翌日の朝。今日は月曜日。
 横を見ると、すやすやと妹のありさは眠っている。全裸で。短い栗色の髪を撫でてやる。
そうする兄の僕−千巻 大和−も裸。
「はー」
 カーテンから差し込む朝日を見ながらついため息。
 昨日は……とうとう妹と結ばれたんだ。まだ小学6年生の妹と。僕は高校一年生。
 ああ、天国のお父さんお母さんごめんなさい。大和はいけないお兄ちゃんです。
 ありさからは「お嫁さんにして」とも頼まれたがそれには応えられなかった。
 だって、ねえ。
「うぅん」
 妹とは反対側でリリムが寝返りを打ち、小さな黒い羽の生えた背中にピンクのツインテールが流れる。僕はそのツインテールをぐいっと引っ張った。
「ふあ?」
 リリムの目がぱちっと開く。何か言おうとする口を閉ざし、人差し指を口に当て、
「しー」
 こくこく頷くリリム。静かにというのを分かってくれたようだ。
 そして二人で脱ぎ散らかした服を拾うと、隣の自分の部屋へ。
 あとにはすーすー熟睡するありさが残された。今日はゆっくり寝かせよう。

 きちんと服を着て、顔を洗う、食パンを齧りつつ僕は言う。
「今日は学校に行こう」
「はい。お勉強ですね」
と手を合わせるリリム。魔界の住人であるリリムは食事の必要はない。
「アホか。『学校を襲って休校にしよう大作戦』だよ」
「わぁ。それは素敵です」
「それじゃ、しゅっぱーつ」
「はーい」
 ごっくんとコーヒーを飲んで、僕はリリムを連れて出撃した。

 悪魔の姿に変身すると、空を飛び、僕はまず自分の通う高校を目指す。後からは小さな羽をばたつかせリリムが付いていた。
 高校の校舎が見えると急降下し。
「そーれ、ウィングカッター」
 背中の大きな黒い翼から放たれる風の刃がばりーんと窓を叩き割る。
 おおっ、なんだか威力が上がってる。マジカル☆アリサの魔力を吸収したからか。
「きゃー」「わー」
 キラキラとガラス片が舞う中、早朝から登校してきた生徒や先生が逃げ惑っていた。
 よーしよし。これで今日は休校だろう。僕は休んでも欠席にならない。
「次行くぞ」
「はい」
 びゅーんと飛んで、次にありさの通う小学校へ。
「ウィングカッター」
 同じように風の刃で窓を叩き割り、逃げ惑う生徒や先生。
 よーしよし。これで小学校も休校だろう。ありさが休んでも欠席にならない。
なんて妹想いなお兄ちゃん。Hはするけどなー。
「ふおっふおっふおっ」
 笑いながら校庭に着地し、
「ナイトメア☆ヤマト、邪悪に参上」

「ナイトメア☆リリム、ただいま参上」
 びしっとリリムと二人して決めポーズ。
「きゃー」「小学校襲撃犯だー」
 登校してきたばかりの小学生たちが背中を向けて逃げていく。この前、別の小学校を襲ったんですっかり有名人。ありさは化け物には気をつけなさいと学校で言われ、
チラシを持ってきた。
「そーれそれ。デビルファイヤー」
 口から火を吹いて威嚇。こちらも火力が上がっているぞ。
「わーん」
と、小学1年生の女の子が、赤いランドセルを背負ったままぺたんと校庭でけこんだ。
 小さな体にはランドセルも大きく見える。そしてピカピカの新品の輝き。
今は四月。ピカピカのランドセルは新入生の証。6年生のありさのランドセルはずいぶんボロボロだ。
「えーん」
 あらら。泣いた女の子を悪魔の大きな手で抱えて立たせ、よしよしと頭を撫でた。
「ほら。早く逃げなさい」
「えーん、えーん」
 悪魔の姿の僕にビックリしてさらに泣きながら、女の子を走っていく。
 その子が校門を出て行くと、周囲にもう人影はなかった。
「よし。『学校を襲って休校にしよう大作戦』大成功!」
「わーい。やりましたー」

 大 成 功 。

 リリムと二人して手を叩いて成功を喜ぶ。しかし本番はこれから。
「よし。ではこれより、『小学校占領作戦』に移るぞ」
「はい!」
 びしっと敬礼するリリム。だいぶ様になってきた。
「それで、占領して何するんですか?」
「ふっ」
 鼻で笑い、
「決まってるだろ。縦笛をぺろぺろ舐めたり、置きっぱなしの体育服をクンクンするのだ」
「わわっ。ご主人様、悪い子です〜」
「しかも! 給食を好きなものだけ食べて、嫌いなものは捨てる!」
「はわー。なんて邪悪な! 素敵です〜」
「そーれ、まずは1年生の教室からだ」
「はい」
 だだっと校舎に駆け込もうとすると、
 ぴかっと白い光が天から降り、行く手に立ちはだかる。

