泣き声が聞こえる。たくさんの。
 同級生の泣き声。
 小さな棺にしがみついて泣き叫ぶ母親の声。
「ひくっ……うっ……。ごめんね。ごめんね」
 そしてありさ自身の泣き声。
 河川敷で惨殺死体で発見された小学6年生の金城 智子。
 警察の死体解剖も終わり、翌日には自宅で葬式が行われていた。
 学校の同級生も全員参加。その中で、ありさはずっと泣いていた。智子ちゃんと大の仲良しだから。
 そして正義の魔法少女でもあるから。

 葬式も終わり、ぽつぽつと同級生は帰っていく。学校はもう放課後で今日はこのまま解散。
 呆然と外に出ると雨が降っていた。雨にも気付かないように下を向いて歩いていると、
傘が頭上に差される。
「お兄ちゃん……」
 兄の大和が、自分の傘にありさを入れてくれたのだ。大和もまた黒スーツに黒ネクタイの喪服姿。
 何も言わず、大和はありさの小さな肩を抱き寄せて歩き出す。妹を同じ傘に入れて。
「うっ……ううっ……」
 兄の腕を握りながら、ありさは思い出したように泣いていた。
 ザーと雨が泣き声をかき消していく。

「ご主人様ぁ」
「ご主人様〜」
 家に帰ると、ピンクの髪の少女二人が出迎えてくれる。
 ピンクのツインテールのリリムはぱっと大和に抱きつき、ピンクのセミロングのリリスは、
指をもじもじと絡めていた。
 と、ありさが兄に抱きつくリリムの顔面を殴る。グーで。
「いたいですー」
 ぶしゅーと鼻血を出しながらぶっ倒れるリリム。
「あ、ありさ?」
「どうせ、あなたたちの兄弟なんでしょ……」
「えっ?」
 鼻血を出しながら立ち上がるリリムを、ありさはキッと睨み付け、
「智子ちゃんを殺したの! 魔物でしょ!」
「まあ落ち着け。そう決まったわけじゃないし」
 大和がなだめるが、ありさは涙目で続ける。
「決まってるよ! 智子ちゃん、大きな動物に噛まれたような傷跡があったんだよ!」
 智子の死体には何か大きな動物に噛まれたような傷跡があった。それが直接の死因とされ、
警察では付近の住民に注意を促がしている。猛獣注意と。
「まあ確かに、この辺に野生の肉食獣はいないけどさ」
 魔法少女はいるけどね。
「智子ちゃんを殺した化け物……」
 ぐっとありさの小さな手が硬く握られる。
「許さない。……絶対に、許さないんだから」
 大粒の涙がありさの頬からこぼれ、床を濡らす。
 大和も、鼻血を出すリリムも、その鼻血を拭いてやるリリスも、何も言えなかった。

 その日から、
「ただいまー」
 ありさは学校から家に帰ると、
「行って来まーす」
 すぐに外に出掛ける。街のパトロールのためだ。
「気を付けてな」
 走って行く妹の後ろ姿を見送りながら、大和は小さくため息。
 相手は小学生の女の子を噛み殺すような奴だ。心配な気持ちもあるが、止めて聞くような妹じゃない。
 いざとなったら自分が助けに行けばいい。大和はそう決めていた。
 二階の自室に入ると、リリムが抱きついてくる。最近はありさと顔を合わせるのが怖くて、部屋で待つようになった。
「ご主人様〜」
 すりすりと頬を寄せるリリムを抱きしめ、大和は早速ベッドへと寝かせる。
 半袖の夏の制服を脱ぎながら、ベッドでわくわくと待つリリムと、ちょこんと座っているリリスに念を押す。
「ちゃんと魔力の感知はしておけよ」
「はーい」「は〜い〜」
 ありさがピンチのときに、交尾に夢中で気付かなかったなんてなったら、洒落にならない。
「それじゃあ、まずはリリムからな」
「わーい」
 だから大和は、リリムとリリスを交互に抱くことにする。一人は待っている間、
魔力の感知に専念するのだ。
「うんっ……」
 裸になったリリムに覆い被さり、柔らかな肢体をしゃぶり、味わっていく。
 リリムのピンクのツインテールを撫でながら、大和はどんな魔物が智子ちゃんを殺したのかと考えていた。
 おかっぱでメガネをかけ、おとなしくて控え目の智子ちゃん。
 殺すなんてもったいない。僕だったらたっぷりじっくり犯すのに。
「あっ……んっ……」
 股間に指を走らせると、リリムは敏感に反応してくれる。
 うん。我ながらよく開発したもんだ。
 リリムだけではない。リリスも妹のありさも、何度も抱いて青い性を開花させていった。
 その女たちを守る。大和に確かな使命感が芽生えつつあった。
 ところで撫子さんとはどこまでいったんだろうね。

