ルシアンバレー郊外にある野外ライブスペース「アメジスト」。
有名アーティストからコアなロックバンドまで多くのミュージシャンが
日々熱いライブを繰り広げ、ルシアンバレー住民のみならず
遠方の住民からも親しまれている一大スポットだ。
ホールと比べて音響の面ではやや劣るものの、それを補って余りある
野外ならではの観客と演者との一体感は、そこに集まる音楽ファンを
非日常へと誘い、酔いしれさせてきた。

今日も観客席には大勢の人間が詰めかけ、満員御礼である。
だが、今日の「アメジスト」は会場全体が何やら異様な雰囲気に包まれ、
普段とは異なる様相を呈していた。

まず、観客席の様子が違う。
いつもならうちわやペンライトなど思い思いのアイテムを手にしたファン達が、
お目当てのミュージシャンが現われるのを今か今かと待ち構えているはずだ。
しかし、今日は開演前特有の緊張感や熱気といったものが全く見られない。
そこにあるのは、余裕と弛緩。
オールスタンディングの観客席を所狭しと埋め尽くしている観客達は、
一様ににやにやと下卑た笑みを浮かべている。
信じられないことに、観客の中には制服姿の警察官も大勢混じっているようだ。
そのいでたちにも関わらず観客達を抑止する行動を見せるわけでもなく、
完全に職務を放棄して単なるいち観客としてそこに収まっていた。
また、観客席の最前列にはテレビ用のカメラを担いだ男達や、
ハンドマイクを手にしているスーツ姿の男達が陣取っている。
彼らの腕に装着された緑色の腕章が、彼らが報道の人間であることを示していた。
そして不可解なことに、観客全員にある共通点が見受けられる。
それは全員が「男」であるということ。

ステージの様子も違う。
いつもなら舞台に備え付けられているドラムやアンプ、エフェクターといった
音楽器材がほとんど撤去されており、ステージ上はやけに広々としていた。
それだけでなく、広い舞台の中央にはぽっかりと意味深な円い穴が開いている。
それでも舞台が寒々としていないのは、ステージの背景で一際大きな
存在感を示している大型スクリーンのせいであろう。
スクリーンはそのほか、観客席の両側にも設置されており、計3つの
大型スクリーンに観客席の様子が投影されているのだが、それは観客の頭上へと
伸びているクレーン上のカメラマンが撮影しているものらしかった。

そして何より、会場を包む空気が違う。
野外ライブ会場全体には淡い紫色の空気が充満しており、それを吸い込むたびに
観客の瞳から光が失われていき、焦点が定まらなくなっていく。
それは、不完全ながら『世界』の絶大な力を手にした剛蔵が発する瘴気であった。
その瘴気は今やルシアンバレー全域を覆い、次第に住民達は理性を奪われ
無自覚ながら剛蔵の思惑に支配されていったのである。

会場のざわめきが最高潮に達したとき、スクリーンにテロップが映し出された。
その素朴ながら目立つフォントを目にしたとき、観客達は大きな歓声をあげた。
そこに映し出された言葉とは。

「 ア ン バ ー ム ー ン 謝 罪 会 見 」

ブーーーー。
今、被虐のブザーが鳴る。


ブザーがひとしきり鳴り終わると、今度は照明が落とされ、
会場内に芝居気のかった男性のアナウンスが響く。

「本日はご来場いただきまして誠に有難うございます。
 開演前に、観客の皆様にいくつか注意事項をお知らせいたします。
 まず、上演中の携帯電話の使用はお控えください。
 また、着信音も周囲の皆様のご迷惑になりますので、マナーモードに
 設定の上お楽しみくださいませ。
 なお、ショーの模様をカメラ、ビデオ、または携帯電話のカメラ・
 ムービー機能を使用して撮影する行為は推奨させていただきます。
 思う存分、住民を欺いた小悪党の姿を撮影してやってください。
 それでは、まもなく開演です。」

その声は、紛れもなく飯綱晃のものだった。
その鼻につくアナウンスが合図であったかのように、観客達がごそごそと
カメラや携帯電話を取り出し、ステージ上へとピントを合わせはじめたその時。
再び会場が明るくなって舞台の中央の円く空いた穴から奈落がせり上がってきた。
誰もいないステージに突如現われた二人。