「魔法天使エンジェル☆ローラ、華麗に光臨」

 そして光が消え、美しい姿の少女が現れた。背中に白い翼を持つ魔法天使。
 小学6年生のありさと同じくらいの年齢の少女。蜂蜜色の金髪、は肩の長さまで伸び、大きな赤いリボンでまとめている。
すらっと伸びた手足は白く、白い清楚なワンピースの腰にも大きな赤いリボン。
 まるでリボンにくるまれたような愛らしい金髪の少女。
 だが彼女は魔を滅するために天界から派遣された百人の魔法天使の一人。
そして、ありさを魔法少女にした張本人だ。
「お会いしたかったですわナイトメア☆ヤマト……。よくもありさちゃんを」
 青い瞳は怒りに満ちていた。
 マジカル☆アリサを無残に陵辱した後、ローラは遅れて駆けつけた。

 そこで彼女が来たのは、悪魔に犯され、変身が解けて精液の海に沈むありさ。
怒るのも無理はない。
「あのときはどうもありがとう」
「……は?」
 いきなり悪魔からお礼を言われ、ローラはさすがに唖然としたらしい。上品な眉がきゅっと寄る。
「何の事です?」
「ありさを癒してくれたろう?」
「それはそうですが……」
 あの時、ローラが来ると僕はすぐに逃げ出した。マジカル☆アリサの正体がありさで驚いたからだ。
 あれから家に帰ったありさは体も服もきれいで怪我もなく、痛みが残ってる様子もなかった。
おそらくローラが癒してくれたのだろう。だからお礼を言ったのだ。
「あ、あなたにお礼を言われる筋合いはありません!」
 あるんだけどな。僕は悪魔の姿から人間の姿になった。
「!」
 カッとローラの目が見開かれる。
「はじめまして。ありさの兄の大和です」
 ぺこっとお辞儀。
「妹がお世話になってます」
「いえ、こちらこそ」
 ぺこっとローラもお辞儀。上品に。
「はじめてではありません」
「え?」
 意外な言葉に今度は僕が驚く。
「以前、ご自宅を訪問して食事をさせてもらったときにご挨拶しました。
 あ!
 ありさが連れてきた白人少女のローラちゃん。あの子がエンジェル☆ローラだったのか。
 道理で顔も名前も声も同じだと思ったよ。ただの偶然だと思ってた。
「先程の悪魔の姿……。そう。そちらのナイトメア☆リリムの処女を奪って呪いにかかったのですね」
「うん、そう」
 知ってるなら話は早い。
「呪いを解こうと頑張ってるんだけどさ。協力してくれない?」
「残念ですが……魔王の呪いを解ける者は、今地上に派遣された魔法天使の中にはおりません」
 うーん。やっぱり魔法天使にも無理か。頼んだらさくっと呪いを解いてくれるのを期待しないでもなかったが。
「じゃあ、魔力ください」
 素直に頼んでみる。
「……そのためには、あなたに抱かれなければいけませんが」
「うん、そう」
 魔力を吸収するにはHしなければいけない。これは和姦でもいいらしい。
しかし同じ相手から吸収できるのは一度だけ。つまりリリムやありさからはもう吸収できない。
「謹んでお断りします」
 ローラの瞳に再び怒りが宿る。
「魔法天使は処女でなければいけませんので」
 へー、そうなんだ。
「処女じゃなくなるとどうなるの?」
「教える義務はありません」
 そりゃそうだな。でも気になる。
「呪いとかあるの?」
「ご安心ください。そういった事はありません」

 うん安心した。とりあえず犯しても大丈夫らしい。
 処女を失った魔法天使がどうなるか、自分で確かめるとしよう。
「へーんしん」
 気合を入れ、黒い肌の巨大な悪魔の姿になる。体長はおよそ2メートル。
背中には黒い大きな翼、頭には二本の角。口には鋭いキバ。手には長い爪。
「がおー」
 大きく手を上げてドカドカと突撃。ぶーんと振り回す爪をローラは宙に飛んで避ける。
はためく長いスカート。パンツが見えそうで見えない。そして上空から、
「ディヴァン」
 手から白い光が放たれ僕を直撃! 痛いよ、痛いよー。
 校庭をごろごろ転がって痛がる僕に、
「魔を滅ぼす聖なる光です。己が罪を悔い改めなさい」
 さらにディヴァンの光を飛ばしてくる。

