「わんわん。こっちから誰かの匂いがするわん」
 裏口から黒の神殿に入り、真っ暗な通路を、ルゥの案内で進むアケミとエステル。
そのルゥが、十字路で何かの匂いを感じたようです。
「どんな匂いなの?」
「僕と同じ、獣人系の魔物の匂いだわん」
「それじゃ、行ってみましょうか」
「わんわん」
 十字路を右に進むルゥ。敵だったらどうするんですか、と思ったエステルだが口には出さない。どうせ何も考えていないだろうから。
 やがて進む先の通路の左右に、鉄の柵で仕切られた部屋が並んでいた。
「なんだか牢屋みたいね」
「そのまま牢屋だと思います」
 ふと漏らしたアケミの感想に、今度は声に出してエステルも同意する。
「ここだわん」
 その一つの牢屋の前でルゥが止まる。中を見ると、確かに誰かいるようだった。
 黒い小さな翼の生えた広い背中。体を覆うのは青い毛皮。魔法封じの銀色の毛皮で、ぐるぐる巻きにされている。
 背中を向けて寝そべっているので顔は見えないが、肉食獣のような魔物だった。
「ねえ。あなた」
「あん?」
 アケミの声に、ぐるぐる巻きにされた青い獣がごろんと転がってこっちを見た。
「あら。レイズじゃない」
 青い虎男レイズを見て、エステルが顔色を変えずに言う。
「知ってるの?」
「はい。以前、マスターとも戦った事がありますよ」
「へー。大和くんと」
 牢屋の前で呑気に会話する女二人に、レイズは煩そうに視線を吊り上げた。
「エステルとルゥに、見ない顔の女だな。何か用か」
「別に用はないんだけどね」
 軽く返して、アケミはしげしげとレイズの巨体を見返した。保険医の目で。
ところどころ付いている黒いのは血の痕だろうか。下半身、特にお尻からの出血が多いように見える。そのズボンの奥のお尻も腫れてるように見えた。
「もしかして、怪我してる?」
「関係ないだろう」
 ふんと鼻を鳴らすレイズ。面白くない事を聞かれたようだ。
「あなた、ダミアンとかの仲間じゃないの?」
「仲間になるのを拒否したから、捕まってるんだよ」
 それぐらい分かれ、というレイズの苛立ちを含んだ声。
「ルゥくんは知ってた?」
「知らないわん」
 アケミの背後に隠れたルゥがぶるぶると首を振る。牢屋の中のレイズが怖いらしい。
 レイズがこの黒い神殿の魔力に引き寄せられて来たのは、ルゥがあけるり市に出発してから。知らないのも当然。
 そこでレイズを待っていたのは、ダミアン率いるダミアン軍団。仲間になるのを
拒絶したレイズは捕らえられ、その強靭な意志で服従の呪いも跳ね返し続けたのだ。
「ようするに、負けて捕まったのね」
「負けてねー! 全員で袋叩きにされたんだ!」

 アケミの言葉にレイズは猛然と言い返す。いくらレイズでも、1対21ではどうしようもなかったらしい。
「結局負けたんじゃない」
「ふん」
 そっぽを向くレイズ。
「ふーん。それじゃ、助けてあげようか」
「女の情けは受けぬ」
 ピクッと耳を立て、レイズはそれでも拒絶する。
「女じゃなくて、アケミ。それじゃ取り引きにしましょ。ここから出してあげるから、その代わりに私たちを護衛しなさい」
「アケミさん、そう上手く行きますか?」
 横から口を挟むエステルに、アケミはニコッと微笑んでみせる。
「大丈夫、大丈夫。男ってのは、美人の頼みは聞くものよ。それに、この虎ちゃん強いんでしょ?」
 レイズに聞こえるように大声で言うのもアケミの計算だろうか。もっとも小声でも聞こえるのだろうが。
「そりゃ、強さは問題ありませんけどね」
 肩をすくめただけで、エステルはそれ以上は口を紡ぐ。アケミに任せるつもりらしい。
「ほら。あなたも、ダミアンに仕返ししてやりたいでしょ?」
 牢屋の中でレイズはぐるると唸った。ダミアンにされた事を思い出したらしい。ルゥがますます震えている。
「そうだな。虎がこのままやられっぱなしじゃ、示しがつかん」
 レイズは虎だ。誇り高い蒼虎。それがあんな事をされて、黙っていられるわけがない。
「いいだろう。女、お前らに協力してやる」
「だから、アケミ。エステルちゃん、よろしく」
「はいはい。シャープネスクロー」
 結局私がやるんですね、と口の中だけで呟き、エステルは両手の黒い長手袋の上に、鋭い鉤爪を装着。
 サッと一振りで牢屋の鋼鉄の柵を切断し、続いてレイズを縛る魔法封じの縄も切り落とす。
「ナイトメア☆注射ー」
 そこにすかさず、アケミ先生がぶっとい注射器を差し出した。
「ちょっと待て。俺は注射は」
「大きい体して泣き言いわない!」
 ぶすっと容赦なく、晴れ上がったお尻に注射器を打つ。
「うおおおおおーっ!」
 一瞬で体の傷が癒え、お尻の腫れも引き、それだけでなく体中に力と魔力が漲る。魔法の栄養剤は効果てきめん。
「ダミアンの野郎っ! よくも俺のケツを掘りやがったな!」
 ぐおおーと怒りに燃え上がるレイズ。ささっとアケミとエステルは距離を取った。
「はいはい。そのダミアンに仕返しするためにも、私たちをしっかり守ってよ」
「う、うむ」
 恐ろしい虎顔のレイズにも臆することなく、平然と屈託なく語るアケミ。虎も意外なほど素直に頷いた。
「それじゃ、行きましょう」
 一転、引き締めた表情でアケミは奥を目指して進む。
 この黒い神殿の中では、魔力が遮断されていて、戦いがあっても感じる事が出来ない。だから鼻の利くルゥに案内してもらっていたのだ。
でも先に入った魔法天使と正義の魔法少女たちが、ダミアン軍団と戦闘になっているのは間違いない。
「無事でいなさいよ」
 教え子の安否を気遣い、新たにレイズを加えた一行は進む。激闘の繰り広げられる、本殿の間へと。

