その日、学校から帰って来ると、大和はちんちん丸の首輪に買ってきたリード線を付けてやる。
「ほーら。これで散歩行けるぞ」
 きゃんきゃんと、ハスキーの仔犬のちんちん丸は早速庭で走り回り、リード線を持つ大和を引っ張った。
「それじゃあ、お兄ちゃん散歩に連れてって」
 ありさの言葉に、大和は「えっ」となった。
「僕が行くの?」
「そうだよ。ありさは夕飯の準備だもん」
「いや、しかし。きちんと面倒見るって言ったよね」
「リリムちゃんとリリスちゃんは寝てるもん」
 学校から帰ってくると、リリムとリリスは乾いたばかりの布団で昼寝していた。よっぽどちんちん丸と遊び疲れたらしい。
 唯一起きていたエステルは、膝の上にちんちん丸を座らせて待っていた。
「では、私も一緒に行きます」
 そのエステルが涼やかな声で申し出る。彼女もちんちん丸もまだまだ元気だ。
 兄と並ぶエステルを見て、ありさは「むー」と唸った。リリムやリリスとは明らかに違う聡明な美しい魔法少女。どうしても警戒してしまう。
「うふふ。可愛いですわ」
 しかしエステルの視線は足元をうろつくちんちん丸に注がれている。あまり表立っては出さないが、犬好きらしい。
「それじゃあ、行こうか」
「はい」
 というわけで、制服から着替えた大和とエステルが連れ立ってちんちん丸の散歩に向かう。
「ぐぬぬ」
 仲良く並ぶ二人を見て、ありさはやっぱり歯をぎしぎしと鳴らすのだった。

「うふふ。なんて可愛いのかしら」
 小走りで先を行くちんちん丸に付いて行きながら、エステルの視線はずっとにやけたまま。
「犬、好きなの?」
 リードを持った大和も同じく小走りで聞いてくる。
「はい。犬の可愛さは芸術の極みです」
 いつも冷静なエステルの意外な一面に、大和の口元がほころぶ。
「それじゃ。握ってみる?」
 大和からリードを受け取り、エステルは全身から浮き立つようだった。
「さあ、行きますわよ。ちんちん丸」
 エステルの嬉しさが伝わったのか。ちんちん丸もきゃんきゃんと鳴き、より早く駆けて行く。
 やがて川原の遊歩道までやって来る。
 うららかな夏の日差しを受け、川原を駆けるエステルとちんちん丸。
 さーと涼しげな風が駆け抜け、エステルの黒いマントととんがり帽子を揺らし、きらめく金色の髪に、大和の目が奪われた。
「ほんと、綺麗だよな」
 楽しそうに仔犬と散歩するエステルを見て、あらためて想う。いつものクールビューティーもいいが、笑っている顔も最高に美しい。
「きゃんきゃん」
と、ちんちん丸が急に向きを変え、川原に向かっていった。
「こっちに何かあるの?」
 エステルも何か感じたらしい。川原に一緒になって歩いて行く。
「ここは?」
 大和はすぐに気付いた。高い草の生えた川の近くの原っぱ。ここはあまり良い思い出のある場所ではない。

 ワイツとレイズと戦い、そして敗北し、アリサが陵辱され、リリムとリリスが連れ去られた場所だ。
「きゃんきゃん」
 そんな苦い記憶など知らず、ちんちん丸は川原に向かって鳴く。
「くんくん」
 そこには一人の男の子が、地面に這いつくばるように匂いを嗅いでいた。
 背はありさと同じくらいの小柄な男の子。金色のふさふさの髪を短く切り揃え、その頭からは犬耳がたらんと垂れていた。半袖半ズボン服からはしなやかな手足がすらっと伸びている。
 そして背中には小さな黒い羽。
「うーん。匂いがあまり残ってないわん」
 なにやら探している男の子に、
「さてはお前、魔王の子供だな」
 大和から声をかける。
「わわわ、わんわんっ」
 どうやらこちらには気付いていなかったようで。犬耳男の子は飛び上がって、怯えた目を向けた。つぶらな瞳で。
「わんわん」
 ちんちん丸が鳴くと、犬耳男の子も、「わんわん〜」と鳴いて返す。
「わんわん」
「わんわん」
「わんわん」
「わんわん」
 なにやら犬同士でわんわん鳴き合っている。
「あー。やめやめ。わからん」
 大和が言うと、エステルがリードを引いてちんちん丸に鳴くのをやめさせた。
「ルゥくんじゃない」
 そして金髪の可愛い犬耳男の子をうっとりと見て言うのだ。
「わんわん。エステルお姉様だわん」
 わんわんとルゥと呼ばれた犬耳男の子も応える。やはり同じ魔王の子供らしい。
 エステル、それにリリム、リリスとは腹違いの兄弟ということになる。
「誰?」
 訊ねる大和にルゥは手を上げて見せた。肉球のある手。

