「や、やめて!」
「さあて、89のおっぱいちゃんを見せてもらおうか…!」

伸びてくる手の気配に怯え、美音は必死に暴れる。
だが、彼女にできるのはもじもじと腰を左右させ、その振動でブラジャーに抑えられた胸を僅かに揺らすことだけだった。
迫り来る危機に息を呑む美音。
そして次の瞬間、ビリビリという音と共にブラジャーは剥ぎ取られた。

「やあぁぁっ!」
「おお…流石にでかいな! カップはDってところか?」

風見の感嘆の溜息に美音は手に隠れた目元を潤ませた。
彼女は処女であり、恋愛経験など一度もない純情な少女だった。
怪盗アクアメロディとして戦う以上は色恋沙汰など言語道断だと心に誓っていたからだ。
しかし美音とて年頃の女の子である。
性的な方面の知識がないわけではない。
だがそれゆえに美音は己の身体に向けられている欲望がハッキリと感じ取れてしまう。

「けけけ、でかさの割にはちっちぇえ乳首と乳輪だなぁ!」
「だ、黙りなさい!」
「声が震えてるぜ? さてはお前処女だろ?」

精一杯の虚勢もあっさり見破られ、美音は狼狽した。
身の危険を現実のものとして悟ってしまったのだ。

(と、とにかく脱出しないと…でもどうやって?)

頭の中をフル回転させて脱出方法をねる美音。
だが、風見はそんな美音の努力をあざ笑うかのように少女の胸へと両手を伸ばした。

「あ、あっ!」
「へへ、良い感度してるじゃねえか…」

ぐにぐにと風見の手が動くたびに美音の胸が揺れる。
指からはあまった乳肉がはみ出し、その質量を男の目に見せ付ける。
まだ触られていない乳首はぴくぴくと怯えたように震えた。

(ひっ…さわ、られ…てる、私の…胸がぁっ)

美音は胸から伝わってくる感触に戸惑っていた。
嫌悪感が先立ってはいるのだが、それだけではない気持ちが湧き上がっていく。
くすぐったいような、痺れるような、そんな不思議な感覚。
だが、その感覚の意味を知らない美音は無知ゆえに怯えた。
自分が自分ではなくなっていくような感覚に恐ろしさを感じたのだ。
たまらず、美音は風見の狼藉を止めるべく右手を動かした。

「あ? なんだそのへっぽこパンチは?」
「あっ…うっ」
「そうかそうか、もっとして欲しいんだな?」

しかし腰も力も入っていない拳は何の役にも立たなかった。
むしろ風見の興奮を増させるだけであった。

「はっはっ…はぁっ…はぁ…」

次第に美音の身体に変化が訪れる。
顔だけではなく、身体全体が上気し、薄いピンク色に染まり始めたのだ。

「けけっ、怪盗アクアメロディも所詮は女ってことか! 感じ始めたようだな!」
「か…! そ、そんなことない!」
「だがここはそういってるぜ?」
「え……ひゃあっ!」

ぴん、と風見が美音の乳首を弾いた。
瞬間、美音の脳裏に電撃が走る。

「びんびんに乳首おったてやがって…エロい身体だな」
「そ、そんな…そんなこと…」

風見の言葉攻めに美音は徐々に追い込まれていく。
ムクムクと勢いよく立ち上がった乳首は触ってくれとばかりにその存在を主張する。
そして風見はその要望に応えることにした。