 ごろごろー。

 巨体を汚しながらゴロゴロ回転して光をよけ、さっと立ち上がる。反撃。
「デビルサンダー」
 ばりばり!
 今まで以上の黒い電撃が角から飛んで真っ直ぐ宙に浮かぶローラを狙う。
 直撃! と思った瞬間、電撃が不意に消える。あれー?
「ご主人様! 電撃!」
 援護とばかりリリムも手から電撃を飛ばす。だがこちらもローラに命中する寸前で消えた。
 なんでー?
「邪悪な魔法など私には届きません。<聖なる加護>です」
 疑問に思うとローラが説明してくれた。教えてもらったらちゃんとお礼を言おう。
「ありがとう、教えてくれて」
「いえいえ、どういたしまして」
 それでもなんだかよく分からないが、魔法天使特有の魔法を打ち消す能力だろうか。
「デビルファイヤー」
 試しに口から火を吹くが、やっぱりローラに届く寸前で消える。
 むむむ。これは困った。どうしよう。何か打開策はないかとリリムを見ると、
「はわわ。ご主人様どうしましょう〜」
 やっぱり困っている。少しでも期待した僕が馬鹿です。
「ディヴァン」
「はわー!」
 ローラの聖なる光が今度はリリムを直撃! 背筋を伸ばして痙攣し、リリムはばたっと倒れた。
  ええっ!? 一撃ですか?
「くそっ」
 翼を広げて僕も空を飛ぶ。魔法が届かない以上、肉弾戦を挑むしかない。
「ディヴァン」
 真正面から聖なる光を受けるが、痛いのを我慢して耐え、しゃきーんと爪を伸ばして振るう。
 さっ、とローラは空中で左に移動し避けた。背中の白い翼はほとんど動いていない。
「このっ。このっ」
 両手をぶんぶん振り回すが、ローラにはかすりもしない。宙を舞うように華麗に飛び、余裕を持ってかわされ続けた。
「無駄な動きが多いですわ」
 そして太い腕をかいくぐって僕のふところに飛び込むと、両手をかざし、
「アルジーレ」

 強烈な閃光に目が焼かれ、何かがどすんとぶつかる。
「うーん」
 違う。ぶつかったのは僕のほうだ。校庭に頭から落下したらしい。
 分厚い胸からはぷすぷすと白煙が上がっている。痛いったらありゃしない。
 立ち上がろうとしたが、脚に力が入らない。ガクガクと膝が揺れる。
「これで終わりです。あの世で神の裁きを」
 上空から冷徹な声。そして魔力の高まりとともに明るくなったのに気付いた。
 くそっ。ありさの、マジカル☆アリサの魔力を奪ったのにこれで終わりか……。

 ん? マジカル?

「アルジーレ」

 ちゅどーん

 上空からの光が校庭を焼き、白い閃光が走る。だが痕跡は何も残さず、地面に穴が開いたりもしない。魔法天使の魔法は自然に優しいのだ。
「わー」
 そのすぐ横でへたれ込み、僕、千巻 大和は思わず声を出してしまう。
人間の姿になって、なんとか動けるように動けるようになった。直撃だったら死んでたかも。
「あなた……」
 人間の姿になった僕にローラがわずかに戸惑いの色を浮かべた。
「気付いたんだ」
 そして人の姿で僕は言う。
「悪魔の姿じゃなくても魔法は使えるって」
 そう。マジカル☆アリサの魔力を吸収した今、僕にも魔法が使えるんだ。
「マジカライズ」
 ぴかっと僕の体が青く光り、高校のブレザーの制服に青いマントをまとう姿になった。
手には青い宝玉の付いたロッド。
「おおぅ」
 これが僕の魔法使いスタイル。さしずめ、
「マジカル☆ヤマトって感じか」
「ふざけないで! ディヴァン」
 可憐な声を荒げ、聖なる光を撃ち込むローラ。
「マジカル☆シュート」
 僕もロッドの先端から青い魔法の光を出す。
 光がぶつかり、相殺した。
 いける!
「マジカル☆シュート」
 続けさまの魔法がローラを撃つ!
「きゃっ!」
 ビリッと痺れ小さく悲鳴を上げ、宙に浮いていたローラが血に足を着けた。
「どうやら、人間の魔法は防げないようだな」
「くっ……。ありさちゃんから奪った魔力で……」
「一晩休めば回復するさ」
 今頃はありさも起きてる頃合か、早めに決着を着けないと。
 ありさに気付かれる前にローラを犯す。それが今日の一連の作戦の本来の目的。
 青いマントをなびかせ、僕はまっすぐローラに向かって走る。
「アルジーレ」
「プロテクション!」
 強烈な閃光。咄嗟に僕は自分に防御魔法をかけた。
 アルジーレの閃光が襲い、全身が痛い。だがさっきほどじゃない。

 やはり人間相手には本来の効果は発揮しないらしい。それでも痛いが。
「とう」
 閃光を走りぬき、最後の一歩をジャンプして詰める。そして手にしたロッドで、
驚愕に目を見開くローラの頬を殴った。
「きゃっ!」
 可憐な頬に赤味が走り、ローラはきっと睨み返した。
「よ、よくも殴りましたわね!」
「ああ、悪い」
 やっぱり女の顔を殴っちゃいけないよな。
 顔を殴られ、一瞬ローラの動きが止まる。僕はばっと手を広げて抱きついた。
 華奢なローラの体は抱きしめると、すっごく柔らかい。そして蜂蜜の甘い匂い。
「な、何をするのです! 不埒な!」
 不埒なのはこれからだよ。
「変身」
 抱きしめたまま、今度は悪魔の姿に変身。
「きゃああっ!」
 悪魔の巨体の強い力で絞められ、小さな体のローラの足が地面から離れ、ギリギリと背骨が鳴った。
「デビルサンダー」
 そして零距離で角から電撃!
「きゃあああーっ!」
 電気に撃たれ、腕の中でビリビリと痙攣するローラ。この距離では<聖なる加護>も無効らしい。
密着する僕にも電撃が流れ込むが、気にしていられない。我慢比べだ。
「「くっ……ううっ」
 電撃で痺れながらも、歯を食いしばり、ローラは闘志に満ちた瞳で見上げてくる。
「ま、負けませんわ……。この程度で」
「そうかい」
 電撃を止め、黒い翼を広げて空に飛んだ。全身に黒い魔力を集める。
「は、離しなさい……! この悪魔!」
「ああ、悪魔だよ」
 腕の中のローラが悶える。だが力はない。
 ローラを抱きしめたまま黒い闇に包まれ、僕は地面に急降下。
「きゃー!」
 ローラが目を閉じると同時に離し、急上昇。
「ナイトメア☆スパーク!」
 そして僕から離れた黒い闇の球が、地面に落ちたローラを直撃!