「はあっ!」
「てやっ!」
 右からホナミが、左からアリサが斬りかかる。ホナミは長包丁、アリサは斧。
「勃起」
 全裸のダミアン。股間のブツがぼんと膨らみ、常識を超えて腕よりも大きく太くなる。
「ふえええーん」
 アリサの盾にされ、床を引きずられるシルクがぶわっと涙を流す。あまりの気持ち悪さに。
ホナミとアリサも気持ち悪さは一緒だが、その気持ちを斬撃に籠めた。狙いはどちらも異常に勃起したちんこ。

 ガキッ!

 狙い過たず包丁も斧もちんこに当たる。だが、魔物の硬い装甲すら切り裂く魔法の刃が、ダミアンのちんこにきっちり阻まれた。薄皮一枚斬れない。
「なにっ!?」
「そんな!」
 さすがに動揺する二人。すると、ちんこがぶんと鞭のようにしなり、慌てて跳び退った。
「ちんちんのガトリング!」
 そこにダミアンから反撃。ちんこがぎゅいーんとゴムのように伸び、猛烈な速さで
突きを繰り出す。ちんこが幾つにも見え、それこそガトリングガンのようだった。
「くっ」
 卍解して黒裸エプロンのみのホナミが、その目にも止まらぬ超スピードでちんこの合間をかわす。
「ええーん」
 アリサは左手一本で首根っこを掴み、盾にしたシルクを前に出してガード。
 小柄なシルクの体に幾つものちんこが迫り−
 ぶつかる寸前で止まり、彼女の着ている白い修道服を捲り上げた。
「えっ?」
 白いパンツを晒され、ぴたっと涙を止めるシルク。そのパンツに、ぎゅいーんと伸びたちんこが迫る。突き破るかのように。
「危ない!」
 横から駆けつけたホナミが、包丁でちんこを叩き落とした。斬れなくても軌道を変える事ぐらいは出来る。
「気を付けてアリサちゃん。あいつの狙いは、魔法天使の……ヴァージンよ!」
 ダミアンの意図に気付き、ホナミが警告を発する。そして油断なく包丁を構えた。
「へっ?」
 しばらくきょとんとしていたアリサだが、すぐに気付いた。魔法天使は処女を奪われると、
天界に帰る。それだけでなく、魔物は犯した相手の魔力を奪える。
 魔力を奪い、天界に帰す。一石二鳥の攻撃。だが戦闘中にそんなことが可能なのだろうか?
「ふふふ。よくぞ防いだ」
 股間に戻ったダミアンのちんこがむくっと頭をもたげる。
「全ての魔法天使の処女は奪わぬ。何人かは残ってもらおう。ちんちんのガトリング」
 そしてまた、ちんちんがぎゅいーんと伸びて猛烈な突き。一本のはずなのに、何本も生えてるように見えた。
 錯覚だ。本体は一本。でもその一本が見抜けない。
「ふえええーん」
 また盾にされたシルクが泣きべそをかく。