 その日の夜。
 さんざん外を駆けずり回ったありさは早々に寝てしまい、今度は大和が外に出る。
 もちろん大和は悪魔だからして、パトロールなどでは断じてない。『夜の街を徘徊しよう大作戦』だ。
 学生の身で夜の街をうろつくなど、なんという悪事であろう。今はまだ人間の姿。
「わー。ご主人様、お星様がきれいですぅ」
「おーほーしさーまー。きーらきらー」
 しかもリリムとリリスの美少女姉妹連れ。まさに極悪非道の所業。
 人気の無い路地を歩きながら大和も星空を見上げる。梅雨の雨続きで星空を
見るのもずいぶん久しぶりに感じた。
 すっと星空に指を向け、
「見えるか、北斗七星の横に輝く星が」
「見えません」「みーえーなーいー」
「そうか。二人ともまだまだ死なないな」
 かく言う大和も、北斗七星の横の星は見えていない。

 そうこうしながら、暗い路地を選んで進んでいく3人。悪魔も悪の魔法少女もも夜目が利くので問題は無い。
「むっ」
 住宅街を歩いていると、大和がさっと電信柱に隠れる。
 後ろから、サイレンを鳴らさず赤色灯だけを回してミニパトが走ってきた。
 女子小学生惨殺事件があったばかりなのだ。警察もパトロールを強化している。
 ぽかーんと口を開けているリリムとリリスの横で、ミニパトはぴたっと止まった。
 じゃーと窓が開き、助手席に座った若い婦警さんが顔を出す。
「あなたたち。こんな時間に何してるの」
「夜の街を徘徊しよう大作戦です」
「はーいーかーいー」
 正直に言うリリムとリリス。隠れている大和はぐっと親指を立てていた。
「あっ!」
と、運転席の婦警がリリムを見て声を上げた。こちらも若い。
 ミニパトの中で婦警二人は小声で囁き合い、ドアを開けて出てくる。
「ねえ、あなた。もしかして、最近現れた悪い魔法少女じゃない?」
「はい。そうですよ。リリムは悪さする子なのです」
 あっさりと答えるリリム。ピンクのツインテールの背中には小さな黒い羽。
目立つことこの上ない。
「もしかして……女子小学生惨殺事件も、あなたが?」
「やだなー。リリムはそんなことはしません。やるなら幼稚園のバスジャックです」
 まだやる気だったのか。
「わー。リリムちゃん、悪い子〜」
と言うリリスにも婦警の目が向けられる。
 ピンクのセミロングに、ピンクのひらひらフリルのドレス。背中には小さな黒い羽。
こちらも非常に目立つ。
「あなたも、悪い魔法少女?」
「はーいー」
 バズーカ使って暴れてたわりには、警察にはあまり知られてないらしい。
 もっともプロの爆弾職人は表には出ないものだが。
「リリスは〜、バズーカ使いますー」
と聞かれてもいないのに、リリスがぱっとピンクのバズーカを出現させる。
このリリスバズーカは、リリスの魔力により生み出されているのだ。
 突如出現したピンクのバズーカに、婦警二人は目を丸くしたものの、
「銃刀法違反の現行犯で逮捕します」
 慌てず騒がずリリスに手錠をかける。
「あ〜れ〜」
「待ってください! リリスお姉様を逮捕するなら、リリムも!」
「はい。あなたも共犯で逮捕」
 がちゃっとリリムにも手錠。
「わーい。リリスお姉様とお揃いです」
 そして悪の魔法少女二人を逮捕した婦警は、ミニパトに乗せ、連行していった。
「ええーっ!? えー!!!?」
 赤色灯だけを回して走っていくミニパトを、大和を顎を大きく開けながら見送る。
 こうしてリリムとリリスは警察に逮捕されました。

