芹川杏(せりかわ あんず)は魔法少女ではない。ごく普通の少女だ。
ごく普通、というと語弊があるかもしれない。正確には普通より少し背が低い。胸も小さい。まったくないとは言わないが。性格は、多少凡庸な紹介になるが、明るくて活発、といえば分かりやすいだろう。そして正義感が強いというのも特徴だといえる。その正義感が原因で一連の出来事に巻き込まれることになるのだが。
杏は悩んでいた。授業の内容は完全にシャットアウトされている。杏の住む、この街では最近とある噂が広まっていた。突然、人が失踪するといった事件が多発しているというのだ。しかし、ニュースにはなっていないため、本気にしていないものも多い。また、こちらは事実として確認されているものだが、突然、何の前触れもなく長期欠席をする生徒が増えている。この二つがちょうど同じ時期に起こり始めたことから、その関連を疑うものもいる。
杏の悩みはこのことに関係がある。杏の幼馴染とも言うべき、一つ年上の矢幡葵(やはた あおい)の行方が知れないのだ。噂となっている失踪事件となんらかの関係があるかもしれない。そう思うと、杏は不安になる。姉妹のように生活してきた葵を失うかもしれない。警察には届けてある。彼らに任せておけばいいのだろうが、彼女はどうしてもそれで納得できなかった。そこで、失踪事件の関連が噂される長期欠席の生徒に話を聞こうとしたが、門前払いにあった。だから今、授業中にもかかわらず、授業を無視して次に取るべき行動を模索していた。
(少し危ないけど、行くしかない)
そう心に決めて、杏は小さな賭けに出た。杏に考え付くことなどたかが知れていた。それは二日前、つまり失踪当日に葵が取ったであろう行動を自分で再現することだ。葵は二日前、塾を出たことは確認されているという。その帰宅途中で失踪したということだ。葵が自分から失踪することなどありえない、と杏は考えていた。だから、きっとその時間、帰宅ルートのどこかで何かが起きたのだ。杏は、夜十時過ぎから彼女の帰宅ルートを探索することを決めた。

杏のような子が一人、夜十時の人影もまばらな道を探索するのは明らかに危険だ。母親に言おうものなら全力で止められるに違いない。だから杏は家を抜け出し、探索に向かった。姉妹同然の葵を思った杏なりの正義感がこの行動を起こさせたのだろう。杏は深夜までにはこっそりと家に帰り、母親に気付かれないようにするつもりでいた。しかし、その見通しが甘かったといわざるを得ない。その夜、杏が家に帰ることはなかった。
十時過ぎ、塾にたどり着いた杏はまた悩んでいた。杏の家と葵の家は近所だ。杏の家からこの塾までの道程こそ葵の帰宅ルートなのだ。しかしここまで来た道に異常はなかった。このまま来た道を戻ったところで何の発見もないのではないか。このまま帰るか、あるいは、もっと別のところを探索するのか。失踪事件は多発しているという。それならば、今日もこの街のどこかで起こる可能性がある。それは葵を見つける手がかりになるかもしれない。しかし同時に杏が危険な目に遭う可能性もあるということだ。杏は悩んだ末、少しだけ、と家とは反対方向へと歩き出した。

一時間。繁華街から路地裏まで、散々探したが、何も見つけることは出来なかった。
(警察だって探してるのに見つからないんだ。そんな簡単に見つかる分けないか…)
今日は無理だと諦め、杏は踵を返した。そのとき、何か不思議な感覚を覚えた。
(何だろう…)
これ、といった何かがあるわけではない。だが、何かが変化したような気がした。
(何か起こったのかもしれない)
そう考え、杏はもう一度だけ周囲を探索し始めた。
大通りから少し奥に入った通り、今にも崩れそうな廃ビルを曲がったところだった。そこは目に見えて異質だった。大きなドーム型に真っ黒な空間が広がっている。中を覗き込もうとしても、何も見えない。杏はドーム型の空間のすぐそばまでそろそろと近寄った。足元の小さな石を広い、その空間へと投げると、石は中へと消えていった。中には入れるようだ。どうするべきか、杏はまた悩んだ。この謎の壁の向こうに、自分の求めているものがあるのかもしれない。しかし、そこに一体何があるのか、どんな危険があるのか分からない。
(それでも…)
杏の正義感がここで顔を出す。姉同然の幼馴染。彼女を助けるためなら、どんな危険も顧みず進むべきだと結論付けた。

