捕獲対象である怪盗トライアングルムーン。
そのうちの二人、ブレイドとラビットを包囲している男たちは圧倒的な優位にもかかわらず動けないでいた。
理由は二つ。
油断なく周囲に剣気を発しているブレイドの存在。
そして、笑顔でゲシゲシと倒れている男に蹴りを入れまくっているラビットの存在に臆しているからだった。

「…ラビット、そろそろ止めたらどうだ? その男、痙攣しているぞ」
「こういう乙女心を平気で踏みにじるようなエロ男はこれくらいやらないとダメなんだよ。ブレイドもいつも言ってるでしょ?」

にっこりと満面の笑みを浮かべつつ小柄少女のストンピングは続く。
既にその上着は元の位置に戻され、つい先程まで露出していた可愛らしい膨らみを見ることはできない。
が、だからといって辱めを受けた恨みが晴れるわけでもなく、ラビットは容赦なく男に鉄槌を加え続けていた。

「しかしいつまでもこうしているわけにもいかない。なんとしてもここから脱出しなければ…それに」
「ウィッチィが心配だね。彼女が一番ボクたちの中じゃあ体力がないし」

ようやく気が済んだのか、少女の繰り出す打撃音が止まる。
最後、止めとばかりに踵でテンプルを踏み抜いていたが、それを見ていた誰もが目をそらしていた。
君子危うきに近寄らずである。

「まずは彼女と合流しなければ…」
「おいおいお嬢ちゃん。この包囲を突破できるつもりかよ?」

仲間を襲う惨劇が終了したのを見やってか、包囲の最前列にいた一人の男が口を開く。
その表情はニタニタと余裕に満ち溢れている。
少女たちの数は三、味方側は百を依然越えているのだから当然といえば当然の態度。
だが、二人の怪盗少女は逆に嘲笑を返すことで余裕を見せた。
内心は焦燥に包まれてはいたが、まだ負けたわけではない。
身体が動く以上、弱みを見せるつもりなど毛頭なかった。

「ブレイド」
「ん?」
「さっき、チラリとだけど見えた。この部屋には窓があった」
「何!?」

小声で聞こえてきた仲間の情報に女剣士は目を剥いた。
それが確かならば、脱出への糸口が見えたのだ。

「結構高い位置にあったけど、ボクたちなら十分のぼれるはず。ウィッチィは無理かもしれないけど、補助があればいけると思う」
「なら、ますます合流を急がないといけないな」

希望の光に怪盗少女たちは顔をほころばせる。
しかし次の瞬間。

「だっ駄目です。やめて、やめてくださっ……いやぁぁぁぁッ!」

絹を引き裂くような、ウィッチィの悲鳴が彼女たちの耳に届いた。

「えいっ、やあっ!」

ビュン! と空気を切り裂く音と共に鞭が振るわれる。
一呼吸後にはその一撃に悶絶した男が次々と床に倒れ伏していく。
ウィッチィの操る電気鞭は新堂で作られた特製のものだけあって、効果は抜群だった。
だが、それだけに消費エネルギーもかなりのもので、手が振るわれるたびに鞭の電気が徐々に失われていく。
数十秒後、ブゥン…という微かな電気音がバッテリー切れを示した。

(くっ…いけない…)

三人の中で最も戦闘力の無いウィッチィは武器でそれを補っていた。
しかし、トライアングルムーンは活動の性質上大多数との戦いは想定されていない。
あくまで彼女たちのミッションはアルテミスによる情報収集を基軸にした効率の良いものでしかないのだ。
だが、それが崩された今、頼れるものは己の力しかない。

「はっ!」

電気が切れたとはいえ、鞭としての性能はそのままだ。
ウィッチィは多分に攻撃力の落ちた鞭を振るって近寄ってくる男たちを牽制する。
しかし、電気が無くなった、つまり一撃必殺でなくなったということは男たちにもすぐに察知できたようだった。
顔をニヤつかせた男たちは一斉に金髪少女に襲い掛かる。

「こ、このっ! 近寄らないでくださいっ!」

襲い来る男たちに向けて必死に鞭を振るう少女怪盗。
だが、数の差はいかんともしがたく徐々に包囲を狭められてしまう。

「えいっ! あ…!?」

そして数十秒後、ついにウィッチィの鞭が捉えられてしまった。
綱引きのように引っ張り合われる鞭がミチミチと悲鳴を上げる。
数秒ほどの拮抗するも、非力なウィッチィではそもそも最初から勝負になってはいなかった。
一気に引っ張られた鞭につられて少女の身体も男の胸に飛び込むように動いてしまう。
男は飛び込んできた少女の肩を掴むと、足払いをかけてほっそりとした身体を押しつぶすように床へと押し倒す。

