それは大和が小学6年生のこと。
「先生、好きー」
 保険室で思い切って告白すると、言われたほうの明美先生は目をぱちくりして、それからにっこりと微笑んだ。
「まあ。ありがとう」
 そして明美先生は大和の手を取り、保健室のベッドへ誘った。
「それじゃあ、先生と良いことしましょう」
「なーにー?」
 きょとんとする大和をベッドに座らせ、明美先生はそのズボンをさっと脱がす。
「な、なにするのー?」
と言ってる間にパンツまで脱がし、小学6年生の未成熟な小振りのちんこがぷらぷらと揺れた。
「だから。良いことよ」
 ふふふ、と紅を引いた唇に妖艶な笑みが浮かび、するすると白衣を脱ぐ。その下のスカートまで。
「うわーん」
 明美が自分のパンツに手をかけたところで、大和は脱がされたズボンとパンツを持って、だっと保健室から飛び出してしまった。
急に怖くなったのだ。明美先生の裸に。そしてむずむずする自分のちんちんに。
「あらあら」
 ちんこをぷらぷらさせたまま逃げ出した大和に、明美はくすっと笑い、唇に指を添える。
「刺激が強すぎたかしら」
 こうして大和の初恋は終わった。
 そのはずだったのだが……。

 なぜか今、あのときのことを思い出し、ナイトメア☆ヤマトは明美を見下ろす。
 引き裂かれた衣服、そこからこぼれる豊かな乳房。大きく股は開かれ、剥き出しの股間からは精液がドロッとこぼれている。
 全てヤマトがやったのだ。その明美の隣では、犬耳男の子のルゥが目をぐるぐる回していた。
「はぁ。はぁ」
 射精の余韻、それ以上に明美先生を犯したという事実に興奮し、荒い息が吐き出される。
 小学6年生のときは逃げることしかできなかった。でも今は。
 リリムを襲って童貞を卒業し、それからも何人も陵辱し、家ではリリムたちとねんごろに交わり。
 それなりに交尾にも慣れたという自負があった。だからだろうか。明美先生と知った今でも逃げ出すことはない。
「う、くぅ……」
 犯され横たわりながら、明美の瞳にはまだ強い光が宿っている。泣いてはいるが悲嘆にくれているだけではない。
 明美の変身が解けて元の姿になってから、急に動きが止まった悪魔を、訝しんで見上げている。
 ふーと息を吐いて、ヤマトは覚悟を決めた。
「……明美先生」
 悪魔の口から出た意外な言葉に明美は内心驚いた。先生? 悪魔の生徒を持った覚えはない。
「ごめん」
 そして、悪魔の姿が小さくなり、人間になった。ナイトメア☆ヤマトから、人間の千巻 大和の姿へと。
「まあ」

 その少年は、明美にも見覚えのある子だった。あれか4何年経っているが、確かに面影がある。
「大和くん!?」
 明美の口から出た言葉に、今度は大和が驚いた。まさか覚えているとは。そして一目で僕だと分かるとは。
 あれから、小学校を卒業してから4年になるというのに。
「ごめんなさい」
 もう一度謝り、膝を着いて土下座する。それで許してもらえるとは思っていないが。
「なーんだ。大和くんだったのか」
 くすっと微笑む気配。上半身を上げた明美は、土下座する大和の頭に手を振れ、よしよしと撫でてやった。
「許してあげる」
 顔を上げた大和の表情は何とも言えず後悔に満ちていて。くすくすと明美の笑いが大きくなる。
「大きくなったのね。こんな乱暴にしちゃって」
 服を破られた自分の身を見下ろし、明美は困ったようにそれでも笑っていた。
「申し訳ない。すぐ直します」
 大和は一旦悪魔の姿になると、魔法で服を直し、傷を癒し、膣内射精した精液も除去した。
 そうして明美を元に戻すと、すぐにまた人間の姿に戻る。
「あら、まあ。魔法て便利ね」
 すっかり元通りなのを確認し、明美は「うん」と頷いた。化粧も元通り。
もっとも薄い化粧しかしていなかったが。目から涙が消え、変わりに笑みが満ちている。
「もう怒ってないから。そんな顔しないの」
 代わって大和が苦渋に顔をしかめていた。明美がその頬を引っ張り、ぐいーんと左右に伸ばす。
「ひだいー」
「そうそう。大和くんは笑ったほうが可愛いんだから」
 でも本当、大きくなったわねーと思う。小学校に居たときは私より小さかったのに、今は大和くんのほうが大きい。
 それにちんこも。
「わー。ちんこも大きくなったわねー。毛も生えて」
 その言葉で大和は気付いた。悪魔のときに脱いだズボンがそのままだということに。今までちんこ出しっぱなし。
 慌ててズボンを拾って着る。消えていたパンツもズボンと一緒にあった。
 赤い顔でせっせとズボンを履く大和を、明美はくすくすと笑っていた。
「あのときは逃げ出したくせに。今はすっかり強姦魔なのね」
 魔法で汚れは消してくれたが、まだ股に異物が挟まったような違和感が残っている。悪魔のちんこはそれだけ大きかったのだ。
「あのときのことは言わないでください」
 ズボンを履いてもまだ赤い顔をして、大和は下を俯いた。正面から見るのが恥ずかしくて。
 さっと夏の風が山の木々を通り過ぎ、二人を優しく流れていく。
 明美の茶色の髪が風にそよぎ、大和に甘い香りを運んでいった。母乳のように優しく、それでいて棘のある甘い香り。
「わん〜」
 そのとき、ぐるぐる目を回していたルゥがばっと上半身を上げる。
「あらルゥくん。おはよう」
「わんわんー」
 目覚めたルゥは、すぐに明美に飛びついて、すりすりと頬を寄せて甘えだした。尻尾をぶんぶんと振っている。
「やれやれ」
 素直に明美に甘えられるルゥを、大和はちらっと羨ましいと思った。とはいえ、今更一緒に甘えることはしない。