 めでたし、めでたし。

      −ナイトメアドリーム第一部リリム編完−


 終わってどうする。
「まあ、何とかするだろ」
 何とかしない気もするが、大和は一人で『夜の街を徘徊しよう大作戦』を続行する事にした。
 逮捕された二人は、警察に飽きるか、ちんこが欲しくなれば帰ってくるだろう。
「たらりらったらーん」
 デスマーチを口ずさみながら、星空を見上げ歩いていく大和。
「んっ?」
と、遠くに黒い影が飛んでいるのが見える。それも二つ。
 意識を集中すると、確かに魔力を感じた。
「へんしん」
 その姿がぶわっと黒い影に包まれて肥大化する。
 体長2メートルほどの黒い肌のに二本角の悪魔。背中の黒い大きな蝙蝠の羽を広げ、
ばっと夜空に飛んで行く。
「こらー。待つのだー」
「もう。しつこいわね」
 悪魔の耳に若い女の声が聞こえる。二人だ。どうやら空中で追いかけっこをしているらしい。
 月をバックに先を行く少女の姿が見えた。箒にまたがった金髪の美少女。
 満月を浴びてキラキラ輝く金色の髪。腰まで真っ直ぐ伸び、左右を一房ずつ結んでいた。
ツーサイドアップというやつだろうか。
 その頭に黒いとんがり帽子を被り、裾の短い黒いドレス、背中には黒いマントを羽織っている。
マントの内側には小さな黒い羽。今はその羽ではなくまたがった箒で飛んでいるらしい。
 典型的な魔女スタイルの黒ずくめの少女だった。月光で浮かび上がる顔は白く端正で、
聡明さを感じさせ、蒼い瞳は知的に輝いている。
「あら、また誰か来た」
 近付くヤマトに、いち早く気付いたか、箒のスピードを緩める。
「待つのだー」
 それで後ろを飛ぶ少女に追いつかれた。
 赤い髪をポニーテールにまとめ、赤い武道着の少女。背中には小さな白い翼。
その翼をはためかせ、飛んでいるらしい。
いかにも気の強そうな幼さを残した童顔。先を行く美少女とは対照的な美少女だった。
「あーらら」
 上昇してくるヤマトに前、後ろから赤いポニーテールの少女に挟まれ、箒の少女が空中で停止する。
「むっ。なんだお前はー」
 ポニーの少女も、悪魔の姿のヤマトに気付いたらしい。空中で止まって、睨みつける。
「ナイトメア☆ヤマト、邪悪に参上」
「……」「……」
 ヤマトが名乗っても、少女二人は沈黙したまま。金髪の箒の少女は冷ややかに、
赤いポニーテールの少女は睨みつけるような視線を向けていた。
「あのー。僕が自己紹介したんだから、二人とも名乗ってほしいんですが」
「エンジェル☆リーシャ、元気に光臨!」
 先に赤いポニーの天使の少女が勢いよく名乗り、
「ナイトメア☆エステル、美麗に参上」
 金髪の悪の魔法少女も涼やかに名乗った。
「あ、どうも。二人ともお美しい」

 正直な感想を漏らすヤマトに、リーシャが指を突きつけ、
「さてはお前、悪魔だな」
「はい。そうですが」
「こいつの仲間だな!」
 こいつとはエステルのことらしい。月光を反射し、金色の髪がキラキラと空中で輝いている。
「いや、初対面です」
「嘘をつくな!」
「本当ですって」
 今にも噛み付きそうな勢いで睨む魔法天使リーシャ。
「ねえ。なんなの?」
 ヤマトが聞くとエステルは肩をすくめ、
「知らないわよ。空を飛んでたら、いきなり襲い掛かってきたんだから」
 どうやら深い事情があるわけではないらしい。
 魔物や悪の魔法少女を見かけたら、とりあえず退治しようとするのは魔法天使の習性である。
「二人いっぺんでも負けないのだー」
 リーシャが両手を構えると、そこに赤い魔力の光が集い、
「エンジェル☆トンファー!」
 トンファーとなり、さっと翼を広げ、挑みかかってくる!
「それじゃ、お願い」
「えっ?」
 さっと箒を飛ばし。ヤマトの広い背中に移動するエステル。
「守ってよ。男でしょ」
「いや、そんな」
とか言ってるうちに、トンファーを構えたリーシャは目の前。
「デビルファイヤー」
 牽制のつもりで口から火を吐く。ぼーっと夜空を赤く染める業火。今まで吸収した
魔力の分だけ威力も上がっていた。
「はあっ!」
 だがおの炎の中を真っ向から突き抜け、リーシャはトンファーを下から繰り出す。
「ぐえっ」
 顎を下から突き上げ、上を向いた顔に、またトンファーが振り下ろされる。二連弾。
「ぐぎゅうぅ」
 ずーんと真下に落下するヤマト。
「いてー」
 目に涙を溜めながら、翼を広げ、地面に激突する直前で何とか停止した。
「痛いよ、痛いよー」
 そのまま着地して、殴られた顔に手を当てる。どこかめり込んだんじゃないかと思うほど、痛かった。
「まだまだなのだー」
 その前に、リーシャも降りて来て着地。二本のしなやかな脚でさっと構えを取る。
 どうやらヤマトが落下してきたのは山の中のようだ。森が広がっているだけで明かりも見えない。
 だからこそ星空がきれいで、月と星が対峙する二人を見下ろしていた。
「ふれー。がんばれー」
 背中から涼やかな声。エステルも降りてきたらしい。
「あのー。出来れば、手伝ってほしいんですが」
「そうねー。君がやばくなったら、考えとくわ。本気でやばかったら逃げるけど」
「おーい」
と言ってる間に、リーシャが仕掛けてくる。