 どかーん

「きゃあああああああああああー!」

 爆発、そして長い長い悲鳴。
 もうもうと上がる土煙がやんだとき。
「勝った」
 金色の髪の魔法天使が校庭に開いた大きな穴の底に倒れていた。
「う、うぅん……」
 固く目を閉じた美貌は薄汚れ、苦しそうに呻いている。白い服も所々が破け、
汚れていた。幸いというか血は流れていない。
「ふー」
 動かないローラを確認すると、僕はまだ倒れたままのリリムに近寄る。
ピンクのツインテールを引っ張り上げて顔を持ち上げ、ぴちぴちと頬を叩く。
「うーん。おねしょはもうしないですよ〜」

「まだおねしょしてたんかい!」
 僕の全力突っ込みに、リリムがハッと目を覚ます。
「はわわ。リリム、おねしょしてないですよ!」
「分かった。リリムはもうおねしょ卒業したもんな」
「えへへー」
 にこやかに笑ってやがる。
「はわわ!?」
 そして戦いが終わったのにようやく気付いたようだ。クレーターの底のローラに目をやり、
「やりましたねご主人様! 力を合わせて魔法天使を倒しました!」
「お前、何もしてねーだろ!」
「はわ〜」
 ぽかーんと口を開けるリリムにがっくりと脱力する。
「あー、もういいから。この辺に触手を召還して、誰も近寄れないようにしてくれんか」
「はーい。おいでませ、触手さんたち」
 リリムが手をかざすと、にょろにょろと校庭に無数の触手が生えてくる。
「さてと」
 僕はクレーターの底に降り、気を失ったローラを抱えた。軽い。頭と腰の赤いリボンがゆらゆらと揺れる。
「メチャクチャにしてやるからな」
 そしてローラをお姫様抱っこで運び、人間の姿になると校舎に歩いていった。
「ご主人様ー。どこ行くですか」
 触手を召還するだけ召還し、校庭を触手で埋め尽くしたリリムも後に続く。
「はじめてはベッドの上がいいだろ」
 学校でベッドがある場所。すなわち保健室に向かった。
 にょろにょろ。外を見ると、無数の触手が蠢き、びっしりと埋め尽くしていた。

「よしっと」
 ローラをベッドに寝かせ、リリムが持ってきた水に濡らしたハンカチで顔を拭いてやる。
「うん……」
 桜色の唇から微かに声が漏れる。汚れを拭いてやると、可憐な美貌が白く輝くようで。
「キレイだなぁ」
 声に出して呟いてみたり。
 腰の後ろのリボンをほどき、それで両手を後ろ手にしばった。リボンで拘束される少女。
まるで僕のためのプレゼントのよう。
「うん……」
 桜色の唇が苦しげに呻く。ベッドの脇に立ち、そっと口づけた。蜂蜜の甘い味が口に広がる。
「んっ!」
 不意にローラの瞳がぱちっと開き、
「!!!」
 叫ぼうとして、僕とキスしてるのに気付いたらしい。ぱっと横を向き、
「きゃあああ〜〜〜〜〜〜!」
 絹を引き裂くような悲鳴が無言の小学校に響いていく。
「やあ」
 爽やかにあいさつ。
「な、なななな、なんてことを!」
 かーっと赤い顔で目に涙を溜め、ローラは身を起こそうとしてまたベッドに倒れる。
「くっ!」
 自分が縛られているのに気付いたらしい。