「わんー」
 明美の豊かな胸にすりすりと頬を寄せ、それからルゥは周囲を見回す。
 あの怖い悪魔はいない。その代わり、人間の少年が一人。
「わんー。だれだわんー」
「前にあっただろ。千巻 大和だ」
「わんー」
 尻尾を振りながら、ゆっくりと思い出す。以前、河川敷であった悪魔の変わった人間を。
 あのときは正義の魔法少女まで現れて、すぐ逃げ出した。
「わんー!」
 思い出し、ルゥは明美にしがみついて、びくっと飛び上がった。
「わんー。ご主人様、悪魔だわんー」
 そう。あのときの悪魔は今目の前にいる人間が変身した姿。気絶する前、電撃を浴びせた悪魔と同じ姿。
「大丈夫、大丈夫」
 震えるルゥの背中を撫で、明美は優しく諭す。
「この子はもう味方だから。ねっ。噛みついたりしないから」
「わんー」
 その言葉と、じっと突っ立ったままの大和に安心したのか。ルゥはこくこく頷いた。
「あのー。噛みつかないで安心するのもどうかと」
「噛みつくの?」
「しないけどさ」
 ぽりぽり頭をかいて、大和は明美に抱きつくルゥを見る。
「今は明美先生がご主人様なの?」
「はいわん。ご主人様がご主人様わん」
「ダミアンてのはどうした」
「ダミアンは前のご主人様だわん」
 わんわん鳴きながら、ルゥはかくかくしかじかと説明するわん。
「かくかくしかじかだわん」
「ふむ。なるほど」
 説明を聞いて納得する大和だわん。
「明美先生に童貞を奪われて、そっちのほうの服従の呪いにかかったと。で、明美先生は悪の魔法少女になったんですね」
「奪ったって失礼ね。大人にしてやったのよ」
「いつもそんなことしてるんですか?」
「あら。やきもち?」
 くすっと笑う明美に、大和は思わず顔を逸らせる。赤くなったのを見られたくないから。
「しかし。僕が悪魔で、明美先生が悪の魔法少女というのは不公平なような」
「いいじゃない。可愛いんだから」
「そうですけど……。しかし先生。もう魔法『少女』という年ですか?」

 ぺちぺち。

「痛い、やめてぶたないで。はい、魔法少女でいいです。だからぶつのやめて。
いや、やめて。閉じ込めないで。僕、いい子にするよ。いい子にするから殴るのやめてとめて、ぶたないで」
「もうやめてるでしょ。大和くんこそ、先生はやめてよ」
「先生はいつになっても先生ですよ」
「まあ。嬉しいこと言っちゃって」
 本当に嬉しいのか、目を細めて、かつての児童を見る。
「それで、大和くんも、やっぱり呪いで悪魔に?」
「ええ、まあ」
 肩をすくめる大和。
「さっきのマジカル☆アリサが悪の魔法少女?」

