なくジャスティスに襲い掛かった。待った無し。
抵抗しようにもハミングストライカーの影響でジャスティスの全身は麻痺状態、力もろくに入らない。
魔力感応が進み、ジャスティスの魔力とナスカの魔力はほぼシンクロしている。思念一発でジャスティスの上着を消滅させるとたちまち薄い胸が露になる。
小ぶりな乳房を優しく愛撫し、ピンクの乳首に口づけする。
汗とほのかにミルクの香りがする。いい匂いだ。
「うっ…あん…はぁんっ…」パンク風の少女が喘ぐ。
「やだ…だめっ…やめてよぉ…」
ジャスティスの必死の抗議を無視し、ナスカは口の中で乳首の固まりを舌先で転がした。充血してぷっくり硬くなった乳首。すっかり感じている。
「だめっ…あん…はっ…あぁっ…」
下の方も良い感じで濡れている。びちゃびちゃだ。
逃げようとする腰を抑え、ナスカの唇がジャスティスの秘裂に近づく。
ちゅっ。じゅるじゅるじゅる。
キス。その後溢れ出る蜜を音を立てて吸う。
「うわっ…あんっ…やめっ…あぁんっ!」
初めて感じる快楽にジャスティスの歓声が上がる。
ナスカも気持ちが良い。ナスカの官能とジャスティスの官能が魔力感応で繋がっているので通常の2倍気持ち良いのだ。魔法って便利。
だがそれは逆にナスカ自身が達する速さが2倍になるということでもある。焦る。早く――イレタイ。
「もう…そろそろいいわね」
口の周りを唾液と愛液で濡らし、ナスカは立ち上がった。
そろりと自分のパンツを下ろすと――にょっきりと大きな肉棒が露になる。
「えっ…?」
快感にすっかり虚脱していたジャスティスはナスカのペニスに気づいて唖然とした。
「む、無理っ、絶対無理っ、こんなのはいんないよう!」
ハミングナスカの愛らしい外見とはうって変わって、そこだけまるで肉の凶器だ。
赤黒く巨立したペニスがビクンビクンと脈を打っている。ズル剥けの立派なオチンチン――と言うより男根と呼んだ方がふさわしい代物。
「大丈夫。たくさん濡れているから♪」
「いや、無理っ! お願いやめてっ、お母さ−んっ!」
泣き叫び抵抗するジャスティスを抑え込み、ナスカは腰を動かした。
ぬぷり。
亀頭の先端がジャスティスの濡れそぼった淫裂に触れる。そろりと動かし、膣穴の入り口をターゲットロック。
「…うっ……あっ…」
ジャスティスが悲鳴を上げた。
ナスカの腰が沈んでいく。肉棒がぐいぐいと挿し込まれ、柔肉を掻き分け、ジャスティスの中へと納まっていく。
途中で先端が引っかかった。処女膜だ。
ナスカは腰を踏ん張り一気に突破する。
ぺちん。
ナスカの腰とジャスティスの腰が触れ合った。
ナスカの肉棒の全てがジャスティスの内に納まっていた。
ギュウギュウと濡れた柔肉がナスカに絡み付いてくる。狭い。熱い。凄い締め付けだ。
ヤバイ、もう出ちゃいそう。
「こらっ、我慢っ! いくらなんでも早過ぎですぅ」
いつの間にか目の前に緑の小鳥がいた。ユフィだ。
「無茶言わないでよ…っ…」
ガクガクと腰を振るナスカ。女の子の中は気持ち良過ぎる。腰が勝手に動いちゃう。もう出ちゃいそう。
「あっ、あ…あっ…ふぁ…」
ナスカの肉棒が激しく抽送し、最初は抵抗していたジャスティスも今や大きな淫声をあげ、腰を動かしていた。
「あんっ…あうっ…あふん…」
魔力感応で分かる。処女喪失の痛みは殆ど無かった。ジャスティスの全身の官能が花開いている。
なにせ2人分の快楽が流れ込むのである、後は気持ちよくなるばかり、高みに昇りつめるばかりだ。
「うぁ…はんっ…あぁん…あんっ…」
ぐぐっと肉棒を押し込まれるとお腹の中がきゅんとする。
「いいっ…気持ちいいよぉ…」
激しくかき回されると奥にコツンコツンと当たってそれが気持ち良くてたまらない。
「出るっ、出ちゃうっ、出ちゃいそう!」
ナスカが叫んだ。股間に意識が集まってる。
膨らむ感覚。どんどん感覚が高まっていく。
「出るっ、出るっ、出ちゃうーーーっ!」
「いくっ、いくぅっ、いっちゃうーーーっ!」
2人は同時に絶叫した。
どびゅっどびゅっどぴゅっ!