それは、正装に身を包んで誇らしげな飯綱剛蔵と、後ろ手にかけられた手錠を
剛蔵の手に掴まれ、俯きながら立っている怪盗アンバームーンの姿であった。
もっとも厳密には『アンバーフール』という表現が正しいのだが、その事実を
知っている者はこの会場ではほとんどいないため、これ以降は便宜上
『アンバームーン』という呼称で統一することにしたい。

舞台装置によって暗い空間から突如明るい場所に誘われた彼女は、
自らの姿を照射するスポットライトの光に、目を軽く瞑った。
恐る恐る目を開いてみた彼女は、そこに広がっている異様な光景に目を疑った。
こちらを見ている人。人。人。
観客席を埋め尽くした人数もさることながら、その誰もが自分の肢体を
嘗め回すような、好色な視線を向けていることに慄然とする。

次の瞬間。
バシャッ! パシャッパシャッ! パシャッバシャッ!
無数の携帯電話及びカメラが一斉にこちらにフラッシュを焚いたのだ。
その鋭い閃光に再び目を瞑った後、その意味するところに気づいて震える。

(わ、私……撮られてる……捕まった姿を……と、撮られてるの……?)

気づけば、彼女の姿を捉えているのは観客だけではない。
最前列に陣取ったテレビ用のカメラが彼女の表情を追っている。
テレビ用のカメラがあるということは、その後に訪れるのは当然。

「アンバームーンさん、今の心境はいかがですか?」
「これまで予告状を出すなど、大胆不敵な犯行を重ねてきましたが、
 いざ捕まってみて何か思うことはありますか?」
「多大な迷惑をかけた警察官の方々や私達住民に対しては、
 何か言うことはありますか?」

レポーターから差し出される何本ものハンドマイク。
彼らからかけられる、その身を刺し貫かれるような辛辣な言葉。
だが、アンバームーンは強い視線を彼らに向けた。


「皆さん、聞いてください! この飯綱剛蔵が諸悪の根源なんです!
 私がこれまで盗みを働いてきたのは、その恐ろしい力から皆さんを
 救うためなんです! 信じてください!!」

その言葉に、会場は一瞬静まり返った。
互いの顔を見合わせる観客の反応に、アンバームーンは一縷の望みを託した。

(これだけの人数が味方になってくれれば……逆転できるかも……)

だが、その淡い期待は次の瞬間、無残にも打ち砕かれた。

「言うに事欠いて俺らのためだぁ? ふざけんな悪党が!!」
「我らが英雄の剛蔵様に罪をなすりつけるなんて、いい度胸だぜ!!」
「もうこんな奴死刑にしちまえよ! 死刑に!!」
「「「死刑! 死刑! 死刑! 死刑!」」」

(そ、そんな……私は……私はみんなを守るために……本当に……)

あまりに突拍子もない事実を説明するには言葉足らずであることに加え、
剛蔵の発する瘴気によって既に洗脳状態にある住民達のこの反応は、
至極当然のことといっていい。
しかし、当のアンバームーンはそうは捉えていない。
よりによって守るべき対象の住民達に自らの行動を否定され、
罵詈雑言を受けているという事実にすっかり混乱してしまっていた。

「「「「シ・ケ・イ! シ・ケ・イ!」」」」

(私が……死刑……? そ、そんなことは……でも……)

会場に湧き起こる「死刑」コールが、孤独な義賊を追い込んでいく。
もはやこの会場に、いや、全世界中に彼女の味方は存在しない。
その事実を思い知らされ、女怪盗は打ちのめされていった。
そうしている間にも彼女に対して向けられる観客達の悪意は勢いを増し、
とうとうステージ上に物を投げる者まで出始めた。
あわやひと騒動、というその時。

「静粛に!! 静粛に!!」

観客達からの容赦ない罵詈雑言を沈めたのは、アンバームーンの後ろで
彼女にかけられた手錠を掴み、ずっと会場の反応を楽しんでいた剛蔵であった。
正装でハンドマイクを手にした彼の姿は、ショーの司会者然としている。
怪盗を見事捕まえた英雄、他ならぬ剛蔵の言葉とあっては、
観客達もその矛を納めずにはいられず、騒ぎはひとまず収束した。

「死刑を望む皆さんの気持ち、ワシは痛いほど分かりますぞ。
 けれど、いきなり極刑というのは人道的にいかがなものかと思うのです。
 ここはステージ上でこやつに裁きを与え、欺かれ傷つけられてきた人に
 謝罪をさせるというのはどうじゃろう?」