「どうだ? リボンで縛られた気分は」
「ふざけないで! 今すぐ解きなさい」
「おやおや」
 肩をすくめる。まだ状況が分かっていないらしい。
「えい」
 ぺちっと頬を叩いてやる。赤い頬に別の赤味が加わった。
「くぅ!」
 歯を食いしばり、ベッドから睨み上げてくるローラ。大変よろしい。
 僕は彼女の背中に回り、後ろから手を回して上半身を起こしてやった。
「触らないで!」
 後ろから密着すると、ローラの背中に生えた小さな天使の翼が僕の胸に当たる。
ふわふわの羽毛の感触が心地いい。引き千切りたくなる。
「リリム」
「はい」
 呼ばれてリリムもとことことやって来た。
「ほーら。魔法天使だぞ」
「はい」
「パンツ脱がして」
「はい」
「なっ!?」
 いきなりの会話の流れに絶句するローラ。そして、
「い、いけません。そんな……!」
 じたばた脚をばたつかせ、リリムを近寄らせまいとする。
「はしたないぞ」
 僕は背後から手を回し、ローラの太ももを押さえつける。そしてリリムが長いスカートを捲り上げた。
「駄目……見ないでください」
 くっと悔しげに呻き、ローラは目を閉じる。
「わぁ。可愛いパンツです」
「どれどれ」
 ローラの白いパンツにも小さな赤いリボンが付いている。確かに可愛い。
「そういやリリムはパンツ履いてないな」
「はい。魔界にはパンツを履く習慣がないもので」
 素晴らしいような、残念なような。
「それじゃあ、ローラのパンツ履いてみろよ」
「はい」
「なっ……!」
 さすがにローラは目をまん丸に開けて絶句。
「そ、そそそ……そんな破廉恥な、ふしだらな」
 カーッと今まで以上に赤くなるローラの美貌。もうピンクに近い。
 しかし脚は僕に押さえられ、抵抗する力はか細い。
 するするとリボン付きのパンツを脱がし、リリムは自分の短いスカートの中に履いていく。
「わぁ」
 そしてパンツはとうとうリリムのお尻に。
「あ、ああああ……。なんて、なんてはしたない」
 ぷるぷるとローラは首を横に振り乱す。金色の髪と赤いリボンが、後ろの僕の頬を撫で、心地よかった。
瞳からはぽろぽろと涙まで流れている。
「ふんふーん」
 一方、パンツを履いたリリムはお尻を振って感触を確かめていた。
「どうだ、パンツの感触は」
「なんだか……あったかいですぅ」
「それはローラの温もりだな」
「わああああぁぁぁーっ!」

 不意にローラが大声で泣きじゃくる。
「おーい。そんな泣くなよ」
「ああ……わあああーっ!」
 それまでの上品さが嘘のように顔を振り乱して涙を飛ばすローラ。パンツを他人に履かれたのがよほどショックだったのか。
「あのー。パンツ返しましょうか?」
「いや、いい」
 どうせすぐに挿入するんだし。
「よしょっと」
 わーと泣くローラを背後から持ち上げ、ベッドの上で僕の膝に座らせ、脚を開かせた。
小さい子におしっこさせるような格好。
「きゃっ」
 さらに恥ずかしい格好に、ローラは驚いて泣き止む。
「リリム。パンツのお礼に、寒くないように舐めてあげて」
「はい」
 ぺろっとスカートをめくり、パンツを脱がした中身を確認。
「きゃあぁ! 見ないで! 見ないでください!」
 さらに大きな悲鳴。構わずにリリムは剥き出しの秘所に顔を寄せ、僕も注視する。
 ローラの脚の付け根の桜色の肉の割れ目。まだ毛も生えていなく、びしっと閉じた縦筋がはっきりと見えた。
「や、やぁ……」
 僕とリリムに大事な場所を視姦され、ローラの瞳から涙がツーとこぼれ、頬から顎に流れ、膝に落ちていった。
「わぁ。キレイですぅ」
 そして顔を寄せたリリムが、ちろっと舌を出して、縦筋を舐めていく。
「やぁ……! やめて、やめてください!」
 縛られた身で悶えるローラだが僕はビクともしない。胸の中で翼がばたつくのが感じられた。
「あ、あぁ……あ……」
 自分で弄ったこともないだろうそこを悪の魔法少女に舐められ、ローラは恐怖に慄いた。
だがその顔が青ざめたのも一瞬。
 くちゅ、くちゅ……ぺろ。
「んっ……! はうんっ!」
 リリムが顔を埋めた股間から淫らな音が響くと、再び真っ赤になり、金色の髪を振り乱す。
「だ、だめ……。そんな、ところ……き、きたないですわ……」
 ハァと熱い吐息とともに、徐々に声が上擦っていく。びちゃびちゃとわざと音を立て、リリムは縦筋にひたすら舌を走らせた。
「はぁっ……あ、あぅ…。いけません……そんなとことぉ……。んっ!
 駄目。ダメなのに……。くぅ……は、あぁ……。けがらわしいですわ……。こんなぁ……。
くうぅ! こんな、こんなのって……。わたし、私は……人々の平和のために……あああっ!」
 腕の中で悶え、喘ぐローラ。その真っ赤な耳に僕は囁いた。
「どうだ? 守ろうとした人間に負け、悪の魔法少女に嬲られる気分は」
「くうぅ……!」
 ツーと涙が赤い頬を伝う。
 平和を守るために地上に光臨した魔法天使。だがその少女は無残にも悪に陵辱される。
それも、人間だった僕の手によって。
「ああぁ……うんぅ……!」
 悔し涙を流しながら悶えるローラに、僕は股間を熱くしていった。
「アアァ……あ……アァ……あ……ア……アァ……」