 シルクの処女を狙うなら、そこを迎撃する。それがアリサの咄嗟の判断だった。
「はっ!」
 ホナミは可能な限りのちんちんを叩き落とすが、後から後からちんちんは突きを出される。彼女はその場で足止めされてしまった。
「来い」
 そしてアリサとシルクの方向にもちんちんのガトリングが向けられる。
「ええーん。あれ?」
 だがぎゅいーんと伸びたちんこは泣いてるシルクの横を通り過ぎ、アリサも過ぎ去った。
「しまった!」
 気付いたときにはもう遅い。伸びたちんこの先には、3人の倒れている天使。
「きゃー!」「いやー!」「いたーい!」
 黒の神殿に天使の力を封じられ、動けない3人。その股間にちんこが次々に突き刺さり、衣服を裂き、股から血が出た。破瓜の血。
「ちんちん射精」
「きゃあああああっ!」
 そして3人の股からドロッと白濁液がこぼれる。精液。同時に3人とも魔力を奪われる。
「いやーっ!」「こんなっ!」「みんな、ごめーん」
 そして3人の魔法天使が、光となって、黒い天井を抜けて天へと昇っていった。
「ふふふ。魔法天使3人の魔力と処女。なかなかであったぞ」
 ちんこを戻し、むふーと満足気な息を吐くダミアン。そのちんこの先には、確かに血と精液が付着していた。
「なんて奴……!」
「う、嘘……!」
 ホナミとアリサだけでなく、その場ににいた全員が戦慄してしまう。
 ホナミとアリサを牽制しながら、一瞬にして3人の魔法天使を犯す。ダミアンはそれを、一本のちんこで一瞬にしてやってのけたのだ。
 凄い、なんてものじゃない。本物の神業。
「か、勝てる気がしねえ……」
 誰かがボソッと呟いた言葉に、アリサも思わず同意しそうになり、慌てて首を横に振る。
 勝てないと思ったらその時点で負け。それが勝負というものだ。
「あたしは勝つんだもん」
 もう一度兄に逢うために。そして、お兄ちゃんに抱いてもらうために。
 アリサがそう思ったとき、ダミアンがこちらを見る。そして言った。
「ほほう。兄上に抱かれるのが望みか」
「!?」
 ダミアンの言葉に、アリサの心臓がトクンと跳ねた。

「なにあれ!? 信じられない!」
 一瞬で魔法天使3人を犯したダミアンの超早業に、アオイと対峙するエリカもさすがに戦慄していた。
 全裸の時点で只者ではないと思っていたが、これ程とは。
「ふふふ。ダミちゃんのちんこスゴイでしょ」
 唖然とするエリカに、アオイはうっとりと語る。エリカが今まで見たこともない色っぽい表情で。
「あれね、すっごく気持ちいいんだよ?」
「アオイ……あなた、まさか……」
 青くなる。歯がガタガタと打ち合わされる。まさか、そんな。
「うん。あたしね。ダミちゃんにレイプされたんだよ」
「イヤーッ!」
 耳を塞ぎたい。でも出来ない。聞かないといけないから。
「あたしは、ダミちゃんに抱かれたの。女にしてもらったの」

「無理矢理じゃない!」
「うん。最初はね。でもね、すぐ気持ちよくなったよ」
 頬を赤らめ、うっとりと潤んだ瞳は遠くを見る。抱かれたときを思い出すように。
「気持ちいいって……アオイ、あなたは……」
「ダミちゃんだけじゃないよ。他の魔物にも抱かれたの。ほら、いっぱいいるでしょ?」
「!!?」
 堪えていた涙が、耐えていた涙がこぼれてしまう。
 涙を流す親友を見ながら、熱っぽくアオイは語った。
「魔物に抱かれて魔力を奪われる。そして魔力が回復したら、また別の魔物に抱かれる。ずっとその繰り返しだったんだよ」
 はぁ、と熱い吐息。一緒にいた頃には絶対しなかった、艶のある声、表情、そして仕草。
 身をくねらせるその仕草は、強気で男勝りだった四葉 葵からは信じられないほどの艶を感じさせた。淫らでさえある。
「だから。エリカも一緒に気持ちよくなろう?」
 くすっと微笑み、アオイが手を伸ばす。何も持たない手を。でも。もう片手はしっかりと刀を握ったまま。
「アオイ……」
 自然と涙は止まった。霞んだ瞳でアオイを見やる。
「ねえ。一緒に穢れようよ。二人ならうんと気持ちよくなれるよ」
 違う。アオイは、葵はこんな事は言わない。あんな表情はしない。泣いてる私を見て、笑ってなんかいられない。
「アオイを……返してよ」
 誰にともなく呟く。そして、今度ははっきりと、ダミアンに向かって叫んだ。
「ダミアン! アオイを返せ!」
 アリサと向き合うダミアンに、その叫びはしっかりと届く。
「アオイ、下がるがよい」
「えー。でも」
「下がれ」
「はーい」
 アオイが下がり、エリカは顔を上げて、前に出た。ダミアンの前に。そこにホナミが肩を並べる。
「一緒に、取り戻しましょう」
 ホナミの言葉に頷くエリカ。しっかりと力強く。
 そう。これは大切な者を取り戻す戦い。
「許せないよ」
 シルクを盾にしたアリサも並ぶ。ダミアンの発した言葉の衝撃からは立ち直っていた。
 兄に抱かれる。他の人から指摘されるのが、あんなにも衝撃的だなんて思わなかった。
 本当はアリサにも分かっている。兄と妹でエッチするのが、いけないことだなんて。兄と妹が結婚できないことも。
 だけど。アリサはそんな事は乗り越えてるつもりだった。他人から指摘されても、平気なはずだった。
 それが、ダミアンのたった一言で大きく揺らいだ。そんな自分が許せない。
「がんばって……」
 アリサの首根っこを掴まれるシルクが、必死に声を出す。動けないなら、戦えないなら、せめて応援だけでもしたかった。
「がんばれ! 正義の魔法少女!」
 それは、魔法天使全ての願い。その願いを受けて、3人の魔法少女がさっと駆け出す。
「ぷっちんぷりーん」
「ドライヤード・ウォール」
 ユイとチヒロも、魔法天使を守って戦っていた。