「はっ!」
 くるっと小柄な身を横に回転させ、竜巻のように迫ってきた。
「くっ」
 横薙ぎに繰り出されるトンファーを左腕に受ける。みしっ、と野太い悪魔の腕がきしんだ。
人間の姿だったら、間違いなく骨折していただろう。
「エンジェル☆キック!」
 回転の勢いをつけたまま。リーシャのしなやかな脚がすっと伸び、ヤマトの
左即頭部を蹴り抜いた。右上段蹴り。
「うおっ!」
 ごぉーんと衝撃が直接脳に響き、悪魔の巨体がよろめく。
 そこへすかさずリーシャの連撃蹴り。その場でまたくるっと回転し、今度は左足の踵が同じ場所、左即頭部を直撃!
「ぐっ」
 もう叫ぶ余裕もなく、ヤマトは目がグルグル回って倒れ付した。悪魔の巨体がどーんと倒れ、無様に大の字をつくる。
「あらら」
 その様子に、エステルは口に手を当てていた。だが目は笑っている。
「さあ。お仲間はもうやられたのだ」
「だから仲間じゃないって」
 仕方ないなー。と呟き、エステルは地面すれすれで浮遊していた箒から降りる。
 しっかりと大地に立ち、ちょいちょいと指を自分に向けた。リーシャを誘っているのだ。
「まあ、その程度なら勝てそうだし。いいわ、相手してあげる」
「待てよ……」
 地面からくぐもった声。
 リーシャが振り返ると、ヤマトがのっそりと立ち上がっていた。大きな悪魔の口からは赤い血が流れている。
「むっ。良い根性なのだー」
 さっとトンファーを構えるリーシャ。だがそれだけだなく、魔力を乗せたエンジェル☆キックは脅威。
「フォームチェンジ」
 だからヤマトは戦法を変える事にした。左腕が闇に包まれ、一回り大きくなる。
 リリスの処女を奪った呪いで追加された砲撃形態。
「ナイトメア☆ヤマト・キャノンフォーム」
 左腕が丸ごと黒い大砲に変化。その砲門をリーシャに向ける。
 どかん!
 発射された黒い闇の魔弾が真っ直ぐリーシャに向かう。
「ちっ」
 後ろに下がり、それから横に飛んでかわすリーシャ。この至近距離で避けるだけでも大したスピードだが、ヤマトとの距離は開いていた。
 かわされた魔弾はどごーんと木々を凪ぎ飛ばし、エステルのすぐ側を通って空に消えていく。
「へー」
 魔弾の風圧に長い金髪がサラサラと流れ、黒いとんがり帽子を押さえながら、
エステルはにやっと口元を歪ませる。
「まあまあやるじゃない」
 森の中をリーシャは高速で右に左に動く。ヤマトの照準をずらすためだ。
 実際、ヤマトの悪魔の目でもリーシャの動きは追いきれなかった。ただでさえ障害物の多い森の中なのだ。
暗闇は関係ないとはいえ、これでは狙いにくい。
 それでもドカン、ドカンと撃ち込んでみるが、まるで手応えがない。
「もらった!」
 リーシャの小柄な体が目の前にせまる。懐に飛び込み勝利を確信した笑み。

 だがその一瞬こそヤマトが狙った瞬間。
「フルバレル」
 ぶしゅーと黒い煙が上がり、左腕の大砲が前後に伸びる。

「ナイトメア☆キャノン・フルバースト!」

 ごおおっ!
 フルバレルの大砲から巨大な闇の魔弾が発射。
「なっ!」
 至近距離での特大の一発。逃げ場は無い。すぐに悟ったリーシャは避けようとせず迎撃に出た。
「エンジェル☆トンファー!」
 その場で高速で回転し、巨大な闇の魔弾をトンファーで殴り、
「エンジェル☆キック!」
 さらに蹴りまで加える。
 だがフルバーストの魔弾は少しも威力を減じることなく、リーシャを呑み込んでいった。<聖なる加護>ごと。
「きゃあああーっ!」
 耳を打つ乙女の絹を裂くような悲鳴。そして木々が倒れ、地面が崩れる轟音。
「ふー」
 全てを薙ぎ払い、左腕の大砲ががしゃんと縮んで元に戻る。さらに大砲から普通の悪魔の腕へと戻っていった。
 前を見ると、山の地面が森ごと吹き飛ばされ、赤い土を晒している。その土の上で、
ぐったりとリーシャが倒れていた。気を失っただけで、目立った外傷は無い。
<聖なる加護>が本体だけは守ったらしい。
「よかった」
 生きてるのに安心するヤマト。体が吹き飛んでたら犯せない。
「あー。いきなり危ないわね」
と、頭上から声がかかる。箒にまたがったエステルが降りて来た。
「よう。無事だったか」
 実を言うと、斜線上にエステルがいたのに気付いてはいたが、ヤマトは構わずフルバーストを発射した。
 余裕がなかったのか、一石二鳥を狙ったのか。
「やるじゃない。格闘はからっきし駄目だったけど」
「無茶言うなよ」
 この前までごく普通の高校生だったのだ。殴り合いには慣れていない。
「ナイトメア☆ヤマト。リリスとリリムの処女を奪った元人間の悪魔」
 いきなり自分の事を説明するエステルに、ヤマトは目をぱちくりし、
「僕のことを知ってるの?」
「まあね。他の魔王候補者の情報を集めるのは、魔王選抜戦の基本だし」
「基本、ねえ」
 リリスやリリムが情報集めしている気配は全く無かったが。
「そういや、リリスとリリムはどうしたの?」
「逃げ出してなかったら、今頃は留置所かな」
「は?」
「いや、こっちのこと。あの二人なら大丈夫だよ。多分」
「……まあ、あの二人だからね」
 エステルも『あの二人』の性格が分かっているのだろう。事情を察したようだ。
「いろいろ調べてるならさ。僕の住んでる街−あけるり市で小学6年生の女の子が
殺されて、どうも魔物の仕業っぽいんだけど。知ってる?」
「ああ。あれね。知ってるわよ」
 あっさり言うエステル。
「教えてよ。助けたお礼に」

