地球全土を舞台に、魔王の子供100人で行われる時期魔王選抜戦。
しかし実際に戦いの場になるのはほとんど日本に限定されていた。魔王の子供たちが
魔界からこの世界に来たとき、最初に到着したのが日本だっからである。
ほとんどの魔物はそのまま日本で活動を開始。
魔王の子供を討伐するために天界から派遣された100人の魔法天使も、必然的に日本に集中することになった。そして現地の少女を魔法少女へと変えていく。
かくして日本全土の各地で、魔法少女と魔物たちの戦いが繰り広げられる。
埼玉県あけるし市では、マジカル☆アリサとナイトメア☆リリムが戦い、
海鳴市では、マジカル☆なのはとナイトメア☆フェイトが戦いながら友情を育み、
北海道では、マジカル☆初音ミクとナイトメア☆鏡音リンが歌合戦を繰り広げ、
埼玉県の聖ゲルニカ学園では、撲殺天使ドクロちゃんが桜くんを撲殺していました。
他にもあちこちで魔法少女は誕生し、ある者は勝利し、ある者は敗北し、無惨に陵辱される。
このうち、マジカル☆アリサの活躍は周知の通り。
今回は四月まで戻って、魔王の子供の一人、ルゥくんの軌跡を辿ってみよう。
それは奈良県はにはに市でのこと。四月。
「わんわんわん。わんわんわん」
ぽかぽかの春の日差しの中。のどかな住宅街を、わんわんと一人の男の子が歩いていく。
小柄な体に半袖半ズボンを着て、その剥き出しの腕と脚は細くて白い。つぶらな瞳は無邪気に輝き、短い金色の髪はきらきらと陽光を反射し。
その金の頭からは犬のような耳がべろーんと垂れ、お尻からはふさふさの尻尾、
背中には小さな黒い羽。
「わんわんわん」
そんな可愛い可愛いルゥくんが、とてとてと住宅街を歩いています。見ている人がいたら、
「かわいー!」と叫んでるところでしょうが、あいにくと今は誰も居ませんでした。
「わんわん」
歌うように鳴きながら歩いて行くルゥくん。するとどうでしょう。周囲からわんわんと鳴き声がして、犬が集まってきます。
野良犬や首輪を填めた飼い犬など、雑多な種類の犬がわんわんと集まり、ルゥくんの後を付いて行きました。
「わんわん。ここはいい世界だわん」
無数の犬を引き連れながら、ルゥくんは上機嫌でした。
魔王の子供は全員強制参加ということで、無理矢理参加させられた魔王選抜戦。
最初は見知らぬ世界で不安でしたが、のどかで平和な世界のようです。こうして仲間の犬もたくさん。
一年の期間が過ぎるまで、ルゥくんはわんわんとのんきに過ごすつもりでいました。魔王のなる気はあまりありません。
「わんわん」
ルゥくんの鳴き声に、後ろから続く犬の群れもわんわんと合唱。
そうして、わんわんと犬を引き連れて住宅街を歩いていると、
「にゃーにゃー」
前方からにゃーにゃーと猫の鳴き声がする。それもたくさん。
「わんー?」
「にゃー?」
そしてルゥくんは気付きました。前方からやって来る猫の群れに。
向こうもルゥくんと犬の群れに気付き、ぴたっと止まります。
「にゃーにゃー」
猫の群れの先頭に立つのは、頭に猫耳の生えた少女。
しなやかな肢体の小柄な少女でした。ルゥくんよりやや背は高い。
ピンクの髪をおかっぱに切り揃え、そこから猫の耳がぴょんと生えている。
大きな目に幼さを残したあどけない可愛い顔。ぴかっと光る歯は鋭い。
体にぴったり張り付くようなピンクのワンピースを着込み、袖はなくスカートは極端に短かった。でも中身は見えない。
その腕も脚も細いが、手の爪は鋭かった。その手に魚の形をしたステッキを持っている。ただし魚の胴体は骨。
お尻からは猫の尻尾が伸び、背中にはやはり小さな黒い羽が生えていた。
ルゥと同じ魔王の子供のようですただし女の子の場合は悪の魔法少女。
「ナイトメア☆ルゥ、わんわんと参上わん」
先にルゥが名乗ると、猫耳魔法少女も可愛い声で名乗りました。
「ナイトメア☆ミャア、にゃーにゃーと参上にゃん」
互いに名乗り、道の真ん中で見つめ合う犬耳の男の子と猫耳の女の子。
『わんわん』
『にゃーにゃー』
沈黙する二人に代わり、後ろの犬と猫の群れがそれぞれわんわんにゃーにゃーと鳴き合った。
ミャアの連れている猫の群れも、野良猫から飼い猫まで様々。
「わんー」
「にゃー」
見つめ合っていたルゥとミャアがすたすたと歩み寄り、
「ミャアちゃんわん」
「ルゥくんにゃー」
顔を寄せると、互いにぺろぺろとほっぺを舐め合う。尻尾をぶんぶん振って。
「ルゥくん、元気だったにゃー?」
「元気だわん。ミャアちゃんは?」
「元気だにゃー」
