「ご主人様ぁ……」
 腕の中でぐったりとなったリリムが身を寄せる。汗にまみれ、ぼんやりとした瞳で。
 ベッドの上であぐらをかいて座る大和の上に座り、身を寄せているリリム。二人とも全裸。そして下半身はしっかりと繋がっていた。
 正面座位で交わりながら、ぐったりとしたリリムを抱きとめ、大和はそのピンクのツインテールを撫でてやる。
「あんっ……んっ」
 もう何度絶頂し、射精を受けただろう。何度も達し、すっかり敏感になったリリムは、髪の毛を撫でられただけでも感じてしまう。
「うふぅ……んっ……」
 燃えカスのような快感に胸をときめかせながら、リリムは大和の胸に頬を寄せた。汗にまみれ、リリムのキスマークで赤くなった裸の胸。
 そしてそっと目を閉じる。朝から交わって、もう昼過ぎ。昼飯も食べずに交わり続け、性欲よりも先に体力が限界だった。
 リリムの胎内のペニスも、何度もの射精で、すっかり萎んでいる。
「好ーき」
 体の内と外に大和を感じ、リリムは安心しきった表情で、すやすやと眠りに入った。大和のペニスを受け入れだまま。
「はぁ」
 くーと眠るリリムを胸に抱き、大和は熱いため息を吐く。疲労と満足、そして激しい性交の余韻に。
 閉め切った部屋は湿気に満ち、抱き合うだけで汗が流れる。その熱さの中、大和に抱かれてすやすや眠るリリム。よっぽど疲れたのだろう。
 ぼんやりした頭で、大和は熱いなぁと今更ながら実感する。
 夏の暑ささえ及ばない熱さ。
 でも。夏休みはまだ始まったばかり。
「おやすみ」
 寝入ったリリムをベッドに横にして、ようやく離れたペニスが外気に触れてぶるっと震える。
 ずっと繋がっていたリリムの陰唇は赤く染まり、とろとろと白く濃い汁を流していた。
 ちょっと悩んだが、大和は悪魔の姿になると、「ピュリファイケーション」をかけてやる。
 汗に汚れた体がきれいになり、こぼれる精液も消えた。胎内の精液も。
「よし」
 人間の姿に戻ると、きれいになったリリムの頬にキスし、パンツだけ履いて、気だるい気分で部屋を出た。シャワー浴びたい。

「ん?」
 部屋を出て、階段を降りようとして大和は気付いた。階段の一番下、リリスが座っている。
「どうした」
 声に肩をびくっと震わせ、振り向くリリス。真っ赤な顔で、スカートをもじもじと掴んだ。
「ははーん」
 ピンと来た大和は、赤い顔のリリスに命じる。
「スカート上げてみろ」
 こくっと頷き、ピンクのふりふりドレスの長いスカートをたくし上げるリリス。
「なんだ。もうそんなにして」
 魔物と悪の魔法少女はパンツを履かない。魔界にはパンツを履く習慣がないのだ。
大和は以前、パンツを買ってやったこともあるが、ワイツに破られてそのまま。

 ともあれ、上げたスカートの中、リリスの陰唇はピンクに染まり、見て分かるほどしっとりと濡れている。
 どうやら、大和とリリムの激しく交わってる間、彼女は悶々としていたらしい。
 大和の部屋は結界が張ってあるので声は外に漏れないが、それだけにいろいろと想像をかきたてられる。
 階段を降りた大和が、スカートを上げたままの潤んだ瞳のリリスの髪を撫でてやる。ピンクのセミロングの髪を。
「あんっ」
 それだけでリリスは腰を落とし、その場に座り込んだ。上げていたスカートがふわっと拡がり、ゆっくりと落ちていく。
「あーうー」
 もじもじと指を絡めながら、リリスは何かを訴えるように潤んだ瞳で見上げてくる。
「やりたい?」
 こくっと頷くリリス。それが精一杯の感情表現。
「いいよ」
 リリスの頭に手を置いて、ピンクの髪をよしよしと撫でると、それだけでビクビクと小刻みに震えた。
 敏感なリリスに苦笑し、大和はその身をよいしょと持ち上げてやる。軽い。
 リリムとずっと交わってて正直かなり疲れてるが、リリスの可愛さにまた肉欲がむくむくと頭をもたげてきた。
「あ、あのー」
 大和にお姫様抱っこされ、もじもじしながら、リリスが赤い顔で言う。
「リリスはー、へんなんです〜」
「へん?」
「はい〜。なんだか、もぞもぞうずうずしちゃうんです〜」
 リリスの可愛らしい説明に、つい笑ってしまう。
「大丈夫。リリスは女になったんだよ」
「女に〜? でも、リリスはずっと女です〜」
「溜まってきたなら、自分で慰めるとかしない?」
「たまる〜? なぐさめる〜? なにがです〜?」
「うーん。リリス、自分でしたことある?」
「何をですか〜?」
「いや、もういい」
 考えてみれば、リリスは自分が襲うまで処女だった。そういう性的な知識は一切なかったのだろう。自慰の経験もないようだ。
 ちなみにリリムとありさも、自慰は全く知らない。知る前に、大和に抱かれる悦びを教えられたから。
だから3人とも、性的欲求を満たすときは大和を求めてくる。
 エステルだけは別。彼女は恋を知っているから。
 ともあれ、リリスを抱えた大和は、一階の寝室まで連れて来る。元は両親の部屋で、今はリリスたちの部屋。
 その部屋の大きなダブルベッドに、リリスを寝かせ、パンツを脱いだ。使い込んだペニスは、萎んでぷらぷら揺れたまま。
 以前は両親の寝ていたベッド。そこで今、息子が女を抱く。妹を抱いたことさえあった。
 なんだか背徳感に背筋がゾクゾクしてしまう。そして赤い顔でうっとりと頬を染めるリリスに、覆い被さっていった。
「あっ……」
 ピンクのドレスのごわごわした肌触り。その下は、柔らかい肉の感触。
 服を着たままのリリスに、上からぎゅっと抱きつく。
「んー」
 全身を抱かれると、汗臭い体臭に全身を包まれるかのようだった。すでに汗まみれの大和。ドレスの下のリリスの肌も汗ばんでくる。
「リリス、その服で熱くない?」

