それは、学園祭が間近に迫ったある日のこと。
クラスの出し物がコスプレ喫茶ということに決まってから
衣装の縫製やサイズ直し、教室の飾りつけ、ひいては
買い出しや値段の設定まで、一美は準備に大忙しだった。

言い出しっぺであることに加え、もともと責任感は強い一美である。
料理が出来ない分(お客様にBC兵器を出すわけにはいかないので)、
それ以外のことはやろうという気構えが見てとれた。
一美の趣味から始まった企画とはいえ熱意は伝わるもので、
いつしかクラス全員が彼女を中心に一丸となっていった。

その日も彼女は放課後を告げるチャイムが鳴るが早いか、
持参した縫製道具を手に里緒のサイズを測っていたのだが。

「……一美、今日私の家に来てくれないかなぁ?」
「??? ……え、ええ。構いませんけど」

里緒からの突然の誘いに困惑する一美。
学園祭の準備の進行具合が気にかかるが、里緒が
思いつめた表情をしているのが気にかかる。

(仕事についての話かしら……?)

里緒と一美は一見どこにでもいる普通の女子高生。
しかし、その裏では里緒は怪盗レインボーキャットとして、
一美はその協力者として、世間を騒がせている張本人なのだった。
すべては7年前の復讐のために。

内心すぐにでも本題に入りたい気持ちを抑えつつ、
学園祭の準備の話でお茶を濁しながら家路を急ぐ。
ようやく辿りついた里緒の部屋はいつものように
小ざっぱりと片付いていて、淡いピンク色で統一されている
いかにも年頃の女の子といった部屋だった。

「それで? 何かあったんですの?
 仕事の話なら、まだ予告状も出しておりませんし……」
「ううん、そうじゃなくて……えっと、その……
 実は涼人くんのことなんだけど……」
「え? 涼人くんがどうかしたんですの?」
「……う、うん……その……私、涼人くんにどう思われてるのかなぁ?」

てっきり『仕事』についての話だと思い込んで、
気を引き締めていただけに一美は少し拍子抜けをした。

「どう思われてるって、一緒にデートをする関係じゃありませんか」
「ち、違うよ! あれは涼人くんに街の案内をしてあげただけだもんっ」
「ふふん♪ 私が何も知らないとでも思っているんですの?
 その後も何回か一緒にデートしてるのはお見通しですわよ」
「へっ!? な、なんで知ってるの? それは、その、えっと……」

クッションを抱きしめて顔を赤く染める里緒。
初々しく恥ずかしがる親友の姿がとても可愛くて、
一美はさらに追及することにした。

「それに、そのブレスレットも涼人くんから貰ったんですわよね?
 どう思われてるも何も、ラブラブじゃありませんか♪」
「こ、ここここれは街を案内してあげたお礼に貰っただけだよ!
 ……それに一緒に遊びに行ったときだって、別に、その……」



真珠に白いバラという簡素ではあるがセンスのよいデザインの
ブレスレットが、キラリと里緒の腕に光る。
あのデート以来というもの里緒はそれをいつも身につけていて、
時たまそれを撫でてはにへら〜と表情を崩すのを一美は知っていた。
そのプレゼントを指摘されたとあってじたばたと恥ずかしがる
里緒の声が、急に暗くなる。
一美は、その変わりように首をかしげた。

「……確かに涼人くんとは一緒に遊びに行ってるけど……
 映画を見たりお食事するだけで……その、何もないの……」
「……え? だってあの時二人ともとても親密そうに……
 じゃなくて、二人は付き合ってるってクラスのもっぱらの噂ですわよ?」
「え!? ちょ、ちょっと、そ、そうなの? そんな噂、困るよ〜」

どうやら二人のデートの後をこっそりつけていたことには
気づいていない里緒の様子に、一美は頭の中で胸を撫でおろした。

(里緒の想いは本物ですわ……それに、私の推測が正しければ、
 涼人くんも恐らく同じ想いのはずですのに……)

親友である里緒の恋。
もちろん、できることなら成就してほしい。
しかし相手は皮肉にもレインボーキャットを追う立場の警察官なのだ。
両想いになることは、正体がバレる危険性を増すということでもある。
そのリスクを回避するため……という狙いは実はあんまりなく、
単なる趣味で二人のデートを尾行していたのだが、そこには
デートを重ねるごとにいい雰囲気になっていく二人の姿があって。

(……ついに里緒にも春が来たのですわね……)

