「「マジカライズ!」」
 絵梨華と葵が同時に変身。
「マジカル☆エリカ、優美に行くわよ」
「マジカル☆アオイ、しゃきっと行くよ」
 魔法少女に変身した二人はさっと宙に跳び。キンとレイピアと刀を打ち合わせて着地した。
「この前の続きね」
 さっと振り返り、刀を向けるアオイ。
「もう。またこのパターン」
 仕方なくレイピアを構えるエリカ。
 その横では、崖の上からドドドとダミアン軍団が駆け下りていた。先頭はもちろん全裸のダミアン。
「はわわ。ご主人様、敵が来ちゃいました」
「うん。リリムなんとかして」
 お腹を押さえながら、悪魔の姿のヤマトは痛そうに顔をしかめている。ありさに刺されたお腹の傷はそのまま。
「はい。お任せあれ。どーどーどー、バナナ」
 リリムが取り出したのは一本のバナナ。
「それをどうすると?」
「まず食べます」
 ぱくっ。
「もぐもぐ。そして、このバナナの皮を地面に置きます」
 えーいとバナナの前に投げるリリム。
「すると恐ろしいことに! バナナの皮を踏んだ敵が滑って転ぶのです!」
「うん。すっごい作戦だね」
 自分でなんとかしよう。崖から降りてこちらに向かってくる魔物の軍勢を見てヤマトは誓った。
 ダミアン率いる魔物は10体以上はいる。それに対して、こちらはシルクとエリカを入れて7人。
「マジカル☆ダブルトマホ−ク」
 先に変身していたアリサが、バトンを斧に変化させ、
「動くな!」
 刃をリリムとリリスに向ける。
「動くと、この二人を殺す!」
「またそれかー! いたた」
 叫ぶとまたお腹が痛むヤマトであった。
「全軍停止じゃー」
 即座にダミアンが全員を止める。アリサが本気なのが分かったからだ。
「よーしよし。そのまま動くな」
 ニッと歯を光らせてアリサが笑う。
「ヒィィィー」
「こわい〜」
 人質にされたリリムとリリスはガタガタと震えている。シルクはおろおろして、エステルは肩をすくめていた。エリカとアオイも動きを止めている。
「分かった。余は動かぬぞ」
 動かないダミアンに向け、アリサは斧を振り上げ、
「マジカル☆ダブルトマホーク!」
 投げた。