踏み込んだその中は、想像を大きく超えたものだった。まず目に入ったのはボロボロに倒壊した廃ビルたち。この空間の外とは全く違う光景が広がっている。そして、そこにはにわかに信じがたいものがあった。それをなんと表現すればよいのか、杏には見当がつかなかった。
(な、何…あれ…)
杏は完全にすくみあがっていた。そこには魔族の姿があった。もちろん杏にはそれを魔族と呼ぶことすら分からない。杏にとって存在するはずがないものなのだから。
人の体に爬虫類のうろこを貼り付けたような形をしたその生き物。とても大きなその姿は醜く、そして恐ろしかった。しかし、そこに見えたのはそれだけではなかった。
もう一つ、魔族に比べて遥かに小さな何かがいる。杏は目を凝らした。すると、ようやくそれが人なのだと気付く。杏よりは少し大きい、標準的な身長の少女だ。風変わりな衣装を着ている。いや、人の形をした何か、かもしれない。人はあんな高速で動けるものではないはずだ。それに、あれは空を飛んでいる。人に空は飛べないはずだ。
(あれは何…?私、一体どこに迷い込んじゃったんだろう…)

その人の形をした何か−カザミは極限状態にあった。昨日も魔族と戦い、その時は辛くも勝利した。しかし二日連続での戦闘は厳しかった。彼女ら魔法少女は各地で魔族との戦いを繰り広げていて、十分な人材がいない。この地域にやっと駆けつけられたのはカザミ達二人だけだった。
(二人とはいっても実際戦えるのは私一人。なんとか切り抜けないと)
そう思うものの、彼女の魔力は尽きかけていた。もういくつも魔法を放てないだろう。しかし、ここで負けてしまっては次がさらに厳しくなるのは分かっている。負けられない。
その魔族はその大柄な体格に見合わず俊敏だった。壁や床を蹴り、跳ねるようにしてこちらに突進してくる。その上魔法も使う。結構に高等な種族かもしれない。
(あと使えるのはシールド魔法一回か攻撃魔法一回か、どっちかってとこね)
防御をしたところで勝てるわけではない。あと一回の攻撃で撃破を狙う。
−しかし。
カザミはこの異空間の端に動くものを見つけた。
(敵は他にいなかったはず−じゃあ一体誰?)
異空間には外からは誰も入れないはずなのだ。相当の魔力を持ったものがこじ開けでもしない限り。カザミは戸惑った。

魔族はそんなカザミの様子を見逃さなかった。魔族はカザミの視線の先にある人物、杏へと攻撃対象を変えた。カザミのことはよくわかっているのだ。彼女は、無関係な人が傷つくことを嫌う。だから。

カザミは余力を振り絞って加速し、魔族と杏との間に割って入った。魔族の攻撃魔法をシールド魔法で防ぐ。しかし、先程の加速のため、魔力は消耗し、シールド魔法は十分な効果を発揮しなかった。魔法障壁は打ち砕かれ、魔族の放った雷がカザミを貫く。
「ああああぁぁぁぁ!!!!」
衝撃がカザミを突き抜ける。体が痺れて言うことをきかない。もっとも、言うことをきいたところで、魔力はもう尽きている。何も出来はしない。足元がふらつき、膝から崩れそうになったところへ、魔族の拳がカザミの腹へとめり込んだ。
「が、ふっ…」
巨大な体から繰り出される拳の破壊力は致命的だ。カザミはその場にくず折れた。

杏は目の前で起こることに、一切反応することが出来なかった。何が起きているのかを理解することさえ出来ていないかもしれない。呆然とその場に座り込んで動けずにいた。股間の辺りが妙に温かいのは失禁しているからだろう。突然、得体の知れない死の恐怖に晒されたのだから仕方がない。そして杏はこれから目の前で起きることも、ただ見ていることしか出来なかった。

