(1)
赤く巨大な異形の影が、放課後の校庭を徘徊している。
大いに逃げ惑う生徒たちの様子を楽しむように、それは右手の金棒を振り回し、壊れたオルゴールの如く言葉を繰り返す。
「わるいこは…いない?わるいこは…いないあ?わるいこは…」
一方その頃、混乱の渦中にある校庭を、教室の窓から見下ろすセーラー服の少女が一人。
「今日は何月何日だっけ…どうでもいいよね…どうせ楽しいことなんか無いんだし…。」
ふう…とアンニュイなため息の後、彼女は右肩に乗った細長いボロきれ(のようなぬいぐるみ)に問う。
「…ティオ、真っ正面から行くね?」
「それがベストだな、可憐。これが11日後なら、話は少し違ってくるが。」
そのぬいぐるみの声色はマギー某のフェレットを彷彿とさせる見た目とは違い、鼻持ちならぬ雰囲気が滲み出ていた。
細かい経緯は割愛するが、彼女らは故あってコンビを組み、とある組織の一員として活動している。
ふたりの標的たる怪物たちの発生条件の一つは、浮き足立つ世間の温度というやつ。
成人式で呑んで暴れる若者の拡大版とでも言うべきか、とにかくカレンダーに赤丸が印されるその日、必ず何処かに怪物は現れるという。
本日の日付は2月3日。
この日に命を賭ける人間はそうそういないため、現れるバケモノもそこそこ止まり。
だが、バレンタインやクリスマスという(性的な意味で)聖なる夜に出現するタイプはとにかくヤバい強さだと専らの噂だった。
「さて、と。」
可憐は窓から身を乗り出し、どっこいしょとばかりに飛び降りる。
その高さは地上三階。
運が悪ければ死ねる高さだ。
「準備はいい?」
「応よ!」
可憐の言葉に答えたティオの身体から光が放たれ、ふたりを包み込む。
そしてその光の中では、少女に力を付与する宗教じみた儀式が執り行われていた。

(2)
すでに男子生徒8人を撲り倒した怪物の狙いは、一人の女子生徒に定められていた。
「いや…いやぁ…!」
壁際に追い詰められた女子生徒は力無くへたりこみ、小刻みに震えている。
その時、短いスカートの中身が丸見えだったが、それを気にする余裕もないようだ。
「わるいこには…。」
怪物の金棒が振り上げられた瞬間、女子生徒は「ひっ…。」と悲鳴を上げた。
そのまま叩き下ろそうと怪物の肩が動いたその時…「待ちなさい!」と、凛とした少女の声が冴え渡る。
「そこまでよ、怪物!おとなしく私の毒牙にかかる事ね!」
「…可憐、それは奴(やっこ)さんの台詞だと思うぜ?」
振り返った怪物が見たものは、見るからに強気そうな少女の姿。
そして彼女が着ているその衣装は、上から下までメイドインコスパな異彩を放っていた。
端的に特徴を羅列するなら、青を基調とした色合い、ギリギリな丈のミニスカート、ローブ状のジャケット、膝までのブーツ。
そして肩には、やはりボロきれにしか見えないぬいぐるみが乗っている。
「わるいこ?おまえ、わるいこ?」
怪物の興味の対象は、完全に可憐の方へと向いたらしい。
可憐の目配せに促され、女子生徒はその隙に駆け出していく。
そうしてこの場に残ったのは、少女と怪物だけとなった。