パチパチパチパチ……。
剛蔵の提案に、観客達は拍手喝采の雨霰で応える。
今までアンバームーンに向けられていた強烈な悪意は、勢いをそのままに
剛蔵への賞賛へとベクトルを変えて会場を包んだ。


「やはり剛蔵様は慈悲深いな、あんな奴にまで情けを与えるなんて」
「おい、アンバームーン! 剛蔵様に感謝するんだな!」

(くっ……みんな……違うの……違うのに……)

自らの正義が伝わらない歯痒さに、唇を噛んで悔しがる女怪盗。
その身に、剛蔵の一見情け深く、その実非情な問いかけが突き刺さる。

「どうじゃ、アンバームーンよ。潔く自らの罪を認めて謝罪をし、
 ワシに忠誠を誓う気になったか?」
「じょ、冗談言わないで……誰が貴方なんかに従うものですか」

体の震えをなんとか鎮め、萎えかけた心を奮い起こして
キッと剛蔵の顔を見据えるアンバームーン。
たとえこの世界が敵ばかりだとしても。
たとえ逆転の望みが潰えたとしても。
この男、飯綱剛蔵だけは許すわけにはいかない。
目の前で最愛の棚橋を刺し貫き、屠り去ったこの男だけは。
恐怖に負けず、弱みを見せまいとするその態度は見事というほかなかった。

しかし、剛蔵はそんな反応すらも楽しんでいるかのように、
心から愉快そうに笑いだした。いや、嗤いだしたというべきか。
実際、彼にとって女怪盗の強がりは極上の料理の味をさらに引き立たせる
ひとつまみのスパイスでしかなかったのである。

「くくく……いいのぉ、そうでなくてはワシとしてもつまらぬ。
 その生意気な態度をずっと貫き通せるかの、アンバームーン?」

年輪を刻んだ皺を浮き立たせ、柔和そうな顔立ちを歪める老人の笑顔。
だがその瞳の奥には嗜虐心が確かに見てとれ、女怪盗は再び体を震わせた。
その震える体を、老人のささくれだった手が這い廻る。

「なんじゃ、強気な言葉を吐いたくせに怯えておるのか。
 そんなに怖いのなら、今からでも遅くないぞ。
 ワシに一言、『服従します』と言えばそれでいいのじゃ」
「うっ!? くっ……怯えてなんか……いないわ……」
「嘘言うでない、こんなに震えておるではないか」
「ん、くぅ……さ、触らないで……離してったら!」

彼が撫でまわしているのは、むしゃぶりつきたくなるほどの極上の体。
並みの男であれば、嫌でも目を惹く双つの膨らみをその手で
力一杯揉みしだきたくなるところだ。
しかし、剛蔵は急かず焦らず、腹部を指先でつつーっとなぞったかと思うと、
臍の辺りを指で擽り、それから矛先を鎖骨の辺りへ移した。
目を閉じ、襲い来る魔手の感覚に必死で耐えている女怪盗の首筋を、
剛蔵のざらついた舌が下から上へゆっくりと舐め上げる。
アンバームーンは、依然その体を震わせていた。
その震えは果たしてこれまでのように怯えからくるものだけなのか。
それは彼女のみの知るところである。

ここにきて剛蔵は彼女の真後ろに音もなく移動し、両手と舌を使って
怪盗の美しい腿を、腹を、首筋を、脇を、二の腕を、そして胸を愛撫し始めた。
その指使い、舌使いは経験の成せる技とでもいうべきだろうか。
老獪な愛撫に女怪盗は翻弄され、じわじわと与えられる刺激に苦しめられていた。

「んッ!!……いぅぅッ……んくッ、んふぅ……んんっ」


ビクッ! ピクッ、ビクンッ!!
女怪盗の体の震えは跳ねるような動きへと変わり、それがもはや怯えから
くるものではなくなっていることは誰の目にも明らかであった。
白い肌を上気させて美しい肢体をくねらせながらも、目を瞑り唇を噛んで
必死に刺激に耐えている姿に、観客の誰もが生唾を飲み込んでいた。

「お、おい……あれ、どう見ても感じて……るよな?」
「ああ……声を押し殺してるみたいだけど、全然我慢できてないぜ……」
「やばい、これ超エロいんだけど……クソッ、ビデオ持ってくるんだったぜ」
「おい、ぼーっとしてないで撮ろうぜ! あっ、今の表情マジやばいって!!」