 ユイのプリンの防壁と、チヒロの植物の防壁。その二つが、魔物たちの進攻を阻んでいた。
「頑張ってみんな」
「頑張ってください」
 身動きできない天使たちを守りながら、ユイとチヒロも祈っていた。みんなで無事に帰れることを。
 祈り、願い、そして己自身の望み。たくさんのものを背負いながら、3人の魔法少女はダミアンに立ち向かう。
「ローゼスハリケーン!」
 エリカの操るバラの花びらがダミアンを囲み、嵐となって吹き荒れる。その花弁から放たれる赤い魔力の光線。全方位からの射撃。逃げ場はない。
「ちんちんフルガード」
 にゅいーんとちんこの皮が広がり、ダミアンの体を覆い隠してしまう。
 対ビームコ−ティングが施されたちんこの皮。嵐のようなビームも、全て弾き返してしまった。
「はっ!」
「たあぁっ!」
 赤いバラが引き、間髪入れずにホナミとアリサが飛び込んできた。ダミアンは顔もちんこの皮で覆われ、前が見えない。
 だが。
 アリサが振り下ろす斧を左に一歩動いただけで避け、ホナミの横薙ぎに払う包丁も背を後ろに反らせて避けて見せた。
ちんこの皮で顔を覆われ、周囲は見えないはずなのに。
 そしてちんこの皮を戻し、そのちんこがさらにブンと膨らんだ。
「ちんちんのバズーカ」
 ドン! と野太いちんこが勢いよく突き出される。まさにバズーカのように。
「びえーん!」
「きゃあっ!」
 狙いはアリサ。盾にしたシルクのどてっぱらにちんこがぶち当たり、軽量のアリサごと吹き飛ばす。
「アリサちゃん!」
 横目で吹っ飛ぶアリサを見ながら、エリカがレイピアを突き出す。目に。
 その一撃もダミアンは顔を斜めにしただけで避けた。
 その背後に、卍解の超スピードで回り込んだホナミが、包丁を振るう。首に向かって。
 だが今度は前にお辞儀して包丁をかわし、同時にエリカへ頭突き。
「きゃっ!?」
 がつーんと頭がぶつかり、咄嗟に後ろに跳ぶエリカ。
 首への一撃をかわされたホナミは、そのまま背中を狙う。黒い翼の生えた裸の背中を。
 そこへアリサを吹っ飛ばしたちんこが戻り、ぎゅんと下に伸びた。
 ぱしーん。
 ちんこが床を激しく叩き、お辞儀した姿勢のままでダミアンが宙に跳ぶ。ホナミの包丁は一瞬遅れて、空を斬った。
「ローゼスビット」
 宙に跳んだダミアンを、再びバラの花が包囲。だがビームを撃つより早く、
「ちんコプター」
 ダミアンの体が上を向き、ぎゅいーんとちんこが大きく横に回転。バラの花を吹き飛ばすと同時に、空を舞った。
「いやー!」
 体を上向きにして、ちんこをローターに、背中の黒い翼を補助翼に空を飛ぶダミアン。
 純情な少女たちには、もう付いていけない世界。
「うーん。こんな事なら、お兄ちゃんも連れてくればよかったかな」
 そんなダミアンを見上げ、アリサがボソッと呟く。左手のシルクは、ちんちんのバズーカが直撃し、痛みで朦朧としていた。おかげでアリサは無事。

「ゆくぞ。精子の弾丸」
 ぎゅいーんと回転するちんこから、白い弾丸がびゅびゅっと発射。精液の弾丸だ。
「当たるもんですか」
「ローゼスビット」
 ホナミが超スピードで避け、エリカはローゼスビットのビームで迎撃。
「おかっぱエンジェル☆シールド」
 そしてアリサは、ぐるぐる目を回すシルクを盾にして防ぐ。どすんと手に強い衝撃。精子の弾丸はかなり痛いらしい。
「ふえええーん!」
 その精子の弾丸の直撃を受けるシルクは当然痛い。朦朧としていたところを痛みで目覚め、降り注ぐ精液を一心に浴び、一瞬で体中が痣だらけになる。
「はう! はう! はう! 痛いです〜」
 弾丸が命中する度に右に左に顔を揺らし、だーと滂沱するシルク。だが止めてとは言わなかった。これしか役に立てないから。
「ふふふっ」
 ぶーんと飛んでいたダミアンが、ちんこを止めてすたっと着地。
「まだ、勝負はこれからよ」
 不利な一方の気もするが、気にせずにエリカは気合いを振り絞る。ホナミとアリサも。その3人の足元は精液でベトベト。
「もはや、勝負はあったのじゃ。大人しく降伏せよ」
「誰がするもんですか!」
 ホナミはサッと駆け出そうとして……動けなかった。
「う、動けない!」
「なにこれ〜」
 エリカとアリサも同様だった。足が床に付着した精液にくっつき、離れない。
「余の精液は、離れても余の命令通りに動く。今はお主たちを離さぬように捕まえておるのじゃ」
 3人の足元の精子を拡大してみよう。
「つかまえろー」「はなすなー」「わっしょーい」
 ダミアンと同じ姿をした無数の精子たちが、魔法少女たちの足を必死に掴んで離さない。精子もまた生きているのだ。
「えー!?」
 顔を臭そうにしかめるアリサ。他の二人も同様だ。
「ふ、二人ともピュリファイケーションよ」
 すぐにエリカが解決策を思い付く。精子なら浄化の呪文で消せる。
「「「ピュリファイケーション!」」」
 足を掴んで離さない精子に、浄化の呪文が飛ぶ。ついでにシルクに付着した精液にも。
「ぎゃー!」「ダミアン様ばんざーい!」「ちんこに栄光あれー!」
 ダミアンの精子といえど、ピュリファイケーションには抵抗できず、成す術もなく無数の精子たちが消され、大虐殺されていった。
「我が精子たちよ。犠牲は無駄にはせぬぞ」
 その間に、ダミアンのちんこがぎゅいーんとドリル回転し、さらに大きく膨らむ。
 金玉は精子の弾丸を素早く補給し、黒い魔力もちんこの砲口に集まっていった。