 ぶーん。

「ディプロガンズ!」
 同時、ダミアンが名を叫んだ鉄砲魚型の魔物、デゥプロガンズが頭を飛ばす。
「ヘッドカッター」

 自らの頭を飛ばすディプロガンズの必殺技。カッターのような頭が、見事にくるくる回転する魔法の斧を打ち落とす!
「あーん。ずるいー」
「人質のほうがよっぽどずるい」
 お腹の痛みを堪え、ヤマトが迎撃体勢を取る。再びダミアン軍団が前進したからだ。
「ディプロガンズ、フライシザーズ、シェルカーン、デモンズヘッド。合体じゃ」
 長引かせると厄介と判断したダミアンから合体指令が降る。
 鉄砲魚のディプロガンズ、クワガタのハサミを装備した赤い鳥のフライシザーズ、
ゴリラの体に亀の甲羅と頭のシェルカーン、そしてでっかい頭のデモンズヘッド。
 四 体 合 体 !
 宙に飛んだ4体が一つになり、巨大な赤き竜となる!
「ナイトメア☆キメラドラゴン、四体合体で参上!」
 がおーと吼えるキメラドラゴン。4体分のパワーと魔力がみなぎる。
「くっ」
 前に出ようとするヤマトの前に、黒い虎男が立ちはだかった。
「ナイトメア☆ブラストル、とらとらとらと参上。おっと、お前の相手は俺だ」
「また虎か……」
 レイズと同じような雰囲気のブラストル。油断なくヤマトは身構える。
「ナイトメア☆エステル、美麗に参上」
「ナイトメア☆サイクス、黒豹と参上」
 一方エステルは黒豹男のサイクスと高速戦闘に突入。猛スピードで採石場を駆け抜けながら、鉤爪と爪をかっやんかっちゃんと打ち合わせる。
スピードは互角。ヘイストをかけたエステルと同じ速さでサイクスは駆けていた。
 同じく戦闘を再開したエリカとアオイも刃を一合二合と打ち合わせる。こちらも互角。
「ナイトメア☆ミャア、にゃーにゃーと参上にゃん」
「ナイトメア☆ケーニッヒ、野生の狼と参上」
「エンジェル☆シルク、清楚に光臨です」
 天使のシルクは猫耳魔法少女のミャアと白い狼男のケーニッヒと対峙。
「イリュージョン」
 シルクが呪文を唱えるとあら不思議。地面がもこもこと盛り上がり、幻の魔戦士が出現。それが3体。
 剣を装備した3体の魔戦士が黙々とミャアとケーニッヒに向かって前進。
「みゃー! 増えたにゃー!」
「ただの幻だ。実体があるがな」
 呼び出された魔戦士に足止めされるミャアとケーニッヒ。その間にシルクは、アリサの救援に向かった。
「アリサちゃんスクリューキック」
 斧を投げたアリサは回転キックを繰り出す。顎に直撃を受け仰け反るキメラドラゴン。
一瞬の隙にアリサは斧を拾う。そこにキメラドラゴンが全身の火器を一斉発射。でっかい角からも電撃が飛ぶ。
「きゃー!」
 爆風に飲み込まれるアリサ。
「リカバー」
 そこに駆け寄ったシルクが治癒魔法で回復させ、自らの<聖なる加護>で盾となる。自由に動けてもアリサの盾は変わらない。
「アリサさん、大丈夫ですか?」
「う、うん」
 すぐに立ち直り、アリサはキメラドラゴンの巨体を見上げた。

 卍解したマジカル☆ホナミは、4体合体したマトリクスドラゴンを倒した。
「だったら、アリサだって!」
 飛び上がり、斧を叩き付けるアリサ。だが硬い装甲にカーンと跳ね返され、逆に角からの電撃を浴びた。
「きゃああああーっ!」
「アリサちゃん!」
 すぐさまシルクが駆け寄り、また魔法で回復。キメラドラゴンのパワーと火力と装甲にさすがのアリサも大苦戦。
 一方、ダミアンはカノントータスとシーパンツァーを率いて、リリムとリリスに迫っていた。
「ナイトメア☆カノントータス、亀と参上」
「ナイトメア☆シーパンツァー、ヤドカリと参上」
 大口径の突撃砲を装備した亀と大砲を背負ったヤドカリが同時に砲撃。
「はわー。シ、シールド」
 リリムが張った魔法シールドをあっさりと打ち破り、砲弾が近くに着弾し、リリムとリリスを吹っ飛ばす。
「きゃー」
「あ〜れ〜」
 ごろごろ転がる二人。ゆっくりと立ち上がったリリスが、反撃とピンクのバズーカを構えた。
「そ〜れ〜」
 どかんと発射した砲弾が直撃。だが重装甲のカノントータスとシーパンツァーはビクともしない。足を止めての撃ち合いが得意な魔物なのだ。
「大人しく、余と来るがよい。悪いようにはせぬぞ」
「嫌ですー」
「帰れ〜」
 ダミアンの降伏勧告に、リリムはあっかんべーして、リリスは帰れコール。
「止むをえん。死なないように砲撃してやれ」
 どかんどかんとカノントータスとシーパンツァーが砲撃を続け、リリムとリリスはきゃーきゃーと叫んで転げ回った。
「マグマ弾丸」
 一方のヤマトも、ブラストルが両肩から撃ちだす灼熱のマグマ弾から逃げ回っていた。
「お腹痛い〜」
 そして何より、包丁で刺されたお腹が痛い痛い。

 エリカはアオイと白兵戦闘中。
 エステルはサイクスと高速戦闘中。
 アリサとシルクは、キメラドラゴンに大苦戦。アリサが怪我してシルクが癒す。
 リリムとリリスは、カノントータスとシーパンツァーに火力で押されている。
 ヤマトもブラストル相手に逃げ回るだけ。
 シルクが呼び出した幻の魔戦士に足止めされたミャアとケーニッヒだが、こちらも直に片付く。