 夏にも関わらず、リリスの衣装はそのままだった。長袖に長いスカートのピンクのドレス。
「大丈夫です〜。温度調節が出来ますから〜」
 魔界の服だけあって、多少の温度差は平気らしい。
「でも〜、今は〜、熱いです〜」
 熱に浮ついたようなぼんやりした顔に汗を浮かべ、リリスが熱い吐息を漏らす。大和に抱かれ、体が自然にどんどん熱くなっていた。
「やっぱり〜、へん〜」
「変じゃないよ」
 上から唇が重ねられる。
 口が触れた途端、リリスの顔がカッとさらに赤くなり、体温が一気に上がったような錯覚を覚えた。
 大和は口を強く押し付け唇を重ねながら、ベッドに広がった髪を撫でていく。さらさらのピンクの長い髪。
「んっ。んんー」
 さらさらの髪を撫でていくと、体の下のリリスがもぞもぞと身悶えた。
 悶々としている間にすっかり敏感になり、髪の毛だけでも感じるらしい。
 口を離し、大和はくすっと笑った。なんだかリリスの反応が可愛い。
 ごろんと横になり、リリスを横抱きにして、ピンクの髪を撫でてやる。
 疲労感が残り、ペニスは萎んだまま。もう少し休みたかったが。
「ん〜」
 腕の中でリリスがもぞもぞと悶え、潤んだ瞳を向けてくる。
「はう〜」
 そして大和の胸に熱い息を吐きかけてきた。
「我慢できない?」
「もっと〜」
 すりすりと自ら火照った体を寄せ、リリスは必死に訴える。
「うーん。でも疲れたし」
「いじわる〜しないで〜」
 悶える身をくっつけるリリスに、大和は心の中で笑みを大きくした。
 普段はのんびり屋のリリスが、こんなにも積極的に求めてくる。よっぽど溜めていたのだろう。
 可愛いな。
「それじゃ、頑張るか」
 リリスの可愛さに奮起し、大和は疲れた体を鞭打った。
 横からちゅっちゅっと頬にキスし、スカートの中に手を伸ばし、濡れそぼった花弁を指で弄ぶ。
「あんっ」
 ようやく疼く所に触ってもらえ、リリスはハァと息を吐く。でもまだだ。まだ足りない。
 もう片手でドレスの上の膨らみを揉む。手が呑み込まれそうな柔らかな乳房。カチカチに固まった乳首を手の平に感じる。
「可愛い」
 こんなにも身体を火照らせているリリスが可愛くて愛しくて。もっと奥まで触れたくなる。
 花弁をなぞっていた指を、肉ヒダの奥まで突き入れる、まずは小指から。
「んっ。アッ、あは〜」
 ペニスよりも小さな小指が大事な部分に潜り込み、リリスの腰が大きく揺れた。
「あっ、あっ、アアッ」
 切ない息が断続的に漏れ、小指が肉ヒダを抉るたび、腰がビクッと跳ねる。
 爪が柔らかい肉壷をなぞり、ガクガクと背筋が震えた。
「あああっ、あうっ。あん〜」
 爪で内側の肉を引っ掻けないように気を付けながら、大和は股間に挿れた小指をぐりぐりと掻き混ぜていった。
「んん〜。んー。んんん〜。はう、はう〜」

 ぎゅっと大和に抱きつきながら、リリスの切ない息gははっきりと喘ぎに変わっていく。
「可愛いよリリス」
 喘ぎ悶えるリリスを全身で感じながら、大和もこそばゆい想いだった。
 自分の愛撫で淫らに感じてくれる。こんな嬉しいことはない。
「あぐうっ、あうっ、アア〜」
 リリスの喘ぎに、大和の股間もびくんと反応していく。萎えていたペニスに、力が戻るのを感じていた。
 ぎゅいん、ぎゅいん、ぎゅいーん。
 そろそろ小指だけじゃ満足できないだろう。
 胸から手を離すと、硬さを取り戻したペニスに指を添え、スカートの中、熱く潤む花弁に導いた。
 そして小指と入れ替えに、ペニスを突き刺してやる。
「アアアーッ!!!」
 リリスの背筋がビリッと仰け反り、さらにきつく抱きついてくる。
 横向きに抱き合いながら、大和はペニスをリリスの肉壷に収め、目を閉じて、ふーと息を吐きながら、その女肉を愉しんだ。
「ああっ、アアアッ、あぐううぅ〜」
 夏はまだ始まったばかり。熱い熱い夏が。

