才能。
天賦の才。
優秀な血統。
言い方は何でも良い。
少なくとも冬代伊万里にはそれが存在した。
心も体も傷つけられて、しかし彼女の瞳は死んでいなかった。よりいっそう強い光をその瞳に宿しアリスを救った。
彼女は強い。アリスは直感的にそう思った。
経験さえつめば、確かである知識さえ与えられれば、彼女は強くなるのだ。
しかし鈴織アリスには才能が無かった。
――――三年前。
アリスには瓜二つの双子の姉が居た。
名前をエリス。顔付き体付き、何から何まで殆ど一緒。
しかし髪の色だけは金髪。もともとクォーターだった為か、髪の毛にだけその差が出てしまったのだろう。
性格もかなり違う。
そしてもう一つ圧倒的に違うものがあった。
それが才能。
エリスには類稀無い才能があったのだ。
魔術師の家系とは、大昔より魔族の討滅を目的として存在している。その年月は数百年も続いていた。
魔術師の使う魔術とは、その実魔族の技術を盗んだものだった。
彼らの技術を根底から根こそぎ取り上げて、それを持って魔族を殺している。
魔族は人間を餌にするが、魔術師から自らの技を取り戻すのも、一つの目的としている。
より強い魔術師から、より強い魔族の技を、弱い魔族が手に入れた場合、権力すら手に入るのだから狙われないはずが無いのだ。
盗む、という行為は、魔術により行なわれた為、須らく盗まれた魔族はその力を失ったようなものなのだ。
故に現在の魔界という世界は、混乱期に差し掛かっている。
世界に数ある魔術師の家系の中で、三つの魔族の技を根源として伝えて鍛えているのが、鈴織家であった。
一つ、死神の鎌。
一つ、守護闘衣。
一つ、月光閃華。
死神の鎌はかなり上位魔族の魔術だ。
文字通り死神としてその生業をこなしていた魔族から、その鎌を奪った。
魂すらも抉り取るその鎌は、人間の手に渡って魔族に絶対的な威力を誇る鎌となった。
しかしその扱いは難しく、魔族がこの鎌を瘴気で模るのと違い、人間はこの鎌を己が血で模る。
守護闘衣はその死神が纏っていた黒衣だと言われている。
故に黒く、ドレスのようにはためく。
月光閃華はそれなりに中位に位置する魔族の武器だったと伝え聞いていた。
アリスはこのどれも、まともに扱う事が出来なかったのだ。
おち零れ扱いだった。
エリスはその反対に、優秀だからこそ大事に育てられた。
鈴織の家系は当然古く、二人以外にもたくさんの兄妹が居る。その中でもっとも底辺に存在していたのがアリスだったのだ。
家族が彼女に冷たく当る中、唯一エリスだけはアリスに優しく接してくれていた。
だからアリスはエリスの後をずっと付いている、そんな子だった。
鈴織家の終わりは唐突だった。
死神が鈴織家に総攻撃をかけてきたのだ。周到にして狡猾に、彼らはもっとも鈴織家に力ある者達が居ないタイミングを狙って襲い掛かってきた。
虎視眈々と百年以上狙い続けてきていたのだ。
足手まといが多く、もっとも衰退したタイミングを狙ってきた。
その足手まといがアリスだった。
「アリスは、ここに隠れていてね」
そう言ってエリスはアリスをベットの下に隠した。アリスは言葉も無く震えるだけで、姉が渡してくれた死神の鎌の媒介と、守護闘衣の宝玉、そして月光閃華のリングを手渡した。どれも魔術兵装であるため、一般の人間が見てもわからないものばかり。
そしてアリスにとって見えはするのだが、扱えないものばかり。
「エリスお姉ちゃんっ! だめ、こんなの持ってても使えないっ!」
「いいの、持っていて。きっと役に立つ時が来るわ。絶対にアリスは使えるようになるんだから。ね? だからここで静かに待っていて。『私が駄目でも』お父様かお母様が絶対に助けてくれるから」