「ふふふ。圧倒的ではないか、我が軍は」
 優位な戦況に、ちんこをぷらぷらさせたダミアンが満足げに笑う。
 その直後。
「リリムちゃん〜。ちょっと時間稼いで〜」
「は、はい。おいでませ触手さん」
 リリムが触手を無数に召還し、壁にしてカノントータスとシーパンツァーの砲撃を防ぐ。だがそれも一瞬。すぐさま砲撃に蹴散らされた。
「あー。触手さんがー」
 触手の壁を吹き飛ばすと、そこにバズーカを構えるリリスがいた。そのピンクのバズーカに、ピンクの魔力が集まっていく。
「ナイトメア☆バズーカ・フルキッスです〜」

 バズーカから放たれるピンクのキスマーク。それがシーパンツァーに当たると、重装甲のヤドカリが、内部からバチバチと火花を上げて爆発した。
 本邦初公開。キスの魔力で内部から粉砕するリリスの必殺技。
「シ、シーパンツァー!」
 好敵手が黒い闇となって消え、カノントータスの亀の目が、メラメラと燃え上がった。
「おのれ。大口径ビームキャノン!」
 カノントータスの頭上の宙が歪み、大口径のビームキャノンが出現。もさらに巨大な砲塔が突撃砲の上に重なる。
「ナイトメア☆カノントータスBC(ビームキャノン)」
 ぱぱーん。魔法天使から奪った魔力でパワーアップ。火力はさらに増したが機動力、は極端に落ちる。
「ナイトメア☆ビームキャノン・フルバースト!」
 どごーん。閃光がリリムとリリスの目を焼き、爆風が二人を吹き飛ばす。直撃は避けたのだ。
「あーれー」
「やられました〜」
 宙高く舞い上がり、ぽてっと落ちたリリムとリリスはもう起きて来なかった。
「よしよし」
 倒れたリリムとリリスを回収しようと迫るダミアン。
「行けない」
 目の端に倒されたリリムとリリス、そして歩み寄るダミアンを目の端に捉え、アリサが焦燥感に捕らわれる。
「えーい!」
 がむしゃらに目の前のキメラドラゴンに斬りかかるが、顎の下のクワガタのハサミに防がれる。逆に全身の火器に狙われ後退を余儀なくされた。
「アリサさん。離れててください」
 すると今度はシルクが前に出て、両手をかざす。
「アーリアル!」
 天を貫き、舞い降りる至高の光!
 空から落下してきた純白の光がキメラドラゴンを飲み込み、一瞬にして消し去る。
地面には傷一つなく、ただ魔物のみを消し去る。それが魔法天使の魔法。
「やったー!」
 キメラドラゴンを一撃で倒し、アリサが喝采を上げた。だが当のシルクは、肩を抱いて膝を地に着ける。
「シ、シルクさん!?」
「だ、大丈夫……。反動で疲れただけです。それより早く。ダミアンを止めて」
「うん! 任せて」
 すぐさまアリサは走り、ダミアンに飛び掛かる。
「アリサちゃんスクリューキック」
 横からの回転飛び蹴りを、前を向いたままでダミアンは後ろに避ける。
「ほほう。マジカル☆アリサか。オーロラが呼んでおったぞ」
「オーロラさんが!? まだ無事なの?」
「無論じゃ。余の嫁となってもらうからの」
「許さない!」
 ぎゅいーんとアリサの全身がまばゆく赤く光る。
「マジカル☆スパーク!」
 赤い魔力の光をまとい、ダミアンに突撃!
「勃起」
 ぎゅいーんとダミアンのちんこが肥大化。
「超勃起」
 さらに巨大化。ダミアン本体よりも大きくなる。
「ちんちんのビッグバズーカ」
 ダミアンの二倍ほどの大きさになった巨大ちんこが、マジカル☆スパークを真っ向からぶん殴る。