魔族はカザミを掴み、持ち上げると崩れた廃ビルの壁へと押し付けた。口から粘液を吐き、手足を拘束する。カザミは大の字の形で壁に貼り付けられた。少し見下ろす形で、魔族は嫌味な笑みを浮かべる。
「手間取らせてくれたが、とうとう終わりだなあ。魔法少女さんよ。」
カザミはまだ痛みに歪む顔をあげ、魔族を睨み返す。
「あら、喋らないから人の言葉は喋れない低級魔族だと思ったのに。」
嫌味を返すが、表情にも言葉にも力が入っておらず、魔族は鼻で笑い飛ばす。
「人間の言葉なんざ、好んで使いたくもないな。低俗だ。人間なんて魔力を奪うためにいるようなもんだ。大人しく餌にされとけよ」
そういうと魔族はカザミの股間に手を回し、軽く握り締める。
「くっ…」
屈辱と痛みと不快感でカザミはまた顔を歪める。
「まぁ、お前はもう何度もヤられてんだろ。もう慣れたもんなんじゃないか?それとも、まだまだヤられ足りないか?」
魔族はショーツの中へと指を滑らせる。
「ん…」
そのまま指は膣内へと強引に進入し、無造作に動かし始める。
「く…んっ…は…」
カザミは必死で責めを耐えている中、さらにもう片方の手がカザミの胸を揉みしだく。
「んんんっ…くぅ、あぁぁっ!」
責めはだんだんと激しさを増し、カザミも徐々に耐え切れなくなり始める。魔族は興奮した手つきでカザミの服の胸の部分を千切りとる。服のボタンやアクセサリーのようなものが弾け飛び、すぐ横で座り込む杏のそばまで転がっていった。露になったその乳房は大きくはないが小さくもなく、形の整ったものだ。
「この歳で大勢のやつらにヤられてきた割にはきれいなもんじゃねぇか」
下卑た笑いを浮かべながら、その乳首を強く摘む。
「んんんんんっ!!」
鋭い痛みに甲高い叫びを上げてしまう。魔族はさらに乳首を何度も摘み、胸を揉み、膣内の指を激しく動かす。
「ああああっ、んんぅ、はああぁぁぁっ!」
カザミの声も段々と大きくなる。魔族は満足そうに口元を歪める。
「そろそろだな、イっちまえよ。」
そういって、さらに責めを激しくさせる。
「ああああああっ、ああああううあうううあぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」
壁に拘束された体を最大限に震わせ、カザミは絶頂へと達する。そしてがっくりと顔をうな垂れた。顔は悔しさと羞恥で紅く染まっている。

「ほら、休んでる暇なんてないぞ。これからが本番だからな」
魔族はそのペニス大きく勃起させ、カザミの股間にあてがう。これまで気丈に耐えてきたカザミの表情が恐怖に歪む。どう考えても魔族の大きさとカザミの大きさが釣り合うはずもない。そのペニスがカザミの秘所に進入することなど不可能に思えた。さすがのカザミも震え上がり、その歯がガチガチと音を立てた。
「大丈夫だよ。お前魔法少女なんだ、今は体が強化されてんだろ、そう簡単には壊れたりしねぇよ。それにあれだ、壊れたら壊れたで別にいいしな。」
カザミの顔が絶望に染まった瞬間、魔族はそのペニスをカザミの秘所へと突きたてた。
「ぐうううぅぅぅぁああああぁぁぁ!!!!」
カザミの呻くような悲鳴が響き渡る。さすがにキツイのか、中々奥まで入らないが、魔族は構わず突き進む。
「がぁぁあっ、いやぁっ、や、やめてっっ…!!」
カザミはなりふり構わず叫び散らす。先程までとはまるで別人のようだ。秘所はミチミチと音を立てる。なおもペニスは膣へと進入しようとする。
「いっ、がっ、ああぁあぁぁっっっ!死ぬうぅっ、死んじゃ…、ああぁぁぁぁっ!!」
「そんな簡単に死なないっての。普通の人間じゃ、ないんだ、から、よっ!」
勢いをつけ、奥までペニスを押し込んだ。
「ぎ、いいぃぃぃぁぁぁぁあああああ!!!」
子宮の奥が引っ張られるような痛みに絶叫するカザミ。魔族はもう一度ペニスを引き抜き、少しずつ勢いをつけてピストンを開始する。
「ぐぅっ、あっ、くっ、うぅぅ…、かっ、は、あぁ、ああっ!」
カザミは痛みで意識を保つのもやっとな様子だった。いっそのこと、気を失えば楽なのかもしれないが、それほどやわな体ではないらしい。ピストン運動の振動と共に形のいい乳房が揺れる。そこだけ見ればまるで普通の性交のようにも見えるが、実際はそれとはかけ離れた、地獄の様相を呈していた。魔物はそのスピードをさらに上げ、スパートに入る。
「ああぁぁ、ううぅぅ、いいぃ、くぅぅぅっ、はぁぁああっ!!」
そして魔族は一度大きく腰を引き、最後に思い切りペニスを押し込んだ。
「あああああああああああぁぁぁぁぁぁぅぅぁぁっっっ!!!」
カザミは再び絶頂に達し、魔族はありったけの白濁液を彼女の子宮に注ぎ込んだ。その瞬間、魔物にカザミの魔力が流れ込んでいく。
「うぅぅぅぅぅぅぁぁぁぁぁぁぁ…」
とてつもない喪失感。カザミは、こればかりは何度経験しても慣れることはないと断言できた。カザミは全身の力が完全に抜け、ぐったりとしている。カザミを拘束していた粘液は役目を終え消え去り、支えを失ったカザミは不恰好にそのまま崩れ落ちた。