 大和たちが淫靡な夏を送っている間にも、激闘の夏は続いている。
「わんわん、ここだわん」
 魔法天使たちが入っていった黒の神殿。少し遅れて、新たな訪問者が3人姿を現す。
 明美先生の変身したナイトメア☆アケミとルゥ、それにエステルの3人である。
 車で来た割には、電車のありさよりもそれ程遅れていない。
「ここね」
 黒いピラミッドを見上げ、魔女のような格好になったアケミはその黒い魔力に美しい眉をしかめた。
「魔界の建造物のように見えますね」
 同じく魔女のような格好のエステルが意見を述べる。
「あそこから入るみたいね」
 正面にぽっかりと大きく開いた入り口を見て、アケミは横にいるルゥに向いた。
「ねえ。他に入り口はないの?」
「裏に裏口があるわん」
「じゃあ、そこから入りましょう」
 というわけで、アケミたち3人は裏口から入ることにした。内部を知っているルゥがいるのは心強い。
 てくてくと巨大なピラミッドの後ろに回ると、確かに小さな入り口がぽっかりと開いていた。
 こうして3人は裏口から入っていく。

 その頃、ピラミッドの中心部、広大な広場の本殿では、ダミアンが魔法天使たちに呼びかけていた。
「余、ダミアンの名において、休戦を申し込む」
 ……
 ぽかーん。
 ちんこをマイクにしたダミアンの歌にぽかーんとしていた天使たち。ダミアンの呼びかけにも反応しない。
「休戦でよいのじゃな」
 ハッ。
「お断りします!」
 魔法天使の一人が声を出すと、全員がはっとなり、口々に反対を表明した。
「だれが、へんたいと休戦するものですかー」

『そうよ、そうよ』
「邪悪な魔物は許しません」
『そうよ、そうよ』
「この、ちんこぷらぷら野郎が。ぶっ殺す」
『そうよ、そうよ』
「目んたまに指入れてかきまわして、腸をぶちまけて引き伸ばして、ちんちん切り落として、金玉蹴り潰してやる」
『そうよ、そうよ……えっ!?』
 声を揃えていた天使たちも、ピタッと止まってしまう。マジカル☆アリサの言葉に。
「聞くがよい」
 すぐに受け入れられるとはダミアンも思っていない。ちんこを手に説得を続ける。
「余が目指すのは、優しい魔王じゃ。そなたたちに、害は加えぬ」
「ふざけないで!」
 毅然と言い、肩を怒らせてマジカル☆エリカが前に出る。
「私の友達を、葵はどうしたの! 返しなさいよ」
「おお、そうじゃったの」
 ダミアンが後ろを向くと、一人の少女がすっと前に出て、横に並んだ。
「マジカル☆アオイ、しゃきっと行くよ」
 ショートヘアに青いリボンとドレス、刀を腰に差したマジカル☆アオイだ。
 その姿を見た瞬間、エリカの目が一気に潤む。
「アオイ! 待ってて。すぐ助けるから!」
「えー。いいよ、別に」
 潤んだ瞳で呼びかけるエリカに、アオイはひらひらと手を振って見せた。
「ダミちゃんといると結構楽しいし」
 と、横にいるダミアンのでっかいちんこをばしっと叩く。大きくぷらぷら揺れるちんこ。
「アオイ! 家族だって心配してるのよ!」
「心配させとけばいいのよ」
「こらー! ダミアン!」
 アオイと話しても埒が明かないと思ったか、エリカはちんこを叩かれてぷらぷら揺らすダミアンに怒鳴る。
「何が害は加えないよ! アオイを返しなさい!」
「うむ。そなたらが、休戦を受け入れるなら、返してやろう」
 ニヤッと笑いながら応えるダミアン。ちんこを叩かれてくすぐったいのだ。
「うっ」
 一瞬固まるエリカ。一瞬だけ。
「誰が……休戦なんかするものですか!」
 レイピアを抜き、前に向ける。ダミアンのちんこへと。もう恥ずかしいどころじゃない。
「全員、突撃ーっ!」
 エリカを先頭に、全ての魔法天使と正義の魔法少女たちがズドドッと突撃。
 本殿の広場の入り口から、奥の女神像の足元にいるダミアン軍団目指し、乙女たちの集団が走って行く。かなり怖い。
「仕方ないのー」
 ダミアンが手を上げ、魔物側も臨戦態勢に入った。
 天使側が魔法天使20名に正義の魔法少女5名の総勢25名。
 対するダミアン軍団はアオイも入れて総勢21名。
 25対21。数の上ではダミアン側が不利だが。
「黒の神殿よ」
 女神像の足元の黒の魔力球。自身よりも大きな球に、手を触れてダミアンが呼びかける。
「魔法天使の力を封じ込めよ」
 瞬間、黒い波動が神殿を満たし、
「きゃああっ!」