と内心思っていただけに、今日の里緒の溜め息は一美には意外だった。

「私、涼人くんに女の子として見られてないのかなぁ?」
「そんなことありませんわよ、里緒。どうしてもというのでしたら
 思い切って里緒の方から告白してみてはいかがですの?」
「こくはッ!? そ、そんなの恥ずかしくてできないよ〜」

せっかく二人を応援すると決心したのに、
肝心の本人がこれではさらなる進展は望めない。
一美は頭を抑えてほぅっと溜め息をついた。

(……純粋なのか、鈍いのか……涼人くんも涼人ですわ……
 二人とも、奥手にも程がありますわね……どうしたものでしょう)

じっと顎に手を当てて考えていた一美だったが、次の瞬間、
頭に浮かんだ豆電球にぱっと光が灯る。

「大丈夫ですわ、里緒。私が一肌脱いでさしあげます♪」
「ちょ、ちょっと一美。また何か変なことを考えてない?」

怪しい笑みを浮かべる親友に、里緒は不安そうな視線を向けた。




(一美さん、遅いなぁ……)

次の日、誰もいない放課後の体育倉庫で高原 涼人は
独り待ちぼうけをくらっていた。
学園祭の出し物であるコスプレ喫茶の打ち合わせということで
呼び出されたのだが、肝心の一美がまだ来ていないのだ。

(そもそも、打ち合わせなら教室でやればいいじゃないか。
 一美さんはなんだってこんな所でやろうと言い出したんだ……?)

一美の狙いはわからないものの、どうも嫌な予感がして
涼人がさっさと帰ろうとしたその時。

「一美ぃ〜? こ、こんなの恥ずかしくて着られないよぉ……。
 本当にコレ学園祭用に作った衣装なの……え、きゃ、きゃあーッ!」

おずおずと体育倉庫に入ってきた里緒は、そこに涼人の姿を認めると
声をあげて慌ててしゃがみ込んだ。
一方、涼人も里緒の姿を見て目を白黒させている。
そこには普段と違った衣装、それも一言で言うならば刺激的な衣装を
身に纏った里緒がいて。

「り、里緒さん! そ、その格好は一体……!?」
「えと、ち、違うの! その、か、一美に学園祭のコスプレ喫茶で
 着てほしいって言われて……細かい部分を直すからこれを着て
 体育倉庫にって……それで、それで……」

その衣装は、今世間を騒がせている怪盗、レインボーキャットの
コスチュームをイメージしたものだった。
しかし、厚手の素材で出来た全身タイツである本来の衣装からは逸脱し、
胸と背中の部分が大胆にカットされている。
しかもそれに留まらずハイレグ部分からは脚が剥きだしになっており、
ところどころ破られたような加工がされている。
つまりは着ているというよりは引っかかっているという表現が
しっくりくるほどに露出量の多い衣装だったのだ。

「わ、わかりましたからとにかく里緒さん、落ち着いてください」
「え? ……あっ……ありがとう……」

しゃがみ込んで自らの体を必死で隠している里緒の肩に、
ふぁさっと音を立てて学生服の上着が優しくかけられた。

(あ、涼人くんの香りだ……えへへ、得しちゃった♪)

微かに香る大好きな涼人の匂いと体温を身に纏うことができて、
里緒は一美に心の中で感謝していた。
だが、涼人はというと。

「一美さん、あなたのことですから近くにいるんでしょう?
 そろそろ出てきてもらえるとありがたいのですが」

しばしの静寂。
それを破ったのは、背後の跳び箱から姿を現した一美だった。

「ばれてしまってはしょうがありませんわね……」
「ちょ、ちょっと一美……どういうことなの?」



里緒の質問も、一美は悪びれない様子で受け流す。

「あーあ……こんな格好した里緒を目にしたら、いくら奥手の
 涼人くんでも欲情して飛びつくと思いましたのに……」
「そんなわけないでしょう! 欲情する前にびっくりしましたよ!
 というか『欲情』とか言わない!」
「じゃあ……どうしたら欲情するんですの……?」
「ちょっ……え……?」

珍しく怒鳴る涼人だったが、一美の思わぬ切り返しに言葉を失ってしまう。
そのまま無言でそっと体を押され、体操マットの上に誘導される涼人。
ぽふっと尻餅をつき、少し白い埃が倉庫に舞った。

「けほっけほっ、一美さん! いい加減にしないと怒りますよ!」
「里緒、今がチャンスですわー♪」
「え? え? な、なに……きゃあっ」

突然飛び出した一美と涼人のやり取りに混乱していた里緒も、
一美に体操マットの上に誘導されて涼人の体に重なる。
「……きゃっ!?」
「う、わっ!?」
里緒の目の前に涼人の顔が、涼人の目の前に里緒の顔が迫り、
倒れ込んだ勢いでそのまま唇が軽く触れ合った。