杏はもうまともに息もしていられなかった。普通の人間同士の性交に関する知識すら十分に持たない杏は、あの巨大な魔族と小さな少女の一方的な、拷問にも似た陵辱にショックを受けていた。もう、失禁するだけの水分も体には残っていないように感じれれる。カザミが陵辱されている間に杏はこの場を逃げるべきだった。しかし、足は全く動かない。腰も抜けているのか、立ち上がることも出来そうになかった。そして、魔族は杏の方を振り向く。杏は全身の血の気が引いたのを感じた。
(次は私…?あれと同じ目に…?)
ありえない。あんな目にあったら絶対に死んでしまう。逃げたいのに、体が動かない。カザミもまだ倒れて動かない。かろうじて息はしているが、もうボロボロになっている。
「折角だからお前も喰らっておこうか。どうやってこの異空間に入り込んだのか知らんがな。」

杏は自分に近寄る身の危険をどうにかして回避しようと必死になった。しかし、やはり足は動かない。かろうじて動くのは腕ぐらいだ。近くに転がる瓦礫のかけらを必死で魔族に向かって投げつける。しかし、届きはしない。届いたところでなんの意味も成さないだろう。魔族は杏の方へと一歩一歩近づきだした。もう数歩で杏に手が届いてしまう。杏は手元にあるものは何でもいいから掴んで投げつけた。もうまともに考えている余裕などない。
しかし、先程杏の元へと転がってきたカザミのアクセサリーを握り締めたとき、突然杏の体が輝きだした。
「なんだ!?」
魔族は突然のことに怯んだ。一体何が起こったというのか。

光が止んだとき、杏の姿は変わっていた。容姿は相変わらずだが、先程カザミが身に付けていた服のような格好へと変わっていた。杏は、自分の変化を感じ取っていた。杏の心を万能感が包む。もう足はすくんではいなかった。すっと立ち上がり、魔族に向かいあう。今の自分はあの魔族ぐらいなら怖くないのだ、と理解していた。

立場は逆転していた。今は魔族のほうが後ずさり、腰が引けているようにさえ見えた。魔族は小さく舌打ちをし、
「今日の目的は果たせたからいい。次はお前の相手になってやるよ。」
そういい残し、姿を消した。

杏は急に力が抜け、先程のように地面にへたり込んだ。しかし、力を振り絞りカザミの元へと歩いていく。カザミの様子は酷いものだった。杏が現れる前の戦いで負ったものらしい傷。そして先程の陵辱の爪あとは大きかった。カザミの秘所からは魔族の白濁液が流れ出しており、そこにはどこからか鮮血も滲んでいる。杏はあのおぞましい光景を振り払うように頭をブンブンと横に振る。

(これからどうすればいいんだろう)
カザミをこのまま置いていく気にもなれず、杏は迷っていた。それに、自分のこの姿は一体何なのか。途方にくれていると、急に周囲を覆っていた黒い異空間の壁が消滅した。どこからか、小さな影がやってきた。それは杏よりも幼い少女だった。しかし、その身のこなしは常人のそれではなく、カザミの同類であることが見て取れた。
「お姉ちゃん!」
少女は叫び、カザミの元へと駆け寄る。一瞬辛そうに目を伏せた後、カザミの体を軽々と抱き上げる。おそらく不思議な力が可能にしているのだろうと杏にも想像出来た。そして少女は杏の方を向き返ると、
「すみません。私と一緒に来ていただけますか?」
と言って頭を下げる。

杏は悩んでいた。この数十分で起きた出来事のほんの少しも理解できていない。それで一体どんな決断をすればいいのかなど分かるはずもなかった。ただ、あれだけ傷ついたカザミを放っておいて家に帰る薄情さはなく、また、この少女の言葉無視するのも彼女の中の正義感に反するものだと思えた。
だから一言
「うん」
と答えた。