舞台に立った人ならわかると思うが、ステージ上からは思いのほか
観客の反応というのはつぶさに窺えるものである。
彼らのどよめきは、剛蔵はおろか女怪盗の耳にも届いていた。

「くくく……聞こえておるのだろう、アンバームーン? ワシの指使いに
 耐えるお前の反応一つ一つがあやつらを欲情させておるのだぞ?」
「んっ、んんん……こ、こんなことで……はぁうっ、んっ、くぅんッ」

剛蔵の囁きのせいか、女怪盗が一際大きく声をあげた次の瞬間。

パパシャッ! パシャッパパシャァッ! パパパシャァッ!!
ステージにピントを合わせてチャンスを窺っていた観客達が、
カメラないし携帯電話のシャッターを一斉に切ったのだ。
フラッシュの鋭い光を浴び、舞台上の二人の姿が明滅する。

(い、いや……こんなところ撮らないで……お願い……)

「う、くっうっ……」
「おや、どうしたのじゃアンバームーン。
 ワシに胸を揉まれて感じている姿を皆に撮られただけじゃないか。
 まさかこんなことで降参するわけじゃないじゃろうな?」
「んっ……こ、降参なんて……す、するわけないでしょう……」
「おお? 『胸を揉まれて感じている』という部分は認めるのじゃな」
「違う! ちがうちがうちがうッ!」

降りかかる悪夢を振り払うかのように、激しく左右に首を振って
剛蔵の言葉に否定の意を示すアンバームーン。
だがその必死さが、見ようによっては肯定にも見てとれるのだった。
そんな葛藤を背後で感じた剛蔵は、突然彼女の体から手を離した。

「……えっ?」
「そうかそうか、それでは致し方ないのう。
 自分からワシに服従すると言う気になるのを待つしかなかろう」
「なッ!? そんなことあるわけないでしょう!」
「ふふふ、それはどうかの。おい、晃!」

剛蔵の呼びかけに応える形で、ステージ脇から飯綱晃がゆっくりと
舞台中央の二人へと歩み寄ってきた。
何やら液体の入っているらしい壺のようなものを手にしている晃は、
にやにやと下卑た笑いを浮かべてアンバームーンの傍で歩を止めた。

「まったく、待ちくたびれたぜ父上」
「……い、一体何を企んでいるの……?」
「ふふ、貴女を天国へと連れて行ってくれるいい物ですよ」


そう言うと、いきなり彼は右手を壺の中に入れ、そして液体を掬い上げた。
その液体は粘性が高いらしく、糸を引いて壺の中にしたたり落ちていく。
しばらくその感触を楽しんでいた晃は、ふいに勢いよく壺の中から
液体を大量に掬い上げると、左手でアンバームーンのスカートを捲り上げる。

「きゃぁッ!? ちょ、ちょっと何を……」
「よいせっと。いいぞ晃」
「おうよ、父上」

剛蔵がスカートを掴んで捲り上げられた状態で固定すると、
晃がその下の黒タイツを下着ごと左手で掴み、引っ張る。
と、晃が右手に掬い上げたジェルのような液体をタイツの中にぶち撒けた。
それは、子供が友達の体操服の背中に雪を入れる悪戯のような行為。
その悪戯は当然、体操服を脱がしてしまっては効果はない。
晃もその例に倣うが如く、すぐさま黒タイツを上げて元通りの姿に戻した。
剛蔵もスカートから手を離し、一瞬露わになった局部を隠す。

にちゃっ。ぐじゅっ。

「うっ、くぅ……つ……冷た……」

元通りにされた下着により、着衣の中で液体が音を立て溢れて広がる。
黒タイツの中では粘り気を残しながら液体が腿へ、膝へとしたたり落ちている。
得体の知れない液体が着衣の中に入り込んでいる感触に冷たさだけではない
不快感をおぼえ、アンバームーンはぶるっと大きく体を震わせた。

「こ、こんなことをしてどうしようっていうの……」
「そう焦りなさんな。ショータイムはまだ第一幕すら終わってないぜ」
「うっ!? くぅ……ま、また胸を……」

彼らの狙いを図りかね戸惑っているアンバームーンの胸を、
剛蔵が再び背後から手を回して揉みしだき始めた。
晃も左隣から手を伸ばして内腿をさわさわと撫で、柔らかな感触を楽しんでいる。
これまでとは違う四本の手による愛撫に、アンバームーンは懸命に耐え、
何とか逃れようと体をくねらせた。
だが、観客にとってはその逃れようとする仕草すら艶かしく映る。
中には早くもズボンを下ろし事を始めようとしている猛者まで出始めた。