ジャスティスの子宮に向かって大量の精子が放たれる。
どくんどくんどくん。
「うわぁぁぁぁぁ熱いっ、熱いよぉ!」
ジャスティスはびくんびくんと背筋を伸ばし反らし、大きく震えた。
ナスカの肉棒から発射された精が自分の中に注がれている。
初めて受ける膣内射精の感覚。気持ちイイ、熱い精子の感触、同時に涸れた体に魔力が流れ込んで来る。少女は大きな艶声を上げると、そのままがっくりと気を失った。
「はぁ…はぁ…」
しばらくジャスティスの体に抱きついて息を整えていたナスカは、ゆっくりと体を起こすと下半身を引いた。
ぬちゃっといきり立ったままの肉棒が秘所の中から抜け落ちる。
どぶどぶと大量の白濁液が蜜壷から溢れ出し、零れ落ちた。
所々赤い破瓜の証に染まっているのがちょっと痛々しい。
やがて溢れ出る精子の中に、緑に輝く宝石が一つ輝いているのを発見する。
「ほーい、エメラルドストーン回収性交…もとい成功ですぅ♪」
小鳥のユフィが精液の海に降り立つと、宝石を嬉しそうに嘴に銜えた。
これが目的の物だ。
人間界に落ちた緑の魔法世界の秘宝『エメラルドストーン』。
「ふぅー」
一仕事をやり終えたナスカはほっと胸を撫で下ろした。
これで2個目の宝石をゲット。残りは後5個だ。
「ナスカ、オチンチン出しぱなしー♪」
「しょ、しょうがないでしょ!」
クスクス笑うユフィの言葉に慌ててパンツを引き上げる。
ひゅん。
その時、闇の彼方で何かが輝いた。
「…えっ?」
今のは――剣閃?
そう思った次の瞬間、激しい振動と爆発音がナスカたちを包み込む。
ズドドドドドドドド!
「うひゃーぁ!」
爆風で吹っ飛ばされ、転がる小鳥。
これは――結界が無理矢理外側から破壊された?
まさか――バリアブレイク?
ナスカは慌てた。こんな芸当が出来る魔法少女は、相当な魔力制御能力を持った者だけだ。心当たりは――1人いた。
「えっ、うそっ!? 悠ちゃん、なんでっ、どうして!?」ナスカは叫んだ。
ビルの屋上。フェンスの上にその少女は立っていた。
大きな月を背景に、すっくと立つ少女。
長い棒のような物を手に、短い黒髪のおかっぱ頭が風に揺れる。
手に持つ長い杖がぎらりと街のイルミネーションに輝く。いや、あれは杖じゃない、魔法の長刀(なぎなた)だ。
身長はナスカよりもさらに一回り小さい。長刀が余計に長く見える。
「ゆ、悠ちゃん、どどどどうしてここに?」
動揺のあまり噛みまくるナスカ。冷や汗がタラタラと額の上を流れ落ちている。
「…ひどいですっ! 約束が違うじゃないですか、薫さん!」
おかっぱの魔法少女が上目使いで睨んだ。目許を真っ赤に腫らし大粒の涙を溜めている。
「ご、ごめんね悠ちゃん! でもこれには理由が…」
しどろもどろに答えるナスカ。思わず助けを求めにユフィを探すと、小鳥は気絶して目を回していた。本当に役に立たない魔女だ。
悠と呼ばれた黒髪のおかっぱ少女は白いレオタードに黒い燕尾服。セクシーな衣装を身に纏っている。
足は素肌に黒いエナメルの小さなパンプス。黒いシルクハットでも被ればとてもよく似合いそうな格好だ。
その姿や手に持つ武器で判る通り、彼女も魔法少女である。
長刀をギュッと握り締める手が震えていた――相当怒っているようだ。
「夕方、あんなに約束したじゃないですかっ、薫さんっ!」
魔法少女――悠は叫ぶと長刀をナスカ――薫に向けた。
「許しません…絶対にっ!」
《つづく》
魔法少女狩り【次回予告】
僕の名前は那須薫――
14歳の中学2年生。性別は男。趣味は男らしいこと全般。特技はスポーツ全般。
見た目の特徴は…小柄で顔がとても可愛らしいこと。そう、まるで女の子みたいに――
ちくしょう! 僕は魔法少女になんてなりたくなかったのにぃーっ、いやだいやだいやだーーっ!
もうこんな生活はごめんだーーっ!
次回、魔法♂少女ハミングナスカ。
第2回『僕の事情と彼女の事情』に一撃必殺ハミングナスカ♪