「いやいや。アリサは正義の魔法少女ですよ」
「そう? まるっきり悪い子に見えたけど」
 首を傾げて、ルゥをげしげし蹴っていたアリサの姿を思い出す。どう見ても、正義には見えなかったが。
 ルゥも蹴られたときを思い出したか、がくがく震えている。
「それで、人間に戻ろうと思って、魔力集めてるんですよ」
「それで私を襲ったのね」
 傷と衣服は戻っても奪われた魔力はそのままで。今の明美は変身もできない状態だった。一晩休めば回復するそうだが。
「はい。ごめんなさい。でも、まだまだ魔力が足りなくて」
「そう。頑張ってね」
「え? それだけ?」
「他に何かあるの?」
「先生は戻りたくないんですか?」
 大和の疑問に、明美は疑問で返す。
「なんで戻らないといけないの?」
「なんでって……悪魔ですよ?」
「いいじゃない。困ることないし」
「いや、あの、そうですけど」
 確かに悪魔になって困ったことはない。むしろ便利なことだらけだ。
「そりゃ悪魔の姿は怖いけど、魔法少女だと可愛いし」
 ちょっと魔法少女の格好は気に入ってる明美先生でした。
「うーん」
「それに」
 腕を組む大和の前で、明美はぎゅっとルゥを抱きしめ、
「ルゥくんは可愛いし、ずっとこのままでもいいわ」
 むしろこのままでいたい。明美の笑顔はそんな気持ちを表しているようで。
「でも、このままってのも」
 大和は腕を組みながら考える。何故人間に戻りたいのかを。胸によぎるのは、ありさと撫子さん、そして目の前の明美先生の顔。
「やっぱ、人間がいいな」
 うんと頷き、大和はこれからも人間に戻る努力は続けようと思った。魔法少女を犯し続けることを。
「それでさ。大和くんにもいるんでしょ?」
 明美先生の声に顔を上げ、大和はまた赤くなった。どうも照れ臭い。
「下僕にした悪の魔法少女ならいますけど」
「会いたいわー」
 にこっと微笑み手を合わせる明美先生に、大和はジト目になった。しかし断れるわけがない。
「その前に先生のお家に寄りたいな」
 それが精一杯の抵抗。

 魔法で元に戻したとはいえ、明美も着替えたいとの事で、結局はまず明美の家に寄ることになった。
「お邪魔しまーす」
 はじめて入る明美の家に、そわそわして落ち着きなく大和は周囲を見る。
 意外にあまり飾り気はなく、質素で落ち着いた日本家屋の趣きだった。それでも大和は落ち着かない。
「ルゥくん、シャワー浴びましょう」
 明美先生がそんなことを言うもんだから、ますます落ち着かない。
「あ、あのー」
「あら。大和くんも一緒に入る?」
 こくこく頷く大和だった。