特に言葉を発することもなく体をまさぐる剛蔵と晃。
声をあげまいとその刺激に耐え続けるアンバームーン。
しばらく無言の中に時たま吐息が混じる、静かな時間が続いた。
だが、変拍子は間もなく訪れた。

「ふぁッ!! はぁ、はぁ……んっ、んん、んあぁぁ……んっくぅぅ……」

これまで聞こえるか聞こえないかぐらいで留めていた女怪盗の吐息が、
ここにきてボリュームが大きくなり、響きにも熱を帯び始めたのだ。
彼女の額には汗が浮かび、しかめている顔にどことなく甘みが混じる。


「んあぁぁ……ん、くっ、こ、これ……んはぁぁ……な、何をしたの……?」
「ふふ、特別に教えてあげましょう。貴女の下着の中で溢れている
 その液体は、特製の媚薬なんですよ」
「ん、んんんんん……んぁっはぅ……び、媚薬で……すって?」
「そうです。この分だとどうやら効いてきたみたいですね。
 それじゃ、あとはこの玩具に任せて見物としゃれこみましょうかね」

そう言うと、晃はポケットから卵型をした水色の物体を女怪盗の
下着の中に放り込み、黒タイツの上から入念に位置を調整した。

「そ、それは……んっくぅぅ……い、いやぁ……はぁうッ」
「これが何か分かるなんて、普段から愛用しているのかな、淫乱怪盗さん?
 その熱い期待に応えてあげましょう、スイッチオンっと」

ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ……

「んんんんあぁぁ!! はうぅっ、くっ、こ、これ止めて……んはぁぁ」

くぐもった振動音が黒タイツの中から響き始めると同時に、
女怪盗の体が大きく跳ね、体重を支えていた脚がガクンッと力を失う。
それでも座り込みそうになりながらもなんとか耐えているようだった。

「ほう、まだ立ったままの姿勢でいられるとはさすがですね」
「だがいつまでそうしていられるか、じゃな」

彼女の体から手を離した剛蔵と晃は、左右に分かれて怪盗から距離を取った。
それはまるで、自分達は傍観者ですよと言わんばかりの振る舞いであった。
そう、舞台中央にはアンバームーン一人。
後ろ手に拘束されている以外は、コスチュームも普段のまま。
切なげな吐息を漏らし、ガクガクと体を震わせている彼女には誰の手も
触れておらず、ひとりでに体をくねらせ嬌声をあげているようにも見える。
そこに気を利かせたスタッフが、会場の照明を薄暗く落とし、
スポットライトを照らして彼女の痴態を際立たせる。
そればかりか、彼女の漏らす喘ぎ声までもマイクによって増幅され、
スピーカーによって会場中にこだまする。
そしてクレーン上のカメラは彼女をアップで捕らえ、会場の大型スクリーンに
映し出して彼女自身に自らの姿を認識させる。
それはまるで、彼女主演の独り舞台のようであった。

「んはぅッ、こ、こんなの……だめ……んくぅぅぅぅ、あはぁッ」

野外ライブ会場のステージ上で、観客全員に凝視されながら
股間からの振動に体を震わせるというあまりの非日常な責め。
次第に意識が与えられ続ける快感に侵食されていくような感覚を覚えつつも、
アンバームーンは焦りを感じていた。

(……はぁ、はぁっ……こんなの……んあぁぁぁ……今にも
 おかしくなっちゃいそうなのに……なんで……んっくぅぅぅ……)

強烈な快感で彼女の身を苛んでいるとはいえ、卵型の玩具の振動は微弱で
絶頂に達するほどの刺激は与えてくれなかった。
ガクガクと腰を砕けさせながら、彼女は寸止めという非情な仕打ちに
なんとかギリギリで耐え続けることを余儀なくされているのだった。


「おや、様子がおかしいのう、アンバームーン。
 そんなに体をくねらせてどうしたというんじゃ?」
「……もない……はぁ、はぁっ……くっ、なんでもないわ……」
「そうかい、それじゃもうしばらく見ているとしようか」
「……んっ、んあぁぁぁ……そ、そんな……ひぅぅぅ……」