「ナイトメア☆ルゥ、わんわんと参上わん」

「あ、どうも」
 名乗るルゥに、大和も悪魔の姿を見せる。
「ナイトメア☆ヤマト、邪悪に参上」
「ナイトメア☆エステル、美麗に参上」
 ついでにエステルも名乗る。
 悪魔の姿になったヤマトに、ルゥもちんちん丸も毛を逆立てて驚き、ビクビクと怯えた目になる。
「こらこら、怖がるな。ちんちん丸、僕だよ。ルゥとやらも。同じ魔物なんだから」
「怖いわん〜」
 でもやはりヤマトが怖いらしい。怯えるルゥに、エステルが優しく諭す。
「大丈夫、いきなり噛み付いたりしないから。ほら、ちんちん丸も」
 エステルが言うと、ルゥもちんちん丸も少しは落ち着いたようだ。
「あのー。僕は噛み付かない悪魔なんでしょうか」
「いいじゃないですか」
 にっこり微笑みエステル。ルゥとちんちん丸にも。
「久しぶりねルゥ。元気だった?」
 ちんちん丸を連れてルゥに近付くと、エステルはその首輪を付けた白い喉をごろごろと鳴らしてやる。

「わんわん〜」
 気持ちよさそうに喉を鳴らすルゥ。エステルも金髪の可愛い犬耳弟に目を細めていた。
「それで、こんな所で何してたの」
「はっ。わんわん」
 訊ねられると、ルゥは半ズボンからふさふさと生えた尻尾を揺らし、
「そうでしたわん。ボクは探し人をしてたわん」
「探し人?」
「はいわん。ご主人様のダミアンお兄様から命令されたわん」
「ダミアンお兄様?」
 初めて聞く名前にヤマトは首を傾げ、エステルは眉をしかめた。
「まさか……ダミアンが動いてるの?」
 エステルがより詳しい話を聞こうとしたとき、
「わんわん」
 また犬の鳴き声が近付いて来る。豆柴犬が川原を走って来ていた。
「もう。アラビアータたらー」
 そしてその犬に引っ張られる小柄な少女。
 可愛い少女だった。栗色の髪を白いリボンでショートツインに結んでいる。
 どうやら少女も犬の散歩中らしい。そこで見たのは、
「きゃっ。化け物!」
 悪魔の姿のヤマトを見て、少女はきゃっと飛び上がる。
 黒い肌の2メートル程の巨体の二本角の悪魔。背中には大きな黒い翼。確かに怖いだろう。
 魔女の格好のエステルと犬耳男の子のルゥもいるが、この中ではヤマトがもっとも魔物らしかった。
 すぐに逃げ出すか、失神でもするのかと思ったが。
「マジカライズ!」
 誰もが予想外の事に、少女は変身した。正義の魔法少女に。
 ぴかっと光ると、私服から夏でも涼やかな半袖のセーラー服に変わっていた。
どこかの学校の制服だろうか。短いスカートには緑のチェック模様。

「マジカル☆マイ、妹で行くよ」

 フルートを構え、魔法少女に変身したマイが名乗る。
 説明しよう! カテリナ学院2年、朝霧 麻衣は変身すると正義の魔法少女マジカル☆マイになるのだ。お兄ちゃんには内緒。
「この街には何人魔法少女がいるの?」
 思わず頭を抱えるヤマト。
「どうしようか……エステル?」
 エステルの視線は豆柴犬にぐぐっと吸い寄せられていた。目が輝いている。
「おーい。エステル」
「はっ!?」
 ようやく自我を取り戻したらしい。それでも視線はアラビアータという豆柴犬から動かない。
 ルゥはというと、突然現れた正義の魔法少女に、犬耳を押さえてうずくまって震えている。
「悪い事する悪の魔物と悪の魔法少女たち。月のお姫様に代わって、マイがお仕置きするんだから」
「いや、あの。今は何もしていないけど」
 ヤマトの言葉など耳も貸さず、マイはフルートに口を付け、