「ナイトメア☆ちんこ・フル射精!」

 集まっていた3人の正義の魔法少女に放たれる、膨大な黒い魔力と射精!
 避けられない!
 咄嗟に判断した3人は、こちらも同時に必殺技を放つ。
「マジカル☆ダブルトマホーク・ファイナルブレイク!」
「マジカル☆レイピア・ファイナルローズ!」
「マジカル☆包丁・ファイナルはにはに!」

 斧が、レイピアが、包丁が。それぞれに魔力を凝縮し、三つ合わさってフル射精と激突!」
「「「いっけええええぇぇぇぇぇーっ!!!」」」
 アリサ、エリカ、ホナミ。3人の声と魔力、そして願いが一つとなり、ダミアンの精液をも押し返す!
 だが、正義の魔法少女が、ダミアンの射精を破ろうとしたとき、
「ナイトメア☆ダミアン・パンティーフォーム」
 精を放つちんこの皮の中から、白と青の縞々模様のパンツを取り出し、すぱっと頭に被るダミアン。葵のパンツだ。
 瞬間、ドクッとちんこがさらに大きくなり、回転も早くなる。ぎゅいいーん。
 どばっと放射される精液の量が一気に倍ほども増え、3人の魔法少女の必殺技をまとめて押し流した!
「きゃー!」「いやー!」「ふぇええーん!」
 まとめて滝のような精液を浴び、流される3人の魔法少女と1人の天使。
 精液の滝が通り過ぎたとき、立っていたのはアリサだけだった。シルクを盾にして、なんとか無事だったらしい。
「ま、まだよ……」
 だがそのアリサも精液まみれで、膝がガクガクと震えている。盾にしたシルクはぐるぐると目を回していた。
 ホナミとエリカはアリサの足元に倒れ、同じように目を回している。ホナミの裸エプロンの体を闇が包み、元の白いエプロンと制服に戻った。
卍解が解けたのだ。変身まで解けたわけではないが、もう戦えそうにない。
 ぽたぽたと白く染められたツインテールから、白い滴が落ちる。ダミアンの精液。
 全身を包みイカ臭い匂いに鼻をしかめながらも、アリサの瞳にはまだ闘志が燃えていた。いや。以前よりももっと。
「よくも……お兄ちゃん以外の精液なんか、かけやがって……」
 ギロッと睨みつける視線。その燃えるような瞳を受け、パンツを被ったダミアンが微かにたじろぐ。
「ほう……」
 フル射精の余韻に浸りながら、パンツの奥で冷や汗をかき、ダミアンが戦慄した。
「余を恐怖させるとは。やりおるわい」
 そう。これは恐怖。アリサの眼差し、あのドス黒い瞳を射すくめられ、確かに背筋が震わされた。
「面白い……。正義の魔法少女にこれ程の逸材がおるとは」
 恐怖をむしろ楽しみ、ダミアンはパンツを脱いだ。パンティーフォームを解除し、まだ立ち向かうアリサと対峙する。
 その頃、他の戦いも終わろうとしていた。

「マグマ弾発射」
 黒い虎男、ブラストルの両肩がパカッと上に開き、その下から二門の砲口が現れる。そこから放たれるのは灼熱のマグマ弾。
 ひゅーんと放射線を描いて飛ぶマグマ弾が、ユイのプリンの防壁と、チヒロの植物の防壁に着弾。一瞬にして燃やし尽くし、突破口を開いた。
「メガロマックス・ファイヤー!」
 そこへ牛男のディバイソンが、背中の17門突撃砲を一斉射。魔法天使を傷つけないように
狙いをわざとずらし、ユイとチヒロの至近距離に着弾。
「プリンが!?」「きゃー!」
 軽いユイとチヒロが、爆風のみで吹き飛び、バタッと倒れた。起き上がってくる気配はない。
「よっしゃー」」
「片付いたな」
 ハイタッチで手を叩き合うブラストルとディバイソン。
 今や立っているのはアリサただ一人。

