ナイトメア☆リリムは魔界からやって来た悪の魔法少女である。
 魔王の座を目指して、彼女は今日も悪事に励むのだ。

 ぷっぷー。
 幼稚園児とその母親が待つ場所に幼稚園の送迎バスがやって来る。
「おはよう」
 ドアが開いて若い女の先生が顔を出すと、わらわらと幼稚園児はバスに乗り込んで行く。
「おはよーございまーす」
「いってきまーす」
 きちんと挨拶し、母親に行ってきますを言う園児たち。みんな良い子。
「ナイトメア☆リリム、ただいま参上」
 そこにピンクの髪をツインテールにした少女が乗り込んできた。リリムです。
「このバスはリリムが乗っ取ったのですー」
 そうです。遂にリリムは幼稚園バスジャック作戦を決行したのです。悪の基本にして究極。
「わー。リリムちゃんだー」「リリムちゃーん。おはよー」
 突如バスに乗り込んできたリリムに、女の子から声が飛ぶ。悪の魔法少女であるリリムを知っているらしいです。
「おはようですー」
 リリムも園児たちに挨拶。
「えーと、あなた」
 先生は急に乗り込んできたリリムにちょっと驚いたものの、慌てずに言いました。
「バスが発進しますので、席に着いてください」
「はーい」
 言われて素直に空いてる席に着くリリム。隣の女の子と手を繋いだり。

 ぷっぷー。

 そして幼稚園バスはリリムを乗せたまま走り出し、やがて幼稚園に到着。
「はーい、みんな。幼稚園に着きました」
 先生に引率され、バスからわらわらと降りる園児たち。リリムも一緒に降ります。
「やりましたー」
 バスから降りると、バンザイするリリム。
「幼稚園バスジャック大成功です!」
「よかったねー」「リリムちゃんすごーい」
 なんだか知らないが喜ぶリリムに、女の子たちからすごいすごいと声がかかった。
「はい。リリムはやりましたー。みんな、またねー」
 見事作戦を成し遂げたリリムは、園児たちに手を振って幼稚園から去って行った。
 ピンクのツインテールを揺らしながら去っていくリリムの、黒い羽の生えた背中を見送りながら、先生は首を傾げていた。
「あの子、何なのかしら?」
 悪の魔法少女です。

「ご主人様ー。リリムはやりましたよー」
 千巻家に帰ったリリムは早速報告するが、ご主人様はいない。
「ご主人様は〜学校〜」
 代わって姉のリリスが教えてくれた。幼稚園があるから当然学校もある。
「そっかー。学校ですかー。リリスお姉様、リリムはやりましたよー」
「えらい〜。えらい〜」

 リリスに頭を撫で撫でされて、えへへと笑うリリム。
 リリムと同じピンクの髪をセミロングの伸ばし、ピンクのふりふりドレスのリリス。
 こうして見ると、確かに姉妹という気がする。
「リリスも〜、負けてませんよ〜」
 そう言って、リリスが取り出したのはゴキブリホイホイ。
「わっ。それをどうするんですか?」
「台所に〜」
 言いながら台所に移動するリリス。リリムも付いていく。
「おくの〜」
 ゴキブリホイホイを台所に設置し、リリスはじっと眺める。
「これでどうするんですか?」
「これで〜ゴキブリさんを〜つかまえて〜うごけなくするの〜」
「はわわ。極悪非道です。リリスお姉様は悪い子ですよ」
 懸命に生きるゴキブリを容赦なく捕まえて駆除。まさに悪の極み。
「リリスは〜、悪い子〜」
 じっとゴキゴキホイホイを見ながらリリスは動かない。ゴキブリが捕まるまで見ているつもりらしい。リリムも一緒になって膝を抱えて座り込む。
「あなたたち」
 そんな二人を見て、エステルは額を指で押さえていた。呆れているらしい。
「いつもこんな感じ?」
「はい。いつもこんな感じです」
 同じ家に住むもう一人の姉に、リリムは笑顔で答える。
 額に指を置いたままやれやれと頭を振るエステル。輝く金色の髪がさらさらに揺れる。
 黒マントに黒いとんがり帽子の魔女の格好のエステル。室内でも帽子は被っている。
 そのエステルは妹二人の悪事を見ると、自分たちの部屋に入っていった。
 一階にある亡くなった両親の部屋。今そこはリリム、リリス、エステル3人の部屋として使っている。
「お兄ちゃんと一緒に寝るなんてダメ」と妹のありさが言うので、一階の部屋に移動したのだ。
 もっとも今でも大和と一緒に寝るのが多いのだが。
 その自分たち部屋からエステルは布団を持って庭に出る。
「エステルお姉様。そのお布団どうするんですか?」
「今日は良いお天気よ」
 7月。もうすぐ夏休み。空は夏の快晴が広がっていた。布団を干すには絶好の日。
「リリムもお手伝いします」
「じゃあ、二階のマスターとありさちゃんの布団持ってきて」
「はーい」
 階段を上がって大和の部屋に入り、リリムはぼふっと布団に突っ伏す。
「ご主人様の匂い……」
 くんくん嗅いで布団の匂いを堪能してから、庭に持っていく。それからありさの布団も。
「ゴキブリさん〜まだかな〜」
 リリスはまだゴキブリホイホイを見張っていた。
 大和とありさが学校に行っている間、こんな感じで悪の魔法少女3人は過ごしていく。