 悲鳴を上げ、ばたばたと魔法天使たちが倒れていく。広場の丁度中間辺りで。
「ど、どうしたの!?」
 倒れる天使たちに、目を丸くして立ち止まるアリサ。他の魔法少女たちも。 20名の魔法天使全てが倒れ、立っているのはアリサたち正義の魔法少女5人のみ。
「ううっ……」
 力なく呻き、黒い石畳にその美しい身を横たえる天使たち。誰もが立ち上がることすら出来なかった。オーロラもシルクも。
「こんな……どうしたの!?」
 エリカの疑問に、律儀にもダミアンは応えてやる。
「この黒の神殿は、<聖>を封じるための神殿。その力を、神殿全部に及ぼしたのじゃよ」
「つまり……外に出れば元に戻るのね」
 アリサが小声で呟く。緊張した面持ちで。
「そうはいかないようよ」
 ちっと舌打ちするのは包丁を持ったホナミ。魔物たちがこちらを包囲するように距離を狭めてくる。
 狼男、黒豹男、黒い虎男、背中に大砲を幾つも背負った牛男、亀、魚、その魚に飛びつく猫耳魔法少女などなど。
 20名の魔法天使が一瞬で力を封じられ、戦いは一気に5対21になった。
残った5人の魔法少女の顔に、焦りと緊張が浮かぶ。短髪にブルマーのチヒロなどはもう泣きそうになっていた。
「逃げて……」「逃げてください……」
 倒れ付す天使たちが、必死に呼びかける。全員が同じ言葉を。後ろの大きな
入り口はまだ塞がれていない。
 今ならまだ逃げられる。魔物たちもそのつもりなのか、後ろを塞ごうとはしなかった。
「ここは私が残ります……。皆さんは、逃げてください」
 天使だけではない。プリンを持つ手を震わせ、ユイも同じ事を言う。アリサよりも小さいが、学校の教師の、プリンの妖精のようなユイ。
「冗談」
 全員の視線を受け、アリサがニヤッと笑って見せた。この中では最年少のアリサ。
誰もが逃げ延びてほしいと願っていたが、アリサはそれを良しとする魔法少女ではない。みんなを見捨てて、自分だけ逃げるなど。
「こっちが5人で、向こうは21人。一人で四人倒して、残り一人は全員で倒す。先生、計算合ってます?」
「そうですね。アリサさんの計算は合っています」
 アリサの答えに、ユイは正解をつける。彼女は古典の先生だが。
「ごめん。アオイは私に任せて」
 エリカの言葉に、残る四人は頷いた。魔物たちの中に、刀を抜くアオイの姿もあった。
「それじゃ」
 アリサの目がギラッと輝く。目前に迫る魔物の群れを見据え。
「マジカル☆アリサ、ちゃきちゃき行くよ」
 その言葉を合図に、5対21の戦いが始まった。

「ナイトメア☆モルガ、もるもると参上」
「ナイトメア☆レオブレイズ、獅子っと参上」
 先陣を切って、鋼鉄の芋虫と赤い獅子が突進してくる。
「ローゼスビット!」
 ふわっとエリカのスカートが広がり、バラの花が舞っていく。
「シュート!」
 バラの花が赤い魔力の光線を突進してきた二体に放ち、どーんと吹き飛ばした。宙に飛ぶ芋虫と赤いライオン。
「エリカ!」

 その爆発をぬって、突っ込んでくるアオイ。
「アオイ!」
 がしゃっと打ち合わさるレイピアと刀。
「ふふっ。ねえ、エリカ。気付いていた?」
 至近距離でかつての親友と刃を合わせながら、アオイは笑っている。一緒に遊んだあの頃のように。
「あたしはね、ずっとエリカと戦ってみたかったの。全力で!」
 がっ、と刀が細いレイピアを押し、エリカは後ろに跳び退る。そのすぐ後ろには倒れている天使たち。
「アオイ……」
 呆然と呟き、エリカはアオイを見据えた。いつもと同じ、自信満々に刀を構える親友を。
「私もね、同じだったよ」
 そしてニッとエリカも笑みを浮かべ、レイピアを突き出す。
「アオイと、戦ってみたかった!」
 突きを横薙ぎにしてかわし、逆に無防備になった胴にアオイは突きを入れようとする。
 だが攻撃から一転、咄嗟に後ろに飛んだ。
 アオイが立っていた場所に真上から赤い光線が飛ぶ。ローゼスビットだ。
「それじゃ、お互い様だね」
「そうね」
 ニヤッと笑うアオイに、エリカも笑ってみせる。楽しく遊んだあの頃のように。
「それじゃ」
「行くわよ」
 互いに刃を向けながら、声を合わせてアオイとエリカは叫んだ。
「「魔法少女バトル、レディゴーっ!」」