「とりゃあああああーっ!」
「ぬおおおおっ!」
 真正面から激突するアリサとちんこ。
 ばちばちっと火花が散り、じりじりとアリサが前進する。
「こーんなちんこなんか……ぶった斬ってやる!」
 巨大ちんこが押され、怯むようにわずかに縮む。するとその先口から、ぬるっと一枚の布が飛び出した。白と碧の縞々模様のパンツ。
「ナイトメア☆ダミアン・パンティーフォーム」
 パンツは自動的にダミアンの頭に被さり、ギンと瞳が輝く。ホナミのパンツだ。
「巨大ちんこドリル」
 ぎゅいーんとドリル回転する巨大ちんこ。
「きゃあっ!」
 アリサは一瞬で跳ね飛ばされた。その軽い体が、高々と宙に舞う。
「アリサ!」
 目の端に吹っ飛ばされるアリサを捉え、ヤマトの瞳の色が変わった。
「フョームチェンジ」
 ぎゅるんと右腕が肥大化し、右肩に獅子の顔が生え、右手の指が根元から鉤爪に変化。
「ナイトメア☆ヤマト・ライガーフォーム!」
 ライガーフォームに変化したヤマトは、マグマ弾の弾幕を強引に掻い潜り、ブラストルに肉薄。
「どけー!」
 マグマ弾を何発かは受けながら、構う事無く突っ込む。
「ぬう」
 突っ込んでくるヤマトに、ブラストルも爪を構える。砲撃だけだなく格闘もできる虎なのだ。
 じゃきん。
 ヤマトの右手のでっかい鉤爪を正面から受け止めるブラストル。だがヤマトの勢いに押され、ずささと後ずさる。
「ライオトルネード」
 そこに至近距離から獅子の顔を剥け、竜巻を吐きつける。
「ぬおっ」
 たまらず後退するブラストル。その隙に、ヤマトはアリサの元に向かった。
 宙に舞ったアリサは華麗に着地していて、倒れたリリムとリリスを背後に庇い、ダミアンとカノントータスと対峙している。
「アリサー!」
 そこに横から突進してくるヤマト。その右手の鉤爪に黒い魔力が集中していく。
「ナイトメア☆クロー・フルスラッシュ!」
 いきなりの必殺技。パンツを被ったダミアンも、巨大ちんこをぎゅいーんとドリル回転させ、黒い魔力を集めて迎え撃つ。
「ナイトメア☆ちんこ・フルドリル!」

 がきん

 激突する鉤爪と巨大ちんこドリル。ばちっと黒い火花が散る。
「うおおおおおおおおーっ!」
「パンツパンツパンツ」
 ホナミのパンツのパワーを受け、さらにちんこの回転が上がっていく。魔力も変態度も何もかも。
 そのちんことパンツパワーに、じりりっとヤマトが押される。
「馬鹿な! 僕のシスコンパワーが押されている!?」
「所詮シスコンでは世界は救えぬ!」
「そんな事は……ない!」
 どかーん。

