395 名前:名無しさん@ピンキー[sage the first] 投稿日:2007/12/21(金) 23:21:41 ID:6FdAu/Ic
 異世界から地上にもたらされた魔法の杖を偶然拾い、魔法少女になったA子と、人間に悪用される前にそれを破壊するという使命を帯び、地上に送り込まれた魔法少女B子。
 二人は互いにぶつかりあいながら、絆のようなものを育んでゆく。
 終盤、B子の異世界がこちらの世界の侵略を画策していた事、A子の杖がその計画を止める唯一の切り札である事、そしてB子がA子に好意を抱き始めたがために裏切り者と見なされた事が判明。
 本性を表した異世界の主は人質として、A子の兄を連れ去ってゆく。
「A子、あんたは死ねるの? あんなダメ兄貴のために」
 A子は最愛の兄を救うため、そしてB子は密かに想いを寄せるA子を助けるために、異世界へと殴り込んでいく。
「B子ちゃん、最初はちょっとイジワルかなって思ってたけど……ホントはいいひとだったんだね……」
「馬鹿言ってんじゃないわよ、ったく……」
────
 異世界。
 対魔法少女兵器である触手の群れに包囲される二人。
 善戦するも時間が経つにつれ、徐々に追い詰められていく。
「このままじゃダメね……。一旦引くわよ、A子!!」
 だがA子は聞く耳を持たず、触手に立ち向かっていく。
「馬鹿、なにやってんのよ! ……ったく……勝手にしなさい!!」
 B子、単身で退却する。
「……あたしの気持ちも知らないで……ホント、馬鹿なんだから……」
────
 四肢を拘束され、触手責めを受けるA子。
 コスチュームに侵入した触手が魔力を奪うべく、A子の秘所へと伸ばされる。
 が、寸前のタイミングで焼き切られる触手。
 拘束から解放されたA子の視線の先にはB子が。
「知らなかったわ……。あたしってマジでいい奴だったのね……!」
「そうだよ……だから言ったんだよ? そうだって……」
────
 決戦後、A子はダメ兄貴を救出し、自身の世界へと帰っていく。
兄貴(きっと、助けに来るって思ってた……)
 それを遠くから見守るB子。
「あたしの負け、ね。……上手くやりなさいよ?」
 B子、微笑みながら立ち去っていく。
 遠くなっていくその背中。
 そして誰もいなくなったその場所には、B子の愛用していた魔法の杖が遺されていた……。(完)


396 名前:ふたりはリリカル Mix Heart[sage] 投稿日:2007/12/22(土) 01:38:28 ID:divGr9dV
「やったね」
小さく胸の前で腕を立てて喜ぶ少女。
ゆっくりと地上に降りるそのすぐ横を魔物の肉片が五月雨のように散り注いでいく。
下から見るそれはピンク色の雪のようだった。
「きゃあ!センパーイ」
「リリカせんぱーい!」
奥にかくまっていた聖カオス学園の生徒たちが手を合わせながら駆け寄った。
彼女達が作る輪の中央へ少女は静かに舞い降りる。学園を襲った凶悪な半獣人を
一瞬にして粉砕したヒロインにはとても思えない。細身で背だってそんなに高くない。
一見した人にはきっと人形のように整った顔の美少女としか見えないだろう。
「かっこよかったですう」
「ほんと、リリカ先輩、こんな可愛いのにすんごく強いんですよね、憧れますう」
目をハートにした女子生徒たちに囲まれると小さいリリカは体が隠れてしまった。
大きな白いリボンのついた頭部を照れながら掻いてみせた。
「なははは、どうも…。そんなことはないですですう」
白の妖精― 光沢あるコスチュームの短いスカートからは細い脚が覗く。
白の長ソックスにはさくらんぼのアクセントがころころと揺れた。
右手には手鏡に似た柄がつく水色のステッキを握っている。
「じゃあ、あたし急いでいるからこれで…」
小さい体を沈ませつま先を弾ませると
「失礼しますですぅ」
ピョーンと軽業師のように彼女達の人輪を跳びこえていった。