「ナイトメア☆カノントータス、亀と参上」
「ナイトメア☆シーパンツァー、ヤドカリと参上」
 背中に大口径の突撃砲を装備した亀のカノントータスと、同じく大砲を背負ったヤドカリのシーパンツァー。
 後方から二体が同時に砲撃し、ちゅどーんと魔力砲弾が飛んでいく。
「ぷっちんプリン、ぷりぷりプリーン」
 ユイがプリンを手に持って祈ると、巨大なプリンが壁となって立ちはだかり、砲弾を呑み込んだ。爆発さえも起きない。
「砲撃は控えよ。魔法天使たちが傷つく」
 ダミアンに命令され、カノント−タスとシーパンツァーはすごすごと引き下がった。砲撃を禁じられては、この二体にはやる事がない。
「ナイトメア☆グスタフ、輸送に参上」
とは言ったものの、輸送専門魔物のグスタフにはやることがない。大人しく、ダミアンの奥に控えていた。
 その横では、3匹の魚がびちびちと飛び跳ねている。
「ナイトメア☆ウォディック、魚と参上」
「ナイトメア☆モサスレッジ、ぎょぎょっと参上」
「ナイトメア☆ディプロガンズ、鉄砲魚と参上」
 深海魚のようなウォディック、碧の魚のモサスレッジ、下部に砲塔を装備した鉄砲魚のディプロガンズ。
3体揃ってびちびちと石畳の上で飛び跳ねていた。
「にゃーにゃー。お魚にゃー」
 そこに猫耳魔法少女のミャアが飛びつき、ぱくっとウォディックの尻尾に噛み付く。
「こら−! 俺を食べるなー!」
「にゃーにゃー。美味しそうにゃー」
「だから、食べるなっての!」
 やることがない魚3匹と、食らいつく猫耳魔法少女でした。

「ナイトメア☆ワイズ、フクロウと参上」
「ナイトメア☆フライシザース、ハサミ鳥と参上」
 広場は高さもかなりあり、そこを悠然とフクロウのワイズと、大きなハサミを持つ赤い鳥のフライシザーズが飛んでいる。
「ここがよろしいな」
 戦場全体を見回していたワイズが、急降下していく。敵のもっとも弱い所に。
 植木鉢を握り締め、がたがた震えているだけのチヒロ。そこに翼に搭載した爆弾を落としていく。急降下爆撃。
「きゃあっ!」
 空から落ちてくる爆弾に気付いたときにはもう目の前。目を閉じて、植木鉢を腕に抱いて身を伏せる。こんなときでも、チヒロは植木鉢を優先していた。
「マジカル☆包丁」
 そこへ栗色の長い髪をはためかせ魔法少女が華麗に跳び、空を切り裂く包丁が一閃。左右に割れた爆弾がちゅどーんと宙で爆発。
「大丈夫?」
「は、はい……。ありがとうございます」
 ホナミに呼びかけられ、チヒロは涙を浮かべながらも立ち上がる。そうだ。泣いてる場合じゃない。
「爆撃もやめー。魔法天使が傷つくじゃろう」
「サー、イエッサー」
 ダミアンの指示を受け、ワイズも後方に下がる。
 代わってフライシザーズが、かっちゃんかっちゃんとハサミを打ち鳴らし。空中から襲い掛かってきた。
 今度は悲鳴を上げるだけでなく、植木鉢を手にチヒロが立ち向かう。
「バインディング」
 植木鉢から緑の蔓がするすると伸び、たちまちフライシザースを絡め取った。翼もハサミも。
「ぬおっ。離せ」
「はい」
 するっと蔦が離れ、ぽてっと落ちるフライシザース。そこをホナミのしなやかな脚がばしーんと蹴り飛ばした。
「ぐへっ」
 すぽーんと飛んで、黒い石壁にぶるかって落ちるフライシザース。頭の上を星が回っている。
「やったね」
「はい」

 そしてマジカル☆アリサは。
「マジカル☆ダブルトマホーク」
 手にしたバトンを斧に変え、黄色い電気ネズキを迎えっていた。
「ぴっかー、ぴかぴかー(ナイトメア☆ピカチュウ、ぴかっと参上)」
 電光石火の素早い動きで先手を取るピカチュウ。さっと横に跳んでかわし、その可愛い顔に斧を振り下ろす。
 その斧をアイアンテイル−鋼鉄の尻尾で受け止め、膨らんだ頬にビリッと電気が走る。
「ぴっかー」
 小さな体から強烈な電気が迸る。10万ボルトだ!
「きゃーっ!」
 まともに浴びてしまい、ビリリッと痺れてしまうアリサ。効果は抜群だ。
 さらに畳み掛けるように10万ボルトを放射。
「このっ」
 間一髪痺れから回復したアリサは、足元に左手を伸ばして、持ち上げる。倒れていた天使を。
「ふええええーん」
 その天使−おかっぱ頭にシルクの寸前で、電撃は消えた。
「へー。<聖なる加護>はまだ使えるんだ」