「私一人でも大丈夫だったけどね。まあいいわ」
 ふと遠い目をして、エステルが言う。
「ワイツとレイズ。今あの街にいるのはこの二人よ」
「いや、名前で言われても分からん」
 ヤマトは魔王候補者の百人の魔王の子供のことはほとんど知らない。リリスかリリムに聞いておこう。
「ワイツは狼男。レイズは蒼い虎男」
「なるほど。狼と虎ね」
 それで痛いに大きな噛み跡があったのも納得がいく。
「強いのか?」
「ワイツは大したこと無いけどね。レイズは厄介よ。格闘だけなら魔界でも有数の強さだから」
「格闘ねえ」
 倒れているリーシャをちらっと見る。リーシャの速さに全く付いていけなかった。
勝てたのは必殺の一撃が上手く当たったからに過ぎない。
「私が教えられるのはここまで」
 箒に腰掛け、エステルが飛び去ろうとすると、
「もう行くの?」
 ヤマトがギラギラした瞳でエスエルを見つめる。美しい金髪の魔法少女を。
「ふふ。そんな獣の目で見ても駄目よ」
「僕が、リリムとリリスの処女を奪ったのは知ってるだろ?」
「次は私?」
 エステルの瞳がすっと細まる。
「その気なら覚悟なさい。命は無いから」
 見つめ合う二人の間をサーと夜の風が流れていく。徐々に二人の瞳に力がこもり、
見つめ合いが睨み合いに変わろうとする頃。
「うぅん……」
 微かな呻き声が二人の緊張をほどいた。リーシャの声だ。
「早くしないと、あの子起きるわよ」
「そうだな」
 今日は魔法天使一人で我慢しとくか。ふっと、ヤマトはエステルに向けていた欲情を緩めた。
「それじゃあね。ケダモノの悪魔さん。リリスとリリムによろしく」
 腰掛けた箒がすっと上昇し、エステルは金の髪を夜空に輝かせ、飛び去っていく。
「さてと」
 飛び去るエステルを見送ると、ヤマトは倒れているリーシャに視線を向けた。
 エステルに向けていた欲情したケダモノの瞳を。
べろっと大きな舌が唇を舐め、血をふき取る。

 土が剥き出しになった地面に倒れているリーシャの赤いポニーを摘み上げると、
「うぅん」と呻き声が聞こえる。だがまだ目覚める様子はない。
「デビルサンダー」
「きゃああああーっ!」
 ヤマトが二本のツノから電撃を浴びせると、ギャッと飛び跳ねて目を開け、
電撃にビリビリと背筋を仰け反らせて喚いた。
「痛っ! 痛い!」
 電撃を止めると、ぐったりとリーシャはうな垂れる。
「どうした? さっきの元気はどうした?」
「くぅ」
 小さく唸るだけで声も出せないリーシャを太い腕で抱えると、まだ無事なほうの森に運んでいく。
 そして生い茂る草の上にリーシャの身を横たえてやった。

「デビルサンダー」
「キャアアアアアアアーッ!!!」
 ぐったりと横たわるリーシャにまた電撃。
 草むらの上でリーシャのしなやかな肢体が、ビクビクッと飛び跳ね、電撃を止めるとすぐに動かなくなる。
「はぁ……あぁ……」
 電撃責めに息も絶え絶えといった感じで、目の端に涙が浮かんでいた。
「くっ……。ボクが、悪魔なんかにぃ……」
 屈辱に顔を歪めるリーシャに、ヤマトは太い腕を伸ばす。
 武道着のような衣装の襟元に手をかけ、一気に引き裂いてやった。
「きゃああっ!?」
 淡い膨らみがこぼれ、そのまま下に引き裂き、腰まで裂いていく。縦に真っ直ぐ
引き裂かれた武道着ははらっと左右に落ち、滑らかな素肌を直接悪魔の目に晒す。
「くっ……。見るなぁ……」
 電撃に痺れたのか、リーシャは体を隠すことも出来ない。上半身は下着を身に付けておらず、
小振りの乳房がつんと上を向くのが見えた。下は白いパンツ。
 そのパンツに爪をかけ、びりっと一気に引き裂く。
「やめろぉ! 見るなぁ!」
 とうとう目から涙がこぼれる。
「ど−れ」
 ヤマトはわざと声を出し、上からじっくりとねめつけるように視姦。
 しなやかに伸びた脚の付け根。貝のようにぴったりと閉じて一本の縦筋となり、
まだ陰毛も生えていない。
「やめろぉ……見るな。見ちゃだめなのだぁ」
「見るだけじゃないぞ」
 悪魔の爪が縦筋に添ってなぞると、ヒッとリーシャは怯えた声を出し、
「触るなぁ……。悪魔が、ボクに、触るなあぁ……」
 背中の白い翼がばたばたとはばたく。だが飛び立つことも体が動くこともない。
それが精一杯の反抗なのだろう。
「悪魔は嫌いか?」
「決まってる……だろう。悪魔に、触られるなんて、嫌なのだぁ……」
 苦しそうに呻きながら、なんとか言葉を紡ぐ。目から溢れる涙はぽろぽろとこぼれ、
太ももに落ちていった。
「ふむ」
 ヤマトは悪魔の巨体でリーシャのよく鍛えられたしなやかな肢体を覗き込み、
「デビルサンダー」
「ぎゃあああああーっ!」
 またまた電撃。ばたついていた白い翼も動かなくなる。
 それを見て、ヤマトの姿が小さくなっていった。
 人間の、千巻 大和の姿になる。
「お、お前……」
「これならいいだろう」
 人間になった大和に、リーシャは苦痛に顔で驚いた表情になる。
「どうして……人間なのに……」
「呪いで悪魔になってね」
 言いながら、人の手で彼女の赤毛のポニーテールを撫でてやった。サラサラした感触。
「やめろ……。ボクたちは、人間を、守ってるんだぞ……」
 人間を守る天使が人間に嬲られる。そんな事あっていいはずがない。