「先輩…」
生徒たちが見とれているのにリリカも気付く。
「先ぱーい…パンツもカワイイ〜」
「あ!だめ〜え、見ちゃだめえ!ですぅ」
身体を上下逆さまにして器用に空中でスカートを押さえ、少女はそのまま遥か後方の
校舎裏へと消えていった。

「ああ〜ん、リリカ先輩ギザカワイすぎ」
「スレンダーで小さいしホントお人形さんみたいよね」
「また逢いたいわあ」

そう、リリカは学園に魔物が現れた時にどこからともなく助けにくる聖カオス学園に
とっての守護天使なのだ。
とくに魔物の出現が最近は多発してきた。この学園の敷地内にどうやらなにか理由が
あるらしく、それに併せてリリカの登場も増えていた。
華麗に舞うリリカの振る舞いやその容姿に一部の女子生徒たちは憧れを抱き、
ついに信者と呼ばれるコアなファンまで出来始めた。

「絶対この学園の生徒だわ」
ゆるいウェーブの効いた長い髪を手で後ろにかき揚げる少女。モデルのように脚が
長くスタイルのいい彼女こそ、自称リリカ組のリーダー、喜島菜穂子ことキジちゃんだ。
「みんな、先輩についての今日のミーティング。始めるわよ」
他の信者たちは声を揃えてキジちゃんの後に続いた。

427 名前:ふたりはリリカル −Mix Heart−[sage] 投稿日:2008/01/08(火) 01:09:02 ID:QfZB8Lo+
会議室の扉にプレートが一枚。
−開けるな!リリカ組 ただ今使用中−

「だからね、私は第一校舎の誰かだと思うのよ」
キジちゃんとその仲間たちは皆、リリカに心を奪われていた。
(そんなことないですですぅ…)
頭の中であの声が何度も繰り返される。
控え目で舌足らず…でも戦いでは驚く強さをもって魔物を討伐…終わればいずこへ
去っていく…。
(ないですですぅ…ですぅ…すぅ−ぅ…)
「きゃわいすぎぃ!」
突然キジちゃんが立ち上がり、空気を抱きしめたので皆固まった。

「よし、これでオッケーと」
「あ、あ…律ちゃん…ご苦労様。え、え―と画像も?」
「ええ、キジちゃんのパソに今、転送しますわ」
長身で、キジちゃんとはまた違った聡明な美しさを持つ柿ノ木律子はしっかり分けた
髪型が大人ぽい。長い指でエンターキーを軽く叩いた。
いつの間に取り出したのかキジちゃんの手には伸縮式のタクトが持たれていた。
「みんな前を見てちょうだい」
意味は無いのだが机を一回叩く。
これまで律子が撮り貯めしてきた動画が会議用モニターに写しだされた。
「これがリリカ先輩の髪型と背格好」
モニターに大写しになったリリカの複数の動画。
「そしてお顔のアップが…こちら…の画像…」
動く画にキジちゃんの司会が止まってきた。律子が軽く咳ばらいする。
おほん―
「え?ええ…、で…次に、これが私達カオス学園の全生徒データベースで…」
画面下に黒い帯が出来、生徒の顔が沢山表示され横にスクロールされた。
「下は幼児舎から上は短大まで全員のが理事室サーバーから今は、
 サーチ出来るようになっています」
「尚、これは理事長様の孫である律ちゃんのおかげですので、普通はアクセスすら
 出来ない情報よ、律ちゃんに拍手!」
髪を撫でながら律子が喝采に応える。
キジちゃんが律子に目で合図した。
「それではリリカ先輩を探します」
律子がマウスを軽くクリックすると、わあっと黄色い歓声が室内に響く。
パララックスのように全学園生徒の顔写真が高速で切り替わっていく。
これでいつでも先輩とお逢い出来る−キジちゃんも唇に親指を当てモニターを見つめた。
すると画面が点滅しリリカを型どったワイヤーフレームと生徒のサーチング画像が止まった。
「ARART!ARART!」
新しいウィンドウにデータベースから該当者が抽出される。
「え…」
「ちょっと…」
皆、椅子から腰を上げ、開いた口が閉まらない。
「あ、あの人が…リリカ先輩…なの?」
「ねぇ、き、キジちゃ…」
「じ、じゃあ…皆…今日はもう誰もいないから明日の昼休みにでも行ってみましょ」
キジちゃんの瞳にその該当者が鏡のように写し込まれていた。