「よかったわん」
「よかったにゃー」
互いに現状を報告しながら、わんわんにゃーにゃーとお互いの顔を舐めていく。
どうやら仲良しさんのようです。後ろから見守る犬と猫の群れも、わんわんにゃーにゃーと仲良さそうに合唱して鳴いていました。
「にゃーにゃー。ルゥくんルゥくん」
「なんだわん」
「レイのお兄ちゃんは知らないかにゃー」
「知らないわん」
どうやらミャアは、レイのお兄ちゃんというのを探していたようです。
100人の魔王の子供は、魔界からこの世界にやって来たときに、全員が一旦ばらばらにされました。
「でも、ボクたちの近くにいると思うわん」
全員が到着したのは同じこの日本という国。そのうち見つかるとルゥは考えましたわん。
「うん。そのうち、見つかるにゃー」
ミャアも笑顔で言う。その口の鋭い八重歯がきらっと光った。
「ミャアちゃん。いっしょに行くかわん」
「にゃー。いっしょにいくにゃー」
一人より二人のほうが心強い。ルゥとミャアは肩を並べて歩き出し、後ろに続く犬と猫の群れも合流する。
「わんわん」「にゃーにゃー」
犬と猫の群れを引き連れながら、わんわんにゃーにゃーと鳴くルゥとミャア。
後続の群れも一緒にわんわんにゃーにゃーと合唱してく。
閑静な住宅街は、たちまちわんわんにゃーにゃーと鳴き声で溢れ、やかましいことこの上ない。
しかしそれに文句を言う人はいませんでした。
「どやかましい!」
いえ、ここにいました。上空からいきなり声が聞こえ、二人の少女が降り立つ。
きらびやかなコスチュームに身を包んだうら若い二人組の乙女。
「マジカル☆アオイ、しゃきっと行くよ」
「マジカル☆エリカ、優美に行くわよ」
アオイと名乗ったのは、黒いショートヘアを大きな青いリボンで飾った少女。
着ている青いドレスは裾が短く肩が剥き出し。腰の後ろには頭と同じく大きな青いリボンが結ばれている。
きらびやかなコスチュームに反して、その手に日本刀を握っていた。腰には刀の鞘。
いかにも気の強そうな顔はそれでも可愛らしく、凛々しさに溢れていた。先ほどの声はこのアオイのもの。
エリカと名乗ったのは、金色のロングヘアを大きなピンクのリボンで飾った少女。
着ているドレスは上が白でスカートはピンク。腕までしっかり覆い、スカートは膝までの長さ。
腰の後ろには頭と同じく大きなピンクのリボンを結んでいる。
白い手袋を填めた手に握るのは、細長いレイピア。可憐なコスチュームに似合っているだろうか。
いかにも上品そうな美貌に、知的に輝く青い瞳。白い肌は白人のそれだった。
「わんー!」
「にゃー!」
突如出現した少女二人に、ルゥもミャアも毛を逆立てて飛び上がった。
「正義の魔法少女だにゃー!」
「わんわんわんー!」
魔界を出発するときに聞かされました。天界の魔法天使、その魔法天使に選ばれた正義の魔法少女が妨害しに来るから、気を付けなさいと。
今その正義の魔法少女が目の前に。
刀とレイピアを手にきっと睨みつける魔法少女二人に、ルゥもミャアもびくびくと怯えていた。後ろの犬と猫も頭を垂れて震えている。
「……な、なんだか、イメージと違うわね」
びくびくと震えているルゥとミャアは可愛くて。魔法天使から聞かされた魔物のイメージと程遠く、エリカが戸惑った声を出す。
「騙されちゃ駄目よ。こいつら魔物と悪の魔法少女なんだから」
一方のアオイは警戒を崩さない。きらっと輝く刀を手に一歩前に踏み出す。
「わーんー!」
するとルゥが一際大きく飛び上がり、背中を向けて走り出した。
「怖いわんー!」
逃げたのだ。ミャアと犬と猫の群れも、一緒になって背中を向けて走り出す。
「にゃーにゃー」
「あっ。逃げた!」
刀を手に追いかけるアオイ。エリカも肩をすくめ、走り出した。
「わんわんー」「にゃーにゃー」
一丸となって逃げて行くルゥとミャアと犬と猫の群れ。
「待てー!」「うーん。やっぱり可愛いわ」
刀を振り回して追いかけるアオイと、笑いながら走るエリカ。
住宅街をずどどっと走り抜け、大きな公園までやって来る。周囲に人影はない。
「ここら辺でいいわね」
それまで笑顔だったエリカが端正な美貌を引き締め、そのロングスカートがふわっと拡がった。
「ローゼスビット」
するとスカートの中からバラの花が大量に飛び上がっていく。蕾を付けた赤い薔薇の花。
それが華麗に舞い飛び、集団になって逃げる犬と猫の前方に回り込んだ。
「シュート!」
宙に浮遊するバラの蕾から赤い光線が放たれ、ルゥとミャアの足元に命中!