「うん。だからさ」
 顔を近づけ、大和はのリーシャの耳元で囁いた。
「君の魔力もらうよ。嬉しいだろ? 人間の役に立つんだから」
「やめろ……やめるのだぁ……」
 呻くリーシャの耳にハァと熱い息を吹きかけ、優しくリーシャを抱きしめる。
服の上からでも、魔法天使の柔らかさと温もりが伝わってきた。
「やめてぇ……。今なら、まだ、許してあげるのだぁ……」
「許しはいらない」
 抱きしめながら、大和の口がそっとリーシャの唇に重なる。キス。
「……んぅ」
 唇が触れただけの軽いキスだけど、リーシャの目からさらに涙が溢れ、こぼれていった。
その涙を間近で見ながら、大和は口を離した。
「ごめんね。できるだけ優しくするから」
 身を離すと、自分の服を脱いでいく。
「あっ、ああぁ……」
 衣擦れの音がする度に、リーシャの凛々しい顔が恐怖に怯え、動けない天使の眼前で、
大和は己の裸身を晒す。
 まだまだ未成熟な成長途中の少年の体。だが股間のペニスだけは隆々と上を向いている。
「こんなになっちゃった」
 その勃起したペニスを、リーシャの顔に近づけていく。
「やめるのだぁ。そんな、汚いもの、近づけるなぁ。見せるなぁ」
「汚いとは心外だな。命の元だぞ」
 震えるリーシャの瞳を心地よく見ながら胸を高鳴らせ、赤いポニーテールを摘み上げる。
そして、勃起したペニスをポニーテールでくるんだ。
「やめろぉ……やめるのだぁ、やだぁ……」
 しゅしゅっと髪でペニスをしごき、大和はそのサラサラの感触にうっとりと恍惚の表情になった。
「うん、髪の毛気持ちいいよ」
 赤いポニーが勃起した醜悪なペニスを包み、しごくたびにサラサラと毛の感触が内側まで撫でるようで。
「やめろぉ〜。ばか〜。へんたい〜」
「は〜」
 腰が勝手にびくんびくんと脈動し、慌てて大和は髪を離した。
 危ない危ない。危うく出すところだった。
「それっ」
 再び上に覆い被さり、今度は直接肌を重ねて抱きしめる。
「さわるな〜。ボクにさわっちゃだめなのだ〜」
「触るよー」
 すりすりと頬を寄せ、全身でぎゅっと抱きしめる。
 体の下の魔法天使の少女のなめらかな肌と温もりを全身で感じ、大和はそれだけで股間がビクンビクンと蠢く。
 硬い勃起がリーシャの太ももに当たり、赤黒い先端からは早くも先走りの液が滲んでいた。
 まだだ。まだまだ。
 射精しそうな股間をぎゅっと抑えたが、ゆっくりしていられる余裕もない。
 ちゅっとキスすると、腕の中のリーシャがビクッと震えるのが直接伝わってきた。
 肌を重ね、高まる体温と鼓動がお互いに伝わり、さらに高めていく。
「はぁ」
 大和の熱い息がリーシャの頬にかかり、おぞましさでリーシャは唇を結んだ。
だがそのリーシャもまた、胸に熱いモノが溜まって行くのを自覚している。
「ボクは……ボクは……。もう、やめるのだ〜」

