「手が…勝手に!?」
自分の意思に逆らい勝手に動く己の両手に戸惑う美音。
毎日服の着脱をこなしている手はあっさりとスカートを腰から外してしまう。
手からはなれたミニのスカートは重力に負け、ひらっと床へ落ちた。
すぐさま上着が下着の露出を防ぐ役目を受け継ぐ。
だが、元々そういう機能があるわけではない衣装は裾からチラチラと少女の最も大切な場所を覆う布を見え隠れさせる。
「きゃっ…あっ…やめっ…」
剥きだしになった足に狼狽する美音だが、続けざまに上着に伸びた手は勿論止まらない。
交差した両手が上着の裾を掴む。
そして持ち上がっていく手。
上着にかろうじて隠れていた美音のパンティが露出し、続いて可愛らしいおへそがほっそりとしたお腹と共に晒されていく。
「と、とまっ…」
必死に手を止めようとあがく美音。
だが無情にも手は全く止まる気配を見せない。
豊かな胸を保護するブラジャーが顔を見せたかと思うと、怪盗少女の衣装はあっという間に首から抜きさられてしまう。
ふぁさ…と脱がされた布地はやはり手から滑り落ちるように床へと落ちていく。
「くく…良い格好になったじゃないか」
ジロリ、と舐めるように自分を見る夜暗の視線に美音は思わずを目をそむけてしまう。
美音の身体に残されているのは下着二枚に手袋とブーツ、ニーソックス。
そして彼女の正体を隠すアイマスク型の仮面だけとなった。
「く…う…」
「ほう、なかなか大人っぽいデザインの下着を着けているじゃないか」
衣装の下から現れた二枚のディープブルーカラーの下着はおそろいで、デザインは夜暗の言うとおりアダルティさを纏っていた。
セクシーともいえるその下着は美音にとってはいわゆる勝負下着だった。
これで最後だから、というのと先日風見にバカにされたからという理由で身につけていたものだったが
勿論それはこのように男の目に晒すためではなかったため、少女の心には悔しさが広がる。
手は後に回され、胸を張るような格好を取らされた美音は羞恥に震えながらも反撃の機会を窺う。
だが、身体は一向に自分の意思では動いてくれなかった。
「どうだ? 自分の身体が己の意思で動かないというのは屈辱だろう?」
「自分の手を下さず…人を操って…臆病者なのね!」
「ほう、まだそんなクチを叩けるのか? まあ獲物の活きがいいのはこちらとしても望むところだ」
口元を僅かに持ち上げた夜暗は美音の挑発に反応することなく右手を上げる。
そして鳴らされる指。
美音の手は、ついにブラジャーへと伸び始めた。
「あっ…!」
背中へと回された手はブラのホックを的確にとらえた。
汗ににじんだ手は手馴れた様子でホックを外しにかかる。
そして…ぷつん、と音を立てていましめが解放された。
「!」
ぷるるっ
締め付けからの開放感にDカップのおっぱいが嬉しそうに弾む。
だが、その胸にはまだブラジャーが残っていた。
ブラジャーは乳首にかろうじて引っかかり、落下を免れていたのである。
「ああっ…」
悲痛な声で「落ちないで」と願う美音。
しかし、乳首に引っかかっている程度では美音のマスクメロンのような胸を覆うブラジャーの重量を支え続けるなどできはなしない。
はらり…
放れ際に桜色の小さな乳首を弾き、胸を覆っていた下着は衣装と同じく床へと落ちる。
外気に晒された胸は羞恥と哀憫に乳首ごとふるんっと一揺れした。
「くく、でかいおっぱいだな? 普段はそれで男を誘惑しているのか?」
「ち、違う! 私はそんな…」
「男を誘惑するための生まれたような身体だよ…女は抱き飽きているが、久々に食指が動くな…」
夜暗の揶揄にかあっと美音の頬が染まる。
首筋まで広がった赤みはもう少しで胸に届こうかといったところだ。
「全く、俺一人で独占するのが勿体無くなってきたな。どうだ? こいつらを起こして観客を増やしてやろうか?」
「な……!」
夜暗の提案に美音の心臓がドクンッと一段高く跳ねた。
今現在、美音と夜暗の周りには二人を四方から囲むような形で怪盗捕縛チームの面々が立っている。
彼らは眠ったままの状態で操られているため意識はない。
だが、意識はないといえども男の集団が周りに存在しているというだけで美音の心はざわざわと落ち着かない。
なのに、この上彼らが目を覚ましてしまえば数十の意識ある目が自分の恥ずかしい姿をとらえることになるのだ。
「ははは…顔色が変わったな?」
「…そ、そんな……そんなこと…」
「くくっ…冗談だ。そうしてもいいのだが、まだこいつらにはダークの力が完全に定着していないんでな」
「ぁ…」
「ほっとしたか? くくっ、正義の怪盗といっても所詮は小娘か。名が泣くな…怪盗アクアメロディ、いや、水無月美音」
「え…!?」
いきなり告げられた自分の名に動揺する美音。
何故それを…!?