547 名前:ふたりはリリカル ―Mix Heart―[sage] 投稿日:2008/01/27(日) 02:36:21 ID:/T9iTHIb
「いくでにゃき」
「合点承知之輔」
田室と太西が肘を組み合わせると校舎裏が眩しく輝いた。花壇の花が風圧で吹き飛んでいく。
「ふたりはリリカル!大きく、なあーれ」
大きな円を腕で描き、顎を反らして空を見た。
肘をピンと伸ばして、爪先立ちで何かを待つ。すると雲が割れ、螺旋を描いて
光が降りて来る。二人を直撃した。
「大変!あの二人もしかして死んだ?」
木陰から覗くキジちゃんが口に指を入れて息を飲む。

「ふ…ごもももごもご…ももごも…」
「にゃきにゃき…にゃきにゃきにゃ…」
全身の体毛を逆立てて野獣のように激しく痙攣する二人。
「ちょっと、あんたたち、だいじょ……」
たまらずキジちゃんが前へ踊り出た。
「ぶ?」
はーあーぁーあーん―
どこからともなく聞こえる女性の奏でる甘いコーラス…

―リリカル(カル)、汝らに契約の証である大いなる力(力)、
  それを活用する慈愛の器を授ける(ける)―

全裸になったまま木曽駒のように回る二人。
「なんで?なんなの、あんたたち浮いてい…」
「きゃ!」
キジちゃんの視界が一瞬にして無くなる。視力が戻ると光に包まれた二人が正面にいた。
背中から雛鳥のように短い羽をピコピコ動かし、空中を泳ぎ、手には小さな弓と矢を持つ。
「あ、あんたたち、かなり…、キモいんですけど…」
顔体型が変わってないのに格好だけが天使のよう。見てくれだけで言えばかなりイタイ。
「しかも、なんか小さくなってるし…」
羽音だけを立て、浮遊を続ける長髪メガネの田室と脂肪過多な太西。
黙って弓の矢を引き始める。
鏃を凝視すると呪文のようなものが印された小さな魔法陣が幾層にも重なり出来ていた。
「ちょっとお、なにノーリアクションきめてんのよ、何か言いなさい」
無視される事が大嫌いなキジちゃんが手を振り上げた。すると―

― 喜島菜穂子 マタワ キジチャン、オ前ニ命ズル―

―イキロ!― キロキロ…ロォロォ…

二人の目が赤い光を放ち、弓がしなった。
「きゃああああ」


「グルムムム?」
隻眼の巨人が生徒を襲うのを突然止めた。
誰もいない後方をじっと見つめる。
「あ、あれは!」
校舎の上を誰かが指差す。巨人も反応した。女の子たちは頬を赤らめて互いを見る。
「きゃああ、きたわあ」
「いやあん、やっぱり可愛い」
「グルムム…」
そこにはツインテールに結ぶ大きなリボンを頭に載せ、白の法衣を身につける少女が
立っていた。
左手には背丈程ある長い王紋杖。豪奢な柄の中央部分には赤い玉石がキラリと輝く。
「おまたせしましたですぅ。魔法少女リリカ様がきましたからには…、」

「もおぅ、みんな安全!ですですぅ」
欄干に片足を乗せて微笑む。


420 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 07:32:33 ID:vng8eurh
「このド素人が!」
男性魔法教師から罵声が飛んだ。
「ひィっ」見習い魔法少女ミヒーは頭を手で覆った。

「全く、何一つ出来ないとは…動物並だな?今日は居残って特訓してもらおうか」

その晩、夜も更けてきた頃…。
「しかし相変わらず何の魔法も出来ないとはな。
そもそも、魔法の前段階としての精神統一すら出来ていないとは!精神的に餓鬼そのものだ!」
ミヒーは目を涙で潤ませた。
魔法教師はその涙を見て何か考えたようだった。