 昼過ぎになり、干していたお布団を取り込み、きちんとベッドメイク。
「ふー。これでよし」
 大和のベッドをきちんと整えると、リリムはぽふっと顔を突っ伏し、
「ここでご主人様と……キャー!」
 何を夢想したか、布団に顔を埋めたままふりふりとお尻を振る。
「ご主人様……まだかなー」

 ハァと切ない息。
「寂しいよぉ……。ご主人様」
 ふりふりお尻が揺れる。
 こうしていても仕方ない。顔を上げたリリムはとてとてと一階に降りていく。
 台所を覗くと、リリスはまだゴキブリホイホイの前に座っていた。
 エステルは自室でノートパソコンを開いている。インターネットでもしているのだろうか。
「よーし。リリムも負けてませんよ」
 リリスお姉様もエステルお姉様も大好きだが、魔王の座を争うライバルには変わりない。
 外に飛び出したリリムは、真っ直ぐ公園へと向かう。
 もう幼稚園は終わる頃。公園に行けば、子供たちがいるかも。
 そして子供たち相手に、『鬼ごっこでずっと鬼になって追い掛け回す大作戦』を実行するのです。
「あれー?」
 だが期待に反して公園には誰もいなかった。
「くーん」
 代わりに小さな鳴き声。
「な、なんですかー?」
 自分の足元にすり寄る小さなナマモノを見下ろし、リリムはあわわと手を振った。
「はわわー。はわー」
 その小さなナマモノとは。

 大和はその日も、撫子さんと一緒に下校していた。ただし小学校の近くまで。
「それじゃ撫子さん。今度の日曜日に」
「はい」
 約束を交わし、笑顔で手を振る撫子。今度の日曜日、大和と一緒に遊園地に行く約束をした。
 慎ましい、でもだからこそ嬉しさが伝わる撫子の笑顔。見ている大和も笑顔になる。
「お兄ちゃーん」
 そのとき、小学校で待っているはずのありさの声がした。
「ありさ!? どうしてここに」
「お兄ちゃんの匂いがしたから来ちゃった。ああっ!?」
 兄を見つけて上機嫌のありさの表情が、一転して険しくなる。撫子も見つけたからだ。
「また、お兄ちゃんと一緒に……!」
 さっと背中のランドセルからバトンを取り出す。その先端からしゅっと刃が飛び出した。仕込みバトンだ。
「なんでそんなもの持ってるの!?」
 いきなり撫子を突き刺そうとする妹を、必死になって羽交い絞めする大和。
「撫子さん今のうちに逃げて! ここは僕がなんとかする!」
「お兄ちゃん邪魔しないで! あの女刺せないじゃない!」
「う、うん。それじゃあね」
 大和に羽交い絞めにされながらも、こちらに刃付きのバトンを向けるありさの険しい瞳に背筋を凍らせ、撫子はそそくさと足早に去って行った。
 とかく恋は命懸け。