ちゅどーん
「わんー!」
「みゃー!」
もうもうと土煙が上がり、無数の犬と猫が宙に吹っ飛び、そして落ちた。ルゥとミャアも一緒に。
土煙が消えると、公園にはたくさんの犬と猫がぐるぐる目を回して倒れていた。
特に目立った外傷はなく、死んでもいない。ただ目を回して横たわっているだけ。
「わんー」
「にゃー」
その中にはルゥとミャアも混ざっていたが、すぐにはっとなって起き上がった。
「ひどいわんー」
「ひどいにゃー」
周囲に倒れ付す犬と猫を見て、二人ともぷんぷんとほっぺたを膨らませる。
「うーん。確かに我ながら酷いわね」
犬と猫を吹っ飛ばした当のエリカも、うんうんと頷いていた。バラの花−ローゼスビット−がスカートの中に戻っていく。どういう構造なのか。
「何言ってるの。向こうは悪。こっちは正義」
「そうだけどさ。可愛いじゃない」
アオイの言葉に小さく苦笑し、エリカは可愛いルゥとミャアに視線を向けた。
どうお仕置きしようか。
「怒ったにゃー!」
同胞の猫を吹っ飛ばされてさすがに怒ったか。ミャアが骨魚ステッキを振るう。
「にゃーにゃーにゃー。お魚にゃー」
くるっとステッキを回すと、そのステッキと同じような骨魚がいくつも宙に出現。真っ直ぐアオイとエリカに飛んで行く。お魚ミサイルだ。
「はっ!」
お魚が命中する出現、アオイがさっと刀を振るう。その剣筋はルゥとミャアには見えなかった。ただ光の線が走るのが見えただけ。
アオイの刀が振るわれると、お魚ミサイルがぴたっと宙に止まる。
そして刀を鞘に収め、ぱしっと音がすると、全てのお魚がバラバラになって落ちた。身があったら刺身にされていただろう。
「にゃー!」
お魚ミサイルを防がれ、ミャアが飛び上がる。刀を鞘に収めたアオイがじろっと睨んだからだ。
見られるだけで斬られた気分になるような鋭い視線。
「わんわんパ〜ンチ」
その視線と目を合わせないようにしながら、今度はルゥが前に出た。肉球のある手でぽふぽふとパンチ。
だがその必殺の一撃は届かなかった。
「わ、わんー」
エリカが真っ直ぐ手を伸ばして、ルゥの頭を押さえたからだ。ルゥはエリカやアオイよりもずっと小柄。
「わんー。届かないわんー」
リーチの差で届かない肉球を、それでもルゥはぶんぶんと振り回す。頭を押さえる腕を殴るという発想はないようだ。
「やっぱり可愛いー」
無駄と知りつつ手をぶんぶん振るルゥを見下ろしながら、エリカはにこやかに微笑む。
金髪の可愛い犬耳男の子。家で飼いたいぐらいだ。
「ねえ、あなた。可愛いんだから、悪さしちゃ駄目よ」
「ボクは何もしてないわんー」
「んー。だけどねー。犬を引き連れてわんわん歩くのもうるさいのよ」
小さな男の子に注意するような優しい口調でエリカは言う。
「エリカに触るなっ!」
と、全く不意に横からしなやかな脚が飛んで来て、ルゥの脇腹を蹴った。
「きゃうーん」
後ろに吹っ飛び、お腹を押さえて転げるルゥ。
「いたいわん、いたいわんー」
本気で痛いのか起き上がってこない。すぐ駆け寄ったミャアは涙目だった。
「ルゥくん、大丈夫かにゃー」
苦痛に歪む可愛い顔をぺろぺろ舐めても、ルゥは「いたいわん〜」と呻くだけで、立ち上がることすら出来なかった。
「ひどいにゃー。あんまりだにゃー」
ミャアに涙目で見上げられ、エリカはさすがに胸がちくっと痛んだ。
「同情しちゃ駄目よ」
だがアオイは冷酷にうるうる視線を跳ね飛ばす。腰の刀を手にずいっと前に出た。
「ちょっとアオイ。あんまりやりすぎるのは……」
エリカの躊躇するような声に、アオイは抜きかかった刀を鞘に戻した。
「にゃ、にゃーにゃー」
苦痛で起き上がれないルゥを庇うようにミャアが立ち塞がる。だが骨魚ステッキを持つ手はガクガクと震えていた。
膝から猫耳の先までもはっきりと震えている。
「ルゥくんをいじめたらだめにゃー!」
体は震えながら、声はしっかりとしている。
「ふーん。大したものじゃない」
震えながら、それでも逃げ出さない猫耳少女にアオイは好感を持った。かといって容赦はしない。
刀を鞘に収め、手加減はするが。
刀を納めた鞘を腰溜めに構える。居合いの構え。その刀に、青い魔力が集中する。
「マジカル☆刀・ファイナル居合い! 甘口!」
そして魔力を集めた刀をさっと一閃。本来は鞘から抜くのだろうが、今回は鞘ごと。だから甘口。
「にゃ〜ん!」