自分がどんな状況にいるかは十分知っているくせに、しらばっくれて
強引に体をまさぐりに来てはくれない剛蔵と晃を恨めしく思う一方で、
自分が絶頂を求めているということを自覚してはっとする。
恨むべき相手への憎しみと、熱く疼いて堪えかねる体を天秤にかけ、
アンバームーンはグラリグラリと気持ちを揺らしては苦しむのだった。
だが、寄せては返す快感の波は襲い来るたびに大きくなっていく。
天秤が、グラリと傾き、そしてバランスを崩した。

「……せて」
「ん? 聞こえんな、アンバームーン。最近耳が遠いもんでの」
「……んくぅ……い、イカせてって……んんッ……言ってるの」

羞恥に堪えながらもようやく搾り出した敗北を告げる言葉。
だが、剛蔵は首を振って溜め息をついた。

「最近の若者は礼儀というものを知らんのかのう……
 人にお願いするときはそれ相応の言葉遣いってものがあるじゃろうに」
「ふふ、父上、それじゃあんまりです。わかりやすく教えてあげなきゃ。
 いいですか、アンバームーン。人にお願いするときは、こう言うんです。
 『剛蔵さま、晃さま、何でも言うこと聞きますから、
 淫らな私をイカせてください、お願いいたします』ってね」
「……んはぁ……そ、そんなの……言えるわけ……」
「まだ敗北を認めませんか……じゃあ教えてあげましょう」
「え!? きゃあぁぁ……い、いや……いやぁぁぁ……」

これまで傍観者に徹していた晃が近寄ってきたかと思うと、
いきなりアンバームーンのスカートを剥ぎ取り、黒タイツを引きちぎったのだ。
コロン、コロンと音を立てて舞台に転がり落ちる卵型の機械。
そして露わになる女怪盗の秘部。
そこは既に失禁したかと見紛うほど濡れそぼり、愛液は腿まで垂れていた。

「こんなにぐちょぐちょにしているというのに、まだ認めませんか?
 じゃあ観客の皆さんによく見てもらいましょう」
「え、ちょ、ちょっと……や、やめ……きゃぁぁッ」
「それ、ご開帳ですっ」

晃は女怪盗の背後に回りこむと、その腕を股下に滑り込ませ、
腿を抱えて上へと持ち上げた。
強制的にM字開脚をさせられ、ちょうど幼児が排泄を促される、
いわゆる「しいしい」のポーズで秘部を観客達に見せつける格好になる。
これ以上ない破廉恥な格好だが、後ろ手に拘束されていては
顔を隠すことも、秘部を隠すこともできない。


「……い、いや……は、恥ずかしい……お、下ろして……」
「いいんですか、観客の皆さん? 今すごいシャッターチャンスですよ?」

しばらくあっけに取られていた観客達は、その晃の言葉で思い出したように
カメラを構え直し、一斉にシャッターを切った。

バシャッ! ババババシャッパシャッ! パシャッパパパシャッ!

(いや……撮らないで……だめ、撮られてる……見られちゃってる……)

「おや、こんな恥ずかしい格好写真に撮られてるというのに、
 ますますここは溢れてきましたよ? はは、こりゃ本物の淫乱ですね」
「嘘……んんぅ……うそよ……私は……あんんぅぅ、それだめぇぇ……」

晃はふと右手を離して片足を解放すると、女怪盗は片足立ちの格好になり、
脚は「M」から「ワ」の文字を描いた。
空いた右手を晃が遊ばせておくはずはなく、秘部に指を入れて、
だが必要以上に刺激を与えないようにゆっくりとこね回した。
媚薬によって性感を高められているにも関わらず、強い刺激を
与えられない生殺しに、女怪盗は宙を仰いで悶絶した。

「ほらほら、イキたい時は何と言うんでしたっけ?」
「……ひうぅぅ、んっ、んあぁぁぁ……お、お願いッ……しますぅ……
 い、イカせ、て……んっひぃぃ……くださいぃ……」

その言葉を聞いた瞬間、晃は抱えていた女怪盗の体からパッと手を離した。
支えを失いバランスを崩した女怪盗は、ドタリと床に崩れ落ち、
目を瞑ってはぁはぁと息を荒くしている。