「こらー!」
 家に帰ると、早速ありさの頭をこつんと小突く大和。軽く。
「あーん。お兄ちゃんがぶったー」
「バトンに刃まで仕込んで! 駄目でしょう」
「ダメじゃないよ。泥棒猫を刺すのはいいんだよ」
「駄目ー!」
 いつものように玄関を入ってすぐの廊下で繰り返される言い争い。

「今日はリリムちゃんたちは?」
「そういえば」
 ありさの言葉に大和も気付く。帰ってくるなり抱きついてくるリリムが今日は見えない。リリスとエステルも。
「あっ。ご主人様〜」
 そのとき、リリスが顔を出す。一階の元両親の部屋、現在は悪の魔法少女3人組の部屋から。
「ただいま。リリス、今日は何かあった?」
「えっと〜」
「な、何もないですよ!」
 何か言おうとしたリリスを遮ってリリムが駆けて来る。
「ご主人様! リリムはコーヒー淹れました!」
 そして差し出すマグカップ。
「ええっ!? ダメだよダメ。お兄ちゃんの口に入れるものは全部ありさが作るんだから。
そして細胞の一つ一つまでありさの作ったもので、お兄ちゃんの体は構成されるの!」
「きょ、今日だけは! 今日だけはリリムのコーヒーを飲んでください!」
「う、うん」
 何でそんな必死なのか知らないが、とりあえず大和はマグカップを受け取る。
「なあ」
 中身を見て大和は言った。
「なんかこのコーヒー青くない?」
「はい。味付けに青酸カリを入れましたから!」
「へー。青酸カリか。美味しそうじゃないか、はっはっは」
 渡されたマグカップを大和はリリムに返す。
「リリム飲んでみろよ」
「ええっ。い、いやですよ。すっごく体に悪そうじゃないですか」
「そんなものを僕に飲まそうとしたのかー!」
「いいから飲んでー! そしてリリムの言うこと聞いてー!」
「なに隠してる!」
 さっとリリムたちの部屋に飛び込む大和。
「だめー! 見ないでー!」
 マグカップを持ったままのリリムが付いてくるが、遅かった。
「くーん」
 床に座ったエステルの膝の上。気持ちよさそうに、一匹の仔犬が座っていた。
「あっ。マスター。お帰りなさい」
「ただいま」
 挨拶を交わしてから、くわっと仔犬を凝視し、
「犬? 仔犬だぁ!?」
 どうやらシベリアンハスキーの仔犬らしい。銀色の毛並みが可愛らしい。
「わっ。かわいー」
 その仔犬を見たありさは、すぐにどこかに出掛けて行く。
「どこで拾ってきたの? リリムは自分の面倒だって見れないでしょ」
 呆れる大和に、リリムは拳を握って力説。マグカップは中身ごと廃棄処分。
「ご、ご主人様! リリムはでっかい犬にレイプされてたんですよ!」
「こんなときにいきなりトラウマを言うなーっ!」
「で、でも、犬恐怖症とかにはなってないんです!」
 仔犬は可愛いからというのもある。
「だからこの犬どうしたの?」
「公園で拾ってきたんですぅ」
「返してらっしゃい! 今すぐ元の場所に戻してきなさい!」
「こ、これはその……さ、作戦ですよ! 作戦!」
「作戦?」
「そうです! 『拾った仔犬を虐待しよう大作戦』ですよ!」
「虐待ってどんな?」