「わう〜ん!」
青い魔力を籠めた鞘でがつーんと横薙ぎに殴られ、ミャアとルゥは諸共に天高く吹っ飛んでいった。
「にゃーん」
「わーん」
そして鳴き声とともに、空の彼方に消え、ぴかっと星になる。
「これでいいんでしょ」
ふーと息を吐き、アオイはエリカに振り返った。さばさばした爽やかな表情で。
「うん。やっぱりアオイは優しいね」
刀を鞘から抜いてたら、あの二人は確実に真っ二つだっただろう。魔物だって真っ二つは痛い。
「じゃ、あれやるよ」
エリカの言葉に、それぞれの武器をくるっと回し、ぱちっとウィンク。
「「マジカル☆」」
締めの言葉とともに、二人の魔法少女はさっと跳んだ。
「はー。やれやれね」
「でもよかったじゃない。大したことなくて」
誰もいないのを確認し、公園の林の影でアオイとエリカは変身を解く。
きらびやかな魔法のコスチュームが、女子高の制服の紺のブレザーへと変わり、頭の大きなリボンが消える。
外見的な変化はそれだけだった。ショートヘアで勝気そうな葵と、金髪碧眼の絵理華。
マジカル☆アオイこと四葉 葵と、マジカル☆エリカこと千堂 絵梨華。
地元の女子高に入学したばかりの高校一年生。小さい頃からの親友で、魔法少女になるのも一緒の仲良し二人だった。
絵理華は日本人とフランス人のハーフで、長い金髪と青い瞳は生まれつき。葵にとっては小さな頃からのお姫様だった。
「早く戻らないと。昼休み終わっちゃう」
「うん」
絵理華と葵は手を繋いで小走りに駆け出す。学校を抜け出して来たのだ。
今が丁度昼休みだから良かったものの、授業中だったら大変だっただろう。
学生と正義の魔法少女の両立は何かと大変です。
二人は仲良く学校に戻って行く。固く繋いだ手は友情の証。
一方の、吹っ飛ばされたルゥとミャアはというと。
「わん〜」
「にゃ〜」
山中で木の枝に引っかかり、ぐるぐると目を回していた。
道もないような山中である。誰も通りかかる人など、
「そこにいるのはだれぞ」
いた。ただし人間ではない。
見た目は若い青年のようだった。10代後半から精々20代前半といった年齢に見える。見えるだけで魔物の年齢は分からない。
そう。魔物なのだ。背中の黒い翼がその証。ルゥやミャアのような蝙蝠の羽ではなく、鳥の翼のそれ。
魔法天使を見た者なら、その黒い翼が彼女たちの白い翼と全く同じ形をしている事に気付いただろう。ただし黒い翼は堕天の証。
短くまとめた青い髪も、人間では珍しいだろう。
そして人間でもありえるだろうが、もっとも異様な点は全裸ということだろう。山の中だというのに。
当然ながら、股間からぶら下げたちんこと金玉がぶらぶら揺れている。根元には青い陰毛がびしっと生えていた。
ただし股間以外に体毛はなし。腋毛や脛毛などあらゆる体毛がなかった。だったら陰毛もなんとかしろ。
「ふむ。そちの兄弟と見受けした」
その全裸の男はとことことルゥとミャアがぶら下がる木の根元まで歩いて行く。足も裸足なのだが痛くはなさそうだ。
「降りてくるがよい」
と言われても、ルゥもミャアもぐるぐる目を回して聞こえていない。
「勃起」
するとその男のちんこがびよーんと肥大化する。性的交渉を行うための勃起どころではない。野球のバットほども大きくなったのだ。
そしてまさにバットのように、巨大化したちんこでばしーんと木を殴りつける。
がさっと木の枝が揺れ、どすーんとルゥとミャアが落っこちた。少し遅れて気の葉も舞い落ちてくる。
「わうーん」
「にゃーん」
落下の衝撃で気が付いたらしい。目を覚ます。そして二人は見た。
目の前に、やたら巨大なちんこを持つ全裸の男が立っている。
怪しい。そして危ない。
「へんたいわんー!」
「へんたいにゃー!」
魔界でもこれだけ怪しい存在はそうはいない。二人が驚くのも無理はなかった。
「ははは。兄君に対して無礼であろう」
言葉とは裏腹に和やかな口調。そして男は名乗った。
「ナイトメア☆ダミアン、堕天に参上」
全裸の男、ダミアンが名乗ると、ルゥとミャアも反射的に名乗っていた。
「ナイトメア☆ルゥ、わんわんと参上わん」
「ナイトメア☆ミャア、にゃーにゃーと参上にゃん」
互いに名乗ると、ルゥとミャアは安堵したようにホッと一息。
「へんたいはダミアンお兄様だったのかわん」
「知らないへんたいかと思ったにゃー」
知ってる変態ならいいのか。
