「んんっ。はぁ」
 暗い部屋の中。押し殺した声が空気を熱く満たしていく。
 天井から吊るされているのは美しき天使。鎖で両手を縛り上げられ、衣服は全て引き裂かれ、白い裸身を無惨に晒している。
「はっ。ああっ」
 長い金の髪がゆらゆらと揺れ、それが彼女が微かに悶えていることを教えていた。
 ダミアンに捕らえられたオーロラだ。女神像の見下ろす本殿より移動し、小さな部屋で、辱めを受けている。
「どうした。もっと声を上げてもよいのじゃぞ」
 そのダミアンはオーロラの前に立ち、腕を組んでいる。全裸なのはいつもの事。
 両手は使わずに、ちんこのみをぎゅいーんと伸ばし、オーロラの薄い可憐な乳房を弄っていた。
 ときには揉み、あるいはぎゅっと潰し、またはちんこの先端で乳首を突付く。
 そうされていくうちに、いつしかオーロラは汗を浮かべ、顔を赤らめ、もじもじと太ももをすり合わせるようになっていた。
 ちんこに、おぞましい男の性器に弄ばれ、最初は気色悪かっただけなのに……それなのに、感じてしまう自分の肉体が憎かった。
「こ、こんな奴に……」
「悔しいであろう」
 心の内を見透かしてダミアンが言う。感情を込めずに淡々と。
「余の母上も、散々嬲られて、堕天使になったそうじゃ」
「くっ……。だ、だからって、こんな……ああぁ!」
 オーロラの背筋が仰け反る。ちんこが下に伸び、股間をさすったから。
「はああっ……。こんな、ことを、いくらしても、無駄です……!」
 ぐっと歯を食い縛り、オーロラは必死に耐える。お腹の奥からじんじんと伝わる疼きに。
「か、必ず、罰が……ああっ!」
「罰か。母上は天界から見捨てられたのじゃがな。そして生まれたのが余じゃ」
 天界に見捨てられた堕天使の息子が、天使を辱める。因果さえ感じさせた。
「あ、あなたは……天界に復讐するつもりですか……!」
 ちんこが股間をなぞり、オーロラの腰がむずむずと小刻みに悶える。熱い吐息を
吐きながら、オーロラは涙を溜めた瞳でじっとダミアンを見つめ、問いかけた。
「復讐? そのようなつもりはない。余は天界に恨みはないのでな。魔界に生まれたが、それなりに楽しかったぞよ」
「では……」
「言うたであろう。余は優しい魔王になると」
 ダミアンのちんこがオーロラの華奢な腰を包む。そしてダミアンは歩み寄り、オーロラを優しく抱きしめた。
「きゃっ」
 生臭い男の体臭と肉に包まれ、オーロラはきゅっと身を硬くする。
 ダ背中に手が回り、長い金髪、そして白い翼を優しく撫でた。
「そなたは美しいのう。余の母上によく似ておる。嫁になってもらうぞよ」
 ダミアンが顔を近付け、オーロラは顔を背けようとした。だが動けない。金縛りにあったように。
「あっ……」
 そしてむちゅっと唇が重なり、強く抱きしめられる。抵抗は出来ない。この黒の神殿に天使の力は封じられているから。
 あるいは、間近に見えるダミアンの青い瞳に、哀しみを見たからか。
 短くなく、長くもないキスをして、ダミアンは離れた。ちんこも離し、オーロラを吊るす鎖を外してやる。
「きゃっ」

 オーロラを抱えたダミアンは、部屋に一つしかないベッドに寝かせ、自身は石の床の上にごろんと横になる。
「おやすみなのじゃー」
 そしていきなりぐーぐーと寝る。健やかに。剥き出しのちんこをぷらぷらしたまま、全裸で。
「……」
 さすがに唖然とするが、身動きできないオーロラも他にやることがない。
 仕方なしに、寝入ったダミアンを観察する。ちんこを見ないように。
「嫁、ねえ」
 ふとダミアンの言葉を思い出す。嫁になれ。つまりはプロポーズだろうか。
「嫌ですよ。変態の嫁さんは」
 一緒に全裸で暮らすなんて嫌。
「アリサちゃん……」
 無事に逃げ延びたマジカル☆アリサに想いを馳せ、オーロラも眠りに就いた。