「ほらほら」
「あっあっ…やめっ…ああっ!」

風見の手が縦横無尽に新雪のような処女胸を蹂躙する。
手のひらは余すところなく美音の胸を掴み、指先は頂きの蕾をくりくりと弄っていく。

「あっ…はぁっ! はぁぁんっ!!」
「おいおいすげえ反応だな。もしかしておっぱいだけでイッちまうんじゃねえか?」
「な…はぁっ…はぁっ…はぁぁうっ!?」

風見が揶揄したその瞬間。
ビクンと美音の身体がのけぞった。
ぴくんぴくんと痙攣した少女の身体はやがてゆっくりと脱力する。

「うわ、本当にイキやがったぜこの女…まあ軽かったようだがな」

はぁはぁと荒い息を唇から放出する美音を眺め、風見はニヤリと口元を吊り上げた。

「ま、本当の絶頂は後で教えてやるとして…さて、そろそろその素顔、見せてもらうぜ」
「え……あっ、あああっ!」

放心していた美音は風見の言葉を理解すると同時に戦慄した。
素顔を見られる。
それはアクアメロディの終焉を意味し、同時に水無月美音の終わりをも意味する。

「だ、ダメ! やめて!」
「くくっ、活きがいいいな? だがダメだ、その手の下の顔、見せてもらうぜ」
「や、やめてっ! お願い!」

いやいやをする美音だが、風見の手は容赦なく力の抜けた少女の手を掴む。
あっという間に頭の上にと剥がされてしまう少女の左腕。

「ああっ…!」
「ほう、綺麗な顔立ちをしてるじゃねえか…さっきチラッとだけ見えたが、やっぱこういうのはじっくり見ないとな…」
「お願い、見ないで…」
「やなこった」

容赦のない宣告と共に残った右腕が男の手によって徐々にずりあげられていく。
美音も必死に抵抗をするものの、快感の後の力の抜けた身体ではそれは些末なもの。
怪盗少女の鼻、そして目元が徐々に露になっていく。

「へへへ…見えてきたぜ」
(ああっ…)

ぎゅっと目を瞑り、その瞬間を覚悟する美音。
だがその瞬間美音はあることに気がついた。

(腰が、軽い?)

風見は身を乗り出していた。
それは美音の顔をじっくり至近距離で見るための体勢だったが、そのせいで美音の拘束が緩んだのだ。

(イチか、バチか…っ!)
「おおっ、やっぱり―――!?」
「はあっ!!」

右腕がどけられ、美音の素顔が風見の目にさらされたその刹那。
美音は残った力を振り絞って膝を立てた。
少女の膝に押されて風見の身体が僅かに浮く。

「なっ!?」
「やあぁっ!!」

そして美音は掴まれていた両手を逆に掴み返し、引っ張る。
同時に渾身の力で足を跳ね上げ、巴投げの容量で風見を投げ飛ばす!

「ぐっ…が!」

完全に油断していたのだろう。
受け身一つ取ることなく風見は床へと叩きつけられる。
だが、風見の強靭な肉体は彼の意識を刈り取るところまでは至らせない。
ゆらり、と怒気を纏いながら立ち上がる風見。

「やああああああっ!」

しかし、それよりも早く美音は動いていた。
加速をつけ、一直線に風見の元へと飛び込んでいく美音。
瞬間、美音は後を向き、そのまま回転して回し蹴りを繰り出す!

「おごっ!?」

ぷるん、と回転に揺れる美音の胸を最後のあがきとばかりに目にとらえながらも風見の意識は暗転した。
美音の蹴りは的確に風見の顎をしとめたのだ。

「はぁ…はぁ…はぁ…」

呼吸で上下に揺れる胸を隠しながら美音はぺたんと床に尻餅をついた。

「や、やったぁ…」

風見を見る。
呼吸こそしているが間違いなく気を失っていた。
いかに強靭な耐久力を持つとはいえ、顎をけりぬかれ脳をシェイクされてはどうにもならない。
白目を剥いて大の字に倒れている風見を見て、ようやく美音は緊張をといた。

「そうだ、ウインドル…」

美音は慎重に風見に近寄ると、懐からウインドルを取り出す
風見の手にあったときの輝きは既に失われている。
つまり、ウインドルは風見から切り離されたとうことだ。

「あと、一つ…」

美音は痛みと疲労に包まれた身体に鞭をうち、立ち上がる。
その格好は上半身裸、下半身もスカートはズタボロでパンティが丸見え状態という状態だった。
しかもパンティは彼女自身の愛液によって濡れているという始末。
その上、アクアメロディの正体を隠す仮面も粉々になってその役目を終えている。
ウインドルを握り締め、美音はどうやって帰宅したものかと途方に暮れるのだった。






「ふん…役立たずめ」

そう…
一部始終全てを見守っていた一人の男の視線に気がつくことなく