 たらりらったらーん♪

 魔法の曲を奏で出す。曲はもちろんデスマーチ。
「ぬっ」
 不意に頭の中がガクガク揺れ、ヤマトの巨体が膝を着いた。

 たらりらったらーん♪

 マイがフルートを拭く度に、頭がガンガンに揺さぶられる。直接脳内をかき回されているようだ。
「わんわーん」
 犬耳を押さえたルゥが転げ回り、すぐに目を回して動かなくなる。
「くっ」
 エステルも苦しそうな顔で膝を曲げていた。
 しかし一緒に聞いているはずのちんちん丸とアラビアータは全く平気そう。
どちらも大人しく座って、ハッハッと尻尾を振っている。
 魔物にしか効かない曲なのだろう。なら話は簡単だ。
「へんしん解除」
 ヤマトは悪魔の姿から、元の人間の大和の姿に戻る。
「えっ?」
 さすがに驚くマイ。
「どうやら人間には効かないらしいな」
 人間になると頭痛が嘘の様に消えた。
「マジカライズ」
 そして大和は魔法の呪文で、久しぶりに人間の魔法使いになる。

「マジカル☆ヤマト、邪悪に行くぜ」

 高校の夏の半袖の制服に青いマントを羽織った姿。変身後も夏服。
 フルートを拭きながら、マイの瞳がさらなる驚きに見開かれる。
 男が魔法使いに変身、しかも邪悪な魔法使い。普通ならありえない。
 正義の魔法少女も反転すると悪の魔法少女になるが、大抵はその前に絶望して普通の女の子に戻る。
 悪魔でありながら人間でもある、大和ならではの魔法使い形態。
 青い宝玉の付いたロッドを振り上げ、ヤマトは呪文を唱えた。
「マシカル☆シュート」
「きゃっ!」
 青い光がフルートを弾き飛ばし、マイは尻餅を着いてしまう。
「はぁ。はぁ」
 曲が止まり、冷や汗をかいていたエステルが顔を上げた。ルゥはまだ失神したまま。
「そんな……」
 尻餅を付くマイにざっざっと歩み寄り、ヤマトが上から見下ろす。冷たく。
「あ、ああ……」
 呆然と呻くマイに、ヤマトは冷たく宣告する。
「人間の姿を見られたなら、ただでは返せないな」
 悪魔の姿だけなら問題ないが、ばっちりと変身前の姿を見られてしまった。
 かといって殺すのは可哀想。相手は可愛い少女。
 震える大きな瞳を見て、ぺろっと唇を舐める。
「絶望してもらうか」
 そうすれば全て忘れる。ここでの事も。
「このっ」
 尻餅を付いた姿勢からさっと背中を見せ、マイは落ちたフルートを拾い、立ち上がる。
 一連の動きをヤマトは黙って見ていた。邪魔することもできたがあえて拾わせる。
 圧倒的な力で捻じ伏せ、その上で犯すために。
「負けない……」
 フルートを持つ手がガタガタと震えていた。でも諦めない。
「お兄ちゃんのために」
 大好きなお兄ちゃんの脳裏が頭に浮かぶ。そう。彼女もまた兄の為に戦っていた。

「フルートスピア」
 しゃきーんとフルートの先端から刃が伸びる。仕込みフルートだ。
「ええっ!? またそれ?」
「やあっ!」
 鋭く疲れる刃を紙一重で避ける。一見ギリギリだが余裕を持ってかわしていた。
 紙一重なのはそれだけはっきり見えているから。
(レイズのほうがよっぽど早いな)
 魔界でも屈指の強さのレイズとの戦いは、ヤマトを確実に成長させていた。
 レイズに比べれば、最近まで普通の女の子だった魔法少女の戦いなど遊びのようなものだ。
「よっと」
「う〜」
 紙一重に見えて、その実マジカル☆ヤマトが余裕を持って刃をかわしているのに気付き、マイは口惜しげに唇を噛む。
青いマントにすら届かないのだ。
「腕を上げましたねマスター」
 余裕を持って対処するヤマトを、エステルも安心して見ていた。ちんちん丸と
アラビアータを一緒に撫でながら。二匹ともお腹を撫でられてゴロゴロと転がっている。
「こ、この。あなたなんかに」
 この、このと繰り出される刃を的確に回避し、そろそろヤマトは決めに入る。
「エステル。誰も来ないように出来るか」
「はい」
 二匹の犬をゴロゴロと撫でていたエステルは、黒い長手袋を填めた手をぱっと上げ、
「おにさん、おにさん、とーりゃんせー」
 結界の呪文を唱え、黒い闇が四方に散る。これで誰も近付けないし、感知できない。
よほど強力な魔力の持ち主か、注意深く感知しない限りは。そのどちらかでなければ助けは来ないということだ。
 結界を張り終わったエステルは、また犬をごろごろ撫でる作業に戻る。楽しくて仕方ないらしい。
「よし」
 結界を張ったのに気付き、ヤマトが反撃に移る。
「マジカル☆シュート」
「きゃああぁっ!」
 至近距離から青いロッドが青い光を放ち、マイを打ち据える。
「ぐっ」
 なんとか耐えたが、もう膝がガクガクだった。たった一撃で。
「こうなったら」
 再びフルートを口に付ける。