「「!?」」

お互い慌てて体を離す二人。二人の顔は一気に真っ赤になっていて。

(この展開……確か前にも同じようなことがあったような……)
記憶を辿る涼人だったが、一美はその余裕を与えてはくれなかった。

(奥手の二人には、次のステップへ進むきっかけを他人が
 作ってあげるぐらいがちょうどいいのですわ♪)

「里緒、この際、既成事実を作ってあげればいいのです」
「か、一美、既成事実って……?」
「こうして涼人くんの体を触ってあげればいいのですわ♪」
「ちょッ……! か、一美さんッ!?
 やめてくださいッ……く、くすぐったいですって」

涼人の体を一美の手がさわさわと撫でる。
そのたびに、いつも冷静な涼人がピクンッと反応する。

(か、一美……でも涼人くん嫌がってない……?)
自分の知らない涼人の表情、声、そして体。
里緒は、一美にだけ涼人の体を触らせておくわけにはいかなかった。

「りょ、涼人くん……わ、わたしも触って……いいかなぁ?」
「なッ……そ、そんな里緒さんまで……!? くっうっ」
「その調子ですわ、里緒……」

さわさわと涼人の体を撫でる手は四本に増えた。
しかもそのうちの二本の手、自分が想いを寄せている里緒の手なのだ。
涼人は、いっそこのまま身を任せてしまおうかと考えていた。

(……だめだ、現実逃避をするな……)
懸命に理性を呼び起こそうとする涼人の腰に、一美の手が伸びる。


「ちょッ……!? さすがにやりすぎでしょう!!」
「……声が大きいですわ。誰か来てしまったらどうするつもりですの?」
「一美さん……それ、世間じゃ『脅迫』と言うんですよ……」
「あら、心外ですわ。私は『サービス』だと思ってますのに♪」

涼人の抗議の声をよそにカチャカチャとベルトを外す音。
なんとか抗おうとするも、涼人の左手の上には里緒の体があった。
残った右手を一美は巧みに脚でブロックしている。
抵抗できないのをいいことにほどなくジーッという音がして、
開帳されたズボンの股間部分からは縞柄のトランクスが覗く。

「里緒、触ってごらんなさいな」
「え? え? そんなことできないよう……」
「じゃあ私が触って涼人くんを気持ちよくさせてしまいますけど、
 それでもよろしいんですの?」
「だ、ダメ!! そんなのだめだよぉ!!」

言葉巧みに一美に乗せられてしまっていることに気づかないまま、
里緒は恐る恐るトランクスの上から涼人自身をそっと撫でた。
初めて手に触れるソレは、人間の肉が持つ独特の柔らかさと
温もりを持っていて……それは今まで触ったことのない感触で。

(これが涼人くんの……なんだ……)

さわさわと撫でるたびに、涼人の体に微かな反応がある。
それが面白く、また愛おしくて撫で続ける里緒。
一美は、そんな里緒を見て頭を抑えた。

「里緒……ずっと撫でてるだけじゃ涼人くんは生殺しですわよ……」
「へ? こ、これじゃダメなの……?」
「り、里緒さん、もういいですからっ、やめてくださいっ」
「ダメですわ♪ 里緒、パンツを下ろすのです」
「ちょ、ちょっと……!! 一美さんッ!?」

体を揺すって抵抗しようとする涼人の体を自らの体の
重みで封じると、一美は涼人のトランクスに手を伸ばしずり下げる。
そこには、充血した涼人自身がそそり立っていた。

(こ、これが男の人の……モノなのですわね)
(……涼人くんの……びくびくしてる……)
(……そ、そんな……見られてしまった……)

自分で脱がせておきながら軽く目を見開く一美と、
顔を手で覆いながら指の間からしっかり見ている里緒。
ウブな里緒はもちろんのこと、耳年増の一美も実際に男性の
性器を目にするのは初めてで。
そして七年前のあの事件から女性に心を許すことなどなかった
涼人も、自分自身を誰かに見せることは初めての経験で。


「里緒、軽く握って、上下に擦って差し上げるものですわよ」
「こ、こう……?」

しゅっしゅっ。
レインボーキャットの手袋が衣擦れの音を立て、慣れない手つきながらも
涼人の下半身をゆっくりと愛撫していく。

「……うっ……り、里緒さん……そ、それ……」
「涼人くん……気持ちいい……?」
「え…………え、ええ、気持ちいいです」
「嬉しい……わ、私……頑張るから……」

健気な言葉を口にした里緒の姿を見やると、レインボーキャットを模した
セクシーなコスチュームが 彼女のスタイルのよい体を美しく彩っている。
もじもじと顔を赤らめながらも、自分のために一生懸命
尽くしてくれている里緒を見て、涼人は素直に可愛いと思う。
「気持ちよくない」と否定することは 涼人にはもはやできなくなっていた。