(3/1)
可憐は値踏みをするように、怪物の形を観察する。
全長は約四メートル。
体格はアメコミに出てくるような、逆三角形のアスリート型。
皮膚は暗い赤色であり、彫刻のような顔面の上には二本の角。
やたらと盛り上がった股間を覆うパンツは虎縞であり、それが一部のお兄マンズが大好きな…いわゆる「縞パン」というものだろうか。
頭の頂上から足の先端まで、怪物の佇まい非の打ちようが無い程の「赤鬼」っぷりだった。
「わるいこ…とって、くう…!」
咆哮を上げて地面を蹴った赤鬼は、見た目からは想像できない素早さで可憐に飛びかかる。
「ティオ!」
「わーってるよ!」
少女の肩から飛び降りたティオはギゴガゴと音を立て、やがて少女には不釣り合いなまでに巨大な剣へと形を変えた。
振り降ろされた金棒を刀身で受け止める可憐。
「くっ…!」
彼女は思わず呻きを洩らし、バックステップで赤鬼との間合いを取った。
衝撃を受け止めた右手がビリビリする。
それは敵のパワーが段違いである証拠だ。
「見た目通りの馬鹿力、ね…。」
「どーする、可憐。遠距離戦に切り換えるか?」
「冗談!」
相棒の提案を両断し、可憐は刀身に力を込める。
「魔力を払えば、…多分…いける…はず!」
瞬間、炎を帯びた刀身を構え、彼女は気合いと共に踏み込んだ。
対峙した赤鬼は金棒を構え、防御に回る。
ぶつかり合う大剣と金棒。
最終的に競り勝ったのは…炎を纏った一太刀だった。

(3/2)
鬼の金棒は真っ二つに叩き折られ、可憐の刀身はそのまま赤鬼の胴体へと食い込む。
両断するには至らなかったが、十分に致命傷と言えるだろう。
獣じみた断末魔を上げ、ズズンと仰向けに倒れる赤鬼。
遅れて地に墜ちた金棒の切っ先が、地面へ深々と突き刺さる。
「…ほら、余裕だったでしょ?」
不敵に微笑み、刀身を引き抜く可憐。
傷口から溢れた血に触らないように、彼女は動きを止めた敵から離れる。
「さて…帰ろっか、ティオ。」
「だな。なー、可憐。」
「ん?」
「そろそろさぁ…俺を洗ってくんねーか?」
剣からいつもの姿へと戻った相棒に微笑みを返し、可憐は赤鬼から背を向ける。
活動を終えた敵の身体は、じきに溶けて消えるだろう。
だが…それはまだ、命を終えていなかった。
唐突に上体を起こした赤鬼は、口吻から複数の球体を吐き出す。
「可憐!」
「!?」
ティオの警告に気付いた可憐は身を翻し、それを躱そうとする。
が、それは途中で失速した結果、彼女の足下辺りにぽとりと墜ちた。
「不発?」
「らしいな…拍子抜けだ。」
赤鬼は立ち上がろうとしているが、やはりダメージが大きいのかその動きは緩慢だった。
しばらく待てば再生機能が働く筈とはいえ、そんな暇をくれてやるほど彼女らは甘くない。
可憐は赤鬼に止めを刺そうと、ティオに再び変型を命じようとした。
だが、その時…。
赤鬼の吐いた球体…いや、豆の蒔かれた地面の底から、無数の蔦が可憐へ迫る。
「…えっ!?」
やがて蔦は即興の十字架のようなものを形作り、少女を磔るように拘束した。
「わるいこには、わるいこには…。」
立ち上がった赤鬼は口角を上げ、冷酷な笑いを浮かべている。
「おしおきが、ひつようだあ…。」
その胸部にあった傷口は既に塞がっており、それはすなわち赤鬼の完全な復活を意味していた。

(4/1)
「可憐、どーにかして抜けらんねーのかよ?」
拘束から抜けようと身を捩る少女の肩で問い掛けるティオ。
「ダメっぽい…かな。この蔦、意外と丈夫みたいだし、それに…」
「それに?」
「なんだか…力が抜けてるみたい…。」
相棒の声に応えながらも、可憐の表情からは意思の強さが消えつつあった。
肉眼では捉えられないが、蔦の表面は微細な棘に覆われている。
あるものは可憐の肌から直接、またあるものは服の繊維の隙間を縫って、彼女から力を吸い取っている。
「それはわるいこのようぶんをすって、げんきになるんだあ…。」
囚われた可憐の眼前にまで迫った赤鬼は、彼女が衰弱していく様を観察するように眺めている。
「げんきになったら、ほら、もっとうごいていいんだよお…。」
その声を待っていたとばかりに、可憐の手足に絡み付いていた蔦が彼女の胴体目指して這い登り始める。
拘束する時とは違い、今回はまるで可憐の柔肌の感触を愉しむような動きだった。
ミニスカートからすらりと伸びる少女の脚。
瑞々しい太ももの内側を蔦に擦られる度、可憐は零れそうになる吐息を必死に飲み込んだ。
その間にも上半身を目指す蔦は袖口から侵入を果たし、彼女の双乳を直接締め付ける。
「つっ…!」
ブラの上から膨らみの薄い胸を絞られる痛みに、可憐は思わず声を上げた。