ミャアはぷらぷら揺れるビッグちんこから微妙に視線を逸らしていた。だって女の子だもん。
「そちら、こんな所で何をしている」
「わんー。正義の魔法少女やられたわん」
「やられたにゃー」
口に出して思い出したのか、ルゥとミャアは互いをぺろぺろと舐め合った。
傷を癒しているのだ。二人ともボロボロ。舐めていくうちに傷が消えていく。
「それは難儀であったのう」
文字通り傷を舐め合う二人を見ながら、ダミアンが重々しく頷く。
「うむ。ではこれより、余の同志となるがよい」
「どうし、わん?」
舐め合うのを終え、ルゥがこくんと小首を傾げる。魔界では可愛いーと評判だった仕草だ。
「仲間になれということじゃ」
「わん〜」
ルゥはぱたぱたと尻尾を振り、なにやら考え込んでいる。
この変態と仲間になってもいいのか。そんな顔だ。
「お断りするにゃん」
ルゥより先にミャアが断った。きっぱりはっきりと。
「なんと。余の申し入れを断ると」
「へんたいの仲間にはならないにゃー」
「だれが変態ぞ」
「ダミアンのお兄ちゃんはへんたいにゃー」
全裸でビッグちんこ。変態と言われても仕方ない。
「無礼者め。手打ちに致す」
ぐいーんとちんこが伸び、かわす間もなくミャアの頬を打った。ぱちっと音がして、ミャアは草むらに倒れてしまう。
「わんー。ミャアちゃんをいじめちゃだめわんー」
倒れたミャアを庇うようにルゥが前に立つ。さっきはミャアが正義の魔法少女から庇ってくれた。だから今度はボクが。
「わんわんパ〜ンチ」
ルゥの肉球がぽよよんとでっかいちんこを叩く。
ふにふにの肉球にぽよぽよとパンチされ、ダミアンは腰から浮き上がりそうになるほどふわふわと気持ちよくなった。
すっかり脱力し、腰ががくんと落ちる。それとは逆に、勃起したちんこはさらに大きくなって、ルゥを突き飛ばした。
どーん。
「わん〜」
さらに肥大化したちんこに突き飛ばされ、ルゥは尻餅をついてしまう。わんわんパンチで気持ちよくされ、ちんこはさらに大きくなったのだ。
「ルゥくーん。にゃーにゃー、お魚にゃー」
続いてミャアが骨魚ステッキを振って、骨魚ミサイルを発射。
「ちんこ回転」
ふわふわの浮遊感から立ち直り、腰を上げたダミアンのその股間のちんこが、
猛烈な勢いで回転し、骨魚ミサイルを叩き落す。
「にゃー!」
しかもそれだけではない。ダミアンの体が宙に浮かんだのだ。回転するちんこを上に。
回転ちんこがヘリコプターのローターのようにぎゅんぎゅんと高速で回転し、ダミアンを浮かび上がらせたのだ。背中の黒い翼もぱたぱた動き、補助翼の役目を果たす。
「見よ。余のちんコプターを」
ぶーんとちんこで空を飛ぶダミアンに、ミャアもルゥも言葉を失っていた。
魔界では空を飛ぶ者は珍しくないが、こんなくそ怪しい飛び方は珍しい。というか怖い。大恐怖。
「ちんコプターアタック!」
そして回転ちんこを上に宙を飛ぶダミアンが、ミャアとルゥ目掛けて高速で飛んで来る。
「にゃー!」
「わんー!」
背中を向けるよりも早く、回転ちんこがぱしーんと二人を打ち据えた。ダミアンを宙に浮かすほどの回転ちんこである。
ミャアとルゥは木よりも高く吹き飛び、そして落ちた。
「にゃう〜ん」
「わう〜ん」
受け身を取ることも出来ず、ばったりと草むらに倒れ、ぐるぐる目が回る。
ダミアンに見つかった頃に逆戻り。
「わんー」
ちんこの回転を止めて着地したダミアンは、ぐるぐる目を回すルゥに寄り、手をかざした。
「余の命令を聞くのじゃー!」
「わんー!」
ダミアンの手から流れる青い魔力に飛び上がり、ルゥは目を開けた。とろんとした目でダミアンを見上げる。
「お主の主はだれぞ」
「はいわん。ボクのご主人様は、ダミアンお兄様だわん」
こうしてルゥはダミアンの下僕1号にされた。ダミアン自身の服従の呪いで。
続いてダミアンはミャアにも同様に呪いをかける。
「余の命令を聞くのじゃー!」
「にゃー!」
ダミアンの手から青い魔力がミャアに流れ、ばちっと火花が散って消えた。
「むっ」
目を開けたミャアが、嫌々と首を振る。
「いやだにゃー。ミャアはへんたいの言うことは聞かないにゃー」
ダミアンの服従の呪いは、父親である魔王のそれと比べ、まだまだ不完全だった。
魔力で上回っていても、相手に強靭な意志で反抗されると術が弾き返される。
その場合、まず相手の反抗の意志を奪う必要があった。