 魔法天使を守護し、邪悪な魔法を打ち消す<聖なる加護>。黒の神殿により天使の<聖>の力を封じられても、まだ効果はあるらしい。
 それが10万ボルトを打ち消したのだ。
「ふえええーん」
 首根っこを掴まれ、盾にされたシルクはただただむせび泣いている。彼女を選んだのは、たまたま足元に倒れていて、小柄で軽そうだったから。
「ありがとう。えーと」
「シルクですー。どうぞ、このまま盾にしてくださいー。ふえーん」
 泣きながらも、シルクは身を張ってアリサを守る覚悟だった。動けないなら、せめて何かの役に立ちたかった。
「そうか……その手が……」
 倒れていた天使が顔を挙げ、近くの魔法少女に呼びかける。
「どうぞ、私を盾にしてください」
 と言われても……。アリサ以外の四人は迷った挙句、盾にはしなかった。
 さすがに、それは、ちょっと。
「ぴっかー」
「ふえええーん」
 結局盾にされたのはシルクだけで、脚をずるずる引きずられピカチュウの前に突き出される。
 いくらシルクが小柄でも、アリサよりはわずかに背が高い。左手一本で首根っこを掴まれると、どうしても脚を引きずってしまうのだ。
「がんばってください〜」
 しくしく泣きながら盾にされたシルクが励ます。その声をアリサはしっかりと聞いていた。
「うん。あなたの犠牲は無駄にはしない」
「ええーん」
「ぴかー」
 10万ボルトは<聖なる加護>に防がれるだけと判断し、ピカチュウが電光石火で突進してくる。
 シルクを片手で持ったアリサ。どうしても動きは遅くなると踏んで接近戦を仕掛けたのだ。
 だがアリサの行動は、ピカチュウの予想を遥かに超えていた。
「えいっ」
 シルクをぶん投げたのだ。こっちに。
「あ〜れ〜」
 涙を飛ばしながら、黒いおかっぱ頭が突っ込んでくる。
「ぴかっ」
 身軽なピカチュウはぎりぎりで避けたが、シルクはそのまま石畳にごっつんこ。
 そこに駆け寄ったアリサの斧の一撃。これもさっと跳んでかわす。
「ぴかー」
 ずささっと後ずさりながら、ピカチュウは怒りに眉を吊り上げた。
 接近戦では邪魔と判断した天使をすぐにぶん投げる。アリサの冷徹な判断に怒っているのだ。
 勝つための判断としては問題ない。むしろ正しい。だがあまりにも、仲間をないがしろにしすぎる。
「ぴっかー!」
 ばちばちっとピカチュウの全身を電撃が包む。そして怒りに任せての突撃。 ボルテッカだ!
「マジカル☆スパーク!」
 アリサもまた、全身を赤い魔力に包んで突撃!
 真正面からぶつかるボルテッカとマジカル☆スパーク!

 どごーん

 爆発、閃光、そして衝撃。

「ぴかー」
 爆煙の中から、ピカチュウが飛び出し、後ろに滑っていく。激突の衝撃で流されたのだ。
 はぁはぁと息を吐くその黄色い体は、あちこちボロボロだった。ボルテッカは反動で本人にもダメージがくる技。
「たあっ!」
 そして爆煙の中から、アリサが飛び出してくる。前に。激突の衝撃にも負けず、前に飛び出したのだ。
 かつて兄のナイトメア☆ヤマトと戦ったとき、アリサは二度敗北した。その二度とも、
ナイトメア☆スパークとマジカル☆スパークの激突後の隙をつかれてのものだった。
 だからアリサは、激突の衝撃後も油断しないように心がけていた。
 今度はアリサが、激突後に隙をつく番。
 ボルテッカの反動でダメージを受けたピカチュウ。その大きな目に、魔法の斧が突き刺さった。
「ぴか−!」
 左目をさっくり抉られ、飛び上がるピカチュウ。そこにもう一撃斧が叩きつけられる。今度は左目。
「ぴっかー!」
 叫ぶ大きな口に三撃目。舌が裂け、歯が飛び散り、斧が喉の奥まで突き刺さる。
 ピカチュウの大きな可愛い顔が、無惨に両目を深く抉られ、口が切り裂かれ、頬の電気袋からバチバチと電撃が流れ出た。
 後ろ向きにばたっと倒れる黄色い電気ネズミ。そこにとどめの一撃。斧がざくっと丸いお腹を裂き、腸が飛び出す。
 ビクビクと振動し、口から白い泡と電気が吹き出て、ピカチュウはがくっと絶命した。
 その身がただの黒い闇になり、消え去る。
「残り20。ふー」
 次の瞬間、アリサはハッとなり、足元のシルクを持ち上げた。
「ふえええーん」
 そこに魔力弾が高速で飛来し、先程と同じように<聖なる加護>により消え去る。
「ほう。よく防いだ」
 弾丸の飛んだ先、白い狼男が感心したように呟く。その獰猛な顔に射撃用スコープを
内臓したヘッドギアを被り、手には狙撃用のロングレンジスナイパーライフル。
「ナイトメア☆ケーニッヒ、野生の狼と参上」
「ふん。狼か」
 かつて戦ったワイツを彷彿とさせるような狼男に、アリサは鼻を鳴らす。
 だが油断は出来ない。敵を倒してホッとしたところを狙撃するような奴だ。
「狼を知ってるような口振りだな」
「前に、ワイツっていうのを、ぶちのめしたから」
「ほほう」
 ケーニッヒの、狼の大きな口が左右に広がる。笑ったのだ。
「ワイツを倒すほどか。なかなかの相手と見た」
 ライフルを降ろし、ヘッドギアを上げ、ケーニッヒはその獰猛な野獣の顔を剥き出しにした。
 アリサも、右手に魔法の斧、左手に盾にしたシルクを持ち、油断なく慎重に相手を見据えた。
「ふえええーん」
 泣くシルクを挟んで、アリサとケーニッヒが対峙する。

