栗野ばななは5才の女の子。毎朝、綺麗なママに結んでもらうツインテールの長い髪は
背中まで届く。柔らかい髪質が天衣のように揺れる。
小さなお顔についたママそっくりの大きな瞳も輝きを失っていない。
「・・で、どうすんだ?」
6体の部下を率いた人一倍大きな魔物が言った。
「まってってくだちゃいね・・」
「・・よっと・」
この絶体絶命のピンチにも怯える事も無くママの教え通りに、腰にぶら下げている
幼稚園の黄色いミニバックを開く。
「・・・」
取囲むようにして股間を膨らませた魔物たちも、幼女の奇行に意表をつかれ、
息を飲むしかなかった。
「っしょ・・」
中からとり出したのは一本のバナナ。
「ごるる?」
「バナナン バナナン バ〜ナ〜・・ 」
背中に大きな羽のようなリボンがついた園服。頭にはお気に入りの猫耳のカチューシャ。
まるで絵本に出てくる妖精のような姿。
その小さなスカートからはおむつのようなパンツが半分顔を出していた。
左右に顔を小さく振り、バナナの皮を嬉しそうにひとつひとつ丁寧に剥きだす。
つま先が小さくリズムを刻んでいる。
「なっ♪」
モグッ
「あ!っぐわぁあぁあぁ」
魔物の1人が股間に手をやりその場に崩れた。
「ば、ばかやろぉ、なにあんな子供だましに反応してるんだーっ!」
慌てた魔物の隊長が統制乱れぬように喝を入れる。
「むふむふ、でもおいしいんだぁから」
ばなながその小さなほっぺたをモゴモゴさせつつ、さらに皮を剥いていく。
「なっ♪」
かぽっ
「ぐぁあああああ」
また別の魔物が頭を押さえて卒倒した。
こ、今度は口にくわえてゆっくりとスロートを開始しだしている。
なんたる仕業。
「ぎやぁああ・・・!」
「ひ、ひでぇえええ」
まだまだ幼いが自分の体に指も這わせ、バナナを口から自由に出し入れするばななちゃん。
「ああん・・バナナぁ〜。おいしい〜ん」
ママの口癖をしっかりと真似をしている。
無邪気な言葉が魔物たちをさらに襲った。
「あ〜あ〜あん・・奥まで届きそう〜ん」
きゅぱっ きゅぱっ きゅぽっ
バナナがどんどん湿り外側から溶け出してきた。
「ぁああぎゃぁあああ」
「ぅぅうううぐぅ」
魔物たちが次々と雄叫びをあげなから倒れていく。
「おっ!お、おまえら。何をしてるんだー、は、早く起きろ・・」
「・れ・・?」
気がつくと隊長以外、全て失神してしまっていた。
戦わずして敵をせん滅するとはなんという魔術。
なんという幼女───
「ああん、次は隊長さんの番だにゃん」
髪の毛から飛び出た猫耳がぴくぴく揺れている。
「や、やめろ・・」
魔物デーモン隊長の顔がみるみる青ざめる。
ゆっくりと近寄ってくるばななに呼応するかのように後ろに下がる。
「おまえたちから摂取したバナナ王国の樹園は元に戻す。だからもうやめろぉ・・」
「・・いや、・・やめてくださぁあいい」
ついに拝むようにして隊長はその場にひれ伏してしまった。
「へんなの・・」
キョトンとするばなな。
ピィイー−ッ
指を加えて、ばななが口笛を鳴らす。
「モンちゃーん」
「キキッ」
100メートル向こうで戦況を見守っていた青いチンパンジーが急いで
駆け寄る。ばななの腰に下がっている黄色いミニバックにその長い手を入れた。
目をパチクリしてそれを見つめる魔物隊長。
ガサゴソガサゴソ・・
「ウキィ!」
するとチンパンジーが得意げになにかを掴み出した。
「げぇ!!」
「ありがとう、モンちゃん」
「じゃじゃーん♪」
モンちゃんが取出したのは見事に反り返った、これまたなんとも卑猥な形のバナナであった。
ばななはそれを刀のように目前に据えると、菓子メーカーのキャラクタよろしく
唇の回りを舌でぺロリッと舐めた。
「これ、ママが大好きなパパバナナだよ」
「パ!パパぁああ??」
意味が分からず隊長はアゴを地面に付けるぐらいに驚く。
「さぁーて、もういっぽん・・」
「こほんっ」
こほんこほんっ咳き込むばなな。
「・・げふぅ」
お腹が一杯なのかゲップが出てしまった。
「ごめんなさい、うぷ」
こつんと頭を叩いて恥じらうばなな。
ぽっこり膨らんだかわいいお腹をさすりながら、改めて気合いを入れ直した。
「よーしいくよぉ♪せぇの・・」
「や、やめてぇ!」
「バナナン バナナン バ〜ナ〜・・」
またまた顔を左右に振り子のように揺らしながらゆっくりとバナナの皮を剥き始めた。
もう隊長の声はばななの耳には届いてない。
しかも今度のバナナは反っているのでまるで大きな男性の亀頭のようだった。
「あ・うぅ・」
隊長が早くも股間を抑える準備をした。
「キィ♪キキィ♪」
歌に合わせてモンちゃんがばななちゃんの回りを盆踊りのように手ぶりを
つけて踊っている。
「なっ♪」
「キィ♪」
あーん。
小さな口を大きく開き、大きなバナナを頭から思いっきりほおばる。
ガァアポッ
「!ぐわぁああ」
思いっきり腰を引き、お尻から飛び上がる魔物隊長。
「あぁぁん、おおきぃいいん、このバナナ〜ん」
ほうばったばななの口から声にならない声と唾液が伝う。
「ぎゃぁあああああ、ありえなぃいい」
魔物は目を真っ白にしたかと思うと、生気だけが煙のように背中から飛び出し、
天に向かって浮遊した。この世を去ったのだ。
「キッキィー♪」
「やったね、モンちゃん」
ばななはチンパンジーの手を取って仲良く歩き出した。
二人の歩く影は下り行く坂道の斜面をどこまでも伸びている。
「見て、モンちゃん。夕陽がきれいだよ」
「キキ!」
「ばなな、ほんとはもっとバナナ食べたいの」
「キィ〜キィ?」
「ううん、なんでもない、さぁ帰ろう。モンちゃん」
(完)