 お風呂場でシャワーを浴びるのだから、もちろん全裸になる。
 明美先生の全裸を見て、大和はカーと全身が赤くなった。

 柔らかなカーブを描く豊満な肢体。ふくよかな乳房はただ大きいだけでなく、
バランスよく膨らんでいて、張りがあり垂れていない。いびつな巨乳ではなく美乳なのだ。
 濃い陰毛に覆われた股間も隠すことなく堂々と晒し、暖かな笑みを浮かべていた。子供をお風呂に入れる母親のように。
 だがここにいるのは母親ではない。
「あらあら。大和くん、もうそんなしちゃって」
 大和のちんこは勃起してぴんと上を向いていた。さっき射精したばかりなのに。
大和もそのちんこを隠すことなく堂々と仁王立ち、
 一方のルゥのちんこは、小さいままでぷらぷら揺れている。彼の白い裸身もまた可愛いものだった。
 垂れる犬耳に、ふさふさの尻尾。そしてまだまだ未成熟な小振りのちんこ。
陰毛が生えている大和と違い、ルゥのそこは一本も生えていない。
「いらっしゃい」
 シャワーを手に、プラスチックの椅子に座った明美が男の子二人を誘う。
「わんわん」
 ルゥは早速明美の胸に遠慮なく飛び込み、ぎゅっと抱きしめられ、背中からシャワーをかけられた。
「はい。おっぱい吸って」
「わんー」
 暖かいシャワーを浴び気持ちよさそうにしながら、言われるままに乳首にと吸い付く。ちゅーと。
「大和くんも」
 突っ立ってるだけだった大和も、ふらふらと明美に抱きつき、胸に吸い付いた。なんだか頭に血が昇ってまともな思考が働かない。
「ふふ」
 右の乳房にルゥ、左に大和が吸い付き、ちゅうちゅうと音を立てて吸う。もちろん母乳はまだ出ないが、男の子二人は一心に吸っていた。
 そのむず痒さに、明美はうぅんと身をもじらせ、股間が熱く潤うのを感じながら、三人一緒にシャワーを掛ける。
「うふふ」
 ちゅうーとおっぱいをしゃぶり、乳首をコリコリと歯でしごき、舌で転がす
ルゥと大和。
 二人一緒の愛撫に、明美の鼓動がどんどん高まり、体の芯から熱くなってくる。
「ねえ、大和くん」
 心地よいむず痒さに頬を染めながら、明美が甘い声で囁く。
「まだ、私のこと好き?」
 乳を吸いながら、うんうん頷く大和。大きな乳房も一緒に揺れる。
「ふふっ。でも」
 明美の手がするすると下に動き、大和の股間をはしっと掴まえる。勃起したちんこを。
「もう恋人としたんでしょ?」
「んーぅー」
 腰からの刺激に思わず乳から口を離し、大和は口をすぼめてきゅーと尻を引き締める。そうしないと飛び上がってしまいそうで。
「ほーら。このおちんちんは、たくさん女の子を泣かした悪い子でしょう」
「んー。んーんー」
 ちんこ竿をもみもみされ、真っ赤な顔で大和は首を横に振る。
「ぼ、僕はー」
「僕は? なに?」
「はなしてー。でちゃうー」
「いいから。出しなさい」
 ぎゅっ、ぎゅっと片手で大和の膨らみを弄び、もう片手もシャワーを放し、ルゥのおちんちんを掴む。

「わんー!」
 ルゥも乳から口を離し、こちらは素直に飛び上がった。ちんこを掴んだ手も一緒に上がる。
「ルゥくんのおちんちんは、良い子ねー」
 手の中のルゥのおちんちんはまだ小さいままで。ぷよぷよと皮の感触。
「わんー。わんわんー」
 それでも明美の手でぎゅっぎゅされると、ルゥはぶるぶると股間を震わせた。
痺れるような気持ちよさに。
「わんんー」
 がくがく震える小さな尻から生えた尻尾がばんばん振り回され、ぎゅっぎゅする手の中の膨らみも徐々に大きくなっていった。
「ふふふ。ルゥくんも男の子ねー」
 両手で男の子の青い性を弄び、明美はにこにこと極上の笑顔になる。
「はうー。せ、先生ー」
「わんんー」
 真っ赤な顔の大和とルゥが、明美にちんこをぎゅっぎゅされ、それぞれ限界に達しようとしていた。
 大和は引き締めた尻がぶるぶると震え、ルゥは腰の動きがどんどんと加速していく。
「えい!」
 明美がぱんと両手を叩きつけるように合わせた。その手に握ってる二本のちんこ竿もぱちーんと打ち合わされる。
 大和の血管が浮かんだちんこと、ルゥの分厚い皮に包まれたちんこが。
「ぬっ」
「わうーん」
 ちんことちんこがぶつかった拍子に、二人の頭にもぱしっと白い閃光が走って痺れた。
 どくっ。どくっ。
 二本のちんこ竿が同時に射精し、明美の手にぴゅっと精子がかかる。
「あらあら」
 ぴゅっと飛び出す精液を明美は笑顔のまま手で受け取り、白いねばねばが溜まっていった。
 やがて精子が止まると、明美は手に溜めた精子をぺろっと舐めてみる。
「うーん、濃いわぁ」
 それからシャワーを拾って、手を洗い流す。濃い白濁液も流されていった。
「先生ー」
「わんー」
 身を寄せ合いながら、はぁはぁと息を吐く大和とルゥにもシャワーをかけ、汗を流す。
 裸で肩を並べて荒い息を吐く大和とルゥを見る明美の目が、きらーんと光った。
「ねえ、大和くんにルゥくん。先生抜きで二人で布団でエッチしてみて」
「しませんよ!」
「わんー。わんー」
 二人ともぶんぶんと首を振ってさっと離れた。
「えー。大和くん、こんだけ可愛ければ男の子でもいいって言ったじゃない」
「……あれはただの脅しですよ」
 ちらっと横目で大和はルゥを見る。裸の男の子を。
 お湯で濡れ、輝く金色の髪に犬耳。貧弱な白い胸。そしてぷらぷら揺れる未成熟な青いちんこ。射精して元のぷよぷよに戻っていた。
 その裸を見ている内に胸にときめくものを感じるが、すぐに頭を振って打ち消す。
「絶対しませんから」
「そう? 残念ね」
 さして残念そうでもない様子で、明美はにこっと微笑んだ。
 お風呂できゅきゅきゅ。