「そやつを取り押さえよ」
命令されたルゥは、わんわんとミャアの両手を上から押さえつける。
「はなすにゃー。ルゥくん、へんたいの手下になったらだめにゃー」
「ごめんわん。ボクのご主人様はダミアンお兄様わん」
可哀想と思いつつもルゥは命令には逆らえない。それが服従の呪い。
草むらの上に倒れ、ルゥに両手を押さえられるミャア。その頭上に、ダミアンのビッグちんこが振り上げられる。
「にゃー!」
八重歯をのぞかせて唸るミャア。さっとちんこが下に振り下ろされた。
びりっ、とピンクのワンピースが上から縦に引き裂かれていく。
なんと。ダミアンのちんこは切ることもできたのだ。
叩く、守る、飛ぶ、切る。あらゆる用途に対応する脅威の高性能ちんこ。しかもちんこの性能はこれだけではない。
びりびりっとちんこの先端がワンピースをすぱっと切り、短いスカートまで引き裂く。
はらっとワンピースが左右に落ち、白い肌が晒された。ミャアは下着は着ていなかった。もちろんパンツもなし。
「ほうほう」
膨らみかけの小振りの胸を見下ろし、ダミアンはほくほく顔で目を細める。
手を押さえるルゥは咄嗟に目を逸らした。
乳房と呼ぶのもまだ早い、微かに膨らんだだけの胸。一本の縦筋を描く股間には毛の一本もない。
「にゃー。見るなにゃー」
腹違いの妹の青い未成熟な肉体をじっくりと視姦し、ダミアンはなにやらうんうんと頷いている。
その視線にミュアはじたばたと脚をばたつかせてでっかいちんこを蹴ったが、ダミアンは気にもとめない。
むしろちんこに刺激を与えられて気持ち良さそうだ。手はルゥに押さえられたまま。
蹴られるままぷらぷら揺れる大きなちんこ。その先端がぐいーんと下に動く。
ミャアの幼い胸に。
「にゃー!」
思わず痛切な悲鳴が出る。ダミアンのちんこの先端がぐるっと曲がり、胸を締め上げたのだ。
まだ小さく固い、青い蕾のような胸をちんこが無理矢理に揉みあげようとしているのだ。
ダミアンの万能ちんこは揉むこともできる。恐るべし。
「にゃー! いたいにゃー!」
だが小さな胸を無理矢理に揉まれ、ミャアには痛いだけだった。目にうsっすらと涙が溜まっていく。
「助けてにゃー」
だがルゥは助けてくれない。すでにダミアンの下僕。
「助けてにゃー、レイのお兄ちゃん」
だがレイのお兄ちゃんは助けてくれない。ここにはいないから。
「にゃー!」
ミャアが痛みに叫ぶとちんこが胸から離れた。ほっとしたのも束の間、
「にゃうんっ」
今度はちんこの先端が、胸の先端を突付いてきた。
小さな胸の先端、鮮やかな乳首を。まだ小さなピンクの乳首を、濡れたちんこの赤黒い先端がつんつんと突付き、刺激をもたらす。
「にゃー。にゃー」
乳首を突付かれるたびに、ミャアの胸がびくっと震えた。痛い、だけど甘酸っぱい感じ。
ちんこの先端がぐりぐりと乳首をこね回し、軽くなぞる。
「にゃうんっ」
痛がるだけだったミャアが頬を赤くして何かに耐える様子を、ダミアンは腕組みしてちんこを操作しながら、満足気に見下ろす。
ルゥは手を押さえたまま、ぎゅっと目を閉じていた。なんだろう。この胸のドキドキは。おしっこしたいときのような熱い感覚が股間に集まっていく。
「にゃー。にゃー」
白い肌に汗を浮かべ、ミャアはちんこで乳首を弄るダミアンに涙を浮かべた視線を向けた。
「やめてにゃー。こんなの、ひどいにゃー」
「余の同志となるか?」
「いやだにゃー」
「仕方ないのー」
乳首をくりくりしていたちんこがふしゅーと空気が抜けたように縮んでいく。
「にゃー」
ミャアは額に汗を浮かべながら深く息を吐いた。頬が微かに赤くなっている。
弄られていた乳首はまだ小さなままだった。
大きかったダミアンのちんこが小さくなり、股間に戻っていく。それでも普通の人間よりはよほど大きかった。
組んでいた手を離し、ダミアンの手がミャアの足首を掴む。左右に拡げた。
「にゃー!」
股間にさっと空気が入り、ミャアは危機が去ったわけではないと悟った。いやまずます危険になっている。
交尾の経験は全くないが、ダミアンのギラギラした瞳に雄の匂いを感じ取り、身をすくめる。その仕草が欲情を刺激するとも知らず。
ミャアの毛のない一本の縦筋。その幼い筋目に、ダミアンは唇を舐めた。
「にゃー。やめてにゃー」
手を押さえて目をつむっているルゥの眉間がぎゅっと動く。迷いで。だが手を離すことはなかった。