「はぁはぁ」
 肩で息をしながら、アリサは自分の身体を見下ろす。
 ダミアンの射精をモロに浴びて、全身精液まみれ。イカ臭い。
 帰ったらシャワー浴びたいなと、ぼんやりしだした頭で思う。
 左手がずっしりと重い。失神したシルクの首根っこをまだ持っているから。
盾にした彼女も精液まみれ。捨てちゃおうかとも思ったが、放せなかった。まだ盾に使えるかもしれないから。
 右手の斧も精液まみれで、こっちもなんだかずっしりと重い。いつもは軽く感じるのに。
「はぁ、はぁ」
 霞む目で正面を見る。全裸の男。頭のパンツは脱いでいる。本当に全裸。ぷらぷらちんこが揺れている。
 あのちんこを切り落としたい。がんばってあたし、マジカル☆アリサ。
 一歩踏み出す。つるっと滑った。
「きゃっ」
 精液で滑ったんだ。と気付いたときには床に頬がぶつかっていた。
 痛い。また精液でぬるりとする。でもおかげで頭がすっきりした。
「はぁ、はぁ、はぁ」
 立ち上がろうとするが足に力が入らない。頭ははっきりしても、体に力が入らなかった。
「アリサちゃん……」
 声がする。エリカさんだ。
 フル射精がぶつかる寸前にローゼスビットを盾にして、エリカもまた衝撃を和らげていたのだ。
「まだ……だよ」
 サラサラの長い金髪も精液にまみれ、無惨に汚れていた。そんなことは構わずに、ハーフの白人少女は立ち上がる。
 その碧い瞳が見ているのは、ダミアンの後ろ、マジカル☆アオイ。彼女の親友。
「待っててよ。アオイ」
 アオイを取り戻す。これはそのための戦い。
「ほほう」
 エリカの眼差しも、またダミアンの興味をそそるものだった。純粋な友情。
「案ずるな。二人まとめて、余が愛してやる」
「お断りよ……」
 よろよろと精液まみれの手でレイピアを持ち上げる。ローゼスビットは全て散っていた。
 左手でアリサの右手を取る。斧を掴むアリサちゃんの右手。
「まだまだ……」
 よろよろとアリサも立ち上がり、エリカに支えられるようにして、肩を並べる。どっちも立っているだけで精一杯。
「よく頑張ったが。「ここまでのようじゃな」
 ダミアンの言葉に、二人とも歯軋りする。
 魔法天使は全て力を封じられ、ホナミとユイとチヒロも倒された。残ったアリサとエリカもすでに限界。
「お兄ちゃん……」
 出そうになる涙を堪え、アリサがポツリと漏らす。
「助けて……」
 助けを求める自分が情けなかった。でも、それでも、ついお兄ちゃんを求めてしまう。
「助けてよ……。お兄ちゃん」
 口ではそう言っても、助けなど来ない。心のどこかでそう思っている自分がいる。
 だけど。
「お待たせ〜」
 助けは来た。お兄ちゃんじゃないけど。

 アリサたちが入ってきた正面の大きな入り口とは別。右側の石壁に、ぽっかりと小さな入り口が開いている。それまではなかったのに。
 そしてそこから、だだっと複数の人影が走ってきた。
「ナイトメア☆注射器ー」
 アケミ先生の持つでっかい注射器から、普通サイズの注射器が一本ぽーんと発射される。
 注射器はダミアンのでっかいちんこに当たり、ちゅーと注射。大きく肥大化したちんこが見る見る萎んでいった。
「むっ」
 すぐにちんこを大きくするダミアンだが、連闘の疲労か、すぐにとはいかない。
「ヘイスト」
 その間にスピードを上げたエステルがアリサに駆けつけ、彼女の手を引いた。
「エステルさん……」
「逃げるわよ」
 力無く呟くアリサ、ついでにシルクとエリカもまとめて背負い、エステルは走り出した。3人も担いでるのに、かなりの早さ。
だがやはり普段よりは遅い。
「逃がさん」
 黒豹男のサイクスが、エステルに負けない速度で走ってきて、あっという間に追いついた。
「あー、もう。厄介なのがいるわね」
 エステル一人なら逃げられたかもしれないが、今は3人も背負っている。
「ほら行け虎ちゃん」
「俺はレイズだ女」
「私はアケミよ」
 だがそんなときのためのレイズだ。青い虎男が、さっとエステルとサイクスの間に割り込む。
 その巨大な爪と牙を恐れ、間合い外に離脱するサイクス。
「レイズ。逃げ出したか」
「どうした! かかってこんかー! がおー!」
 今まで捕まっていた鬱憤を晴らすように高々と吠える蒼虎。その前に、黒虎が立つ。
「ブラストルか」
「ふん。性懲りも無く」
「うるせー! 来いやー! かかって来いやー!」
「マグマ弾!」
 両肩から発射されるマグマ弾をかいくぐり、接近しようとするレイズ。そうはさせじと、ブラストルはさらに両方の太ももも開き、マグマ弾を撃ち込む。
「砲撃やめー! 魔法天使が傷つくのじゃ」
 ダミアンの叱責に、慌ててブラストルは開いた砲門を閉じた。
 そのダミアンを、ギロッとレイズは睨む。
「ダミアン! 貴様、よくも俺のケツを!」
「うむ。そなたのケツはなかなかのモノであった!」
「殺す!」
 がーっと吠えるレイズだが、後ろに回ったアケミが止めた。
「ちょっと、レイズ。私を守るって約束したの、忘れないでよ」
「分かっとる」
 憮然と吠え、レイズはその場に踏みとどまり、がおーと吠えた。
 格闘でレイズに戦えるものはそうはいない。そして無闇な砲撃はダミアンに禁止されている。
 ダミアン配下の魔物たちは、遠巻きにレイズを包囲するだけだった。
 その頃のルゥくんは。
「わんわん。ミャアちゃんだわん」
 後方で控えるグスタフの横、魚のウォディックに食らい付くミャアに話しかけていた。