 たらりらったらーん♪

 再びデスマーチ。しかし頭痛は起こらない。
「むっ?」
 その代わり、たくさんの「♪」がヤマトの周囲に出現し、ぐるぐる回って取り囲む。
 実体化した曲。それがヤマトを包囲し、一斉に飛びかかってくる。

「マジカル☆フルート・ファイナルデスマーチ!」

 ずごごごご。
 ♪に全方位を塞がれながら、ヤマトも呪文を唱える。

「ハード・プロテクション」
 青い光がヤマトを包み、取り囲んだ♪がその身に一斉にぶつかり−
「ふん」
 青いマントをはためかせると、全ての♪を叩き落とされる。
「ええっ!?」
 必殺技も防御され、マイがそれでもフルートを構える。その懐に、ヤマトは一瞬で飛び込んでいた。ロッドを捨て拳を固く握る。
「決まりですね」
 ちんちん丸とアラビアータを撫でていたエステルが呟く。
「きゃっ」
 間近に迫ったヤマトにマイは思わず目を閉じ、固く握った拳が深々とお腹に突き刺さる。
「ぐっ」
 お腹を殴られ体がくの字に曲がり、マイの口から涎がこぼれる。ヤマトは素早くフルートを殴り飛ばした。転がっていくフルート。
「がっ。あっ」
 意識が遠くなる。体が痺れる。フルートを離した手で殴られたお腹を必死に押さえる。
 ヤマトは身を屈めると、お腹にさらに膝蹴り。腹を押さえる手の上から膝が食い込む。
「がああっ……!」
 口からこぼれる涎が一気に増え、マイはがくっと膝を付いた。肺が圧迫され
息が苦しくなり、ハァハァと息を吸う。それでも酸素を吸ったという気がしない。
 膝を付いたマイの背中をヤマトは冷たく見下ろし、その丸まった背中に蹴りを入れた。
「きゃっ」
 前のめりに倒れるマイ。背中にはっきりと靴の跡が残る。間髪入れず、さらに背中を蹴り上げた。サッカーボールのように。
「きゃあああっ!」
 背骨がギシギシ鳴り、背筋を仰け反らせて苦痛に顔を歪めるマイ。うつ伏せに崩れ落ち、目からぽろぽろと涙がこぼれる。
「う、うう……。痛いよ、もうやめて……」
 リボンで結んだショートツインを掴み上げ、泣き崩れる可愛い顔を凝視し、
ヤマトは告げた。
「どうした? もう終わりか。終わりなら犯すぞ」
「あ、ああ……」
 犯す。その言葉が何度も頭の中に響き、唇がふるふると震えた。
「や、やだ……。助けてお兄ちゃん……」
 こいつもお兄ちゃん、か。
「助けて……。助けてお兄ちゃん」
 兄に助けを求める妹。ヤマトの胸がゾクゾクと高鳴る。
 ちらっと横を見ると、相変わらず二匹の犬をエステルは撫でていた。
 犬耳男の子のルゥは倒れたまま動かない……と思ったら、そのお尻がふるふる揺れ、がばっと起き上がる。
「はっ。わんわん」
「よう」
 起き出したルゥにヤマトは声をかけ、
「お前も犯るか?」
と、髪を掴んだマイを見せ付ける。彼女はぽろぽろと泣き崩れ、可愛い顔は苦痛に歪んでいた。
「わ、わんわんー。怖いわんー」
 ぶるっと震えると、ルゥは四本足で駆け、たちまち見えなくなった。
「怖がりだな」
 可愛いとはいえ男の子。さして惜しくもないように呟き、ヤマトの視線はマイに注がれる。