そう言ってエリスはベットの下に魔術をかけた。鈴織家オリジナルの音や気配を遮断する結界。
そしてその結界の前に、エリスは立った。守護闘衣をまとい、身体能力を増し、月光閃華を両手に輝かせた。
扉が破られた。
先陣を切ってきた魔族を光りで切り伏せる。その動き、刹那にして迅雷。次に入ってきた魔族を音も無く撃ち殺し、さらに次の魔族の頭を吹き飛ばした。
迅速にして恐ろしいほど美しい殺戮だった。
勝てる。アリスはそう確信していた。
何度も何度も襲い掛かってくる魔族が、エリスにあっさりと殺されていくのを見て、絶対に負けないと思っていた。
なのに、
その絶対に負けない戦闘が、終らないのだ。
――――。
一向に終らない戦闘。何度も何度も何度も殺したのに、相手は無尽蔵に出てくるのだ。
二時間。それだけの間戦い続け、エリスはようやく自分の過ちに気がついた。
相手は魔族の中の、死神と言う名の神を持つ、不死者の種族。
月光閃華では、『死を与える事が出来なかったのだ』
それでもエリスは戦い続けた。体力が尽きた時、自分の命が潰える時だと解っているのに、エリスは止まることなく殺し続けた。
アリスを呼び、死神の鎌を自分の手に戻すのは簡単だったが、それが出来ない。
(あの子を、魔族の前になんて絶対に出せません……っ)
エリスは必死に戦いを続ける。何時か仲間が助けに来てくれる。その時まで自分は止まるわけには行かないのだ。
守るべき人が居るから、自分は決して負けてはならない。
しかし体力は尽きる。人間には限界がある。不死の住人にはそれが存在しない。
エリスの足が倒れ伏した不死者の手に捕らえられた。そのまま一気に叩き伏せられる。
「きゃうっ!? 閃華ッッ!」
倒れた瞬間覆い被さってきた不死者を吹き飛ばす。
だが引き倒された不利な体勢を見て、好機と不死者は彼女を周りから見えないほど多い囲んでしまう。
「やっ、きゃっ! やめ! くっ、閃華、月光!」
光は不死者を僅かに止めることは出来ても、殺す事が出来なかった。
艶やかな黒髪を掴み、頭を床に何度も叩きつけられて、意識が朦朧とし始める。
「はっ、ぐ……っ!? ひゃぁあっ!?」
不死者はその薄汚れた手を、美しいエリスの白き肌に触れさせていく。白いカンバスがドブ色の体で汚されていく。
不死者はエリスを汚すのに性急だった。闘衣を引き裂くだけの力は無かったが、薄い胸を握り締める事は可能だった。
「いたっ、―――うぐぅっ……!」
闘衣のスカートを巻く利上げ、その下着を剥ぎ取るのは簡単だった。
「ああっ、いやぁッ!? 駄目ですっ、見ないでくださいッ!」
まだ誰にも見せた事の無い秘所を、無遠慮に死んだ眼が覗き込む。穢れ無き乙女の匂いに、不死者達は喜んだ。
何より健康的で美しい生に憧れるのが不死者だ。徹底的に蹂躙する。それだけが目的だった。
「やめてっ、んっ、くっ、や、や、ひやぁああっ!」
左右から別々の不死者に膝を掴まれ開かれて、その間にもぐりこむ不死者。口全部で幼く小さな秘所を包み込み、貪るように舐め上げる。
初めての感覚に、気持ち悪さしか感じられないエリスは、首を振って涙を流しながら叫んだ。
「やめ、くぁっ、やめてくださいッッ! ああっ、んくあぁあッ! んんーーーーーッッ!」
叫び声を上げて大きく開いた口に、腐りきった不死者の硬い男根がつき込まれた。
あまりの匂いと不衛生さにエリスは目を見開いて泣く。
苦しさにそれを噛み千切ろうとしたが、まるで鉄のように硬い男根は歯を立てるだけで痛かった。
「んぐぅッッ! んぐッ! んぐーーーッ! ンッンッンッンッッ!!」
男根をリズミカルに、エリスの喉を突き破らん限りに腰を動かした。
(死ぬッ、死んじゃいますっ! 息がッ!)