「熱ーいシャワーを浴びせて、洗剤でごしごし洗ったり、
 ミルクをいっぱい飲ませて、たくさんうんこさせたり、
 寝ているときもぎゅっと抱きしめて、逃がさないようにするんです!」
「リ、リリム……!」
 大和はカッと目を見開き、
「こんな可愛い仔犬にそんな酷いことをするなんて……! なんて極悪非道な!」
「はいっ! リリムは悪い子なんですよ!」
「捨てて来い!」
「いーやーあー」
 エステルの膝の上の仔犬をぎゅっと抱きしめ、リリムは嫌々と首を振った。
長いツインテールも一緒に揺れ、仔犬をくすぐっていく。
「はい、仔犬用のミルクだよ」
と、出掛けていたありさがミルクを差し出してきた。きちんとペットショップで買った仔犬用。
「あ、ありさ!? 早っ。ていうか、この犬飼うの?」
「いいじゃない。可愛いんだから」
 一緒に買ってきた犬用のお皿にミルクを入れると、早速仔犬はやって来て、ぺちゃぺちゃと舐めだす。
「かわいー!」
「可愛いです」
「かーわーいーいー」
「可愛いですね」
 ミルクを舐める仔犬をキラキラ輝く瞳で見下ろすありさ、リリム、リリス、エステルの四人の少女。
「あのなー」
 大和はやれやれと呆れた声を出し、
「家にはもう悪の魔法少女が3人もいるんだよ?」
「拾ってきたのはお兄ちゃんじゃない」
「そうだけどさ」
 悪の魔法少女は『拾ってきた』で済むのか。
「うーん」
 見下ろすと、口の周りにミルクを付けた仔犬が見上げてくる。つぶらな瞳で。
 そしてキラキラ輝く瞳で見上げる4人の魔法少女。
「ん?」
 仔犬をじっと見ていて大和は気付いた。
「この仔犬、首輪してるよ? ほら。誰かの飼い犬じゃないの?」
「えいっ」

 ぶちっ。

「ああっ! リリムが首輪引っこ抜いた! 駄目でしょう、飼い主が探してるかもしれないのに」
「ご主人様のエッチ。この仔犬が女の子だったら飼うんでしょう?」
「女の子なの?」
 確認して見よう。
「あっ、ご主人様。この子、女の子ですよ」
「そうか」
 大和はチャックを開いてちんこを出し、
「女の子なら初物は僕がもらう」

 一同、やおら大和に飛びかかり、取り押さえる。

「お兄ちゃんのへんたい!」
「ご主人様のレイプ犯!」
「こーいーぬーはーだーめー」

「マスターの強姦魔」
 口々に責められ、ちんこを出したままの大和はぞくぞくと背筋を震わせる。
「大丈夫。いきなり挿入なんてしないよ」
 立ち直った大和は、出したままのちんこを仔犬に差し出し、
「しゃぶれ」

 一同、やおら大和に飛びかかり、殴る。

「お兄ちゃんのへんたい!」ぽかぽか
「ご主人様のレイプ犯!」ぽかぽか
「こーいーぬーはーだーめー」ぽかぽか
「マスターの強姦魔」どすどす
 四人の魔法少女が交互に殴っていく。
「痛い、痛い」
 特にエステルが痛い。さすが格闘系魔法少女。
「と、とりあえずだな」
 しこたま殴られた後、ちんこを出したままで大和は言う。
「きちんと面倒見ること。飼い主が見つかるまでだからな」
「はい」
「飼い主が見つかったら、きちんと返すこと」
「はい」
「処女をもらうのは僕だからな」

 ぽかぽか

「痛い痛い」
 そんなこんなで千巻家に新しい家族が増えました。名前はまだない。

「ちんちん丸ー」
 リリムが呼ぶと、ハッハッと仔犬が駆けて来る。
 夕食後のひと時。居間では仔犬を中心にみんなが集まっていた。
「ちんちん丸。こっち来て」
 ありさが呼ぶと、今度はそっちに行く。
「ちんちん丸〜」
 リリスが呼ぶとそっちに行き、
「ちんちん丸」
 エステルに呼ばれて、最後は彼女の膝の上に。どうもそこがいいらしい。
「あのー。その、ちんちん丸というのは?」
「はい。仔犬の名前です」
 訊ねる大和にリリムが応えてやった。
「なんでそんな名前に?」
「それは……ご主人様がちんちんをしゃぶらせようとしたから」
「うん。それは僕が悪かった。だからって、メスにちんちん丸は無いだろ!」
 オスだったらいいのか。
「えー。いいじゃない。可愛い名前で。ねえ、ちんちん丸」
 呼びかけながら、エステルの膝の上のちんちん丸の首を撫でてやるありさ。
「うーん。ありさが言うならいいけどさ」
 というわけで、ちんちん丸に命名決定。
「ちんちん丸「ちんちん丸」「ちんちん丸〜」「ちんちん丸」
 しかし少女がちんちんちんちん言うのは……その、なんというか照れる。
「良いことちんちん丸」
 首を撫でながら、ありさがこの家でもっとも重要な仕来たりを教えてくれます。
「お兄ちゃんはありさのものなんだからね。ちんちん丸でも取っちゃダメだよ。
お兄ちゃんを取っちゃう泥棒犬は、両手両足切断して、目玉くり貫いて、舌を引っこ抜いて、内臓全て抜き取って、燻製にしちゃうんだから」