 夏の制服姿の可愛らしい魔法少女。
「あ、ああ……」
 大きな瞳は痛みと恐怖にふるふると震え、涙がぽろぽろとこぼれている。
「ふん」
 泣き崩れる可愛い顔を叩きつける様に地面に押し付け、ヤマトは馬乗りになる。
「きゃっ!」
 下は草むらだったが、それでも後頭部を思いっきり地面にぶつけ、頭がガンガン響いた。
 そこに上になったヤマトが手を伸ばす。胸元の黄色いリボンに。しゅるしゅるっとリボンをほどき、セーラー服の襟元を掴み、力任せに引っ張る。
「キャー!」
 ビリリッと絹が裂ける音と絹が裂けるような悲鳴が重なる。だがそれを聞くのはヤマトとエステルと二匹の犬だけ。
 セーラー服の下は白と緑のシマシマ模様のブラジャーだった。可憐な膨らみを隠している。
「や、やめ……」
 咄嗟に悲鳴を上げようとする口を、ヤマトはぱんと頬を殴って止めた。グーで。
「ふぐっ」
 悲鳴を上げようとした口からは代わりに血が飛ぶ。口のどこかを切ったらしい。
 さらにドスドスと、馬乗りのまま少女の柔らかいほっぺたを殴る。殴る。
「ひいぃ……! ひぐっ!」
 殴られる度に右に左にマイの可愛い顔が跳び、涙が飛び散り、口から血がこぼれた。
 ヤマトがようやく殴るのをやめると、せっかくの可愛い顔は真っ赤に腫れている。鼻からも血が出ていた。
「ひぐっ……えぐっ……」
「大人しくしてろよ」
 もはや泣きすするだけの魔法少女にヤマトは念を押し、ブラジャーを引っ張ってぶちっと引き千切った。
「うう……」
 可憐な乳房を露にされ、恥ずかしさと悔しさで涙が溢れる。だがもう悲鳴を上げることはしなかった。痛みですっかり萎縮してしまっている。
 ヤマトが手を上げるだけで、びくっと瞳が怯え、全身が震えた。
 だがヤマトの手は可憐な乳房を鷲掴みにするだけだった。もう一つの乳房には指が伸び、ピンクの乳首を挟んでくる。
 もみもみと乳房を手の平全体で捏ね、乳首をすりすりと指で挟んですりあげる。
「ひぐっ……。お兄ちゃん、助けて……。ううっ」
 胸を愛撫されながら、マイは殴られた痛みとショックで頭が呆然とし、全く反応しない。涙と血を流しながら、ただ兄に助けを求める。
 手の中の乳房は小振りなものの、芯までしっかり柔らかい。乳首もコリコリしてて良い感触。
 だがやはり反応がないとつまらない。
 ヤマトは胸から手を離すと、馬乗りになっていたマイから腰を上げた。
 助かった、というマイの安堵も虚しく、今度は短いスカートに手がかかる。
 夏服にしてもかなり短いスカート。捲くると、下は白と緑のシマシマ模様のパンツ。ブラジャーと同じ柄。
「やだ……見ないでよ」
 ぼそりと小さくマイが呟く。それが精一杯の抵抗。
 するとヤマトは拳を固め、ごきっとパンツの上から股間を殴った。
「ひいいぃっ!!!」
 痛みに背中が上がり、今まで以上に涙がぶわっと溢れる。
 股間を殴られると痛いのは男も女も同じ。ひでー。