「か、一美……次はどうすればいいの?」
「ふふ、涼人くんのモノをお口に含むのですわ♪」
「ふえ!? く、口に……?」
「一美さん、またそんなっ! 里緒さん、やらなくてもいいですからね」

里緒はいったん涼人の下半身から手を離し、改めて見つめた。
レインボーキャット姿に興奮したせいか、ますます力強くそそり立っている。
涼人の体の一部だと思えば嫌悪感はなかったが、さすがに口に含むのは少し迷う。
どうしようかと逡巡しながらも、意を決したようにしゃぶりつく。

はむっ。
「んんっ! り、里緒さん……」
「りょ、涼人くん……」

ちょぶっ。べろっ。じゅぷっ、じゅぽっ。
偶然のキスですら慌てて顔を赤らめてしまう里緒が、
なんとか自分を気持ちよくさせようと奉仕してくれている。
そんな里緒の艶やかな髪を、涼人はさらりと撫でた。

「りょ、涼人くん……もっと撫でて?」
「わかりました、里緒さん……」

秘め事の最中にしては律儀すぎる返事をした涼人は優しく
里緒の髪を撫で、撫でられた里緒は嬉しそうに目を閉じる。
二人が強く望みながらも実行には移せなかった甘い時間が流れていた。

(……よし、これで私の目的は果たせましたわ♪
 あとは邪魔者は立ち去るだけですわね……でも、でも……)
すっかり蚊帳の外になっていた一美は複雑そうな表情を浮かべる。
顔は赤く染まり、二人の密事から目が離せないでいる一美。
いつしか彼女の息は荒くなり、服をきゅっと握り締めていた。

(……だ、ダメ、一美……応援するって決めたんですのに……
 でも、でも体が熱くなって……な、なんですの……?)
性に興味ある年頃のこと、耳で聞いただけの知識は持っている。
しかし実際に男女の交わりを見るのは初めての経験だった。
しかも目の前で、今まさに行っているのは親友とクラスメート。
一美は知らず知らずのうちに興奮させられてしまっていたのだ。


しばらくそのまま耐えていた一美だったが、ふいに涼人の
ワイシャツのボタンを外し、中のシャツを捲り上げる。

「ちょ、ちょっと……一美さん何を……くぅッ」
「か、一美……なんで……?」

一美は二人の言葉には答えず、涼人の裸に吸い付いた。
ぺろ……ちゅばっ……ぴちゅっ。
里緒と同じく不慣れな様子だったが、それでも知識が幾分あるらしく
乳首や首筋など涼人の敏感な部分を着実に刺激していく。

(一美……あ、あんなに……えっちな音を立ててる……)
一美の行動に刺激されたのか、里緒の舌も積極的になる。
それまでは竿をひたすらしゃぶるだけだったのが、先端をちろちろと舌で
刺激したり、裏筋を舐めたりと、その懸命さゆえに誰に教わるわけでもなく
涼人の快感を刺激するポイントを見つけたようだった。

「里緒さんっ……そこ、く、くすぐったいです……
 か、一美さんも……そんなところを舐めないでください……」
「ひょっとして、涼人くん……気持ちよくないの?」
「そ、そりゃ……気持ちよくないといえば嘘になりますが……って、
 そういう問題じゃないです!」
「里緒、問答無用ですわ♪」
「ちょ……ッ!! んっ、んくぅッ」

二つの舌がお構いなしに自分の体を這い回り、ねぶっていく。
二人のクラスメイトに奉仕されている非日常的な光景と
与えられ続けるその刺激に、涼人の理性が完全に飛んだ。

「そっちがその気なら、僕にも考えがあります」
「えっ!?」

抑えられていた腕が動くことを確認すると、涼人はむくっと体を起こした。
戸惑う里緒を体操マットに四つん這いにさせると、
傍にいた一美も里緒の隣に四つん這いにさせる。

「きゃあっ?」「え、え?」
「里緒さん、一美さん、僕だけ気持ちよくなっても悪いので、
 どうぞ二人も気持ちよくなってください」
「あっ……お、お尻撫でちゃやだよぉ……」
「んんッ……や、やめてくださいまし……」