 ホナミとチヒロとユイの3人は、協力して魔物の攻勢に耐えていた。
「ナイトメア☆ウネンラギア、射撃に参上」

 そこにまた一体、二本足の青い小型恐竜魔物のウネンラギアが射撃を加える。
大きさは人間並みで顔はトカゲのよう。両手にハンドガンを装備し、尻尾はテイルアサルトライフルになっている。
 その尻尾のライフルがどかどかと魔力弾を発射。
「ぷりんぷりん〜」
 ユイのプリンが弾丸を呑み込んで貫通もさせずに防ぎ、チヒロの植木鉢から植物の蔓が伸びて、動きを封じようとする。
「危ない」
 後ろを向いたまま、蔓に気付かないウネンラギア。赤い獅子レオブレイズが慌てて駆けつけ、爪と牙で蔓を噛み切る。
「おお、すまない」
 レオブレイズと並んでハンドガンを構えるウネンラギア。
「もるもる」
 そこにモルガがさらに突撃。プリンの防壁に分厚い頭から突進し、頭部のガトリング砲を連射。
 ゼロ距離射撃でプリンの防壁を粉砕すると、待っていたのはホナミの包丁だった。
「えい」
 ずばっと包丁が頭に突き刺さる。だがモルガの頭部装甲は厚い。包丁は装甲の半ばで埋まってしまう。
 それを、アオイと刃を打ち合わせるエリカも見ていた。
「アオイ。夏休みの宿題、見せてやんないわよ」
「うっ」
 一瞬アオイの動きが止まる。その一瞬に、エリカはローゼスビットをモルガに向けた。
「ホナミ!」
 エリカの声に包丁を抜いてさっと離れるホナミ。
「ローゼスハリケーン!」
 バラの花が嵐となってモルガを包み、四方八方からビーム乱射。バラの巻き起こすビームの嵐に呑み込まれ、モルガの装甲が砕かれ、本体まで貫かれる。
「も、もるもるー」
 そしてモルガも黒い闇になって消え去る。ダミアン軍団残り19人。
「エリカ! 宿題写させて!」
 慌てて我に返り、がっと打ち込むアオイ。レイピアで受けながら、エリカは素早くローゼスビットを戻した。
 互いに手の内を知り尽くした二人。長期戦になりそうだった。

「うぬう」
 ピカチュウ、モルガがやられたのを見て、ちんこをぷらぷらさせながら見ていたダミアンにも、後悔の念が浮かぶ。仲間を失った悲しさに。
「止むを得ん。レオブレイズ、ウネンラギア、モサスレッジ、ワイズ、合体じゃ」
 赤い獅子レオブレイズ。
 射撃が得意な小型恐竜ウネンラギア。
 碧の魚のモサスレッジ。
 爆撃が得意なフクロウのワイズ。
 その四体が宙に飛び、がっちゃん、ばしゃーん、どごーんと合体!

 四 体 合 体 !

「ナイトメア☆マトリックスドラゴン、四体合体で参上!」
 四体が一つとなり、巨大な青いドラゴンに合体して、ずどーんと着地!
「がおー!」
 四体分のパワーと火力! その巨体に対し、装甲は少ない気がするが気にするな。
「よし。行くのじゃ、マトリックスドラゴンよ」

「がおー!」
 巨体に似合わぬ素早さ。巨大な牙と爪でプリンの防壁を軽々と突破し、チヒロの蔓もあっさりと引き千切る。
「はっ!」
 足元に斬り込もうとするホナミだが、全身から放たれる砲火に慌てて下がった。
下がると撃って来ないのは、倒れている魔法天使たちを巻き込まないため。そうでなければ、とっくに殲滅されているだろう。
「くっ」
 歯軋りするホナミは、ちらっと後ろを見た。今にも泣きそうなチヒロに、青ざめているユイ先生。
「こらアオイ。宿題写させないわよ」
「ふーんだ。どうせ見せてくれるくせに」
 エリカは、アオイと切り結んでて動けない。
 アリサちゃんはシルクを盾にしながら、狼男のケーニッヒと対峙している。
まだどちらも動いていない。いや、動けないようだった。
「出し惜しみしてる場合じゃないか」
 マトリックスドラゴンの青い巨体を前に、ホナミは包丁を持った右手を突き出し、左手で右手首を握る。
 すると包丁に、黒い魔力が集まってきた。悪の魔法少女や魔物たちとは違う、決して邪悪ではない黒い魔力。
「なにっ!?」
 驚いて、マトリックスドラゴンはホナミを見下ろした。白い夏制服に、白いエプロン、長い栗色の髪の魔法少女。
 包丁に凝縮した黒い魔力を、ホナミは一気に解放する。