 それからは何事もなくシャワーを浴びて汗と汚れを落とすと、お風呂から上がった。
 明美先生が髪を乾かして化粧を整える間、大和とルゥは干してあった布団を取り込んで、その布団でごろごろと寝転んだ。
 仲良く布団でごろごろする男の子二人。明美先生はうんうんと頷いて、ぐっと拳を握ったものだ。
 そしていよいよ大和の家に。

「ただいまー」
「お兄ちゃん、どこ行ってたの!」
 家に帰ると、さっそくありさの元気な声が出迎えてくれる。買い物の途中で抜け出したので怒りぷんぷん。
「お邪魔します」
「おじゃましますわん」
 だが兄に続いて玄関を上がる二人を見て、ありさの目がさらに釣りあがる。
「松坂先生に……さっきの犬っころ!」
「ああ。今はもう仲間だから。安心して」
 大和の説明にも、ありさは目を吊り上げたまま。その怖い目に、ルゥは明美の背後に隠れてビクビク震える。
「大体。なんで松坂先生が一緒なのよ」
「明美先生がナイトメア☆アケミだったんだよ」
「えー!」
「先生。ありさがさっきの正義の魔法少女、マジカル☆アリサなんです」
「えー!」
 今度は明美先生が驚く。
「正義!? 本当に?」
「またそれですか。というか、驚くのはそこですか?」
「まあまあ。でも、危なくないの?」
「まあ、危ないといえば危ないですけど」
 主にありさの近くにいる人が。
「なんで、そんな、あっさり、正体ばらしちゃうのよー!」
 腰を手を当て、ありさはいよいよ顔を真っ赤にして湯気を立てる。
「いいじゃない。お兄ちゃんも教えたし」
「むっ」
 玄関に立ち尽くす兄に顔を寄せ、ありさは匂いをくんくんと嗅ぎ、
「先生の香水の匂いがする! お兄ちゃん、またエッチしたんでしょ!」
 お風呂に入っても香水の匂いは残ってるらしい。ありさの鼻が良すぎる気がするが。
「うん、まあ」
 隠してもどうせばれるので大和は正直に打ち明ける。明美は平然と微笑んでいた。
「もう! もう! どうして、お兄ちゃんは、そんな……!」
「まあまあ。明美先生とルゥにお茶淹れて」
「水道水でも飲めばいいんだよーだ!」
「いいのよ大和くん。コーヒー買ったから淹れてくるわね。お台所借りるから」
「ありさが淹れる!」
 すぐさまだだっと台所に駆けるありさ。自分以外の人が作ったものなど兄の口に入れてほしくないから。例えコーヒー一杯でも。
「はぁ」
 いつもながらの妹ぶりにため息をつく大和。居間まで明美とルゥを案内するとぽんぽんと手を叩いた。
「おーい。リリム、リリス、エステル、出ておいでー」
「はーい」「はーい〜」「はいマスター」
 リリムがトイレから、リリスとエステルが一階の自分たちの部屋から、それぞれ姿を現す。
「あっ。ルゥお兄様だー」

「ルゥくんがいます〜」
 リリムとリリスの声に、またルゥは明美の背後に隠れる。この前、バズーカで吹っ飛ばされたからか。
 外見はリリムのほうが年上に見えるが、ルゥはリリムの兄でエステル、リリスの弟である。それぞれ母親は違うが。
「はいはい。今は仲間だから」
 大和の説明に、「そうなんですか」と頷3人。あっさり納得したようだ。
「それで、こちらは松坂 明美先生。僕が小学生のときの保険室の先生で、今はありさの先生。
さらにルゥのご主人様で、童貞を奪った呪いで悪の魔法少女なった人。粗相のないように」
「「「はーい」」」と元気よく返事する3人。
「くれぐれも、『その年で魔法少女はどうなんですか?』とか言わないように」