 白い喉が汗ばみ、必死に押し殺そうとするも自然に漏れる声。
 股間をしゃぶるリリムの口元はもう体液で溢れ、口をすぼめてその愛液を吸っていた。
「やぁ……も、もう、嫌です……。こんな、こんなの……。こんなのって、ありませんわ……」
 ローラの悲痛に喘ぎにリリムも興奮しているのだろう。パンツを履いたお尻を高く掲げ、ふりふりと振っている。
そしてローラの花弁から蜜を、じゅじゅーと音を立てて吸った。
「はぁっ! ……アアーッ!」
 一呼吸遅れて、ローラが背筋を仰け反らせ、官能に身を硬直させた。
「よし。もういいぞ」
「はい」
 硬直し、ぐったりとローラが脱力するのを感じ、リリムに愛撫をやめさせた。
ローラの股間からニッと笑い顔を上げるリリムの口の周りには、いろんな体液がべとっとついている。
「次は僕の番だな」
 膝の上のローラをベッドに押し倒すと、「きゃっ」と小さく悲鳴を上げた。
だがそれだけで、後ろ手に縛られた身をうつ伏せにベッドに沈め、流れる涙がシーツを濡らす。
背中の天使の翼もしんみりとしょげているようだった。
「ふん」
 哀れ辱められた天使の姿を見下ろしながら、シャツのボタンを外していく。
気を利かせ、リリムがベルトをかちゃかちゃと外してくれた。
「わー。ご主人様のここ、もうこんなに」
 パンツごとズボンを脱ぐと、にょきっとペニスが上を向く。あんな痴態を間近で見せ付けられたら仕方ない。
「う、うぅ……」
 泣き伏しシーツを濡らすローラの瞳に、僕はその男の象徴を見せ付けた。
「きゃあっ!
 赤黒いそれからすぐに目を離す。
「見ろ」
 金色の髪をつかみ、僕はペニスの先端で彼女の眉間を突付いてやった。
ローラはぎゅっと目を閉じて、見ようともしない。
「いやっ。嫌です! そんな、汚らわしい……!」
「汚くなんかないよ。命をもたらす元だぞ」
 もっともらしいことを言いながら、本気で嫌がるローラに胸がカッと高鳴る。
嗜虐心をそそられた。
「ほら」
 細い肩を掴んで身を反転して、ローラを仰向けにした。後ろ手に縛った両手と背中の翼が下になるが潰れたりはしない。
 そして上からローラに覆いかぶさっていった。
「きゃああっ!」
 僕は裸で、ローラはまだボロボロのワンピースを着ている。服の上からでも彼女は柔らかく、肌はすべすべだった。
「いや……いやぁ……!」
 腕の中で小さなぬくもりが悶えるが、か弱くてか細い。抱きしめたまま口を重ねる。
「んっ……!」
 甘い唇の香り。肺まですーと甘くなるようだった。
 もはや振りほどく気力もないようで、僕はしばしその甘い唇を味わった。
「……」
 すぐ真下の潤んだローラの瞳からは涙が流れ続けるのがはっきりと見て取れた。
「ふー」
 口を離し、僕は問うた。
「何故ありさを魔法少女に選んだ?」

「あ、ありさちゃんが……正義と勇気を持った優しい子だからです」
 即答。ありさを思い出し、泣くだけだったローラの瞳に光が宿る。
「た、例え……私がいなくとも、ありさちゃんは悪を許しません!」
 だろうな。ありさのことなら、僕が一番良く知っている。
 だからありさに黙ってローラを襲う事にした。教えたら協力するどころか絶対邪魔する。
身を許した兄の僕が相手でも、悪い事は許さない。ありさはそういう女の子だ。
「いなくなったらって……。どこか行く気か?」
 僕の問いにローラは横を向く。手を太ももに伸ばし、そわそわと撫でた。
「もしかして……処女を失うといなくなるのか?」
 びくんっ、と鼓動が高鳴るのが直に感じられた。
 なるほど。魔法天使は処女を失うとこの世界にいられないのか。
 だったら……じっくり愉しまないとな。その前に聞く事がある。
「一度魔法少女になった女の子を、元に戻す方法はあるのか?」
 びくんっ、と再び鼓動が高まった。
「それは……その魔法少女次第ですわ」
 今度は口を開いてくれた。
「どういうことだ?」
「魔法少女の力の源は希望。即ち、絶望に包まれたなら魔法の力を失います。
同時に、魔法少女に関する記憶も失われます」
 なるほど。絶望すれば普通の女の子に戻るのか。
「僕に犯されたときに……よく絶望しなかったな」
 あのときのありさは、悪魔の姿の僕に処女を奪われ、精液まみれで虚ろな瞳で。
絶望していてもおかしくなかった。
「治療の後、ありさちゃんは言っていました……。『お兄ちゃんがいるから、
絶対に絶望はしない』と。『お兄ちゃんを守らないといけないから』と」
 じーんと胸が熱くなる。そうか。ありさの戦う一番の動機は僕のためか。
「それなのに……。兄のあなたがどうして……」
「いや全く。ひどいお兄ちゃんだな僕」
「今からでも遅くありません。悔い改めなさい」
「それは無理」
 上半身を上げ、馬乗りになるとローラの胸元に手をかける。ボロボロの白い布に。