「ルゥくんだにゃー」
 ピンクのおかっぱに猫耳の魔法少女ミャア。ルゥを見るや、屈託ない笑顔を向けて、ウォディックから離れた。
「今までどうしてたんだにゃー」
「ボクは、新しいご主人様の下僕になったわん」
「そうなんだにゃー」
「ミャアちゃんも一緒に行くわん」
「お断りだにゃー」
「分かったわん」
 ミャアの説得をあっさり諦め、ルゥはアケミ先生の所に戻っていく。
 ダミアンの配下に包囲された、レイズとアケミ。その包囲網をひょこひょことルゥが抜け、わんわんと歩いて来る。誰も止めなかった。
「ルゥではないか」
 そのルゥを見かけ、ダミアンが声をかける。ちんこはまだ萎んだまま。
「わんわん。ダミアンお兄様。今のボクは新しいご主人様の下僕だわん」
「どうやらそのようじゃな」
 ダミアンをアケミを見て、それから頭を下げる。
「ルゥをよろしく頼むのじゃ」
「いえいえ、どういたしまして」
 ちらっと後ろを見ると、アリサちゅんたちを抱えたエステルは、大分先に進んでいた。魔法天使たちが入ってきた大きな入り口から出て行った。
「レイズ、私たちも脱出よ」
「ちっ。仕方ねーな」
 アケミとルゥを大きな肩に乗せると、レイズもまた反転。ダミアンに背中を向けて走り出す。
「よい。追うでない」
 ダミアンの命令で、魔物たちは追おうとはしなかった。
「ふむ」
 乱入してきたレイズたちが去り、後にはダミアン軍団の魔物たちと、倒れている魔法天使と正義の魔法少女たちが残される。
「さあ、皆の衆。後片付けじゃ。それが済んだら、宴じゃぞ」
 これだけの数の天使と魔法少女を捕獲したのだ。とりあえずは大成功と言えるだろう。

 たったったっ。
 軽快に駆けるエステルの背で、アリサとエリカはぐったりとなり、唇を固く結んでいた。
 やがて見えてくる陽光。すでに赤い。
 長い階段を駆け下りると、大きな入り口がぽっかりと開いている。追撃はない。
 さっと外に飛び出すエステル。空は真っ赤で、西に傾いた陽は今にも沈みそうだった。
「ふっかーつ!」
 外に出た途端、ぐるぐる目を回していたシルクが飛び上がり、ぱぱーんと両手両足を広げた。
「勇気りんりん、元気いっぱい、エンジェル☆シルク」
 どうやら神殿の外に出ると動けるようになるらしい。
「あのちんちん野郎! ぶちのめしてやる!」
 そしてすぐさま黒の神殿の中に走り込み、
「はにゅ〜ん」
 入ると同時に、ぺたっと倒れるシルク。
「はいはい。手間かけさせない」
 アリサとエリカを木の下に寝かせ、シルクを連れ戻して、エステルはその3人に「ピュリファイケーション」をかけてやる。
 あまりに精液臭かったからだ。ぱぱーんと3人ともキレイに汚れと精液が落ちる。