 爆発。そして吹っ飛ばされたのはヤマトの方。
「お兄ちゃん!?」
 ずささっと地面に流されるヤマト。
「うーん」
 採石場の地面に半分ほど埋まり、ヤマトはぐるぐる目を回している。
「よくも、お兄ちゃんをー!」
 さらに今度はアリサが仕掛ける。振り上げた魔法の斧に魔力を集め。
「マジカル☆ダブルトマホーク・ファイナルブレイク!」
 必殺技の連発。だが普段よりも魔力の輝きが弱い。
 ダミアンは巨大ちんこで易々と斧を受け止めた。
「どうした。以前のほうが強かったぞ」
「くうぅ!」
 パンツのパワーを受けたダミアンにはまだ余裕がある。
「アリサは……アリサはお兄ちゃんを守るんだから!」
「なるほど。お主の力の源はブラコンか。だが」
 キッとパンツの奥の瞳が輝き、斧を受けるちんこがまたも回転。
「ブラコンでは世界は救えぬ!」
「そんな事ないもん!」
 どかーん。
 爆発。そして吹っ飛ばされたのはアリサの方。
「きゃー!」
 軽いアリサはまたも宙に舞い、今度は華麗に着地することなく、カノントータスの大砲の上に落ちた。
「カノントータスよ。マジカル☆アリサを確保せよ」
「サー、イエッサー」
 ぐるぐる目を回すアリサを背負って、カノントータスは後退する。
「ヤマト! アリサちゃん!」
「余所見しない!」
 思わず目を向けるエリカに、アオイが鋭く踏み込んで打ち込む。
「きゃっ」
 微かにピンクのスカートが斬られる。
「この。ローゼスビット」
 シカートの中から飛び出す赤いバラ。
「にゃーにゃー。お魚にゃー」
 だがビームを撃つより早く、ミャアの呼び出したお魚ミサイルが、ぱくっとバラを咥えてしまう。
「にゃーにゃー」
 幻の魔戦士を片付けたらしい。ミャアの参戦に、エリカはくっと唸った。
 一方、エステルにはサイクスだけでなくケーニッヒも加わる。
「むちゃくちゃキツいー」
 黒豹男と狼男の爪をかっやんかっちゃんとシャープネスクローで受けながら、エステルは防戦一方に追い込まれていた。
どちらも目にも止まらぬハイスピード。サイクスとケーニッヒの二体を相手に踏みとどまるだけでもかなり凄いことなのだ。
だがエステルにしても防ぐだけで攻勢に出られない。ヤマトとアリサが倒されたのは見えているが、救援に行けなかった。奥の手を使えば別だが。
「えーい、仕方ない」
 エステルが奥の手を使おうとしたとき。
「ナイトメア☆アケミ、癒して参上」
「ナイトメア☆ルゥ、わんわんと参上わん」
「ナイトメア☆レイ、闇わんわんと参上」
 採石場の崖の上に新たに3人の姿が現れる。注射器を持った魔女スタイルのアケミに、犬耳男の子のルゥとレイ。
「ミャア!」
 猫耳少女の姿を見たレイが、崖を駆け下り、すぐさま彼女の元に駆けつけた。
「あっ。レイのお兄ちゃんだにゃー」

 レイに気付いたミャアもとことこと駆け寄ってくる。
「ミャア。何してんだ、こんな所で」
「ダミアンのお兄ちゃんと一緒に戦ってるにゃー」
「馬鹿。あんな奴と一緒にいるな。俺と来い」
「お断りだにゃー」
 さっさりミャアは断る。服従の呪い故に。
「お前は呪われてるんだ。無理やり服従させられやがって」
 そのレイも服従の呪いでアケミに従っている。
「ミャアはダミアンのお兄ちゃんに服従させられてるにゃー」
「よし。ダミアンを倒せばいいんだな」
 レイがマントを翻してダミアンに向かったときには、アケミがダミアンと対峙していた。リリムとリリスを庇って。
 ルゥはエステルの救援。
「わんわんパーンチ」
 ルゥの肉球のパンチを、サイクスもケーニッヒも余裕で避ける。遅い。
「ふー。助かった」
 だがそのおかげでエステルは一息つけた。これなら切り札はまだ温存しておける。
「あのときの女であるな」
「そうよ。私の可愛い教え子には手を出させないから」
 ヤマトはまだ目を回している。アリサはカノントータスに背負われたまま。
「フォームチェンジ」
 ダミアンの巨大ちんこを前に、アケミは姿を変えた。レイの童貞を奪った呪いで得た新フォーム。
「ナイトメア☆アケミ・わんわんフォーム」
 茶色の髪の上に犬耳が生え、お尻にも尻尾が生える。手に肉球が生え、爪が伸び、注射器は消えた。
「やーん、可愛いー」
 わんわんフォームになった自分に、犬耳をひょこひょこさせて喜ぶアケミ。
「さあ来なさい。そのちんこ、可愛がってあげる」
「ぬう」
 わおーんと犬の手を向けるアケミに、ダミアンは咄嗟に動けなかった。アケミがわんわんプレイの事しか考えていないので。
「来ないからこっちから行くわよ」
 するとアケミが犬の敏捷さでさっと飛びつく。ダミアンの巨大ちんこに。
「ふふ。おっきいちんこ」
 そしてきつきつの胸をはだけ、豊かな乳房を晒し、ぷるるんとちんこにこすりつけた。
「ふおおおっ」
 思わずダミアンの腰が前後し、ちんこが脈打つ。
「ふふっ。ここね。ここがいいのね」
 ぱふぱふと乳房ででかすぎるちんこを愛撫し、さらに肉球でぱふぱふと揉む。
 ぱふぱふ。ぱふぱふ。
「ふおおおおおおっ」
 どくんどくんと脈打つちんこからたちまちシャワーのような射精が飛び、しゃーと白い雨を降らした。
「ふふっ。早すぎ」
 さっと飛び退くアケミは白汁一つ付かない。
 そして射精したちんこはしゅるしゅると萎み、縮んでしまった。
「そっか。ちんこはおっぱいに弱いんだ」
 アオイと対峙を続けながら、エリカが感心したように呟く。
 エステルも「その手がありましたか」と感心しきっていた。
 豊乳のアケミならではのちんこ封殺戦法。
 おっぱいでぱふぱふされたちんこはふしゅーと萎み、もはやパンツのパワーも及ばない。
「ダミアン! ミャアを返してもらうぞ!」