ビクンビクンッと痙攣し始めたエリスに、不死者は突然男根から精子とは名ばかりの汚物を吐き出す。
「んぐぅッ、ぷぅぁあああっ!」
首を振ってそれから逃げると、顔にもその汚濁が掛かる。白くなく、なにやら妖しげな幼虫すら含まれた謎の液体。
「ひっ、ひゃ……っ、な、にこれ」
性経験も知識すらも無い彼女にとって、その物体は得体の知れない恐ろしい物に感じ取られた。
拭いたかったが、拭う為の手は拘束されている。押さえつけられてそれを払うだけの力もエリスには無かった。
そして本格的に、不死者の陵辱が始まる。
執拗までに秘所を舐め上げていた不死者がもそりと立ち上がり、
エリスの細い腰をその大きな手で掴んでしまう。
動かせない。狙い定めて、先ほどエリスが口に含んでいたものよりも太い男根が
ちゅくり……っ
と、触れた。
「ふわぁああっ! やあぁっ、なにするんですかっ!」
先ほどの汚濁を、自分の股間にかけられると言う恐怖。
汚らわしい。
病気になってしまう。
そう考えて青ざめたエリスだが、彼女は知らない。不死者がもっと恐ろしいことをしようとしていることを。
ゆっくりと、進入を始めた。
「あ……ぎッ!!」
薄く閉じられた幼い縦筋の秘所は、不死者の男根をかたくなに拒否した。
そして同時に、その拒絶行為は、エリスにこの上ない激痛を与える事となる。
「う、がっ、ぎぃ……ッ! な、に、……ぉ」
エリスは必死になって、自分の腰で行なわれている行為を見つめた。
おおよそ清潔とは縁遠い穢れた太き男根を、不死者はエリスの股間に突き刺そうとしている……という事実を初めて認識する。
「はい、らない、そんなの……むり……っ、はがっ!? んぐっ、きャァああああアーーーーッ!」
ずるり、と。先ほどまでしつこいほどに舐められ、穢れた唾液で濡れえた秘所は、エリスの処女膜と膣口を破壊しながら突き刺さった。
ごっ! と、鈍い音が響いた瞬間、エリスは身体が引裂かれたと思った。
「……ぁ、ぅ……かっ……」
大きく口を開けるが、悲鳴すらまともに上げられず、呼吸困難に陥ったように小さく弱々しく震える。
しかし残念な事に、不死者の男根はまだ半分しか進入していないのだ。
エリスの腰はよりいっそう強く掴まれ、
「ぁ――――ぎぃぃぃぃぁああぁぁあっぁあああああああッ!!!??」
今度こそ、エリスは断末魔のような悲鳴を上げながらのた打ち回った。
エリスの下腹部は、不死者の男根の形で膨れ上がっている。
子宮の奥深くに叩き込まれた男根に、エリスは首を振り乱し、膝から先の唯一自由になる足をばたつかせて絶叫を続けた。
「あぎッ、あぎッ! きゃあああアッ! やだああアッ! も、く、いたあああーーーーッ!」
悲鳴を上げるエリスに笑いながら、不死者は腰を動かし始めた。
幼い膣口はその挿入一回一回に破壊されて、原形を止めない程に壊されは解されていく。
「んぐぁあぁああああッ!」
突然腰を強く引かれ、駅弁スタイルでエリスは叩き上げられる。
激痛の中暴れる以外の行動が取れず、苦し紛れに不死者の身体に抱き付いて痛みに耐え始めてしまう。
動きを止めて欲しい必死に抵抗だったのかもしれない。
「やめっ、やめてッ、もうっ、ひぐぅっ! あぐぁあっ!?」
不死者は腰を掴むのを止め、エリスの両足を掴んで下に引っ張り、腰を強く突きつけ、男根で子宮壁を抉った。
小さいからだだからこそ出来る芸当だろう。エリスの下腹部は何度も何度も変形し、痛々しいほどまでに紅く充血し始めていた。
そして……。
「あ……つぅうぅッ!? 熱いっ、熱い熱いいぃいいぃいッッ!!」
不死者から離れるように、両肩を押して逃げようとするが、拘束は解かれない。エリスの中に、何かが容赦なくぶちまけられる。
(さっき……のと、同じ……の!?)
身体の中に注ぎ込まれる、先ほどの蛆の湧いた液体。その様子を明確に想像してしまった。
「い……や……いやいやいやいやッいやぁあああっ! 嫌ですッ、もう止めて下さいっ、もう出さないで、入れないでぇぇええええっ!」
涙を流し、黒髪を振り乱し、必死に叫び懇願するが、不死者はそれを聞いてやる義理も何も無いのだ。
彼ら自身の欲望に従い、白き彼女を汚していくだけだった。
「う、……あ……っ」
出し切った不死者はエリスを落とした。
(終っ、た……? おわったの、……生きてるの? 私……)
倒れたエリスは、そう考えていた。終ったのだと。何となくそう感じた。
普通ならばそうかもしれない。だが、ここにいるのは無尽蔵な性欲を持つ不死者であり、そして複数存在するのだ。
終ったと安心していたエリスの足を、別の不死者が掴み、ずるりと引き摺る。
「ぇ……あぁ、……うそ、まだ、だめ、やだもう、うそ、やめておねがいぃいいいぃぃッッ!」
腕を使って逃げようとしたエリスの腰を強く掴み、一気に引き寄せた。