 腕の中でリーシャが微かに身じろぐ。だが電撃責めに抵抗する力はもう残っていない。
 またキスしてから、大和は上半身だけを起こす。
 抱きしめているうちはほとんど感じなかった小さな胸を見下ろし、両手で包んでみた。
 手の平に 淡いそれでもむにっと柔らかい乳房の感触が広がる。
「やめ、やめるのだ〜」
 ぐりぐりと包んだ手の平を動かすと、硬いものが触れるのは分かった。ピンクの
乳首が勃起し、手の平に当たってるのだ。
「ボク、ボクぅ……。ボクは、こんなの嫌なのだ〜」
「ごめんね」
 泣きながら微かに首を振るリーシャ。赤いポニーもさらさらと揺れる。
 顔を降ろし、頬を流れる涙を舐め、そのまま胸まで口を移すと、手をどかせた。
ツンと勃起したピンクの蕾が間近に見える。ちゅっと口で含んで吸ってみた。
「イヤなのだ〜」
 ぷるっと震える小さな乳房。その震えが乳首を通して大和にも伝わる。
「うん。美味しいよ」
 乳首から口を離し、大和はもう片方の乳首もピンと指で弾いた。
「いたっ……。んっ」
 微かな痛みと、それ以外の感触を胸に感じ、リーシャの額にうっすらと汗が浮かぶ。
 大和の股間はもうギンギンに勃起し、赤い衝動を脳に送り、まだかまだかと
待ち遠しく訴えていた。
「はー」
 熱い息を吐いて股間に溜まった情欲を吐き出すが、その程度鎮まるものではない。
 リーシャのしなやかな太ももに手を置き、ぐっと左右に拡げて、脚の付け根を見る。
「見るな〜」
 しっかり視姦。毛も生えていない割れ目はぴったり閉じたままだが、微かに
桃色に染まってる気がした。
 鼻を寄せてみると、汗の匂いしかいない。これっぽっちも濡れていないようだった。
 鼻を寄せたままで、舌を伸ばしてべろんっと伸ばしてみる。
「ひゃんっ」
 冷たい気持ち悪さ、あそこを舐められる気色悪さに、リーシャの身がきゅっと緊張した。
手で拡げる太ももも硬くなるのを感じる。
 ぺろぺろと縦筋にそって舌を走らせ、とりあえず唾液で濡らしていく。
「やめるのだ〜。そんなところ、汚いのだぁ〜」
 ぐったりとなっていたリーシャの身が、舐められる股間を中心にふるふると震え、
硬くなる。愛撫されて感じているのではなく、ただただ気持ち悪さで。
 リーシャの緊張の高まりを大和も肌越しに感じ、顔を上げた。見下ろす縦筋は、
唾液で一応は濡らしておいた。
「待たせたな」
 自らの分身に呼びかけ、暴れるそれを手で押さえて照準を付ける。目標は天使の処女。
「ひっ!?」
 赤黒い肉棒の先端が縦筋に触れ、その硬い感触にリーシャの腰がぶるっと震えた。
「ま、まさか……。うそ、うそなのだ。ボクが、そんな……」
 人間に犯されるのが信じられず、リーシャの唇がわななく。

「ボクは……ボクは、魔法天使なんだゾっ! い、今まで、人間を守ってきたんだからぁ!」
「うん。今までありがと」
 先端に触れる割れ目の感触を存分に愉しみ、ぐっと腰に力を入れて突く。

 ぶちっ

「ひぎゃああああああああああーっ!」
 ずしっと肉棒が割れ目を引き裂いて貫き、鮮やかな鮮血が流れた。
「やめろぉ! 抜けーっ! 抜くのだーっ!!!」
 こんな気持ち良いのに誰が抜くか。肉棒を包む秘肉の感触に酔い痴れ、まだ誰も触れたことのない肉壷を抉っていく。
「ひぎいぃ! 動くな、痛いのだぁ!」
 処女を一気に貫いた肉棒が内側の肉ひだを抉る度に、鮮烈な痛みにリーシャはのたうつ。
格闘天使も内側からの痛みには慣れていない。
 ずりゅっ、ずりゅっ、と肉棒を突くたびに血が流れ、奥へ奥へと進み、すっぽりと収まった。
「あ〜」
 先端に丸い輪っかを感じ、ゾクゾクと背筋を震わせる大和。リーシャの中はギチギチに狭く、
油断するとすぐでも出してしまいそう。
「抜けーっ! 抜くのだーっ! 抜いて! 抜いて! 抜いてえええぇっ!
 お願いだからーっ! 抜いてええええっ! 抜いてよよよよぉーっ!」
 もはや恥も外聞もなく、無様にリーシャは泣き叫ぶ。赤いポニーテールが宙に舞い、
涙が飛び散った。
「くっ」
 そしてただでさえ狭い肉壷がぎしぎしと大和の肉棒をこそぎ、刺激をもたらす。
「どうして、どうしてなのだーっ! ボクは、ボクは、人間を守る天使なのにぃーっ!」
 ツーとこぼれる涙が頬を流れ、落ちて行く。
 元気に人間を守ってきた魔法天使。それが今、無惨に人間によって穢され、
処女を奪われ。
「ボク、ボクもうやだーっ! 壊れちゃう、壊れちゃうよーっ!」
 リーシャの腰がびくんっと跳ね上がり、膣内の肉棒もぐっと締め付けられた。
「ボク、壊れる……。壊れちゃううぅーっ!」
 しなやかな脚が上へと向けられ、ぴんと硬直する。
「やだ、やだやだやだ……。抜いてくれなきゃイヤなのだーっ!」
「もう……」
 膣内の締め付けが急速に高まり、さっさりと大和は果てる。
「抜いて、抜いて、抜いて抜いて、抜いてえええぇーっ!」
 泣き叫ぶリーシャの膣内にどくっと射精が放たれ、上を向いていた彼女の脚が大和の腰へと絡みつく。
「ボク、ボク、ボクはあああーっ!」
 どくっ、どくっと大和は精を放ち、射精の爽快感に浸りながら、リーシャから流れてくる魔力を受け取っていた。
「ふー」
 リーシャの魔力を吸収すると、するっと肉棒が抜け落ちる。
「あ、ああぁ……」
 虚ろな瞳で呆然と放心状態になるリーシャ。その身が光に包まれ、球となる。
「良かったよ。ありがと」
 光の球となって天へと飛んで行くリーシャに、大和は素直にお礼を述べた。
 光が消え去った、星空を見上げ、
「さて。帰るか」