「あうっ、あっ…!」

背中をしたたかに打ち付けられたウィッチィが苦痛の声を上げる。
だが男たちはそれに構わずわっと群がると金髪少女の四肢を次々と押さえ込んでいった。
捕らえられた少女怪盗はあっという間に身動きできない状況に追い込まれてしまった。

「あっ、は、離して下さい!」

焦りを顔に貼り付けた仮面の少女が拘束を解除するべく暴れまわる。
だが、男の手で四肢を押さえ込まれた状況では精々身体をよじることが精一杯だった。
金の髪が床に散らばり、少女の心境を示すかのように乱れる。

「ようやく捕まえたぜぇ! 散々手間取らせやがって…」
「よし、素っ裸にひん剥け!」
「いやその前に仮面を奪え、顔が見たい!」

口から出る欲望に忠実になるべく男たちは次々とウィッチィの身体へと手を伸ばす。
男たちの欲望を目の当たりにした金髪少女は反射的に眼を閉じてしまう。
だが、数秒待っても少女の身体に他者の手の感触は訪れなかった。
おそるおそる眼を開ける。
すると、そこには自分を押し倒した男が手を上げて他の男たちを制止している姿があった。

「まあ待てよお前ら。コイツを捕まえたのは俺だぜ? 優先権ってもんがあるだろ?」
「おいおい、独り占めかよ」
「まあまあ、ちゃんと後からお前らにも分けてやるって。それに見るのは自由だろ?」

ニヤリと笑う男にウィッチィは言い知れぬ悪寒を感じた。
隠されていない悪意をまともに受け、身体がすくむ。

「さて、まずは身体検査だな。まだ武器を隠し持ってるかもしれないしなぁ?」

男の手が少女の胸元へと伸びる。

「あ、ど、どこを触ろうとしているのですか!?」
「決まってるだろ。胸だよ胸、おっぱいだ。なんといってもここが一番怪しいからなぁ」
「そ、そんな…何も隠してなんか…」
「皆そういうんだよ。でもな? こんなに膨らんでいて何も無いってのは信じられないんだよ!」
「きゃあっ!」

ビリィィ!
胸元を掴んだ男が一気にブラウスを引きちぎった。
ボタンが宙を舞い、おへそから上の部分が開放される。
ブラウスの隙間から白い肌が露出し、下着がチラリと覗いた。

「ふんっ!」

だが、男の暴挙は止まらない。
ボタンを失ったブラウスを前を掴むと、両手で一気にそれを広げてしまったのだ。

「ひっ…」

肌を暴かれるという危機にウィッチィは小さな悲鳴をあげた。
お嬢様育ちの彼女は恋人はおろか初恋すら経験をしていない。
そんな少女が男たちに押し倒されて服を暴かれたのだ、そのショックは計り知れない。

「くくっ、白か、それにしても高級そうなブラしてんなぁ…」

だが、少女の怯えは男たちにとっては欲情をそそるスパイスでしかない。
少女の傷一つ無い白い上半身が獣たちの目に晒される。
特に視線が集まっているのは曝け出された胸部だった。
白い下着に覆われたそこは大きすぎず小さすぎずといった絶妙な大きさでふっくらと盛り上がっていた。
下着はよほどいいものなのか、胸をピッタリと覆い、全く型崩れを見せない。
レースの白が肌の色と相まって玄妙なコントラストを見せている。
動き回っていたせいか、僅かにピンクに染まりつつある肌が上気を見せていて非常に艶かしい。

「み、見ないで…」

恥ずかしい部分に集まる視線を感じて怪盗少女は思わず目をそむけてしまう。
だが、そうすることによって男たちの視線が視覚ではなく感覚で感じ取れてしまうようになった。
羞恥と屈辱にふるふると睫毛が揺れる。

「ふむ、ここにはなかったか。じゃあ…」

チラリ、と男の視線が下へと向かう。
目をそらしていたウィッチィがそれを見ることは無かったが、視線の先を見ていれば全力で抵抗しただろう。
何せ、男の視線は少女の下半身、それもスカートへと向かっていたのだから。

「次に怪しいのは、ここだよなぁ?」
「え…」

少女がいぶかしむ暇すら与えず、男の手が怪盗のスカートの中へと侵入した。
もぞもぞとスカートの中で動く手が見ている男たちに卑猥な妄想をかきたてさせる。
と、男の手が何かを見つけたのかその十指がしっかと握り締められた。

「お、何かはっけ〜ん!」
「ぇ……あ!」

男の手が何を掴んだのか悟ったウィッチィの顔色がさっと青に変わる。
握られたのは少女のパンティだったのだ。
しかし少女が抵抗をはじめるよりも早く手は動いた。
するすると怪盗少女の下着が引き抜かれていく。