「いたっ……! やめ、やめて……お兄ちゃん……」
 お兄ちゃん、という言葉に、ヤマトの拳がぴたっと止まる。また殴ろうとしてたらしい。
「痛いよ……。助けてよお兄ちゃん……お兄ちゃん……」
 腹を殴られ蹴られ、顔を殴られ、股間まで殴られ。上半身を剥き出しにされたマイはさめざめとむさび泣く。
 ヤマトはその泣き顔に自身の妹のありさを重ね、股間を熱くした。瞳が欲情にギラギラと輝く。
 白と緑のシマシマ模様のパンツをもどかしそうに脱がしていく。マイはもう抵抗する気力もなく、するすると細い脚を布が滑り落ちていった。
 捲くられた短いスカートの中、薄い陰毛に覆われたピンクの縦筋が丸見えで。
「いや……イヤァ。見ないで……ヒッ!」
 必死に懇願するマイだが、ヤマトが手を振り上げると、ヒッと怯えて言葉も出なくなった。すっかり殴られるのが恐怖になっている。
 ただヤマトもこれ以上は殴ろうとせず、振り上げた手でズボンのチャックを降ろした。股間の膨らみがぽんと飛び出す。すでに準備完了。
「いやぁ」
 赤黒い肉棒から目を逸らすと、二匹の犬と戯れるエステルが見えた。
「アラビアータ……」
 涙で霞む目で、この場での唯一の味方を必死に探す。
「ほーら。くるくるくるー」
 そのアラビアータは、エステルに尻尾を丸められていた。手を離すと、くるくると丸められていた尻尾が伸びていく。
「ああん、もう。どうしてこんなに可愛いの?」
 すりすりとエステルに撫でられ、アラビアータは上機嫌で転がっていた。シベリアンハスキーの仔犬も一緒に、エステルの巧妙な愛撫に身を委ねる。
「うう……」
 楽しげな様子のアラビアータに、涙がぼたぼたとこぼれる。自分はこんなに痛いのに、苦しいのに、どうして助けてくれないのだろう。
「向こうも楽しそうだな」
 ヤマトの声が上からかかってくる。二匹の犬と戯れるエステルは本当に楽しそう。
「こっちも楽しむか」
 そしてヤマトの勃起したペニスが、マイの腰へと近づけられる。捲くられたスカートの中へと。
「ひっ……。いや、いや……」
 逃れようにも体は痺れ、動かない。殴られた痛みとショックで。
「お兄ちゃん……。やだ、やだやだ、いや、嫌だよ。助けてよ……」
 どんなに痛くても苦しくても、誰も助けてくれなくて。むにっと、股間に熱いモノが触れる。
ヤマトの尖ったペニス。マイにはそれが凶器のように感じられて。
まさしくそれは肉の凶器。乙女の純潔を奪うケダモノの毒牙。
「ひいぃ……!」
 ぐいぐいと、少しも濡れていないまだ乾いたままの花弁に、肉の凶器の先端が突き刺さり、ピンクの縦筋を二つに裂こうとしていた。
その圧力を腰に直に感じ、マイは緊張して股間がさらに固くなる。
 硬直する割れ目を先端に感じながら、ヤマトもまた腰に力を込め、一気に突いた。
「ひぎいいいぃぃぃ!」
 ぶちっ、と肉の壁が破られ、血が滴る。絶叫が空気を震わせ、マイの手は草を掻き毟っていた。
「はがああっ! ぐああああっ!」
 異物が体内に突き刺さる激痛に、腰がばたつき、突き刺さった肉棒を払い落とそうとする。
だが肉棒はしっかりと割れ目に亀裂を作って先端を埋め、血がこじ開けられた裂け目からこぼれていた。

「こんな……こんな、いやぁっ!」
 正義の魔法少女になったのに、その結果が邪悪な魔法使いに犯される。陵辱される。レイプされる。強姦される。
「いやあっ! いやあああーっ!」
 どんなに叫んでも泣いても誰も助けてくれない。助けは来ない。

「イヤアアアアアアアアーッ!」

 ぎち、ぎちっと固い肉壁を掘り進み、肉棒がずぶっと処女を貫いた。
「アアアアアアアアアアアアァァァーッ!!!」
 断末魔のような絶叫が虚しく宙に満ち、ヤマトは苦痛に顔をしかめながら腰を振っていた。
 そう。敏感な性器を固い膣に無理矢理挿入し、ヤマトだって痛いのだ。
悪魔時の硬いペニスなら何てことないないだろうが、邪悪な魔法使いマジカル☆ヤマトのちんこは普通の人間と全く同じ。
突っ込んだ先端がヒリヒリと痺れ、気持ちいどころではなかった。
「ひぎいぃっ! ぎいいぃ!」
「くうぅ」
 激痛に泣き叫ぶ少女と、痺れるちんこの痛みに顔をしかめる少年。それは性交なでではなくただの暴力。
 流れる血もあまり潤滑油にならず、ヤマトは肉棒を半ばまで埋めた所で腰を止めた。
それでもマイは、お腹全部を埋め尽くされたような圧迫感と痛みを感じている。
「ぬいて……お願い、ぬいてよぉ……」
「まだだよ」
 しかしヤマトも痛いだけで気持ちよくならない。突っ込んだだけでは痛いだけなのだ。
 すぐに終わらすか。
「お兄ちゃん! お兄ちゃん……お兄ちゃーん!」
 必死に兄を呼び、痛みで泣き叫ぶ少女に妹のありさを重ねる。すると股間の奥がどくんと熱くなって、玉から竿に衝動が迸る。
「いやあああっ! イヤアアアアアァァァーッ!」
 血にまみれた股間からどぷっと白濁液が漏れてきた。膣内にしっかりと精液が注がれ、ヤマトはすっきり晴れ晴れとした表情になる。
 同時にマジカル☆マイから流れ込んでくる魔力。
「ふー」
 射精と魔力の吸収を終えると、一汗掻いたヤマトはずるっと肉棒を引き抜いた。
血で濡れた肉棒をズボンに仕舞うと、放心している麻衣を見下ろした。
「あ、ああ……」
 魔力を奪われ変身は解け、元の私服の麻衣に戻っていた。その服も破かれ脱がされ、可憐な膨らみは晒され、開かれた股からは血と精液がこぼれ。
口からは声にならない呻きが漏れ、涙を流す瞳に光はなく虚ろに沈んでいた。
 草むらの上、服装を乱し、虚ろな瞳で横たわる美少女に、ヤマトの股間がまた疼いた。
「可愛いなぁ」
 顔を寄せ、ちゅっとキス。唇に付いた血をぺろっと舐める。
「いやぁ……」
 膣内射精されてからの初キスに、麻衣の唇はふるふると震えた。
「楽しみだなぁ」
 散々殴り蹴った麻衣のお腹を撫で、マジカル☆ヤマトは囁くのだった。
「このお腹が大きくなって、僕の子供を産むのが」
「いや……いやぁ……」
 虚ろな瞳からこぼれる涙が多くなる。麻痺した心に妊娠の恐怖だけが浮かんでいた。
「嫌なの? それならお腹が大きくなったら、鉄アレイで殴ってあげる」