 びりっ

「きゃあっ!」
 力を籠めると簡単に引き裂かれ、白い胸が直接見えた。下着もブラジャーも身に付けていない。
 ありさよりは大きくリリムよりは小さい、ふわふわと見るだけで柔らかそうな形の良い乳房。
桜色の小さな乳首がツンと上を向いて尖っている。
 その白い乳房を手で覆い、ふにゅっと揉んだ。
「くっ!」
 手の中でむにーと柔らかい脂肪が形を変え、ローラは眉をしかめた。痛みか、それとも別の何かか。
「リリム」
 股間を舐めた後、口を拭いていたリリムを呼ぶ。
「おっぱい吸ってみろ」
「はい」
 僕は手を離し、ベッドの横から顔を寄せたリリムが形良い乳房へと口を寄せる。
「ひっ!」
 さっきの性の悦楽を思い出したのだろう。ローラの美貌にさっと緊張が走る。 リリムが右の乳首を口に含み、ちゅうと吸う。赤ん坊のように。

「やっ……やぁ」
 強く、強く。ひたすら強くちゅーと吸い、リリムは目を細めた。
「美味いか? 天使のおっぱいは?」
 ピンクのツインテールを揺らして頷きリリムは肯定する。
「やっ……やめ……やめて、くださいぃ……」
 金色の眉を寄せて喘ぐローラ。脚がばたつき、馬乗りになった僕を揺らす。だがそれだけだ。
 僕も手を伸ばし、左の乳房をむにゅっと揉んだ。
「ひぃ……!」
 胸を据われ、揉まれ、さらに脚がばたつく。保健室のベッドがギシギシとなった。
 もうとっくに授業ははじまってる時間だが、小学校には誰も来ない。来られない。校庭に召還した触手さんたちが頑張ってるのだろう。
「はあっ……あぅ……」
 そしてベッドの上には、乳房を弄られ、悶える金髪の魔法天使。一度火照った体は敏感に感じ、乳房を揉む手の平に固い勃起を感じた。
 ちゅうー、とリリムが強く吸い、舌でコロコロと乳首を転がす度に、白い喉が仰け反った。
「ああぁ……うあああっ…。くん、うぅん……。うん、はぁ……。ん……んぅ……。
あ……んんぅ……ん……うぅん……。ん……はっ、あぁ……ア……」
 小さいがしっかりと官能を感じさせる喘ぎが絶え間なく天使の口から漏れる。
 そしてばたつく脚は徐々に上がり、ゆらゆらと揺れていた。
「ああっ……アァ……あぁ……アァ……」
 細かく小さく悶えるローラを見下ろしながら、腰を上げる。そしてばたつく脚を押さえ、
開かせた。長いスカートの中心では毛のない縦筋が赤く輝いている。先程の愛撫で完全に出来上がっていた。
「はあっ……ああっ、み、見ないでくださぃ……」
 乳首をしゃぶられながら、見られてるのに気付いたローラが潤んだ目で精一杯の抗議を漏らす。
「今度は見るだけじゃないぞ」
 言いながら、片手でローラの脚を上に開かせ、もう片方で上を向くペニスを支えて、
狙いを付ける。目標はもちろん魔法天使の処女。
「くっ……! そ、そんな……ここまでなんて……」
 喘ぐ口から無念の声が漏れる。どうやら処女を奪われるのを悟ったらしい。
「いいのか? 処女を奪われるとここにいられないんだろ?」
 じっと狙いを付けながら、試しに聞いてみる。
「あっ……。やめてと言っても…アァ……やめて、くれないのでしょう?」
 喘ぎながらも気丈に言い返す。
 覚悟は出来てるようだ。よろしい。ここでみっともなく『処女だけは許して』
と言おうものなら、無理矢理口でさせて、尻穴に突っ込み、それからやっぱり処女を奪うつもりだった。
 許しを請うても無駄な相手とよく知っている。だから許しは請わない。それが魔法天使の最後の誇り。
「でも……ああっ……これだけは、覚えてなさい……」
 ゆっくりとスカートの中にペニスを進めていく。リリムに乳首を吸われ、喘ぎながらローラは続けた。
「必ず……他の魔法天使や……魔法少女たちが……、必ず……ああっ!」
 それ以上は言葉にならなかった。