「おはようなのじゃー」
 目が覚めると、ダミアンがいた。ぎゅーんと伸ばしたちんこをぶんぶん振り回して。
「……なにしてるんですか?」
「ちんちん体操じゃ。そなたもどうじゃ」
「できません」
「そうか。残念じゃのー」
 オーロラのジト目を心地よく受け、ダミアンは体操でほぐしたちんこをぺちぺちと撫でる。ちんこの調整に余念がない。
「うむ。今日も絶好調じゃ」
 ニカッと白い歯を見せ、笑みを向けるダミアン。なぜだかその笑顔が癪に触り、オーロラは口を尖らせる。
「あ、あなたんか、アリサちゃんがやっつけるんだから」
「マジカル☆アリサか。あれもなかなかの強者よのう」
 魔法少女はそれなりに見ているが、アリサほど闘争心の強いのは初めてだった。その闘争心はダミアンも引かせるほど。
「では、そのアリサを、そなたの前で辱めてやろう」
「!?」
 どくんとオーロラの心臓が跳ね上がる。
「そ、そんなこと……許しません!」
「どう許さぬと?」
「くぅ」
 ギリリと歯を噛み鳴らすが、確かに今は何も出来ない。ベッドから降りることさえ出来ないのだ。
「楽しみに待っておるがよい」
 背中を向け、ダミアンは部屋を出た。背中の黒い翼をオーロラは睨むことしか出来ない。
「アリサちゃん……」
 ぽつりと涙が落ちた。

 部屋を出ると、そこはもう本殿の間だった。広大な広場はほとんど人がおらず、がらんとなっている。
 唯一いるのは、二つの黒い魔力球の前で横になっている、ホナミ、ユイ、チヒロの3人の魔法少女。
 ここでずっと嬲られ続け、そのまま眠ったらしい。魔法で精液は消したとはいえ、気だるい疲労感が残っている。
 ダミアンが近付くと、3人とももぞもぞと起き上がり、虚ろな瞳を向けた。
「よいよい。そのままで」
 ダミアンは3人を休ませたままで、黒い魔力球に触れた。
「あー、あー。おはようなのじゃー」
 声が黒の神殿全体に伝わっていく。

「皆の衆、本殿まで集まるように」
 たちまち、ワーと魔物たちが集まってくる。その魔物たちを見回し、大きく頷くと、ダミアンが告げる。
「おはようなのじゃー」
『おはようございます』
 元気よく挨拶する魔物たち。
「今日は、みんなでリリムとリリスを捕まえに行くのじゃー。ついでに、マジカル☆アリサも」
 アリサはあくまでついでらしい。
「でも、どうやって行くんです?」
 質問したのはマジカル☆アオイ。
「うむ。おおよその場所は見当付いている。近くまでなら、移送の扉で行けるのじゃ。見ておるがよい」
 ダミアンのちんこが上に向かってぎゅいーんと伸び、先端がくるくると回転。レーダーのように。
「ちんこレーダー」
 触れたままの黒い魔力球の魔力も使い、遥か遠方までダミアンは意識を飛ばす。
「座標軸固定」
 飛ばした意識をその遠くの空間に固定すると、黒い魔力球の魔力を引き出し、扉をイメージ。
「開けどこでもドアー」
 ぎゅんと濃密な魔力が魔力球より溢れ、黒い扉となる。大きな3メートルほどの扉。
ごごごと開くと、そこはもう外。遠く離れた場所に繋がったのだ。黒い魔力球の膨大な魔力があって成せる業。
「ではゆくぞ。アオイ、ミャア、ブラストル、サイクス、カノントータス、
シーパンツァー、ケーニッヒ、ディプロガンズ、フライシザーズ、シェルカーン、デモンズヘッド、付いて来るがよい」
 名前を呼ばれた者が後に続き、扉をくぐる。他はお留守番。