自ら拡げた脚の合間に顔を割り込ませ、ダミアンは間近でミャアの秘所を覗き込む。
近くで見ると割れ目はますますピンクに色づいている。そしてぴったりと固く閉じていた。
股間に潜り込むように顔を寄せ舌を伸ばす。ちらっと先端に柔らかい肉の味がした。
「ふにゃー」
敏感なそこを舐められ、気色悪い感触にミャアの脚がじたばたもがく。
だが足首を掴まれてほとんど動かない。もぞもぞする太ももを割り込ませた顔に直接感じ、
ダミアンはさらに舌を走らせた。
縦筋の上から下、そして下から上へと舌がべっとりと往復していく。
「にゃー。にゃー。ふにゃー」
股間を走るおぞましい気持ち悪さにミャアは腰をがくがく振って逃れようとした。
快感を感じているわけではない。ただ気持ち悪いだけ。震える体を直接感じ、
股間をしゃぶるダミアンにもミャアの気持ち悪さは伝わっていた。
いや。もっと詳しく、ミャアの心の奥までダミアンには分かっている。
「ふむ。レイのお兄ちゃんのほうがいいのか」
舐める舌をとめ、そんなことをぼそっと呟いた。
「にゃー。レイのお兄ちゃんがいいのにゃー」
すぐさまミャアが思っていたことを口にする。どうしてダミアンに分かったのか疑問に思う余裕はなかった。
「だがここにはいないぞ」
「いやにゃー。にゃー」
嫌々とミャアは首を振った。現実を認めようとしないように。
「お前はレイのお兄ちゃんの子供を産みたいようだが……残念だったな」
ミャアの心を読んだようにダミアンが続ける。実際読んでいるのだが。
「お前の純潔を奪うのは余のようだ」
「にゃー!」
股間を舐めていた顔を上げ、代わりに腰を割り込ませた。小さくなった、それでも人並みよりは大きいちんこが、ぴったり閉じた割れ目に触れる。
そこはまだダミアンの唾液でしか濡れていない。
「にゃー! にゃー! にゃー!」
股間に触れる固い肉の感触に、ミャアは背筋を仰け反らせて鳴いた。痛切な金切り声で。
ミャアの手を押さえるルゥの手が震えている。だが離さない。服従の呪いにかかっているから。
「そーれ」
ダミアンの腰が無雑作に前に。
「ふにゃー!」
槍のようなちんこの先端が幼い縦筋を突き、めきっと肉の壁を割れ目に沿って割り、中に突き刺さった。
「ふぎゃー! にゃー!」
交尾するときの雌猫が発するような叫び声。まさにその悲鳴が、ミャアの喉の奥から迸る。
目を閉じるルゥの目から涙がこぼれた。申し訳なさで。ミャアの大きく開かれた目からも涙は出る。
そしてちんこが突き刺さった縦筋からは血が。
「にゃああああっー! ふぎゃああああーっ!!!」
めきっと幼い割れ目が左右に裂け、血が溢れていく。その血を吸いながら、ダミアンのちんこは奥へと進んでいった。秘肉を掘り進むように。
「ふぎゃーーーー!!!
カッと見開いた瞳の瞳孔が縦に伸びる。ミャアの全身がばたつき、そして背筋がいっぱいまで上がったところで停止した。
「いたいにゃー! いたいにゃー!!!」
まだ身も心も準備が出来ていないのに無理な挿入を受け、ミャアの膣は内側から傷つき、血でいっぱいだった。
ミャアの叫びと悲痛を聞き、さらに苦痛でいっぱいになる心を直接読み取りながらも、
ダミアンは腰を進める。彼も痛いだけであんまり気持ちよくなかった。
交尾とは、愛する者同士がするから気持ち良いのだ。それを知りながらも、ダミアンはミャアの純潔を奪い、鮮血を散らしていく。
「みゃあああーっ!!!」
激痛でぶるぶるとミャアの幼い体が振動していく。その震えを膣内にも感じながら、ダミアンようやく腰を止めた。
ミャアのお腹いっぱいに異物が挿入され、膣内を満たしている。それでもダミアンのちんこは半分も埋まっていなかった。
縦筋は無惨にも裂け血で溢れている。
ミャアはお腹の全てがダミアンのものでいっぱいにされ、貫かれたかのような痛みと屈辱、そして絶望に鳴け叫んだ。
「にゃー! いたいにゃ! ぬいてにゃー! ぬくにゃー!」
抜いてという懇願を聞きながら、ダミアンはミャアの幼い膣内にしっかりととんこを落ち着ける。
ぎちぎちと狭く、そして痛いミャアの性器。その幼さを味わいながら、ダミアンはミャアの悲痛な心を感じ取っていた。
純潔を無惨に奪われただけではない。レイのお兄ちゃんへの想いまでも踏み躙られたようで、ミャアの心は今にも張り裂けそうだった。