「く、くーん」
 なんだか怯えたように頭を垂れるちんちん丸。
「さっ。お風呂入ろうか」
 そんなちんちん丸を、ありさは笑顔で抱えるのです。
「リリムもー」
「うん。一緒にごしごししよう」
 ちんちん丸を連れ、ありさとリリムは仲良くお風呂場に向かった。
 並んで歩く二人を見ながら、大和はうんうん頷く。
「なんだかんだで、あの二人も仲良くなったよな」
 大和の言葉に、リリスは首を傾げ、エステルは肩をすくめた。
 まだまだ大和は甘いと言わざるを得ない。

「きゃー。ちんちん丸。そこ舐めちゃだめー」
「やーん。リリムも舐められちゃいますー」
 お風呂場から聞こえてくる楽しげな声に、大和はガッと宙を睨み、
「くそ! なんで僕は犬じゃないんだ!」
 人間だから。悪魔だから。だだだんっ。
 しかし悪魔の鋭い耳をオフにしている大和には聞こえなかった。ありさとリリムの会話までは。
「わー。リリムちゃん胸大きいよねー」
「えへへー」
「お兄ちゃん、小さい胸が好きって言ってるけど……やっぱりちんこを挟めるのがいいよね」
「ありさちゃんもそのうち大きくなりますよ」
「んー。でも」
「なんです?」
「リリムちゃんのおっぱいを切り落として移植したほうが早いかなーなんて」
「はわわ。だ、だめですよー。いたいですー」
「あはは。冗談だよ。切るなら、エステルさんのほうがいいかな」
「はい。エステルお姉様は胸もとってもキレイです」
「うん。ほんとキレイだよねエステルさん。髪なんかキラキラで。いいなー」
「でも、ありさちゃんの髪もキレイですよ」
「うーん。でも変身しないと短いし」
「短いのも可愛いです」
「ふふっ。ありがと。でもやっぱり長いのがいいな。撫子お姉ちゃんもすっごく長くてキレイだし」
「ご主人様のご友人ですね」
「うん……。でも最近はずっと一緒みたいだし。やっぱり付き合ってるのかな」
「はあ」
「撫子お姉ちゃんは嫌いじゃないけど……。お兄ちゃんが、他の女の人と付き合うのは嫌だな」
「ありさちゃんは本当にお兄様想いなんですね」
「うん。お兄ちゃんのお嫁さんになるんだもん。だから、お兄ちゃんにくっつく女は、目玉から指突っ込んで、脳ミソぐりぐりしてやるんだから」
「はわわ」
「リリムちゃんは、お兄ちゃんの下僕だもんね?」
「は、はい。リリムは下僕なのですよ」
「よろしい。お兄ちゃんのお嫁さんはありさに決まりなんだから」
 くすくすと笑い合う二人の少女。大和にはそのくすくす笑いしか聞こえていなかった。

「はーい、ちんちん丸。乾かしましょー」
 お風呂から上がると、リリムがサーとドライヤーをかけ、ちんちん丸を乾かしてやる。
 そのリリムの長いピンクの髪を、リリスが櫛で梳かしてあげていた。
「いいなー」