 ダミアン軍団が遂にやって来る。だが大和はまだその事実を知らない。
 危うし大和、今そこに危機が迫っている。

 移送の扉をくぐると、そこは繁華街だった。早朝のようだが、それなりに人通りはある。
 その場所に、いきなり全裸のダミアンを先頭に、魔物の集団が姿を現したのだ。
 たちまち大パニック。
「きゃー!」「ばけものー」「ちんこだー!」「助けてソニック!」
 わーと逃げる人。その中を、ダミアンは悠然と歩いていく。ちんこをぷらぷらさせて。
 そこに一台のミニパトが駆けつけ、婦警が二人降りてきた。
「そこのあなた」
 婦警は全裸のダミアンを認めると、慌てず騒がず手錠をかける。
「公衆わいせつ罪で逮捕します」
「つかまったのじゃ〜」
 がしゃんと手錠をかけられたダミアンは、他の魔物が見守る中ミニパトに乗せられ、警察に連行されて行きました。
 こうしてダミアンは逮捕されました。

 めだたし、めでたし。

     −ナイトメアドリーム第二部夏休みだよダミアン編完−

「まだまだだ!」
 突然の声に、寝ていた絵梨華がびくっと身を震わせ、目を開ける。
 真っ先に感じたのは硬い肉の感触。そして汗臭さ。
「きゃっ!?」
 短く悲鳴を上げ、それから思い出した。
「そっか……。昨日は……」
 出会ったばかりの大和に抱かれ、ヴァージンを捧げ、そのまま一緒に寝たんだ。
 どうやらさっきのは寝言らしい。絵梨華を硬く抱きしめたまま、大和はぐーぐーと寝ている。
 昨夜は結局、抜かず五発連続と初めてなのに、いきなりハードなプレイだった。
 なんだか腰が痛い。まだ異物が挟まったような違和感。精液は魔法で消してくれたけど、お腹の中がべとべとするような気持ち悪さ。
 大和の手をどかし、絵梨華はベッドから降りる。
「幸せそうな顔して」
 大和はまだすやすやと眠っている。本当にすっきりした顔で。
 この人が……初めての相手。
 そう思うと、なんだかむかむかしてくる。葵が知ったら、どんな顔するだろう。
 シャワー浴びたい。使わせてもらおっと。

 一階のシャワーを勝手に使わせてもらい、制服を着てリビングに出ると、起き出した大和がいた。
「おはよう」
「お、おはよう……」
 平然と挨拶する大和に、絵梨華は憮然と返事する。もっと恥ずかしがりなさいよ。あんなことしたのに。
「よく眠れた?」
「おかげさまで」
 わざとらしく、勢いをつけてソファに腰掛ける。すると大和はしっとりと濡れている長い金色の髪に鼻を寄せた。
「わー。絵梨華の髪、良い匂い」
「も、もう。バカ」
 カーと赤くなる絵梨華。なんで私が赤くなるのよと思いながら。
「お兄ちゃん、おはよう」
「おはようございます」
 そのときになって、二階からありさとシルクが降りてくる。
「おはよう」
「お、おはよう」
 咄嗟に絵梨華は離れたものの、大和は平然としたものだ。
「むっ!」
 仲良く並んで座る二人に何かを感じ取ったのだろう。ありさはてててと兄に駆け寄り、くんくんと匂いを嗅ぐ。
「ああっ! お兄ちゃん、絵梨華さんの匂いがする!」
「うん。昨日は一緒に寝たから」
「ちょ、ちょっと大和」
「もう! もう、いつも、お兄ちゃんはそう! ありさがいるのに、ありさがいるのに他の人と……! キルキルキルキル」
 突然キルキルと喚きながら、ありさは台所に突っ走る。すぐに戻って来て、その手に持つのは包丁。
「今朝の味噌汁の具にしてやるー」
「待ってありさ。包丁は危ないよ」
 ありさが包丁を向けた先、絵梨華を咄嗟に庇う大和。
「どいてお兄ちゃん! その女殺せない!」
「またそれかー!」

 怒鳴りあう兄妹に、展開に付いてこれないで、ただ呆然とする絵梨華といシルク。
「おはようございます」
「おはよう〜」
「おはようございます」
 今度はリリム、リリス、エステルの3人が一階の自分たちの部屋から出てくる。
 包丁を向けるありさを見て、
「またですか」
「わ〜。がんばれ〜」
「マスター。程々にしないと」
 どうやら状況を瞬時に読み取ったらしい。3人ともいきなりありさを応援する。
「ええっ!? ちょっと、止めてよみんな」
 大和が横を向いた途端、
「とりゃー!」
 ありさが包丁を突き出す。
「だめー!」
 ギラッと光る刃の先に大和が身を張って飛び出し-