 家に戻ると、先にリリムとリリスが帰って来ていた。
「ご主人様〜」
 いつものように部屋に入ると同時に飛び付いてくるリリム。リリスはもうベッドですーすーと寝ている。
「お前ら、警察はどうした?」
「はい。かつどんというものをご馳走になりました」
「あー。それで、どうやって逃げ出したんだ」
「はい。今日は警察で泊めてくれたんですけど、檻のかかった殺風景な部屋で、
ご主人様もいないので、リリスお姉様がバズーカで穴開けて帰ってきました」
「バズーカって……没収されなかったの?」
「あれはリリスお姉様が魔力で生み出しているので、いつでもどこでも出せるんです」
「なるほど。しかし日本の警察もだらしない」
 警察は魔法少女を捕まえるようにはできていないわけで。
「まさかとは思うが。僕やありさのことは話さなかっただろうな」
「ご安心ください。この家やご主人様やありさちゃんのことは、誰にも言ってません」
 もし話してたら、この家は警察に包囲されていただろう。
「うん。偉い偉い」
 ピンクの頭を撫でられ、リリムはえへへっと無邪気に笑う。
「よーし、ご褒美だ」
 そして大和はリリムを抱えると、リリスが寝ているベッドに一緒に寝かせ、
服を脱いでいく。
「きゃー」
 リーシャに出したばかりだが、大和はまだまだ元気。
「あ、そうだ。エステルってのに会ったぞ」
 脱ぎながら言うと、
「誰ですかそれ?」
「ナイトメア☆エステル! お前らの姉妹じゃないのか?」
「はっ、そうでした。エステルお姉様はとってもキレイなんですよ」
「うん。会ったから分かる」
 夜空にキラキラ輝く金色の髪を思い出し、それだけで股間が熱くなる。
 いつか、あのエステルも犯したいな。
 そう思いながら、大和はリリムに覆い被さっていった。

 そしてあっという間に土曜日の夜。
「ナイトメア☆ワイツ、わおーんと参上」
 夜の河川敷、智子の遺体が発見された場所よりやや上流に、狼男が降り立つ。
「わおーん」
 ワイツが吠えると、地面からもこもこと魔犬が召還され、ギラギラと赤い瞳が夜闇に輝いた。
「行くぜ、野郎ども」
 魔犬を引き連れ、ワイツが街の方向に向かおうとすると、
「マジカル☆アリサ、ちゃきちゃき行くよー」
 栗色のツインテールの魔法少女が行く手に立ちはだかる。
「また魔法少女か」
 べろっと大きな舌を出すワイツ。その狼の口を見て、アリサの瞳に怒りが宿る。
「あなたね……。智子ちゃんを殺したのは!」
「ともこ?」
 ワイツはオウム返しに呟き、
「ああ。あの、マジカル☆トモコとかいう弱っちい魔法少女か。俺様が犯して殺したぜ」
「えっ?」
 意外なワイツの言葉に、アリサは呆然と立ち尽くす。
 智子ちゃんにそっくりな、マジカル☆トモコ。

 アリサはまだ、マジカル☆トモコの正体を知らない。
 でも、とてもそっくりなマジカル☆トモコと智子ちゃん。そしてさっきのワイツの言葉。
「そんな……そんな……」
 頭が混乱する。でも分かったことはある。

「まさか……」

 マジカル☆トモコの正体は友達の智子ちゃんで、

「そんなことって……」

 マジカル☆トモコは、このワイツに犯され、そして殺された。

「そんな……」

 混乱した頭がなんとか落ち着きを取り戻す。目の前には敵がいるのだ。
 心の整理をつけると、アリサの瞳がワイツに向けられた。闘志を越え、殺気を秘めた瞳で。
「許さない……!」
 ギリッとバトンを握る手に力が籠もる。
「許さないんだから!」
 そしてワイツと魔犬の群れに、一人で突っ込んでいくマジカル☆アリサ。
「智子ちゃんの仇……!
 ぶっ殺す!!!」

(つづく)