421 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 07:45:13 ID:vng8eurh

「まあ…、本来なら即退学レベルのお前だが、
私は、かの大魔術師、荒射星の愛弟子。何とかしてみよう。よし、目をつぶれ。」
目を瞑るミヒー。なにやら己のズボンのチャックを下げる教師。
「さあ、この毒キノコをしゃぶるんだ。歯を立てるなよ。」
…。CHUP!CHUP!
「するとキノコの先からお薬が出るからグッと飲み込むんだ!」
「そのお薬を飲めば、きっと精神統一が出来るようになるぞ!吸えっ!もっと吸うんだ!
歯は立てちゃ駄目だ、舌で8の字を描くように舐めるんだ〜!」
こうして魔術学園の夜は更けていく。ミヒーちゃんは本当に魔法を使えるようになるのかな?
(終わり)


462 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/13(日) 14:01:57 ID:dUfr4sqJ
「なんて大きな敵なの? まるでそびえ立つクソね!」
「覚悟しなさい、タマ切り落として、グズの家系を絶ってあげる!」
「ふ、ふざけないで!! こんな触手で感じてなんか……まだジジイのファックのが気合い入ってるわ……!」
……以上、『魔法軍曹 さぁじゃんと☆はぁとまん』でした。


527 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/20(日) 01:49:45 ID:NjyHgKw0
その日、結果的に魔法界はひとつの過ちを侵したことになる。
かつてない強大な魔力を会得した異端の魔法師。人々は腫れ物に触るように、
彼女を自然と孤独に追い込んでいった。
そんな彼女に憎しみに似た歎きを呼び起こしたのは魔法界にとって大きな損害を
齎す愚行―

魔神少女―
己たちの偏見と既得の権益を護ろうとした狭見な魔法界の老人たち。
身にあらぬ罪で少女を捕らえ、大衆の目前で厳罰を与える、それは皮肉にも
人間界の魔女狩りに似た光景だった。

「大魔法院より被告に裁定を下す」
法廷に木槌の音が響き渡る。静寂が広がり、それに合わせて席へ座っていく遥か奥まで
連なった傍聴者たち。白の囚人服を整え、緊張をごまかしているのはセンターサークルに
立つ被告である少女。

「被告の諸行は残忍極まり無く、凶暴なうえ改善或いは猛省の兆しも全く見受けられない」
赤い大皇法衣を着た最高判事は魔法連峰にそびえる小山と同じ位、体が大きい。
胸から上は雲を突き抜け、顔が全く見えない。オリンパシイの巨人族から選出されただけあった。
まさに天上から喋りかけてるようだ。

「故に、被告を魔法界より永劫追放とする極刑を命ずる」
歓喜でどよめく傍聴席。衛兵たちが槍を持ちながら静かに少女を取り囲んだ。
初めから仕組まれた裁定なのは賢明な法師ならすぐ判る―茶番―。
だが少女は顔を伏せたまま抵抗もしなかった。長い髪が表情を隠している。
そして口端を微かに引き、小声で一言囁いた。
―オマエガキエチャエ―

瞬間、
「きゃあああ」
傍聴列から飛び交う悲鳴。驚いて天を見上げる副審官を務めた12人の長老たち。
「むごおぉお‥」
天地を揺らす強大な呻き声が、巨人である最高判事の座る玉座まで、激しく震わせ法廷の宮殿壁に亀裂が走っていく。
「きゃあああ」
血の気を失い固まった衛兵たちの囲いの中から少女が天に人差し指を向けた。
空気が凍る―
「バキュ‥ン」
落雷にも似た鋭い大気が裂ける音。続いて深紅に染まる大量の液が天から降り注いできた。
「うっぎがあああ‥ああっ」
真っ赤に顔を染めて怯える魔法師たち。
「あああ!大皇官さまああ」
大皇官の体が玉座ごと真っ二つに裂け、そのまま建物を押し潰しながら左右に朽ちた。
「ぎゃあああ」
法廷から飛び出していく魔法界住民。大皇官の屍は両街区の建物を幾十も下敷きにした。
市街の各所から橙色の炎が次々と揚がった。たちまち青い空が黒く変貌する。

「な‥なんてことを‥」
衛兵たちが槍の刃先を少女に向けた時、少女は既にそこにはいなかった。