「気持ち良いか」
痛みと悲しみでいっぱいなのを承知しながらダミアンは聞く。
「にゃー! いたいにゃー! いたいにゃー!」
首が激しく左右に振り乱され、ピンクのおかっぱ頭が水平に揺れる。飛び散る涙がダミアンの顔にまで飛んだ。
「にゃー! にゃー! ふにゃー!」
痛みでミャアの腰が上下に揺れ、尻尾がばんばん地面を打つ。同時にちんこも狭い膣肉にこすられ、痛いほどだった。
その痛みの中、ダミアンは一発目を放つことにした。ミャアを早く楽にするためにも。
「受けよ、余の一撃」
言うが早いか、金玉が製造した精子が竿を通してちんこの先端に流れて行った。
「ふみゃみゃー!」
そして熱い射精がミャアの幼い膣内を満たし、血とともに割れた縦筋から溢れて来た。
「にゃにゃにゃー!」
ミャアの小さな身体が二度三度と跳ね、動かなくなる。
するとダミアンの体にミャアからの魔力が流れ込んできた。抱いた相手の魔力を吸収するのは魔物に共通する能力。
「にゃー。にゃー」
純潔を、魔力を奪われ、ミャアは息も絶え絶えに呻いていた。犯したのが人間だったら魔王のかけた服従の呪いが発動してるところだろう。
ずるっとちんこを引き抜くと、大量の血と精液が流れ出し、太ももを濡らしら。
だらっと開いた股間のすぐ下にたちまち赤と白の体液が溜まっていく。目は虚ろで、猫耳も尻尾も垂れ下がっていた。
ミャアの額に手を当て、ダミアンは術を放った。
「余の命令を聞くのじゃー」
ダミアンの手から流れる青い魔力が、今度は弾かれることなくミャアに流れ込んでいく。
「ルゥよ。もう手を離してもよいぞ」
「わ、わんー」
それまでじっと目を閉じて手を押さえていたルゥが、金縛りが解けたように手を離す。目は涙で真っ赤になっていた。
「わんー!」
そして小さな胸と股間を晒され、その股間から血と精液を流す無惨な姿のミャアを見て、ルゥはがくがくと震えた。
「ミャアよ。起きるがよい」
「はいにゃー」
痛ましいその姿とは裏腹に、淡々とした声を出してミャアは起き上がる。股からの血が足元まで流れた。
「すまぬ、痛かったであろう。すぐ癒してやるぞ」
ダミアンはすぐさま魔法で傷を癒し、服を戻し、膣内射精した精液まで消してくれる。
「ご主人様、ありがとにゃー」
すっかり元通りになったミャアは、ぺろぺろとダミアンの頬を舐めた。その瞳に光はない。
「ははは。こやつめ」
舐められてダミアンはくすぐったさに笑みを浮かべた。寂しそうに。
「わんー。ミャアちゃんも仲間になったわん」
ぱたぱた尻尾を振って、ルゥがミャアの頬を舐める。ミャアもにゃーにゃーとルゥを舐めた。
「ルゥよ。そなたもミャアを抱くか?」
「ボクはいいわん」
「左様か」
ここでルゥを童貞のままにしておいたのが、後々大きな意味を持つことになる。さすがのダミアンも未来までは読めない。
「ルゥよ」
「はいわん」
「ミャアよ」
「はいにゃー」
下僕にした犬耳男の子とと猫耳魔法少女を前に、ダミアンはふむふむと頷く。
この調子で他の兄弟姉妹も仲間にしよう。そして一大ダミアン軍団を結成するのだ。
全ては魔王になるために。
「付いて来るがよい」
そしてダミアンは山中を進み出す。ルゥとミャアを引き連れて。
「わんー」
「にゃー」
わんわんにゃーにゃーと鳴くルゥとミャアを連れて半日あまり。日が暮れる頃に、それが見えた。
「ここだ」
不意にダミアンが立ち止まる。人里離れた山奥で。
「わんー!」
「みゃー!」
そこにそびえる建造物を見上げ、ルゥとミャアは毛を逆立てて飛び上がった。
それは黒いピラミッドだった。かなりの大きさがある。山が一つ入るほどの。
今まで見つからなかった理由はすぐに分かった。人には見えない結界が張ってあった。だが魔物にははっきりと見える。
「これはなんだわん」
「ふふふ」
ルゥの当然の疑問にダミアンは得意気に笑う。悪事を披露するときの悪人の笑み。
「これはな。古の破壊神の神殿だ」
「破壊神にゃー!」
「そうだ」
驚くミャアの声に、ダミアンは一層笑みを深める。
「余が魔王となるために必要な力ぞ」
そしてダミアンはルゥとミャアを引き連れ、黒の神殿へと向かう。この遺跡を完全に目覚めさせ、自分の神殿とするために。
ナイトメア☆ダミアン。魔王を父に、堕天使を母に持つ、黒い翼の魔族。
四月、アリサとリリムが戦ってる頃の出来事であった。
(つづく)