 姉妹の何気ない仕草に、ありさがつい羨ましそうな声を出す。
「ありさちゃんもする?」
 にっこり笑うエステルに、ありさは複雑な表情を見せ、
「いいですよ。それより、お風呂入ってください」
「はい」
 上品に振舞うエステルに、ありさはやっぱり眉を曲げていた。
 キラキラ輝く金色の髪をなびかせて歩くエステル。
 どうしたら、あんな素敵な女性になれるんだろう。
「ちんちん丸ー。今日は一緒に寝ようねー」
 ぎゅーとちんちん丸を抱きしめるリリムを見て、ありさはそっと嘆息をつくのだった。

 さて。
 お風呂場でエステルは長い金髪を丁寧に洗い、アップにまとめていると、
「おーい」
 大和も入ってくる。もちろん全裸。
「あら。マスター」
 ぷらおうら揺れるちんこを見ながら、エステルはうっとりと頬を染める。
「一緒に入っていい?」
 裸で入ってから聞くのもどうかと。
「どうぞ」
「うん」
 金髪をアップにした裸のエステルを眺め、大和のちんこがたちまちむくむくと肥大化していくのだった。
「まあ。マスター正直ですね」
「うん」
 年頃の男の子のちんこは正直者。
「ごしごししてあげます」
「うん。お願い」
 背中を向いて座る大和。エステルは豊かな胸を中心に自分の体にボディソープを付けると、ぎゅっと抱きついた。
「うわぁ」
 背中に当たる柔らかい膨らみに感嘆が漏れる。そしてごしごしと全身を擦り付け、泡がぶくぶくと泡だった。
 ごしごし。
「はわ〜」
 ぶくぶく。
「ううん」
 背中に当たる柔らかい膨らみに、背筋がゾクゾクと震える。大和の震える背中を泡だらけにしながら、エステルは甘い声で囁いた
「どこか、痒い所はありますか?」
「ちんこ」
 勃起したちんこはさっきからむず痒い。
「本当に正直ですね」
 くすっと微笑。背中から手を回して、しなやかな指で竿をさすってそこにも泡を立てていく。
「はう〜」
 さらに根元の金玉から陰毛までごしごしと指でさすり、泡立てた。
「ううん。エステルはもう立派なソープ嬢だね」
「やだ。そんな褒めないでください」
 ごしごし。
 泡立てた手でちんこをさすっていくと、赤黒い先端がビクビクと震え、
 どぴゅっ
 と射精して、エステルの指を汚した。
「まあ」
 指先の泡に濃い精液が混じる。

「お盛んですのね」
「えへへ」
 泡だらけになりながら、照れたように笑う大和。一回抜いたちんこだが、すぐにまた勃起していく。
「あ、あのエステル。続きはベッドでいい?」
「はい」
 エステルはくすっと笑い、お湯をかけて泡を流すのだった。
 体をごしごし洗って、二人一緒にしっかり湯船に浸かる。
 エステルの豊満な裸体を見せ付けられた大和は、真っ赤な顔ですっかりのぼせていた。