 ぺちぺち

「痛っ。やめて先生。ぶたないで。僕いい子だよ。いい子にするから」
「だったら余計なことは言わない」
「はい。それじゃあ3人とも自己紹介して」
 悪の魔法少女の自己紹介といったら決まってる。
「ナイトメア☆リリム、ただいま参上」
「ナイトメア☆リリス、ゆっくりと参上です〜」
「ナイトメア☆エステル、優美に参上」
 それぞれ決め台詞とともにポーズを決める3人。それぞれバラバラに。特に意味はない。
 それから明美も自己紹介。こちらは参上とかは名乗らない。今は人間だから。
「松坂 明美よ。明美でいいから。よろしく」
 上品な笑みを浮かべる明美を、3人の悪の魔法少女もそれぞれ笑みを浮かべながら見た。
「3人とも可愛いじゃない」
 肘で大和を突付き、明美はニッと口元を歪め、
「で、もうやったんでしょ?」
「まあ、処女を奪って呪いにかかりましたから」
「まあ3人も」
 わざとらしく口を丸め、それから明美は感心したように目を細めた。
「うんうん。あの逃げ出した男の子が、立派に成長したもんよね」
「何ですか?」
 リリムの問いに、明美はうふふと笑って、
「大和くんが、小学6年生のときにね。先生好きーて言うもんだから」
「わー! わー! わーわー!」
「大和くん、うるさい」
「やめてよ先生。大体あれ犯罪じゃないんですか?」
「大和くんには言われたくないわね」
「そ、それよりも。これからのことですよ」
 無理矢理話題を変えようとする大和に、明美笑いながら手を振る。
「分かりました。それじゃあ、魔物関係の話にしましょ。私も被害を受けたし。にしても、大和くんも酷いわよね」
「何がです?」
「四月にうちの小学校襲って、保健室メチャクチャにしたでしょ」
「あれはほとんどありさですよ」
「違うもん」
 そのとき、コーヒーを淹れてきたありさが尖らせた口を挟む。
「お兄ちゃんが、保健室にいるから悪いんだよ」
「人のせいに……うん、ごめん、僕が悪かった」
 ありさの一睨みで大和はすぐ謝る。明美はやれやれと肩をすくめた。
「はい、どうぞ」

 用意した人数分のカップにコーヒーを注ぐありさ。リリムたちの分までちゃんと。
 コーヒーが苦手なリリムが顔を露骨にしかめ、同じくその香りが苦手なルゥが鼻を曲げる。
 ミルクとお砂糖をたっぷり入れるリリムの横では、エステルがルゥの犬耳を持ち上げ、左右に振っていた。彼女は犬好き。
「で、松坂先生は、悪の魔法少女なんですよね」
 ありさの言葉はやはり刺々しい。兄と仲睦まじい様子の明美に向けられる視線も鋭いものだった。
「そうよ。でも安心して。別に悪さする気はないから」
「……そうしてくれたら、成敗できるのに」
「あはは。ありさちゃん、コーヒー美味しいわ」
 ありさの言葉が聞こえているのかどうか。明美は笑っている。
「でも先生。智子ちゃんを殺したのはそいつらなんですよ」
 そいつら、と指差したのはルゥ。エステルに犬耳を撫でられ、気持ちよさそうにしている。
「ボクはしてないわん」
 すっかりくつろいで、ルゥはエステルに身を任していた。
「まあ。智子ちゃんが」
 明美も覚えていた。智子ちゃんの葬式のときに、小さな棺にしがみついて泣く母親を。
「うん。あんなことが起きないように頑張らないとね」
 決意を込めてにこっと微笑む明美先生に、ありさはまだ憮然と口を尖らせたまま。
「ところで」
 ルゥのふさふさ尻尾を揺らしながら、エステルが訊ねた。
「ルゥくんはどうしてリリスとリリムは捕まえようとしてたの?」
 その問いに、当事者のリリスとリリムはうんうんと頷いている。少しは気にしてたらしい。少しだけ。
「はい。前のご主人様のダミアンお兄様の命令だわん」
「そうそう、それ。どういうことか詳しく聞かせてくれんか」
 珍しく神妙な面持ちの大和が、身を乗り出して聞く。
「はいわん。最初からお話するわん」
 そして全員を見回して、ルゥは語り出したわん。
「あれは、ボクがこの世界に来たばかりのことだわん」

 では、ルゥくんの話を聞いてみようわんわん。

(つづく)