 ぐさっ

 包丁が、大和のわき腹に、深々と突き刺さった。

「痛いよ、痛いよー」
「はーい。お兄ちゃん、ごはんだよー」
 お腹から血を流し、うめく大和にありさは味噌汁を差し出す。
「いただきまーす」
 お腹から血を流しながら、大和は味噌汁を飲んだ。なんだか、お腹の傷からこぼれだすような錯覚がした。
「わー。今日の味噌汁は血の味はしておいしー」
「うん。なんたってお兄ちゃんの血が付いた包丁だから」
「あはは。こいつー」
「あははー」
 にこやかに笑う大和とありさ。
「良かったです。仲直りして」
 一緒になってにこにこと笑うリリム。リリスとエステルも朗らかな表情。
「えーと。いつもこんな感じ?」
「絵梨華さん、ありさの味噌汁どうですか?」
「うん。とってもおいしいわよ」
 年下の少女のご飯を絶賛しながら、絵梨華は疲れた表情で箸を進めた。
「あのー。魔法で治療しましょうか?」
 お腹から血を流し続ける大和に、シルクがおずおずと申し出るが、
「いいのいいの。お兄ちゃんもたまには痛い目に遭わないと。はい、シルクさんもご飯食べて」
「はー。ではいただきます」
 戸惑った表情を浮かべながら、シルクも朝食をいただいた。ご飯を残すのはよくない。
「すっごく痛いんだけど」
「お兄ちゃん、ご飯食べたら床に付いた血を拭いてね。血生臭いよ」
「うん……。というか、僕の血を止めるほうが先だと思うんだけど」
「そのうち止まるよ」
 ありさの言うとおり、ご飯を食べてる間に血は止まった。悪魔の強靭な生命力のおかげだろう。
人間の姿でも、悪魔の強靭な生命力は残っている。そうでなければ、もっと痛い。

「ごちそうさまー」
 朝食を食べ終え、床に付いた自分の血をせっせと洗う大和。誰も手伝おうとしない。
「絵梨華さん、今日はどうします?」
「そうねー。明美さんと合流して、はにはに市に戻らないと」
 今後の方針をありさと絵梨華が話し合っていると、ぴんぽーんと玄関のチャイムが鳴った。
「はーい。新聞だったらいりませんよー」
 玄関に向かったありさが内側から言う。
「いえ。そうじゃなくって」
 外から若い女の声がする。
「こちらに、ピンクの髪の魔法少女がいるって聞いたんですけど」
「えっ?」
 慌ててドアを開けると、ショートヘアの少女がいた。絵梨華と同じ制服を着ている。
「あっ、あたし。四葉 葵と言います。この家に、リリムとリリスって魔法少女はいますか?」
 変身前の葵がそこにはいた。
「あ、葵!?」
 声が聞こえたのだろう。すぐに絵梨華も玄関に来る。
「あっ、絵梨華もいたんだ。やっほー、絵梨華。元気?」
 絵梨華を見て、葵はにこやかに手を振る。
「あ、葵!? なんでここに!」
 目が点の絵梨華。ぞろぞろと大和や他のメンバーも集まってくる。その全員に葵は言った。
「うん。ダミちゃんの命令で、リリムとリリスって子を連れて来いって。採石場で待ってるから」
 どうやら警察からは逃げ出せたらしい。街中でも自由に出歩ける葵一人に任せたのだ。
「行かなかったら、どうするの?」
「みんなでこの家に攻め込む」
 大和の即答する葵。最初からそうしなかったのは、ダミアンなりの配慮だろう。
「うーん」
 痛むお腹を抑え、大和は考え込む。この家に攻め込まれるのは避けたい。
両親が遺してくれた大事な遺産なのだ。かといって、敵が待ち受ける所にのこのこ出掛けるのも気が乗らない。
「そのお腹大丈夫?」
 血まみれの大和の腹を見て、葵が心配そうに訊ねる。
「心配してくれてありがとう。でも、すっごく痛くて、普通の人なら死んでる程度だから気にしないで」
「はぁ。なんだか、こっちも大変ね」
 絵梨華と目を合わせ、葵はにこっと微笑む。笑みを向けられて、絵梨華は何故かハラハラしてしまった。
「ところで、どうしてここが分かったの?」
「近所の女の子に、『ピンクの髪の魔法少女知ってる?』て聞いたら、この家にいるって言ってたから」
「リリム! リリス! お前らは、この家に住んでるって言ってるのか!」
「言ってませんよ」
 リリムが素知らぬ顔で言う。
「じゃあ、なんで知ってるんだよ」
「近所の女の子と一緒にこのお家で遊んでますから」
「アホかー!」
 お腹の痛みも忘れ、つい怒鳴ってしまう。
「やだなー、ご主人様。今ごろ気付いたんですか?」
「ああ、ごめん。アホだって気付かなかった僕が悪かったよ」