「さて、それではちゃんと、観客にも聞えるように言ってもらおうかの。
 大サービスでワシがマイクをかざしておいてやろう」
「もう一度教えてあげますから、ちゃんと言わないとダメですよ。
 『剛蔵さま、晃さま、何でも言うことを聞きますから、淫らな私を
 イカせてください、お願いいたします』、さあっ」

アンバームーンは崩れ落ちた体勢のまましばらく敗北感に打ちひしがれていたが、
晃に促され、また自らの体の疼きに堪えかね、上体をゆっくりと起こした。

「はっくぅぅ……ご、剛蔵さま……晃さま……んっんんんっ……はふぅ……
 な、何でも、言うこと……聞きますからぁ……はぅッ……んはぁ……
 はぁ……み、淫らな私を、い、イカせてくださ、いぃ……はぅんッ……
 お、お願いいた、しますぅ……んッんんん……んっくぅぅ……」

その言葉を聞くと、剛蔵は女怪盗の近くでしゃがみ、顎をくいっと
持ち上げると、非情な問いかけをするのだった。

「くくく……何でも言うこと聞くんじゃな?」
「は、はいぃ……」


涙目になりながら、持ち上げられた顎をコクッコクッと縦に振ろうとする女怪盗。
その顎から剛蔵は手を離すと、背後に回って強引に彼女を四つん這いにさせた。
ステージ中央で正面を向き、顔を観客席に向けながら尻を高く突き上げさせる。

「こんな恥ずかしい格好を臆面もなくやるとは、音に聞こえた
 怪盗アンバームーンの正体は単なる淫乱女に過ぎなかったということじゃな」
「い、いやぁ……そ、そんなこと……言わないでぁああ、あッはあっあうぅ!」

突き上げられた秘部を後ろから指で激しくかき回す。
じゅぶっじゅぶっという卑猥な音と喘ぎ声がマイクを通して会場内に響き渡り、
聞かれているという意識が女怪盗を深い官能へと突き落としていく。

「口答えをすると、イカせてやらんぞ? いいのじゃな?」
「……い、いやですッ……あぐぅッ……す、すみません……んあぁぁぁぁ」

バシィッ!!
引き裂かれた黒タイツの残骸が貼り付いた尻を、剛蔵の平手が打つ。

「あうぅッ!!」
「謝るときは『申し訳ありません』じゃろ?」
「あはぁぁぁ……も、もうしわけ……あ、あり……ません……」
「くくくく、よし、イキ果てるがよい、この淫乱がッ!!」
「あぁぁぁぁぁ!! んっ!んひぃぃぃッ!! い、イく、イくッ!!」

皺が目立つ剛蔵の手が激しく動くたびにびしゃびしゃと愛液を
撒き散らしながら、アンバームーンは渇望していた絶頂へと導かれた。

「んああぁぁぁぁぁぁぁッイく、イくのぉ!! イッ、ちゃうぅぅぅぅ!!」

ぷしゃあぁぁぁぁぁ……。
噴水のような水音を立て、自らの噴き出した潮に塗れながら、女怪盗は沈んだ。
だが。

「くくく、さて、休んでいる暇はないぞ」

エクスタシーの余韻に浸る時間すら与えられず、晃の手によって強引に
体を引き起こされてしまう。
と、今度は無理矢理立たされた姿勢のまま、秘部を指で刺激される。

「んっんんんん……い、いやぁぁ、だめ! 今はだめッ!!
 イッたばかりだから……感じやすくなってるからぁ……だめへぇぇぇ」

先ほどとは真逆の懇願をしてしまうことになったが、今回の願いは
聞き入れられることはなく、黙殺され、そして容赦ない指責めが続く。

「んあぁぁぁッ! はぁぁぅ! わ、わたし……イッたばかりなのにぃ……
 ひぎぃぃぃ……ま、またイッちゃう……イッちゃうのぉぉ……」

晃の若々しい指が、女怪盗の肉豆をキュッとつまんだ瞬間。

「んぁッ? ーーーッ!! そこ、そこだめへぇぇ……んんんあぁぁっぁ……
 ひうぅぅぅ……またイくッ、イくッ、ひああぁぁぁぁぁぁぁーーーッ!!」

ビクビクビクビクゥッ!!
軽やかな動きで警察や悪人達を翻弄してきた女怪盗のしなやかな体。
その美しい体が強烈な刺激に何度も跳ねたかと思うと、やがて力を失い、
ゆっくりと崩れ落ちた。