「あっ……あああっ!」

ようやく事態を把握したウィッチィが驚愕の悲鳴をあげる。
だが既に時は遅く、少女のパンティはスカートから顔を出すとあっという間に膝を通り過ぎ、足首から抜かれてしまう。

「だ、だめっ! 返してください!」

拘束の手を振り解き、慌てて男の手に握られた下着へと手を伸ばす。
しかし布を掴もうとしたその時、少女の身体は再度床に押し付けられてしまい、奪還は叶わなかった。

「ああ…っ」
「おお、下もやっぱり白か! それにレースで…こりゃシルクか? すべすべしてやがる!」
「いやぁ…」

男は剥ぎ取った戦利品を品定めするようにしげしげと眺めはじめた。
だが、つい数秒前までそれを身につけていた少女からすればその行為はたまらなく恥ずかしいものだ。
やめてほしいとばかりにくなくなと首が力なく振られるが、当然男の行為は止まらない。

「脱ぎたてだけにぬくもりが残ってるな、暖かい。それになんか良い匂いがする…くんくん」
「!!!」

下着の匂いを嗅ぎ始めた男に金髪少女は絶句するしかない。
必要最低限の性知識しか持っていない少女からすれば下着の匂いを嗅ぐなど理解の範疇外だ。
だが、それが恥ずべき行為だということだけはしっかりと理解できる。
なんとかその行為をやめさせようとウィッチィは必死でもがいた。

「くっ…やめて…っ! 私の下着でそんなことしないでくださいっ!」
「おいおい、下着の心配をしてる場合かよ? ほらほら、そんなに暴れて大丈夫なのかぁ?」
「えっ…」

憎むべき男の注意に怪盗少女の動きが止まる。
男の視線を辿り、自分の下半身に目を向けると、そこには乱れてめくりあがりかけているスカート。
当然、その下は何も身に着けていないわけで…

「あっ、だ、駄目!」

もぞもぞと足を動かしてスカートの位置を戻そうと悪戦苦闘するウィッチィ。
だが手を使えない状況ではその行動は全く意味が無く、スカートの裾はピクリとも動かない。

「くくく、スカートが気になるのか?」
「あ、当たり前です。だって…」
「穿いてない、もんなぁ?」

揶揄するように笑う男を睨みつけることもできずに俯く金髪少女。
だが、男は意にも介さず更なる暴挙へと及ぼうと口を開いた。

「しかし怪しいな。そんなに狼狽するということはそこに隠し武器があるからに違いない」
「なっ…」

再び絶句する少女怪盗。
確かに太腿の辺りに何か武器を隠しておくというのはお約束だ。
だが、男の顔は武器が無くてもあっても良いという表情だった。
つまり、目的は別のところにあるということで、その目的が少女の想像通りのものならば…

「い、いやっ、離して、離して下さい!」
「暴れだすなんてますます怪しいな。こりゃなんとしてもそのスカート中を確かめないとなぁ?」

パンティをポケットにしまいこんだ男がゆっくりと手を伸ばしてくる。
そうはさせまいと必死に抵抗する怪盗少女だが、四肢を押さえ込まれている状態では何もできないも同然だった。
抵抗むなしく、怪盗のスカートの裾が男の手によって捕らえられてしまう。

「さあて、ご開帳だ」
「やっ、やめてくださいっ。そんなところ、何もありませんっ」
「それを確認するためにめくるんだよ」

ずるずると衣擦れの音を立ててスカートがめくれあがっていく。
膝上までのプリーツスカートはその下に隠していた部分を徐々にあらわにし、肉付きの良い太ももを開放する。
ロングソックスとスカートの間に肌が見え、絶対領域が発生するが男の手は止まらない。
少女の秘密を暴くべく容赦なくスカートを持ち上げていく。

「もう少しだな。さて、何が出るかな?」

ニタニタと笑う男。
見れば周囲の男も唾を飲んで見入っている。
ウィッチィはあまりの恥辱に打ち震え、視線をさまよわせる。
乙女として、秘められた部分を恋人でもない男の目に晒すなど考えられない。
だが、状況は刻々と進み、抵抗するすべはない。
そしてスカートがデルタ地帯に差し掛かったその瞬間、ウィッチィはたまらず悲鳴をあげてしまった。

「だっ駄目です。やめて、やめてくださっ……いやぁぁぁぁッ!」
「んん、良い声だ。クライマックスのBGMにはちょうどいいぜ」

太ももが完全に露出し、後は股間を残すだけという状況に男たちの興奮が頂点に達する。
だが、いよいよその上のお宝を拝見しようとしたその時、後方から怒声が上がった。

「なんだぁ? 今ちょうどいいところだってのに…」

振り向く男。
いいところで邪魔された不機嫌さを隠そうともしないその顔に、ラビットの爪先がめり込んだ。