混乱する美音を無視し、夜暗は一枚の書類を懐から取り出した。
「水無月美音、十七歳。私立海籐高校二年。委員会や部活動には無所属。両親は共に死去し、親戚もいないため現在は天涯孤独の身で一人暮らしをしている」
「…!」
「身長は162cm。スリーサイズは上から89・57・85。胸のカップはD……くくく、どうしてって顔だな?」
調べつくされている自分のデータに呆然とする美音を余所に夜暗は押し殺したような笑いを漏らす。
「何、簡単なことだ…お前が風見と戦った一週間前のあの夜。俺もこの屋敷にいた」
「な…!?」
「気がつかなかったようだが、あの部屋には隠しカメラが設置されていた。俺は隠し部屋からそれを眺めていただけだがね」
「じゃ、じゃあ…」
「一部始終は全て見ていたよ。勿論、お前の素顔もな…」
その言葉に美音の顔が真っ青に染まった。
警察に正体を知られたということの意味がわかっているからだ。
「早とちりしているところを悪いが、安心しろ。この情報を握っているのは俺だけだ」
「え?」
「このデータは俺の独自の情報網を使って調べたものだ。風見は…ああなってしまったしな」
夜暗は自分がやったことなのにも関わらず、弟の末路を笑う。
だが、美音はそんな彼に怒りを感じることはなかった。
というよりも風見のことは耳に届いていなかった。
何故ならば彼女の思考は前半部、つまり正体を知っているのが目の前の男だけだということに集中していたのだから。
「さて、お喋りはここまでにしようじゃないか、水無月美音」
「わ、私はアクアメロディよ! そんな名前じゃない!」
「この後の及んで否定するか。なんならその仮面を剥がしてもいいんだぞ?」
「っ……」
服を剥かれることも御免被るが、仮面を剥がされるというのは美音にとってそれ以上の禁忌だった。
元々、水無月美音という少女はごく普通の少女である。
一人で富豪や警察に立ち向かうことも、こうして辱められることも本来の彼女ならとても耐えられない。
だが、それを可能にしているのがアクアメロディの仮面だった。
仮面をつけることでアクアメロディという別人になり、水無月美音としての自分を隠す。
美音にとって、仮面とは自分を振るい立たせる勇気。
そして支えなのだ。
それが奪われる…これ以上の恐怖は美音にはなかった。
「選ばせてやる。仮面か、最後の一枚か…脱がされたいほうを選べ」
「えっ!?」
「聞こえなかったのか? 素顔を見せるか、素っ裸になるか、選べといったんだ」
「そ、そんな…」
残酷な二択を突きつけられた美音の思考が固まる。
前者を選べば美音はアクアメロディではなく水無月美音という一人の少女でしかなくなってしまう。
後者を選べば男の前で最も見られたくない部分を晒すことになってしまう。
どちらも選べない、選びたくはない。
「黙っているという回答は認めん。それとも…両方ともか?」
「ま、待って! ………し、下着のほうを」
「声が小さいぞ? 脱がして欲しいほうを脱がしてくださいとハッキリと言え」
「し、下着を! パンティを…脱がして、ください」
あまりの恥辱にふるふると美音の身体が震える。
顔は真っ赤に染まり、目線を伏せて俯くことしかできない。
だが、美音にはそう答えるしかなかった。
素顔だけは…仮面だけは外されるわけにはいかなかったのだ。
「はっはっは! 良い表情だ…いいぞ、その顔はそそられる…」
「ううっ…」
鳴らされた指に美音は絶望を感じた。
ゆっくりと動き出す自分の手。
だが、普段は自分の意志で動くはずのその手はやはり彼女の命令を聞くことはない。
パンティの両サイドに手がかかる。
するっ…するるっ…
焦らすように、美音を追い込むように夜暗はことさらゆっくりと手を下降させる。
(お、お願い、止まって、それ以上動かないで…!)
徐々に腰から離れていく下着の感覚に美音の精神は追い詰められていく。
既に怪盗少女の全身は汗でぐっしょりだった。
部屋の光に照らされて玉のような汗がきらりと輝く。
「見えてきたな…」
美音のパンティはもはや彼女の大事な部分を隠すだけの位置まで降りていた
丸みを帯びたヒップの割れ目が覗く。
前からは徐々に黒ずんだ影が露出し始めた。
「いやっ……!」
ふわり、と美音の秘丘を覆う繊細な茂みが空気に晒され立ち上がる。
そして、その下からピタッと頑なに入り口を閉じた一筋のふっくらと膨らんだ処女部がついに姿をあらわした。
するり
美音の足からパンティが抜き取られていく。
これで美音の身体を隠すものは仮面と手袋、そしてブーツとニーソックスだけとなった。
「ほほう…!」
夜暗は思わず身を乗り出した。
それほど美音の曝け出された裸体は魅力的だったのだ。
すらっとした細身にほどよくくびれた腰と触り心地の良さそうな白い肌。
見事に実ったたわわな二つの果実。
そして少量の茂みに覆われた下腹部…
その全てが調和を崩さずに一人の少女を淫らに輝かせていたのである。
「あっ…ああっ…見な…っ!」
美音は首をぶんぶんと振って抵抗をする。
見ないで、と懇願するのを止めたのはせめてものプライドった。
だが、手は再度後で組まされ、足は人の字に開かれたままピクリとも動かない。
怪盗少女はあまりの恥辱に打ち震えた。
身体には指一本触れられていないというのに、裸だけではなく、自分の全てが蹂躙されているような気分だった。
「あぁ……」
恐怖と恥ずかしさが一体となって美音の精神を蝕んでいく。
そして夜暗の悪意の視線は、徐々に美音の意識を奪っていくのだった。