またもエリスの子宮奥深くを抉り込んだ男根は、情けも容赦もなく律動を始める。
「うああっ、ああぎっ、ひぃいっっ、いぐっ、んんんああああッッ!?」
床に爪を立て逃げようとするエリスの身体を、よりいっそう近づけるように挿入する。早く強く破壊するように。
「やあぁあああーーーっ、やあーーーっ、もうやだあぁああッッ!」
歳相応の声を上げ、エリスは泣き叫ぶ。
不死者は逆に、エリスのその声に力を得たように早く強く突き上げる。
「んぁああっ、んあああぁッ……ひぐぅ……うう、ああっく、……んくあぁぁ……っ」
もう腕で身体を支える事も出来ないエリスは、倒れ込んで突っ伏して、
突き上げられる度に思い出したように悲鳴を上げ続ける人形と化しはじめた。
ドクンッ、ドクン……っ。
そしてまた汚物を中に吐き出され、エリスは覚醒して泣き叫ぶ。
「はぐぅうッ、やだ……っ、あつうっ、くっ、入れないで、ださないぇ……、お願いです、お願いですからぁぁぁ……ッ」
涙目で必死に訴えるが、不死者は全てエリスの中に注ぎ込んだ。
「うぅ……っ」
エリスの中から男根を抜き、べちゃり、と吐き出した汚物の上にエリスを放る。
もう見る影もなく汚されたエリスを、また別の不死者が抱え上げた。
エリスは両手を使って小さく不死者を叩き、抵抗する。そんなことしか出来なかった。
不死者はそんな抵抗を意に介さず、立ったままエリスの中に男根を挿入する。
「んんくうぅうぅぅうッ!」
唇を噛み締めて、首を振って激痛に耐える。
「はっ、はっ、はっ、くあっ、ん、はひぃっ、ふはっ、ひぁ……っ、ん、ん、んっ……」
激痛は走り続けているが、もう大きな悲鳴を上げるだけの力など残っていないエリスは、
リズミカルに中を陵辱されながら、それに合わせて息を吐くだけになってしまう。
そんな状態のエリスを、次の陵辱を待っている不死者は、彼女の別の穴を見つける。
(え……なに……?)
ゆっくりと力強く尻タブを開かれ、エリスは意識をそちらに向けた。その瞬間、
「あ……ひ、うそ、まって、うそ、そんなだめ、いれないで、入れないでくださいッ、うぎッッッ、アッ! ああああーーーッ、いやああァああああああっ!」
何処にそんな叫ぶ力が残っていたのか、エリスにすらわからなかった。
あまりの痛みに近くの物を掴む。
それは前に挿入している不死者の背中なのだが、エリスにそれを構ってる暇はなかった。
エリスのアナルの中に、長く太い不死者の男根が進入する。
「あ、か……はっ」
エリスの腰と、不死者の腰が触れてようやく止まった。
止まったが、直ぐに動き始める。
「うあぁっ! うあはぁっっ! いやあああぁあぁッ、痛い、痛いの痛いのぉぉおぉッ! んぐっ、ひぐぅ!!! んぁああああぁぁアッ!」
前も後ろも同時に動き、エリスを蹂躙していった。
…………、
……、
……、
…………、
ゆっさゆっさと、動かされている姉を見つめる。
アリスは動けなかった。恐怖で全く動けなかった。
「やめてぇっ! もう――ひあああっ!!」
時折叫び、首を振りたくっているエリス。
「はぎぃッ!! 入れないでッ! んぐううううんっ!」
鳴き声を上げ、口に男根をつきこまれているエリス。
「たす、ひあっ、助けてェッ! 誰か誰かお願いだからお願いですからァあぁッ! もう、やーーーーーッ!!!」
助けを呼び、諦めてその目を暗く閉じて行く姉を見ても、アリスは動けなかった。
全ての陵辱が終ったのは、三日後だった。
その間アリスはずっとエリスの叫び声鳴き声助ける声を延々と聞き続けた。
黒く美しかった髪は、汚らわしい液体で凝り固まり、身体は至る所を傷つけられ、歯型なども存在し、どれだけの暴行が行なわれたか一目瞭然だった。
「ぁ……ぅ、……」
小さく声を上げるエリス。まだ生きている。
しかし不死者はまだそこに居る。アリスは助けに外に飛び出す有機など無かった。
そうすれば、あんな事をされるのは自分なのだと解りきっていたから。
「ほう、まだ生きているのか」
不意に、男の声が聞こえた。
部屋に入ってくる存在。足だけが見える。
その男は倒れているエリスの頭を掴み、片手で引き上げた。
アリスの視界からは、エリスの足だけが揺れて見えている。
「中々の生命力だ。魔力も申し分ない。秘儀も身体に幾つも刻み込めているな。面白い、持ち帰りそれらを取り上げ、苗床にでもしてやろうか」
「ぁ、ぅ、……く、や、だ……もう、や、なの……」
「残念だが聞き届けられないな」
男は歩いていく。片手にエリスを掴んだまま、引き摺る様に。
エリスは最後に、ようやく最後に、今まで見なかったベットの下を見た。
隠れているアリスを見て、その手を伸ばす。
「い、や……たすけ……て、アリ――ス――――」
エリスは闇に消えた。
最後の助ける声だけ、アリスの頭の中から決して消えないトラウマとなった――――。