 虚ろな瞳に己の顔を映し、ヤマトを言葉を続ける。
「楽しみだな。お腹が大きくなって、鉄アレイでがんがん殴るのが。お腹の赤ちゃんも、すっごく痛がるだろうね」
「いや……ああ……」
 虚ろに沈んでいく心。さらにヤマトの言葉が突き刺さる。
「君のお兄ちゃんも、きっと楽しんでくれるよ」
「いやああーっ!!!」
 そして、少女の心は絶望の闇に沈んだ。

「あ、あれ?」
 気が付けば川原で寝そべっていた。
「なんでこんな所に?」
 身を起こす麻衣に、アラビアータがきゃんきゃん鳴きながら駆け寄ってきた。
「あんっ、もう」
 アラビアータに頬を舐められながら、麻衣は近くに落ちているフルートに気付いた。
「あっ、そうか」
 フルートの練習とアラビアータの散歩に川原まで来たんだ。でもその後が思い出せない。
 自分の体を見下ろすが、どこもおかしいところはない。いつも通り。
「なんでかな?」
 しきりにおかしいなぁと首を傾げながら、麻衣はアラビアータと一緒に帰路に就いた。
 絶望した魔法少女は『絶望の闇』に囚われ、魔法少女や魔法に関する全ての記憶を失う。レイプされたことも全て。
服と体はヤマトが魔法で元に戻しておいた。膣内射精された精液も洗浄済み。ただし処女膜までは戻らないが。
 麻衣はもう普通の女の子。

「ただいまー」
 長い散歩から帰ってきた大和は、やけにすっきりした表情で戻ってきた。
エステルも犬とたくさん遊んで満足した様子。
「お兄ちゃん、遅かったね」
「ああ。ちょっとな」
 台所からありさの声。まさか正義の魔法少女と遭遇して、犯して絶望させたなんて言えない。
「ほーら、足を洗おうな」
 ちゃんとちんちん丸の足を洗ってから、リリムたちの部屋に向かう。
 リリムとリリスはまだすやすやと眠っていた。
 その可愛い顔を見ているうちに、またむくむくと股間が膨らむ。
「よーし」
 さっとズボンとパンツを脱ぐと、大和もベッドに飛び込んだ。
「うぅん。おまんこに隠れるのは無理ですよ〜」
 大和にちんこを挿れられても、まだリリムは起きませんでしたとさ。

 数日後。
「お兄ちゃん、大変」
 買い物に出かけていたありさがちらしを持って戻ってきた。
「商店街にあったんだけど」
「あっ。ちんちん丸の写真だー」
 そのちらしを見て、リリムが呑気に笑う。ちらしに写っているシベリアンハスキーの仔犬の写真は確かにちんちん丸。
「いや、そうだけど。ちゃんと下の字も読んでよ」
 ありさに言われ、リリムは下に書いてある文字と数字に目を移し、
「読めませんよ、こんなの」
「ええっ!?」

 驚いたのはありさも大和も一緒。
「待て、リリム。日本語読めないの?」と訊く大和。
「リリムはこの世界に来たばかりですよ?」
「いや、そうだけどさ。普通に日本語は喋ってるじゃない」
「ほんやくこんにゃくの魔法で言葉は通じるようにしてるんです」
「魔法ねえ」
 大和はちらっと横目でエステルを見た。ちんちん丸を膝に座らせ、彼女はうるうると目を潤ませている。ちらしの字が読めるらしい。
「でも、エステルはノートパソコン使ってたよね?」
「エステルお姉様はとっても頭が良いので、文字もすぐに覚えたんですよ」
「つまり、リリムはとっても頭が良いわけじゃないと」
「無茶言うなボケェ!」
「ごめんごめん。うん、知らない世界でよくやってるよ」
 いきなり罵声を浴びせるリリム、謝る大和。どっちがご主人様だか。
「リリスはどうなの?」
「よーめーまーせーんー」
「はいはい」
 ちらしを受け取り、大和が読んでやる。
「迷子の仔犬を捜してます。お心当たりの方はご連絡ください。
 ちんちん丸の本当の飼い主が探してるんだよ」
 ちらしにはちゃんと連絡先も書いてある。
「……へー」
 リリムはそわそわと歩き、エステルの膝の上のちんちん丸の背中を撫で、
「ちんちん丸、お家帰りたい? うん。そう。
 ご主人様。ちんちん丸はずっとここで暮らしたいって」
「いや待て。何も言ってないでしょ。それに約束したじゃない。飼い主が見つかったら返すって」
「えい」