突き出された二つの尻を両手でさわさわと撫でまわす涼人。
尻たぶをぎゅっと掴んだかと思うと、触れるか触れないかのタッチで内腿を撫でる。
二人が感じていたむず痒さが、ちろちろと燃える小さな性感の炎に変わるまでに
そう時間はかからなかった。
と、涼人はここで攻撃の手を緩める。

「えっ……?」「な、なんですの……?」

尻から離れた手に意外そうな声を上げる二人。
だが、涼人は今度は彼女達の体の上から手を回して胸を揉み始めた。
左手は里緒のふくよかな胸を。右手は一美の小ぶりな胸を。
それぞれの感触の違いを楽しむかのように、涼人はしばらくの間
二種類の乳房を揉みしだいていた。


「あはぁッ……りょ、涼人くん…は、恥ずかしい、よぉッ……」
「ふぅ……んっふぅ……む、胸は……」

涼人も女性経験があるわけではなかったが、二人の反応から的確に
性感のポイントを探り当て、ここだと見るや執拗に責め続ける。
これはICPOで培われた適応能力の高さだろうか。いや、多分違う。

「んっ…はぁ……うっ、んくっ…な、なんだろこれ……」
(く、くすぐったいのに……涼人くんにもっと触ってほしい……)
「…んんんッ……んふっ…ンッ……い、いやですわぁ……」
(わ、私……流されてますわね……で、でも……)

ぴくんっ、ぴくぴくっと体を小さく弾かせて吐息を漏らしながらも、
二人は肝心な場所に触れられない物足りなさを感じていた。
そこに無慈悲にもかけられる涼人の意地悪な声。

「嫌なようでしたらそろそろやめましょうか?」
「い、嫌ぁ……ッ、りょ、涼人くん…もっと触って……?」
「んんッ…い、意地悪はやめてくださいまし……」

長い時間をかけて焦らされ疼いた体は、恥ずかしさよりも
これ以上の愛撫を渇望し、二人は同時に懇願の言葉を口にした。

「それじゃ続けますよ?」

右側に突き出された一美のスカートを捲り上げてパンティをずり下げ、
左側に突き出された里緒のコスチュームのハイレグ部分を横にずらすと、
そこにはぬらぬらとした光を放つ二つの秘部が姿を現した。

「すごい、もうこんなに濡れてますよ?」
「い、いやぁ……あふぅ……そ、そんなこと言わないでぇ……」
「あぅ…んっんんッ…ひうぅ……は、恥ずかしいですわぁ……」

無意識に行われる涼人の言葉責め。
これまでの人生で言われたことのない、辱められる言葉を
かけられるたびに二人の体は反応し、悶えてしまう。
ますます溢れてくる女蜜が、二つの秘部から糸を引いて、床に垂れた。
機や良し、と見るや涼人の両指が攻撃目標へと突入する。
ぬぷっ。つぷっ。

「ーーッ!? んはぁッ…うっ、あうぅん…んはあぁッ」
「あうぅッ!? んくぅ……そ、そんな…は、入ってきてますわ……」

これまで何物も迎え入れてきたことがなかったであろう秘奥に
男の指が深々と突き入れられ、二人は声を抑えられず喘いでしまった。
四つん這いの体を支えている細い両腕はガクガクと震え、
今にも崩れ落ちてしまいそうになりながらもなんとか堪えている。
だが、涼人の指は中で蠢きながら抜き差しを繰り返す。


じゅぷっ、びしゅっ、じゅぶぶっ、くちっ、ぬぶっ。
これまで幾多の悪人を捕らえ報いを受けさせてきたICPO屈指の
巧手は、今やその矛先をクラスメート二人の股間に向け、
卑猥な音を立てながら愛液をこねて混ぜて掻き出していく。

「う、あ、あっ、あっ! や、そ、そんなはげ、激しくしちゃ嫌ぁッ!
 ふああぁ、っぅあッ、そ、そこダメへぇッ、あぁっはあぁぁ!!」
「だ、だめですわぁ……うああぁ、な、何か出ちゃいますのぉ……
 ひ、ひいぃんッ…で、出ちゃいますから、ダメれすわぁッ!!」

じゅぶじゅぶと愛液が噴き出るたびに、二人の嬌声は切なげに、そして
熱を帯びるようになり、ビクビクと体を震わせて身悶えた。
もはや二人とも四つん這いの体勢を保っていられなくなり、
両腕を折って尻を高く突き出すような格好になっている。
それはさらなる刺激を欲しているがゆえの格好でもあった。