「みんな無事ー?」
 その時、レイズに肩車されたアケミとルゥも神殿から出て来る。
「はい。とりあえず、アリサちゃんは回収しました」
「そう。とりあえず、よかったわ」
「よくない!」
 立ち上がり、ぐっと拳を握ったのはアリサ。
「みんな、あの中にいるんだよ。すぐ助けないと」
「今は無理よ」
 レイズから降り、あっさりとアケミは無理と決め付けた。
「大和くんたちと合流して大勢を整えることね」
「でも……」
「今から戻ってもやられるだけ」
 アリサの手を両手で包み、アケミは優しく微笑んで見せる。
「大丈夫。チャンスは必ずあるから、ね?」
「ぶー」
 口を尖らせながらも、アリサは渋々ながら承諾したようだ。
「あのー」
 それまで黙って見ていたエリカが手を上げる。
「あなたたちは、アリサちゃんの仲間なんですか? 見た所、魔物と悪の魔法少女のようだけど」
隣のシルクもこくこく頷いている。
「ま、いろいろあってね。ちなみに、私は人間よ」
 ぱっと変身を解いて、人間の姿になる明美先生。
「はあ」
「呪いで悪の魔法少女になったのよ。へんしーん」
 そしてまた悪の魔法少女に変身。レイズが「ほう」と唸っている。
「とりあえず、敵じゃないから安心して。詳しいことは移動しながら話すから。
麓に私の車があるから、そこまで行きましょ」
 とりあえず、誰も異存はないようだ。天使のシルクも、ルゥくんを見て「かわい〜」とか言ってる。
「それじゃ、俺はここまでだな」
「ちょ、ちょっと」
「助けてもらった借りは返すさ。じゃあな、アケミ」
 サッと山の中に駆け、レイズの蒼い巨体はすぐに見えなくなった。
「もう。勝手なんだから」
 口では責めながら、アケミの表情は笑っていた。すぐにまた逢えると分かっているから。
「それじゃ、行きましょう。歩けるわね」
 そしてアケミに率いられ、一同は黒の神殿を後にする。
 陽が沈み、黒の神殿も真っ黒な闇に閉ざされる。その黒い威容を振り返り、エリカはしっかりと瞼に焼き付けた。
「アオイ……絶対、ぜったい、戻って来るから」
 潤んだ瞳で前を向き、飛び散った涙が宙に消える。その手を心配そうにシルクが握った。
 こうして魔法天使と正義の魔法少女の一大反抗作戦、オペレーション・サンクチュアリは大失敗に終わった。

 捕らえられた16人と魔法天使と3人の魔法少女は、片付けの済んだ本殿の間に並べられていた。
 魔法で浄化しても、まだイカ臭い気がする本殿。女神像の見下ろす前で、無念の表情で魔法天使たちは倒れ伏していた。
攻め込んできた20にんの魔法天使の内、3人は戦闘中に犯されて天界に帰り、逃げ延びたのはシルクただ一人。
 失神した魔法少女、ホナミ、ユイ、チヒロの3人は縛られ、女神像の足元で転がっている。
 そして、血気に逸る魔物たちの前で、ダミアンが高々にちんこを掲げた。

「諸君、見るがいい。我々の前には、魔法天使といえど敵ではない」
『わー!』
「天界に、いかなる戦力が残されていようと、それはもはや形骸である。
 あえて言おう。カスであると!」
『ジーク・ダミアン! ジーク・ダミアン! ジーク・ダミアン!」
 唱和する同志にちんこを振り、ダミアンは高らかに告げる。
「さあ。今夜は大いに楽しもうぞ」
 そして一斉に、動く事も出来ない魔法天使に飛びかかる魔物たち。
「きゃーっ!」「いやーっ!」「やめてーっ!」
 あちこちで絹を裂く音と、悲鳴が上がっていく。ただし魔法少女には誰も手を出さない。ダミアンのものだからだ。
 残ったダミアン軍団は15名。アオイとミャアは女の子だから、13名の魔物が一斉に天使に襲い掛かり、神に仕える乙女の柔肌を愉しんでいく。
「イヤアアアーッ!!!」
 悲痛な金切り声。早くも誰かが処女を奪ったらしい。
「くっ、ううっ」
 その陵辱地獄の中にオーロラもいた。美しい金髪を床に撒き散らせ、ただただむせび泣く。だが彼女には誰も手を出さなかった。
「ほほう。美しい天使ではないか」
 ダミアンが寄り、彼女の身を抱え、女神像の足元に移したからだ。
「その翼……。あなたは、堕天使の……?」
 ダミアンの黒い翼を視界に納め、オーロラがキッと睨み上げる。
「母上がな堕天使なのじゃ。そなたには、いろいろと役に立ってもらおう」
 オーロラを捨て置くと、ダミアンはまたも陵辱の輪の中に加わっていく。
「きゃああああっ!」「いやっ! いやっ! やめてーっ!」「お願いです! そこは、それだけはヤメテーッ!」
 すぐに処女を奪う者、じっくりと愛撫する者、裸に剥いて視姦する者などなど、魔物はそれぞれ好き勝手に清楚な天使を嬲っていった。
 輸送魔物のグスタフも、その巨体でひとりの天使に圧し掛かっている。
「ひいいいっ!」「助けて! 助けてええぇぇぇっ”!」「御慈悲を! どうか、どうか御慈悲を!」
 叫びに混じって血の匂いが充満する。破瓜の血と、勢い余って傷つけた血の匂い。爪が、牙が、天使の柔肌に突き刺さっていた。
「ひぎいいぃっ!」「死ぬーっ! 死にますーっ!」「ぎゃあああっ!」
 泣き叫ぶ声が響く中、魚のウォデックも自らの獲物を定め、ヒレでびっちびっちと飛び跳ねていった。
「ふふふ。たっぷり可愛がってやるぞ」
 銀色の深海魚のような魔物に言われ、その天使はぎゅっと目を瞑る。
 ナイトメア☆ウォディック。父は魔王、母は魚の魔物。
「お前には、俺の子を産んでもらおう」
 目を瞑った天使がガタガタと震える。まだ幼さを残した少女のようだ。
 そしてウォディックはビシッと言う。
「さあ。卵を産め」

(つづく)