 びりびり。

「ああっ。リリムがちらしを破った。こら何するの」
「いーやー。ちんちん丸とずっと一緒にいるー」
「わがまま言わないの! 飼い主が探してるんですよ。エステルも何か言って」
「見なかったことにしません?」
「エステルまで!? 駄目。駄目ったら駄目ー。ほら、返しに行きますよ」
「いーやーあー。ご主人様の鬼畜ー。鬼ー。悪魔ー」
「悪魔だよ!」
「リリムは悪の魔法少女だもーん」
「もう。いい加減にしなさい」
「えーん。えーん。ええーん」
 ちんちん丸を抱きかかえ、とうとう泣き出すリリムに、大和はやれやれと頭を悩ます。
 エステルもうるうると瞳を潤ませ、リリスはあわあわと歩き回るばかり。
 そしてありさは、
「いえ。こちらからお宅に連れて行きますので」
 ちらしに書いてあった番号に電話して、連絡を付けていた。早っ。
「お兄ちゃん。向こうの家に連れて行くことにしたから」
 受話器を降ろしたありさは、妙にさっぱりした表情をしていた。
 ちんちん丸と離れるのは寂しいけど、これでお兄ちゃんにくっつく泥棒犬が一匹減る。

 結局、全員でちんちん丸の本当の飼い主まで行くことになる。
「お姉ちゃんたち、ありがとー」
 玄関の前で待っていて、ちんちん丸を受け取った小さな女の子が笑顔でお礼を述べる。

「本当にありがとうございました」
 一緒になって頭を下げる母親。
「いえいえ。その子が無事にお家に戻れて何よりです」
という大和の後ろでは、リリム、リリス、エステルの3人の魔法少女がうるうると瞳を潤ませている。
「よかったね」
 ありさは笑顔で手を振っている。
「ほら、タロー。お姉ちゃんたちにありがとー」
 女の子に言われ、仔犬はきゃんと一声鳴いた。タローというのが本当の名前らしい。
「ちんちん丸ー」
 とうとう我慢できずに駆け寄ろうとするリリム。
「ほらリリム。帰るぞ」
 そのリリムを羽交い絞めにして、大和は無理矢理に引き摺っていく。
「ちんちん丸。ちんちん丸ー」
 意味不明なことを言うリリムに、女の子は純粋に怯えました。それがタローに勝手に付けられた名前だとは思いもしません。
「ちんちん丸がー。ふえええーん」
 泣く泣く引き摺られて行くリリム。リリスとエステルもすすり泣きながら、
ちんちん丸ことタローの本当のお家を後にします。

「えーん。ふえええええーん」
 自分で歩くようになってからも、まだ泣いているリリム。
「おー。よしよし。ほら泣かない泣かない。帰ったら、わんわんプレイしてやるから」
「えーん。えーん」
 大和の慰めにも、もっと大きな声で泣いちゃいます。
「はぁ」
 大和がため息をついたとき、ぴたっとリリムが立ち止まる。何かが足を舐めている。
 そして足元から、「くーん」と鳴き声。
「ちんちん丸!?」
 足元を見ると、ちんちん丸が尻尾を振ってそこにいました。
 涙目でリリムが仔犬を抱っこしてると、さっきの女の子と母親が走って来ます。
「タロー」
 どうやらまた逃げ出したようです。
「もう。どうしたの?」
 リリムからすぐにタローを受け取りますが、そのタローは寂しそうに尻尾を振ってリリムを見上げたまま。
「タローは、お姉ちゃんとお別れするのがいやなのかな?」
 肯定するようにくーんと鳴くタロー。別名ちんちん丸。
「あの」
 すると母親が遠慮がちに言ってきます。
「もし、よろしかったら。またこの子と遊んでもらえませんか?」
「どうするリリム?」
 大和が横目で聞くと、リリムは泣きながら満面の笑顔になり、
「はい! 喜んで」

(つづく)