「ちょ、ちょっともう少し静かにしてくださいよ。
 大きな声を出したら誰か来ちゃうって言ったのは誰ですか?」
「そ、そんなこと言ったっへぇ、涼人くんの良すぎてぇ…
 あ、あふぅぅん……こ、声が出ひゃうんだもん……」
「ん、んくぅ…ん、ん、んぅ…だ、ダメへぇッ……
 お、抑えきれませんわぁぁ……あはぁぁぅッ…んっくぁぁあ!!」

静止したにも関わらず大きな声を上げる二人を見て、涼人は小さく息をつく。

「それじゃ、仕方ありませんね。一気に終わらせます!!」

じゅぶじゅぶぶッ!ぬぶっびちゅっじゅぶぶじゅぶぶぶぶぅッ!

「ひ、ぎ、いぃぃぃいいっ! ひああはぁぁッんく、あっはぁぁ!
 だ、だめへぇ、だめなのぉ…ば、ばかになっちゃうよぉぉッ!!
 ひっ、イひぃぃっ…わ、私…イ、イクっ、イっちゃうぅぅッ!!」
「も、もうダメですのぉ…あっあ、あ、ッひ、ひぃぃいいぃんッ!
 んっひぃぃ…ぅくあぁんッんふぅ…ぁんあああぁんッ、んあぁ…
 れ、れちゃううぅ…な、なんか出ちゃいますわああぁぁッ!!」

じゅばっ、じゅぶっ、じゅばばばぁーーーッ!!
もはや抑えることもできなくなった声とともに、
潮を大量に噴き上げながら里緒と一美は同時にイキ果てた。
後には荒い吐息と、熱と、湯気と、静寂。

「こ、これは後始末が大変そうだなぁ…二人とも、大丈夫ですか?」

一人冷静な声を出して二人を抱き起こす涼人。
しかし、常日頃から見せる冷静さがこの場合は裏目に出た。


ガシッ!
「りょ、涼人くんだけ、クールなのズルいよぉ……」
「ちょッ……り、里緒さん何をするんで…!?」
ガシッ!
「に、逃がしませんわ……♪」
「えッ……か、一美さんも……ちょ、ちょっと待ってくだ」

立ち上がろうとした涼人の両腕に里緒と一美がしがみつく。
二人に引っ張り下げられて、涼人はバランスを崩しマットに尻餅をついた。
あぐらを組もうとするかのような格好になった涼人の脚の付け根に、
絶頂を向かえ体を火照らせた里緒と一美が群がる。
その勢いで再びバランスを崩した涼人は、マットに仰向けで寝転がった。

「涼人くんにも、いっぱい気持ちよくなってもらうんだから……」
「そうだ里緒、一緒に舐めてさしあげましょう……♪」
「んくぅっ…り、里緒さんに一美さん、それはやり過ぎでは…」

もう何がどうなっているのか、誰も分からなかった。
体育倉庫には学園祭の打ち合わせに来たはずで。
体育倉庫にはコスプレ喫茶の衣装合わせに来たはずで。
体育倉庫には恋する二人を惹き合わせるために来たはずで。
こんなはずじゃなかったのに、という思いがそれぞれの頭をよぎるも、
いつしか逆らえない大きな流れの中に巻き込まれてしまっていた。

ちゅぶっ。ちろちろっ。じゅぽっ。ぬぷっ。ぺろっ。
硬くした涼人自身の両側から、小さな二つの口と舌が挟み込む。
それぞれ異なる動きで、竿を頬張ったかと思うと袋をつつき、
時には両側から舌で竿を下から上まで舐め上げる。

「んんッ……んはぁっはぁっ……うっくっ……」
「おむっ…んむふぅっ……涼人ふん、ひもひいい……?」
「り、りお…もっほ…うむぅ…ひたをふかふですのわはぁ……」
「き、気持ち…い、いいです……んんくッ…んあっ」

二人の舌技に、普段は表情の変化の乏しい涼人も顔を赤く染め、
目を瞑って襲い来る性感に耐えているようだった。
ここにきて涼人を加えた三人全員が熱情の渦に巻き込まれ、
そして深く飲み込まれていく。

「りょ、涼人くん……こんなこと言うの、恥ずかしいんだけど…
 私ももっかい気持ちよくして……? だ、ダメかなぁ……」
「わ、私も一緒に気持ちよくなりたいですわぁ……♪」