「分かればいいんです」
 何故か謝る大和に、えっへんと胸をはるリリム。
「本当に楽しそうね」
 葵は何やら感心している。
「ああ、もう。道理で、学校から帰ってきたら、部屋が散らかってると思ったよ」
「ご主人様の持ってる古いゲームとは大人気ですよ」
「セガ・マークVはまだ現役なの」
 今の子はドリームキャストすら知らないよ。
「でも、僕が帰って来たときには女の子なんていないじゃないか」
「だって、ご主人様は女の子見ると、すぐにエッチなことするじゃないですか」
「えー。しないよ、そんなの。たくさんジュース飲ませてトイレに連れてったり、お菓子を食べさせて服が汚れたら、お風呂に連れてくだけだよ。
それでね、おまんこぺろぺろしたり、ぺったんこの胸をぺろぺろしてあげるの」
 一同、やおら大和に殴りかかる。絵梨華と葵とシルクも。
「痛い痛い。やめてよ、お腹の傷が開いちゃう」
 一通り殴ってから、さっと離れる女の子たち。
「それで、どうする? ダミアンの所に行く?」
「大丈夫。ありさにお任せだよ」
と、ありさが自信満々に言うので、結局はダミアンの待つ採石場まで行く事にした。
 一応、明美先生にも電話したが留守電だった。どうせルゥとレイ相手に3Pして寝ているのだろう。
 
 葵を先頭に、ぞろぞろと歩いて行く一同。山の中の採石場はかなり遠い。
 金髪にピンク髪、翼や羽の生えた女の子たち。それに血まみれの大和。かなり目立ち、周囲の視線を集めていたが、全員がきっぱり無視して歩いて行く。
 そうして大和がお腹の痛みに耐え、歩くこと数時間。ようやくだだっ広い採石場に
着いた。変身後なら「とう」とジャンプ一跳びで来れるのだろうが、変身前はてくてく歩いて来なければならない。
「よくぞ来た」
 そして崖の上に、全裸の男を先頭に魔物の群れが姿を現す。
「あれがダミアン……。なるほど、確かに全裸だ」
 聞いていなければ、ぷらぷら揺れるちんこに衝撃を受けていただろう。大和の見上げる中、そのちんこがぎゅいーんと伸びた。
「まずは一曲」
 ちんこをマイクにいきなり歌い出すダミアン。その背後で、魔物たちが好き勝手に踊り出す。そちらに移動した葵も一緒に。

『ちんこはダミアン Maxちんこ』

 Maxちんこ
 ダミアン ダミアン

 ダミアン ダミアン ダミアン ダミアン
 ちんちんで ぎんぎんで ちんこは ダミアン〜

 一皮剥いてもまた一皮 ぶっちゃけ包茎(Maxちんこ)
 全裸でいても ちんこは むちゃくちゃタフだしぃ!(Maxちんこ)
 お手手でちんこを すりすりするたび 強く でかく なるね☆(Maxちんこ)

 yourちんこ myちんこ
 生えてるんだから 童貞なんて メじゃない!
 金の玉に 精子くるでしょ 精液だって ぶっとぶ〜!