「 卍 解 !」

 ばんかいと叫ぶや否や、ホナミを中心に黒い魔力が風となって吹き荒れ、周囲に流れる。そして黒い風がやんだとき、ホナミの姿は一変していた。
 包丁が長く伸び刀身が黒く染まっている。そしてホナミは、黒いエプロンのみを、その瑞々しい肢体に身に着けていた。
 裸黒エプロン。それが卍解(ばんかい)したホナミの新コスチューム。
「なにぃ!」
 さらに驚愕するマトリックスドラゴンに、ホナミがさっと飛び出す。
「こけおどしがっ!」
 この至近距離なら魔法天使を巻き込む心配はない。全身の砲門が開き、一斉に黒裸エプロンのホナミに襲い掛かった。
 避けられるはずもない至近距離での一斉射撃!
 瞬間、ホナミの姿がさっと掻き消えた。
「なにぃ!」
 砲火は虚しく空を撃ち、石畳を抉るのみ。
「ど、どこ行った!?」
「ここよ」
 声がする。頭のすぐ後ろから。
「っぎゃーっ!」
 そして痛烈な痛み。背中の翼を両方とも切り落とされた。それはワイズの翼。
「貴様ーっ!」
 振り向き様、巨大な爪を振るう。だがそこにはもうホナミはいない。
「ぐはっ!」
 今度は脚に痛み。いつの間にか足元にいたホナミが、長い黒包丁で右足首を叩き切っていた。
「ぎゃーっ!」
 足首を切断され、マトリックスドラゴンの巨体が崩れ落ちる。
 そして、地に倒れた巨大な顔の前に、黒包丁が突きつけられる。
 長い黒包丁にぎゅいーんと黒い魔力が集まる。

「マジカル☆包丁・ファイナルはにはに」
 倒れたマトリックスドラゴンの巨体を、頭から縦に引き裂く黒い斬撃。それはホナミの、魔力を籠めた黒包丁の一撃。
「ぎゃああああああーっ!」
 長い断末魔を残し、マトリックスドラゴンの巨体が二つに割れ、黒い闇となって消えた。
 レオブレイズ、ウネンラギア、モサスレッジ、ワイズの四体が一度に倒されたのだ。ダミアン軍団残り15人。

「なんということじゃ」
 マトリックスドラゴンさえも倒され、ダミアンの顔からも余裕が消える。ぷらぷらしていたちんこが、しゅんとうな垂れていた。
 魔法天使たちを封じ込めれば、残った正義の魔法少女たちは、逃げ出すか降伏するかと思っていた。
 それが思いのほか善戦し、あまつさえ6人の同志を失ってしまった。全て指揮官であるダミアンの責任。
 その責任を果たすべく、ダミアンが前へと出る。
「ディバイソン、サイクス、シェルカーン、デモンズヘッド、ブラストル。そなたらも参加せよ」
 そしてまだ黙って見ていた5体にも戦闘に加わるように指示を出す。
「ナイトメア☆ディバイソン、もーもーと参上」
「ナイトメア☆サイクス、黒豹と参上」
「ナイトメア☆シェルカーン。ゴリラ亀と参上」
「ナイトメア☆デモンズヘッド、巨大頭で参上」
「ナイトメア☆ブラストル、とらとらとらと参上」
 盛り上がった背中に17門突撃砲を装備した牛男のディバイソン。
 黒豹男のサイクス。
ゴリラの体に、亀の頭と甲羅を持ったシェルカーン。
 竜のような巨大な赤い頭のデモンズヘッド。ただし胴体はない。
 そして黒い虎男のブラストル。
「ケーニッヒ。お主は下がれ」
「ちっ」
 口では悔しがりながらニヤッと笑みを浮かべ、アリサと睨み合うケーニッヒは後退した。代わりにダミアンが前に出る。
「とうとう、大将のおでましね」
「ふええーん」
 泣いてるシルクを盾に、正面に立つダミアンをキッと睨むアリサ。ぷらぷら揺れるちんこを。
「その汚いもの、叩き落としてやる」
「女子はもっと慎み深くするものじゃ」
「だったら服を着ろー」
 さすがのアリサも呆気に取られると、その横にしゅっと黒い風が置き、裸黒エプロンの魔法少女が並んだ。
「ホナミさん!?」
 アリサでも目に見えない超スピード。徹底したスピードアップが卍解ホナミの特徴だった。
「さあ。行くわよアリサちゃん」
 長く伸びた黒包丁を構え、ホナミもぷらぷら揺れるちんこを睨みつける。
「うん」
 ダミアンがこいつらのリーダー。だったら、
「こいつを倒せば、この戦いは終わる!」
 ダミアンに立ち向かうアリサとホナミ。

 がんばれ正義の魔法少女、負けるな正義のマジカル☆アリサ。

(つづく)