恥じらいながらも脚を少し広げ、腿立ちで涼人を起き上がらせる里緒と一美。
里緒はキャットシーフのコスチュームを汗でぐしょぐしょに濡らし、
ずらされた股間部分からは秘蜜が糸をひいた秘部が覗いている。
一美は着衣が乱れ、ボタンの開いたブラウスからは控えめなサイズの
胸が露わになり、片方の腿には脱ぎかけのパンティが引っかかっている。
ただでさえ恵まれた容姿である二人の美少女の扇情的な格好を
目にしたとき、涼人は正常な判断能力を失くして飛びかかりそうになった。
だが、ぎりぎりのところで理性が働き、あることに気がつく。


「一緒に……って、里緒さんも一美さんも経験あるんですか?」
「う、ううん? その……まだ…なぃょ……」
「え、えと……私も、その……ありませんわ……」
「そ、それはダメでしょう! 二人の、その、初めて……を
 ここで僕がもらうのはいくらなんでもッ」

クラスメート二人の処女を奪うという重みには、
勢いでここまで来てしまった状況は釣り合いがとれなかった。
また、一美はもちろんのこと、涼人に捧げるのが本意である里緒も、
こんな状況で処女を失っていいのかとなると迷いが生じていた。
体育倉庫内の熱が冷めかけたそのとき。

「それじゃ、こうすればいいんじゃありませんの?
 涼人くんは寝て……里緒、私と同じ体勢になるんですわ♪」
「一美、こ、こうかな……?」
「ちょ、ちょっとそれは……」

一美が考え出した、この状況を打開する秘策とは。
涼人を仰向けに寝かせ、自分達はその体に交差する形で寝る。
三人は自分達の体を使って+の記号を体育倉庫の床に描いた。
里緒と一美は脚を広げて絡ませ、上半身を腕で起き上がらせた。
そうすると、二人の秘部がちょうど涼人自身を挟む格好になるのだ。

「か、一美……こんな格好、は、恥ずかしいよぉ……」
「わ、私だって恥ずかしいですわ……でも、涼人くんと一緒に
 気持ちよくなるためにはこうするしかありませんわね♪」

そう言うと、二人は腰をくねらせ始めた。
今までかいた汗が潤滑油の役割を果たし、滑らかに動く
二つの秘部が涼人自身を挟み込み、上下に擦りあげる。
それは同時に、二つの肉豆が涼人自身によって擦られる動きでもあった。

「んっふぅ……あ、あっ、あうぅ……こ、これすごいぃ……」
「あんっ、あ、あはぁ……りょ、涼人くん、ど、どうですの……?」
「くぅッ……そ、その……気持ち、い、いいです……うくぅッ」

涼人の眼前で、美少女二人が脚を開き、胸を揺らしながら
腰をくねらせて秘部と秘部を合わせ自分自身に擦りつけている。
それとともにすべすべした脚や腿が汗で光り、目の前で上下に揺れる。
いつしか涼人も仰向けで寝転がりながら、腰を使い始めていた。

「あぁ、あっ、はぁぁんッ…りょ、涼人くん、そんな動かしたら……
 あ、あそこが擦ッ、れてぇっ……んぁああっ、あふっ、んんん!!」
「り、里緒、とても可愛いですわぁ……♪ んッ、んんああぁふぅッ、
 ちょ、ちょっとこれ……よ、良すぎですのぉ……♪」
「んっ、んっ、くううぅ……ぼ、僕、もう……」


彼女らの痴態と愛撫で、涼人の怒張はもはや限界を迎えようとしていて。
一度絶頂を迎えて敏感になっている里緒と一美も耐えられなくなっていて。
やがて、三人は同時に昇天した。

「あはぁ…んはぁ、う、うんンッ…りょ、涼人くん……す、すきぃ…
 だ、だいしゅきなのぉ……い、一緒に、一緒にイこ……♪」
「あくッ…り、里緒さん……里緒さんッ……んんんあぁぁッ!!」
「んはひぃッ……さ、さっきイッたばかりですのに……ま、また
 お股擦りつけて……イッ、イッちゃいますのぉ……♪」

どぴゅぅっ。びるっ。ぴっ。
「い、イクッ!!」
「んっふあぁはぁっはあっぁああーー♪」
「あっはああぁっぁあーーッ♪」

宴の後の体育倉庫は、急速に熱を失っていった。
それまでが嘘のように平均台や跳び箱が冷たく無機質な光を放ち、
少しすえた臭いが鼻につく。
涼人に学生服の上着をかけられた里緒が、疑問を口にする。

「あーあ、こりゃ体操マットこっそり替えないといけませんわね」
「ねえ、一美……どうしてこんなことしたの?」
「里緒、さっき自分が何て言ったか覚えてますの?」
「へ? わ、私何か言ったかな……」
「言いましたわよ、『涼人くん、すきぃ、大好きなのぉ』って。
 そう言うときの里緒、とても可愛かったですわ♪」
「%#ちょっ☆!*Я●√∀そんな≧$▼!?」