 そこに仕掛けようとするレイ。慌ててケーニッヒが割り込む。
「どけっ。ミィル」
 レイの闇魔法を受け、のけぞるケーニッヒ。だが野生の狼はそれぐらいではへこたれない。
「がおー」
 噛み付いてくるケーニッヒに、レイも避けるのが精一杯で前に進めない。
「ぬ、ぬう」
 ふしゅーと萎み、ぷらぷら揺れるちんこを見下ろし、ダミアンはパンツを脱いだ。これ以上の戦闘は無理。
 前回といい、つくづくアケミとは相性が悪いらしい。所詮ちんこはおっぱいには勝てない定めなのか。
 ちんこはまんこに強く、まんこはおっぱいに強く、おっぱいはちんこに強い。これを性器の3すくみと呼ぶ。
「やむをえん。引き上げじゃ」
 リリムとリリスは回収できなかったが、マジカル☆アリサは捕らえた。それで良しとするしかあるまい。
「ちんこレーダーよ」
 残った魔力で黒の神殿に呼びかけ、黒い魔力球と接続。その魔力を引き出し、空間を繋ぐ。
「どーどーどー。どこでもドアー」
 ダミアンの背後に出現する黒い扉。扉が開くと、その向こうは闇。黒の神殿に繋がったのだ。
「ナイトメア☆ディバイソン、もーもーと参上」
 移送の扉から牛男のディバイソンが姿を現し、背中の17門突撃砲を一斉射。
援護の威嚇射撃だ。
「皆の衆、撤退じゃ」
 アリサを背負ったカノントータスを真っ先に入っていく。のろのろと。
「アリサさん!」
 悲鳴のようにシルクが叫ぶが、アーリアルを使った反動でまだ動けない。
「アリサ!?」
 シルクの声に目覚めたかヤマトが半身を上げて叫ぶ。だがこちらも動けない。
 そしてカノントータスはのこのこと移送の扉をくぐった。
「ミャア!」
「レイのお兄ちゃん、またにゃー」
 ミャアも移送の扉をくぐる。ディバイソンの砲撃とケーニッヒに邪魔され、レイもまた見送ることしかできなかった。
「ここまでだな」
 ケーニッヒの腰から白い煙が吐き出される。スモークディスチャージャーだ。
「そーれ、退却、退却ー」
「アオイ!」
 エリカと戦っていたアオイも、煙に紛れて逃げてゆく。エステルと戦っていたサイクスも。
 煙が止んだとき、ダミアン軍団の姿は消えていた。移送の扉も。そしてアリサも。
「アリサ……アリサーっ!」
 ヤマトの叫びが、虚しく採石場に響く。
 お腹が痛んだ。アリサに刺されたお腹が。

 リリムとリリスは守れた。だがマジカル☆アリサまでもダミアンに捕まった。

(つづく)