 お風呂から上がると、体を拭いたエステルはバスタオル一枚だけを羽織って、裸の大和と一緒に階段を上がっていく。
 大和が裸のままなのは、どうせすぐに脱ぐから。ちんこ丸出し。
 ありさとリリムは一階の部屋で、ちんちん丸と遊んでいた。リリスは一番最後にお風呂。最後に一人でのんびり入るのが好きらしい。
「ふふ」
 二階の大和の部屋に上がると、エステルは水気を帯びたままの髪を振り、金色の輝きを撒き散らせた。
普段はツーサイドアップに結んでいる長い金髪を、今は全て背中に真っ直ぐ降ろしている。
 そうするとまるで絵本に出てくるお姫様のようで。
「エステル」
 大和は正面から裸のエステルを抱きしめて口を重ね、唇を掻き分けて舌を挿れた。
「んっ」
 頬を染め、口内に受け入れた大和の舌を感じ、エステルは自ら舌を絡めていった。
 じゅく、じゅくと淫らな音が部屋に響き、二人は舌を絡め、抱き合ったままベッドへと倒れ込む。
 ベッドに横になりながらも、お互いの唾液を交換するように舌を絡め、全身の肌も重ねていった。
 エステルのすべすべの肌を味わうように大和は全身で抱きしめ、背中に手を回して長い金髪を撫で下ろす。
「ふぅ」
 口を塞がれ鼻息がお互いの顔にかかる。そこで口を離した。
「はぁ」
 熱く吐息を出すエステルはすっかり火照り、
「ふぅ」
 大和はギラギラ瞳を輝かせ、ギンギンにちんこを勃起させていた。
 密着したエステルのお腹に硬い肉棒が上を向いて当たっている。
「エステル。もう……」
「はい」
 赤い顔で微笑し、エステルは大きく脚を拡げた。中心の金色の花弁もしっかりと濡れている。
「どうぞ……」
 女の中心を見た瞬間に頭が沸騰し、真っ直ぐにちんこを押さえて叩き付ける。
「あんっ」
 まるで槍のように尖った硬い肉棒が股間に突き刺さり、エステルの肉壁はぐにっと左右に割れて受け止めた。
「んんぅ」
 ぐにぐにと蜜肉を押し分け、硬い勃起が進み、すぐに根元まで埋まっていく。
「はぁあ」
 金色の髪をベッドに広げ、深く喘ぐエステル。上にはギラギラと欲情した瞳で彼女を貫く少年マスター。
「マスター……」

 エステルの手が背中に回り、大和を抱き返す。
「んぅ」
 大和の腰がぐりっと一回転し、肉壷を掻き回す。しなやかな脚が上に伸び、大和の腰に合わせて揺れた。
「あっ、あっ、アッ。アウゥ……。ん、ぅ、ア、んぅ……」
 腰がゆっくりと回り、きゅっと眉が官能に曲がる。喘ぎが甘く耳を打ち、大和の頭を真っ赤に染め上げていった。
「はぁ。あぁ……」
 エステルを外と内で感じ、大和はゆっくりゆっくりと腰を振り、じっくりと堪能していった。
 肌が汗に濡れ、お風呂で流したばかりなのにな、と頭の片隅が思う。すぐにそんな思考も吹き飛んでいった。
「んんぅ。あぁっ!」
 ビクッとエステルの背筋が仰け反り、胎内のちんこを硬く締め付けた。
 導かれるまま、大和は射精を膣内に出した。
「はああっ……! あんんぅ!」
 脚が指の先端までピンと上を向き、硬直し。
「ふー」
 射精した大和がキスすると、脚はばたっと下に落ちる。
 そしてキスしたまま腰を回し、挿れたままの肉棒で膣内を掻き混ぜた。ギチギチした刺激に射精して萎えていた肉棒はすぐに硬さを取り戻した。
「んんっ。あっ」
 口を重ね、舌を絡め、エステルは胎内でもしっかりと大和を感じ、再び脚が上を向く。
 口を離すと、大和は挿入したまま上半身を曲げ、今度は豊かな胸に口付け。
「あうぅ!」
 勃起した乳首にキスを受け、しゃぶられ、エステルの背筋が仰け反る。
 乳首を吸いながら大和を腰を振り、エステルを貪欲に貪る。
「あああぁ! あううぅ! あぐううっ!」
 エステルの肢体が悶え、喘ぎに混じりギシギシとベッドも鳴る。
 盛りの付いた若い二人はまだまだ元気で。汗だくになりながら裸体を絡め、何度も何度も絶頂と射精を繰り返していくのだった。

 その頃、一階ではリリムがちんちん丸をぎゅーと抱きしめ、一緒に寝ていた。
 翌朝。リリムの布団はおしっこに濡れていた。
「ち、違いますよ! リリムじゃないです。ちんちん丸ですよっ。リリムはもう、
おねしょは卒業したんですから! ちんちん丸のおねしょです! 信じてくださぁい!」
 泣きべそをかきながら、リリムはおしっこで濡れた布団を干すのだった。
 その足元できゃんきゃん鳴いて駆けずり回るちんちん丸。

 千巻家に新しい家族が増えた。名前はちんちん丸。
 魔法少女たちはみんな笑顔で呼びかけるのだ。
「ちんちん丸」

(つづく)