言葉にならない叫びを上げながら目を白黒させて慌てる里緒。
顔を赤くさせて、どうリアクションをすればいいか分からずにいる涼人。

「その言葉を引き出すため……でしたわ、少なくとも最初は。
 涼人くん、乙女にここまで言わせて返事をしないなんて言わせませんわ」

その言葉に涼人は頷くと、里緒の肩を両手で掴み、
未だパニックの真っ最中である里緒を自分の正面に向かせる。

「★$%▼な■♯ん&!♂○? え? え?」
「里緒さん、僕は里緒さんのことが好きです」
「……え? あ、あ、ありがとうっ」

ガシッ!
胸に勢いよく飛び込んでくる里緒を、涼人は優しく受け止めた。

「……けほっ」

若干むせながら。


見つめ合う二人をよそに表情を暗くした一美が衣服を整え立ち上がる。

「でも、こんなことをしてしまった私は……もう、もう……
 里緒の親友とは言えませんわね……それではごきげんよう」
「待って一美ッ! そ、そんなのいや…嫌だよぉッ!!
 どんなことがあっても、一美は私の親友だもんっ!!」
「そうですよ。拒否できなかった僕にも責任はあります。
 一美さん一人だけが責めを感じることなんてない」
「あ、ありがとう……里緒、涼人くん……。
 私、二人を応援するつもりでいながら、里緒が涼人くんに奪られると
 思って寂しかったのかもしれませんわ……」

自分を庇ってくれる親友とその恋人の言葉を背中で感じながら、
一美の口から出る感謝の言葉は、涙声になっていた。
二人のもとに一美が駆け寄ろうとしたそのとき。

「まずいですわッ!!」

何かを察知したのか、回れ右をした一美は体育倉庫から飛び出した。
何があったのか訝る里緒と涼人に、話し声が聞こえてきた。

「佐倉さん、こんな遅い時間にどうしたの?」
「あら、前田先生。ちょっと学園祭の準備で残っていましたの」
「準備って……続きは明日にしてそろそろ帰らなきゃダメよ?」
「はい、もう帰りますわ。それじゃ、ごきげんよう」
「はい、ごきげんよう」

どうやら神出鬼没の前田先生の気配を奇跡的に察知したらしい。
危ないところだと知って、里緒と涼人は背筋が寒くなる。
だが、安堵するのは早かった。


カシャンッ!

「え? ひょ、ひょっとして……鍵かけられたの?」
「しまった……確か扉の取っ手を鎖で閉じる南京錠だから……
 外からなら開けるのは容易いですが中からは押し破るしか……」
「だ、ダメッ、私こんな格好だもん、気づかれちゃったらッ!」
「ですね。力技は得策ではないでしょう……しかしどうすれば」

PiPiPi……
打つ手がなく途方に暮れる二人に、一美から救いの携帯メールが入る。

『夜遅くに、替えの体操マットを持って佐倉家の者が
 こっそり助けに行きますわ。それまでは辛抱してくださいな』

「助かった……」「助かりましたね」

ほっと胸を撫で下ろす二人だったが、二人きりという状況に
ようやく気づいて慌てて体を離して赤面する。
どちらが話しかけるともなく、静かで気まずい雰囲気。
その静寂を破ったのは、

ぐうぅ〜〜ぅ。

お昼から何も食べていなかった里緒のお腹の音だった。
一瞬空気が強張り、次の瞬間二人は顔を見合わせて笑い出した。

「だってしょうがないじゃない、お腹減ったんだもん」
「あははは、里緒さん、僕の鞄にチョコレートが入ってますよ。
 何かあった時に備えての非常食として持っているんです」
「やった♪ さっすが涼人くんだね」
「僕はいいですから、どうぞ食べてください」

里緒は涼人の鞄の中から板チョコを取り出すと、しばらくそれを
じっと見つめていたかと思うと、悪戯っぽい笑みを浮かべた。
板チョコを適当な大きさに割り、口にくわえると

「涼人くんっ♪」
「なんですか、里緒さ……うむぅっ……」
「うむっ、んむぅ……はふぅ……」

事故ではなく、自ら望んでのファーストキス。
それは、甘い甘いミルクチョコレートの味がした。

なお、この後佐倉グループの人間に救出されるまで、
里緒は涼人に念願の処女を捧げることになるのだが、それはまた別のお話。

〜〜Fin〜〜