 ズン! と一気に、僕のペニスが、ローラの縦筋を分け入り、貫いて。

「ああ……アアアアアアーッ!」

 胸を吸われながら背筋を仰け反らせ、ローラの脚がピンと上を向いた。
「ひぎっ! ぎいいぃっ!」
 歯を食いしばり、必死に耐える。痛みに。別の何かに。それでも体の下の白い天使の翼はバタバタともがいていた。
 ギチ、ギチっと狭い肉を引き裂き、肉棒が奥へと進む。苦痛に歪むローラに僕は容赦しなかった。
「ひいっ……! ヒイイィィィ!」
 未知の痛みに、それでもローラはよく耐えた。
 僕の分身が彼女のお腹をいっぱいに満たして止まり、根元の結合部からは血が流れている。
「これで……処女じゃなかったな」
「あ、ああぁ……」
 ぱくぱくと開閉する口から涎が漏れ、目からはさらに溢れる涙。リリムは一心不乱に胸をしゃぶっているが、痛みを和らげるあまりないらしい。
「ひっ……ひぐうぅ!」
 僕が腰をずんと一突きするたび、ローラは腰を上げ、身悶え、そして鳴いた。
「あ、あうぅ……。あがうぅ」
 体の下でただ泣き悶える魔法天使に僕はすっかり夢中になり、蜜肉を抉った。
 その度に、金色の髪が揺れ、上を向いた白い脚がゆらゆらと揺れる。
「ひぐっ……あぐうぅ……」
 溢れる涙はベッドを濡らし、瞳にはもう力はない。弱々しく頭を振るその仕草が、彼女の無念さを表していた。
 暖かく、そして狭いローラの中。リリムより狭く、ありさより熱い。
「はぁ……ああっ……」
 いつしか僕も汗びっそりで顎から落ちる汗がローラの顔に落ちて行った。元は白いその顔も、今は赤く染まり、苦痛と屈辱に歪んでいる。
「あぐうぅ……ひっ、あぁ……」
 悲鳴か力なく呻くだけだった口が、微かに言葉を紡ぐ。
「もう……やめてぇ……」
 瞬間、ぎゅっと股間が痺れ、熱くなり、耐えれなくなった。

 ドクンッ!

 白い放流がローラの胎内を満たしていく。
「あがあああああっ! イヤ……イヤアアアアアアアアアアアアーッ!」
 とうとう取り乱して絶頂と同時に激しく泣き叫ぶローラ。同時に、僕の体に
ぎゅーんと魔力が流れ込んでくる。ローラの魔力を吸収したようだ。

 ぴかっ、とそのローラの体が白い光に覆われた。
「きゃっ」
 驚いてリリムが胸から口を離し、僕も慌ててペニスを引き抜いた。
「あ、ああぁ……」
 だらんと開いた股間から血と精液を流すローラの体が光に包まれ、そしてふわっと宙に浮く。
「な、何これ?」
 僕が聞くと、
「何ですか、これー!?」
 リリムも聞き返してくる。僕が知るわけないだろ。

 どごーん!

 さらに背後の壁が爆発!
「な、なんじゃー!」
 振り向くと、そこに栗色のツインテールの魔法少女が立っていた。
「マジカル☆アリサ、ちゃきちゃき行くよ〜」
 バトンを振り回して名乗るが、すぐにそれどころじゃないと気付く。

「ろ、ローラちゃん!」
 白く光るローラに手を伸ばすアリサ。
「あ、アリサちゃん……。ごめんね……」
 ローラも手を伸ばし……アリサに届く寸前、光の球となって外に飛び出し、
天へと昇っていった。
 ……
「はわー」
 沈黙を破り、間抜けな声を上げたのはリリムか。
 とりあえず。服を着よう。裸はなんだかね。
 いそいそと服を着終わると、アリサが僕にバトンを突きつける。どうやら触手の群れを一人で全滅させたらしい。
校庭を見るとそこには何もなく、元の静けさを取り戻していた。

 ま、時間稼ぎにはなったな。触手さんたちに合掌。
「お兄ちゃん……。ローラちゃんになにしたの!」
「いや、あのな。処女を失うと、魔法天使は天界に帰っちまうらしい」
「そんな……!」
 カッとアリサの目が見開く。
「それじゃ……ローラちゃんにもエッチなことしたの!? あたしがいるのに」
「いや、そうい問題じゃ……」
「ひどい、ひどいよ!」
 栗色のツインテールを振り乱し、アリサは地団駄を踏む、リリムがそっと僕に寄り添った。
 そんな寄り添う僕とリリムに、アリサはキッと鋭い視線を向ける。なんだか嫉妬が混じってるような。
「許さない……。学校を襲って休校にして。先生から電話があって『化け物が
襲ってきたので今日は休校です』て言われたんだよ」
 ああ、それで目が覚めたのか。
「欠席にならなくてよかったじゃない」
「あたしという妹がいながら、ローラちゃんにエッチして天界に帰して」
「いや、普通は妹ともしないんだが……」
「学校の校舎を壊して!」
「ちょっと待て! 壊したのそっちだろ!!!」
 どかーん! てやったのアリサでしょー!? 正義の魔法少女が魔法でそんなことして!
「言い訳しない!」
 うわっ、なにそれ。なんでこっちが怒られるの?
「いくらお兄ちゃんでも……悪い事は許さないんだから!」
 突きつけたバトンをくるっと回して宣言する。こうなると思ったんだよな。
 何故なら、
「マジカル☆アリサは正義の魔法少女なんだから!」

 さて、この妹をどうしよう。

(おしまい)