 いのちの種 とばして思いっきり〜 もっとビュッビュッ
 ダミアン ダミアン ダミアン ダミアン
 ちんちんで ぎんぎんで ちんこは ダミアン〜


「本日は余の野外ライブにようこそなのじゃー」
 ……
 ぽかーん。
 ぽかーんと口を開ける一同。大和でさえも。
「はっ!」
 最初に気が付いたのはありさ。
「マジカライズ」
 魔法の呪文でさっと変身。
「マジカル☆アリサ、ちゃきちゃき行くよー」
 魔法のバトンを振り回し、栗色の髪をツインテールにしたアリサも歌い出す。
 前回は、ダミアンの歌にペースを乱され、敗れた。だから今度はこちらも歌で対抗。
そのアリサの背後で、リリム、リリス、エステルの3人がそれぞれバラバラに踊り出す。バックダンサーのつもりらしい。

『魔法少女マジカル☆アリサ』

 マジカル☆アリサ!
 マジカル☆アリサ!
 みんなの みんなの 正義の魔法少女! GO!

 あのね いつもアリサは
 みんなの そばにいるんだよ
 あなたの影からそっと 寝首かくんだよ
 だから気をつけて 守ってね

 どんなに こわいときでも
 どんなに つらいときでも
 マジカル☆アリサの 魔法の 魔法の 呪文

 マジカライズ!

 ラララ 魔法の少女 可愛いアリサ
 LOVE LOVE ちゅっちゅっ
 マジカル☆シュートでぽん

 みんな聞いて アリサはね
 ずーーーーーーーーーと みんなのそばに いるんだよ
 いつも どこでも 背後から
 あなたを つきまとって あげる
 そして最後には 絶対 アリサが勝つんだよ

 正義の魔法 好き好き大好き
 マジカル☆スパーク あの泥棒猫ふきとばすよ
 邪魔者はみんな 殴る 蹴る どつく

 お兄ちゃんどいて そいつ殺せない!

 マジカル☆アリサ
 マジカル☆アリサ
 ちゃきちゃきアリサGO!

「みんなー。正義の魔法少女、マジカル☆アリサを応援してねー」
「アリサちゃーん!」「可愛いー!」「こっち向いてー」
 歓声が飛ぶ。魔物たちから。
 これでペースは引き戻した。
「ダミアン!」
 びしっとちんこを指差し、大和が言う。
「なんで、リリムとリリスを狙う!」
「余が優しい魔王になるためじゃ」
「……は?」
「余は優しい魔王を目指しておるのじゃ」
「あ、あんなこと言ってるよ、みんな」
 大和はすごく動揺している。
「しっかりご主人様。主人公みたいなセリフだからって負けちゃダメ」
「そうだな。リリムも何か言ってやれ」
「何をです?」
「だから。リリムは魔王になったら、どうするんだよ」
「はい。リリムが魔王になったら、みんなをこき使って、贅沢三昧して暮らします」
「うわっ、駄目だ。3流のやられ役だよ、それじゃ。次、リリス」
「リリスが〜、魔王に〜、なったら〜、みんなで〜、のんびりと〜、爆発して〜」
「うん、もういい。次、エステル」
「私は魔王になるつもりはありませんので」
「えっ? そうなの?」
「はい。私はカイトお兄さまが魔王になれば、それでいいのです」
 そう言ったときのエステルの瞳は、恋する乙女。
「そっかー。エステルは魔王になる気ないのか」
 そういや、エステルが積極的に悪事を行うのは見た事がない。最初から魔王になる気がないからだ。
「そのカイトって、あの中にいる?」
 魔物の軍勢を指差して聞いてみる。
「まさか。カイトお兄さまが、ダミアンと手を組むなんてありえませんわ」
 ふっと鼻で笑うエステル。とりあえず、あの中にはいないらしい。
「というわけでダミアン。なんだか、お前が一番主役っぽいぞ」
「どうもなのじゃ。ところでお主、その傷はどうした」
 大和のお腹から下は血まみれのまま。
「大丈夫。すっごく痛くて、今にも気絶しそうってだけだから」
「そうか」
「それで。具体的には、リリムとリリスはどうすんの」
「二人には、破壊神の封印を解いてもらう」
「そんなこと出来るの?」
「知りませんよ、そんな方法」
「知らない〜」
 首を横に振るリリムとリリス。
「方法は余が知っておる。そなたらは、一緒に来ればよい」
「断る!」
 きっぱりはっきり断る大和。そして下半身を血に染めたまま、悪魔の姿に変わる。
「ナイトメア☆ヤマト、邪悪に参上」
「ほう。一戦交えると」
「うん」
 悪魔の姿でヤマトは右手を突き上げ、高らかに宣言した。

「僕たちの本当の戦いは、これからだ!」

(つづく)