(4/2)
「いたいおしおきがいいの?それとも…きもちいいほうがすきなの?」
新たに一本の蔦が少女の背後より垂らされ、彼女の両足の間を通る。
それはそのまま可憐の股間を擦るように引っ張られ、ミニスカートがその拍子に捲れ上がる。
外気に晒された少女の下着の色は白。
その奥に秘められた可憐の縦筋には、おぞましい蔦が食い込んでいる。
やがてそれは不規則なリズムで、乙女の秘部の間を前後し始めた。
「…は…ぁんッ……!」
断続的に押し寄せる波の中、特に敏感な一部分を擦られる度に吐息を洩らす可憐。
倒すべき敵の眼に下着を晒される屈辱と、そこに秘められた部分に触れられる恥辱とが織り交ざる感覚が、可憐をさらに火照らせる。
(やだ…このままじゃ…)
下腹部の奥がキュンと疼くような感覚に、可憐はもじもじと内腿を擦り合わせる。
(…このままじゃ…来ちゃう…)
だんだんと強まる疼きの果てに、何かが零れるような音を彼女は聞いた。
(…来ちゃう…だめ…!)
やがて、蔦が蠢く可憐の秘部…白いショーツのクロッチに、透明な染みが拡がっていく。
「そう、きもちいいほうが、すきなんだあ…。」
その言葉は、少女に欲情の証を零させた赤鬼の勝利宣言なのだろうか。
赤鬼は蔦に合図を送り、可憐の戒めを解いた。
支えを失った少女の身体は仰向けに倒れ込む。
「はあ…はあ…はあ…」
蔦に揉みほぐされたために先端が勃起した胸と、溢れ続ける愛液で内腿やスカートを汚す性器。
今や彼女の思考は完全に麻痺し、ティオとのリンクも完全に途切れていた。

(4/3)
「きみばっかりきもちよくって…ずるいなあ…」
可憐の髪を掴み、そのまま彼女を引き起こした赤鬼は、潤んだ少女の眼前で自らの股間を露にする。
蔦の触手に弄ばれる魔法少女の痴態を眺めていたからか、赤鬼の性器は腹部に接触しそうなほどにそそり立っていた。
今の可憐は膝立ちがやっとの状態だったが、赤鬼が目的を晴らすにはそれで充分だ。
「なんなんとうは、こっちい」
ゆっくりと近付けられる醜悪なものの先端からは粘液が先走り、魚が腐ったような臭いを撒き散らしている。
「んッ…!」
やがてその先端は少女の唇の間を割り入り、少女の口腔へと潜り始めた。
口から鼻へと通り抜ける若草の臭いの不快さ、顎が外れる程に太い男根を咥える苦しさに、顔を背けようとする可憐。
だが、赤鬼の両手に掴まれた今の状態では、事が済むのをただ待つしか無い。
「ふぁ…う…あ…んッ…!」
赤鬼の腰が動く度、唾液がかき混ぜられる音と少女の苦しげな呻きとが交錯する。
そして…。
可憐の口内に打ち困れた汚杭のから、大量の精液が吐き出された。
怒涛の如く押し寄せるその液体を少女が飲み尽くせるはずも無い。
小さな口から溢れたスペルマが少女の青き衣装を汚し、使命を、戦意を、容赦無く押し流していく。
「ちょっとだけ…よかったかなあ…」
赤鬼は満足気な言葉と共に、可憐を解放した。
白濁の中に沈んだ魔法少女を見下ろしながら、細められる赤鬼の眼。
精液に濡れた衣装の下の裸体もまだ拝んでいない。
スカートの奥の秘所を蹂躙する楽しみも残っている。
「まだ…遊んであげるからねえ…。」
玩具がその役割から解放されるには、所有者に飽きられるか壊されるかのどちらかしかない。
そしてどちらが先に来るとしても…可憐の受難は、まだ終わらない。